上 下
51 / 185
冬馬君は自重……

冬馬君はハイスペック男子

しおりを挟む
 翌朝起きると、時間がいつもより早いことに気づく……。

「あれ?なんで、目覚ましがいつもより早いんだ……?あっ、そうか……」

 髪型をセットするから、10分早く目覚ましをかけたんだな……。

 一階に行き、朝の支度を済ませる。

 そして、最後に髪をセットする。

「お兄!……うん!いいね!じゃあ、おっ先ー!!」

「はいよ、気をつけてな」

 俺もセットを済ませ、学校へ向かう。




「冬馬君!おはよ!」

「おう、おはよ」

「今日は、体育あるね。どうするの?」

「ん?ああ……綾は、どうして欲しい?」

「え?……中々に複雑です……カッコいいところ見たいし、でもモテちゃうし……」

「モテないから。仮にモテても関係ないな。俺は……綾に夢中だからな」

「と、冬馬君……エヘヘ、わ、私も……」

 ……おっと、いかんいかん。
 ここは公共の場であった。
 我慢しなくてはな。




 そして午前中、体育の授業の時間になる。

 バスケか……久々だな。

「おい!吉野!」

「ん?どうした?奥村」

 オラオラ系のサッカー部のやつだな。
 ……まだ、認めてない奴筆頭だな。

「あぁ!?なに、タメ口聞いてんだよ!?」

「はぁ?お前は馬鹿か。なんで、同級生に敬語使わなきゃならん」

「な、なんだと!?お前、調子に乗るんじゃねえぞ!」

「ほら!そこ!なにやってる!!」

「チッ!名倉か……まあ、見た目と頭は良くなったみたいだな。だが、運動神経はどうだかな。今日は、女子が隣にいるからな。恥かかせてやる」

「あっそう、ご自由に」

「て、テメー……!」

「奥村!まずいって!名倉さん睨んでるぜ」

「佐々木……まあ、いい。楽しみだぜ」

 ……やれやれ、イキらないと自分を保てないのか?
 面倒だな……潰すか。
 完膚なきまでに……。

 そして、試合が始まる。

 俺は田中君と、その他のメンバーの5人だ。

 長身で線の細い好青年の、バスケ部の中野。
 長身でガタイが良く平凡な見た目の、陸上部の加藤。
 身長が低いが可愛い系の、茶道部の藤田。

 この5人が、即席チームだな。
 これは、真司さんが振り分けて決めたものだ。

 対戦チームには、佐々木と奥村がいるな。
 これは、ちょうどいい。

「よし!始めるぞ!」

 真司さんがボールを持って、コートの中央に立つ。

「吉野君、随分雰囲気違うけど、バスケは?」

「中野君か……まあ、そこそこできるかな」

「そっか……じゃあ、お試しも兼ねてボール渡すから」

 そう言い、コートの中央に行く。
 相手から、奥村が出てくる。

「よし、いいな。では、行くぞ!」

 真司さんがボールを上に投げる!

「ハァ!」

「クソッ!」

 中野君が空中戦を制し、俺にボールを渡す。

 ……よし、やるか。
 俺は全力で走り、一気にゴール下に向かう!
 そして、佐々木とその他を抜き去る!

「はぁ!?早えぞ!?」

「おい!佐々木!抜かれてんじゃねえよ!」

 そしてそのまま跳躍し、ダンクを決める!

 ……よし、なまってないようで安心だ。
 これならいけるな。

 ……ん?なんか静かだな。

「す、すげーー!!吉野君!今からでも、うちに来ないか!?」

「いやいや!あの足の速さは陸上部だろ!!」

「な、なんだ……?あのやろう、運動神経までいいのかよ……!」

「すまんな、2人とも。俺は、本気の部活には入れないんだ。まじめにやってる人達に失礼だからな。ただ、そう言ってくれるのは単純に嬉しい。ありがとな」

「……へぇー、こっちが本当の吉野君か。じゃあ、遊びならいいかな?」

「ああ、それならいつでも」

「おっ!いいね!」

 まあ、この2人は悪い奴ではないからな。
 無理に断る必要もないだろう。
 それに、円滑な人間関係のためにもな。

 その後も、俺は点を取り続ける。
 そして終盤になった時、悲鳴が聞こえた。

 俺がそちらを振り向くと、綾が膝を押さえてしゃがんでいた。
 俺は迷わずに、女子側のコートに行く。

「綾!どうした!?」

「と、冬馬君……ちょっと、転んじゃって……捻っちゃったみたい……」

「あらあら、彼氏さん。運動神経まで良かったのね。綾ったら、見とれて怪我したみたいよ?」

「ちょっと!?加奈!!」

「黒野、それは本当か?」

「アタシも見てた。もう、見とれちゃってたね。まあ、気持ちはわかるけどねー。吉野、アンタはハイスペック男子だったんだねー」

「森川……では、俺の責任だな」

「え!?ち、違うよ!冬馬君は悪くないよ!わ、私が……カッコイイなって思って、見とれちゃっただけなの……」

「相変わらず、可愛い奴だな……俺の彼女は」

 俺は綾の足と肩に手を回し、ゆっくりと持ち上げる。

「え?ひゃあ!?と、冬馬君!?」

「「「キャーーー!!!」」」

「いいから、首に手を回しな……よし、しっかり掴まってろ」

「あら……綾、良いわね。お姫様抱っこだなんて……憧れよね」

「ヒュー、やるじゃん!」

「真司さん!俺、保健室行ってきます!」

「あいよ!」



 俺はゆっくりと、保健室へ向かう。

「と、冬馬君……ご、ごめんなさい……」

「気にするな。むしろ、役得だ」

「えぇ!?そ、そ、そんなこと……お、重くない?」

「逆に軽すぎるくらいだ。俺の方こそ、ごめんな?綾の前で、カッコつけたかったんだよ」

「あ、え、そ、そうなんだ……か、カッコ良かったです……と、とっても……」

 綾の頬が赤くなる……可愛いな、おい。
 ……あー、ダメだ。
 これはダメだ。
 授業中だから、人はいない……よし。

「と、冬馬君……?ッーー!んっ……」

「すまん、我慢できなかった」

「キ、キスされちゃった……学校なのに……は、恥ずかしいよぉ……」

 ……もう一度したくなるな。

 ……だか、自重するとしよう。

 いや……すでに、自重できてないか……?

 ……まあ、いいか。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

劣等生のハイランカー

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:234pt お気に入り:201

不死王はスローライフを希望します

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:31,101pt お気に入り:17,429

アラフォー料理人が始める異世界スローライフ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,706pt お気に入り:3,094

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:1,107pt お気に入り:982

ダンジョン美食倶楽部

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:198pt お気に入り:505

処理中です...