静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

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それぞれの未来へ

作戦会議

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 それから一週間が過ぎ……終業式の日を迎える。

「おい、お前ら。ある意味で最後の冬休みだからって羽目を外すなよ? こっからの行動は内申点に影響されるからな。補導てもされてみろ、これまで頑張ってきたものはパァだぜ」

 まあ、来年は受験生だからな。
 実質、高校生活最後の冬休みってことか。

「不純性異性行為とかな?」

 真兄は、博と黒野を睨みつけている。

「は、はいっ!」

「も、もう」

 クラスの皆は、どうしたんだ?という表情を浮かべていた。
 おそらく、俺と綾以外には。





 その帰り道、やはり話題となった。

「ふふ、先生ったら」

「博のやつ、完全にびびってたぞ」

「でも、無理もないよね」

「まあ、俺が真兄の立場なら……ハァ」

「もう! 元気出して!」

 綾には電話で話してある。
 啓介がうちに来て、妹と良い感じになっていたということを。

「しかし……」

「そ、それに……ここに可愛い彼女がいるんですけど?」

 そう言い、腕を絡めてくる。

「珍しいな?」

「えへへ、ダメかな?」

「いや、可愛い。そうだな、自分が彼女とイチャイチャしてるのに、それを人にダメだというのはいけないな。真兄にも言ってやろう」

「弥生さんと上手くいってるみたいだよ?」

「そうなのか? なんか、昔から女の扱いは上手くないイメージだが……」

「それが良いって」

「なるほど……まあ、弥生さんはモテただろうしな」

「むぅ……」

「いや、今のは一般論ですから。だから、これ以上押し付けないでください」

「えへへ、冬馬君可愛い!」

「勘弁してくれ……」

 だがまあ……綾になら翻弄されるのも悪くないと思うのだった。





 折角なので、そのままデートという流れになる。

 というよりは、作戦会議いうか、例の日についてとか。

 ひとまず、久々に喫茶店アイルに入ることにする。

「おや、いらっしゃいませ」

「マスター、ご無沙汰してます」

「こんにちは」

「いえいえ、来たいときに来てくだされば良いのですよ」

「ありがとうございます」

 こう言ってもらえると、こちらとしても楽だよなぁ。
 俺も教師を目指す以上、こういう余裕もつけていかないと。



 注文を済ませたら、話し合いである。

「えっと、ク、クリスマスは一緒にいられるんだよね?」

「お、おう」

 二人して、なんだが気恥ずかしくなってしまう。

「あと、 一週間もないもんね。ど、どうしよう? 何をしよう?」

「ずっと考えてはいたんだけどなぁ。遊園地はこの間も行ったし、ボウリングやカラオケとかは普段から行ってるし……」

「それでも楽しいよ?クリスマスに一緒にいられるなら、なんだって特別だもん」

「綾……そうだな。クリスマスだからって、何か特別なことをしなくちゃいけないわけじゃないか」

「あ、あの、その、クリスマスは……」

 小声で恥ずかそうにしている……ああ、そういうことか。

「安心?していい。その日は、そういうことはしないから。まあ、普通のカップルで言えばタイミングが良いっていうんだろうが」

「そ、そうだね!」

「とりあえず、綾のお父さんに挨拶してからだな。でないと、堂々と会えない」

「冬馬君……えへへ」

「うむ、良き男になりましたな」

「マスター、そうですかね……」

「ええ、今時の若者には珍しいタイプでしょう。もちろん、お嬢さんも。それがかえって良いのですね。まるで、昭和のカップルのようです」

「「なるほど……」」

 妙に納得させられる話だった。
 確かに、俺と綾は今時っぽくないかも。

「おやおや、息ピッタリですな。邪魔をして申し訳ないですね、ではごゆっくりどうぞ」

 紅茶とケーキをおいて、マスターが去っていく。

「さて、いただくとするか」

「うん!」

 二人で紅茶を飲む。

「「ふぅ……」」

「「あっ——」」

「やれやれ……」

「えへへ……」

 綾との時間は楽しいし、ドキドキする。
 しかしそれ以上に、安らぎを感じる。

「じゃあ、特に決めなくてもいいか?」

「うん……あっ——」

「うん? どうした?」

「やっ、やっぱり遊園地でも良い? 」

「良いけど……何処のだ?」

「その、初めてのデートといいますか、冬馬君が告白してくれた場所……」

 確か、浴衣姿で花火を見た場所か……。

「なるほど、あそこか。そういや、アトラクションは乗ってなかったな。じゃあ、そこに行くとするかね」

「うんっ!」

「あとは、親父さんに挨拶か」

「確か、年末の30日に帰ってくるって。それで、五日に戻るって……いつにするの?」

「そうだな……一月の二日か三日が良いか。許可を得るために、とりあえず綾と……いや、良いか」

「な、なぁに?」

「いや、あんまり作戦会議しても嘘くさくなるかなと。自然に構えて、そのままの状態を見せれば良いかも」

「うーん……そうかも。つ、つまり、イチャイチャすれば良いってこと?」

「いや、逆じゃね? そんなことしたら、俺は生きて帰れる自信がないぞ?」

「うぅ……どうしよう? わたし、テンパっちゃうよぉ」

「安心しろ。とりあえず、俺が話すから。その、あれだ、認めてくれるまで何度でも」

「えへへ、嬉しい……」

 アブナイアブナイ……危うく、作戦が漏れるところだった。

 よし……覚悟を決めろ。

 勝負は、クリスマスの当日だ。
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