アラサー独身の俺が義妹を預かることになった件~俺と義妹が本当の家族になるまで~

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一章 義妹を預かる

失敗とこれから

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翌朝……何かの匂いで意識が目覚める。

なんだ……焦げ臭い……?

……まさかっ! 厨房の火をつけっぱなしか!?

 ……いや! 昨日は定休日だっ! 使っていないはず!

……あん? なんで定休日にしたんだ?

「……そうだっ!」

二人の娘を預かったんだった!
俺は急いで部屋を出る!

「煙くさっ!? 春香! 詩織! 無事か!?」

焦げ臭い臭いが部屋中に溢れている。

「お、お兄ちゃん!?」
 
「お前何を……いや、まずは止めなくては」

換気扇を全開にして、窓を開ける。
そして……目には入っていたが、あえて見ないふりをしていたものを直視する。
黒焦げになった何かを……。

「さて……説明をしてもらおうか?」

「あぅぅ……ごめんなさぃ……」

「俺は謝れと言っているんじゃない。説明をしてくれと言ってる」

ここは厳しくしないといけない。
火の扱いを誤ると大変なことになる。

「あ、あの……朝ごはんを作ろうとして……これからお世話になるから……」

「ふんふん……昨日、俺に言ったか?」

「う、ううん……驚かせようと思って……」

「まあ、驚いたがな……違う意味で」

「よ、喜んでくれるかなって……お兄ちゃん、ごめんなさい」

すっかり落ち込んでしまったな……。
やれやれ……叱るのはこのくらいにしておくか。

「ほら、片付けるぞ」

「えっ? お、怒ってないの?」

「怒ってはない、ただ心配しただけだ。お前に何かあったら俺は困る」

「お兄ちゃん……ごめんなさい」

何かあったら兄貴に殺されちゃう。
それに……人のことを言えたもんじゃないしな。



ひとまず片付け終わる。
幸い、まだ序盤だったので被害は少なかった。
……ほんと、気がついてよかったよ。

「次からは気をつけろよ?」
  
「えっ?  ……次もして良いの?」

「ん? もう嫌になったか?」

「う、ううん! そうじゃなくて……失敗しちゃったし、勝手にやっちゃったから」

「それくらい誰にでもあることだ。それに、俺のために作ろうとしたんだろう?」

「う、うん」

「その気持ちが嬉しいしな。朝早く起きて大変だったろ? ありがとな、春香」

下を向いてしまっている頭を優しく撫でる。

「うぅ~……なんで褒めるの? わたし、全然ダメだったのに……」

「そうだな……とあるところに、料理が下手な少年がいました」

「へっ?」

「まあ、聞けよ……その少年は育ててくれる人に恩返しがしたかった。しかし、幼い少年はその方法がわからない。そして、ある時気づきます。あっ、料理が大変だって毎日言ってると……」

「それって……」

「少年はその人達を驚かせようと、黙って料理をしました。その結果、少し失敗をしてしまいました。しかし、二人が怒ることはありませんでした。ただ、心配したこと。その気持ちが嬉しかったこと。唯一言われたことは……黙ってやったことだけを叱られましたとさ」

「今のって、お兄ちゃん……?」

「さあ、どうだかな? とある少年の話さ」

「ふふ……ありがとう、お兄ちゃん」

少し恥ずいが、これで元気が出るなら安いもんだ。
失敗は誰にでもあることだし、挑戦することは良いことだと思う。

「まあ……今回の失敗は黙ってやったことだ。俺がいる時間なら好きにやって良いさ」

「うんっ!」

「俺が教えるか?」

「えっ?……もう少し頑張っても良い……?」

「ああ、もちろんだ。本も置いてあるから好きに使うと良い。ただし、なるべく食材を無駄にしないように。それは農家の方が一生懸命作ったものだからだ」

「昨日あった人みたいな?」

「ああ、そうだ。朝早く起きて収穫をして、開店前までに品出しをする」

そういったことを知ると、食材に対する考えが変わる。
無駄にしないように心がけるし、料理にも美味しくしようと熱が入る。

「そっかぁ……うん、気をつけます」

「なら良し。ほら、教えないから見ていると良い」

時計を見れば七時を過ぎていた。

俺は手早く味噌汁、卵焼き、焼き魚、サラダ、お米を準備していく。

「へっ? は、早い……」

「おいおい、俺は料理人だぞ?」

「でも、イタリアンだって」

「料理人は全てに通ずるってな。基本はどれも似たようなものだ。やる順番と、効率化が大事になってくるな」

「そうだよね、朝の時間って少ないもんね……」

「ほら、詩織を起こしてくれ」

「あっ、うん」


俺はその間にテーブルの上に料理や飲み物を置いていく。

「おじたん! おはようごじゃいます!」

「ああ、おはよう。ただ、ございますだ」

「ご、ございます……?」

「そうだ、偉いぞ。もう五歳だからな、そろそろ覚えような」

言えたのできちんと頭を撫でて褒めてあげる。

「きゃはー」

舌足らずも可愛いが、それは大人のエゴに過ぎん。
しっかりと教えていかないといけない。

「えへへ……お兄ちゃん、意外と良いパパになりそう」

「そうか? いまいちピンとこないが……だとしたら、俺を育てた人が良かったんだろう」

家を出て、社会人になり、大人になって気づいた。
若いのに礼儀正しいし、しっかりした人だねとか。
優しくて頼りになる人だねとか。
しかし、それは俺のおかげではない。
 そうなるように育ててくれた、兄貴と桜さんのおかげだ。

「じゃあ……わ、私も良いママになれるかな?」

「あん? そりゃ……とりあえず、料理を覚えてからだな」

「うぅー……でも、言い返せないよぉ」

「おねえたん? どしたのー?」

「詩織、お姉ちゃんはな……」

「お、お兄ちゃんのばかぁ——!」

その後、なんとか機嫌を取り食事をとる。

相変わらず、思春期の子の扱いはよくわからん。
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