反逆の英雄譚~愛する幼馴染が処刑されそうだったので国を捨てることにした~

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一章

蹂躙

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 俺は馬に跨りながら、背中から二本の剣を抜く。
    片方はアロンダイトといい、特殊な鉱石で出来た幅のある大剣で、斬れ味はないが折れず錆びずという一振りだ。
  もう片方をアスカロンといい、クレイモアタイプの剣で斬れ味抜群の一振りだ。
 両方とも、ムーンライト辺境伯から頂いたものだ。
 これがあったから、俺は戦場で生き抜いてこられた……本当に、感謝しかない。
 そして、この剣でカグヤを助けてみせる。

「おい!?  貴様、何をしている!?」

「剣をしまえ!」

「邪魔だっ!」

 俺は二つの剣で、それぞれの首を落とす。
 首から血が噴き出し、倒れる。

「おい!? 何を……兵を集めろ! 反逆者だ!」

「こっちだ!」

 天幕から、ぞろぞろと兵士達が出てくる。
 だが、こいつらは俺らを使い捨てにしてきた高位貴族達だ。
 遠慮なく殺せる……もう、我慢する必要はない。

「良いだろう、血祭りにしてくれる」

 俺は二本の剣で、兵士達を蹂躙していく。

「や、やめ——ギァァァ!?」

「お、俺は伯爵子息だぞ!?  だから、や、やめてくれ——ゴフッ」

「こいつ白き虎!? 俺は降参する! だか——グフッ」

「知らん。貴様らは兵士達の頼みを聞いたことがあるか?  家族に会いたいという些細な願いを断り、怪我をした兵士の治療を断り……更に、もう戦いたくないという兵士を斬り殺す。そんな奴らが……救いを求めるんじゃない!!」

 俺の喝に歩兵達が動揺する中、フードを着た連中がやってくる。
 後衛であり、俺たち味方を敵ごと焼き払うクソッタレな魔法部隊だ。

「魔法部隊が来たぞ!  やってしまえ!」

「ファイアーボール!」

「ウインドカッター!」

「ロックキャノン!」

 火の玉と、風の刃、岩の塊が同時に飛んでくる。
   俺は魔力を体内で溜めて放出する。

「ハッ!」

 それにより、魔法は俺に当たる前に破壊される。
    俺には魔法を飛ばす能力や属性はないが、魔力だけは多いのでこういう特殊なことができる、
   
「なに!?  魔法を消し飛ばすほどの魔力放出!?」

「こ、こいつ魔法殺しのクロウです!」

「その二つ名持ち……白き虎か!」

 こいつらは前線のことなど気にかけない。
 だから、俺の顔もよく知らないのだろう。
    そんな中、指揮官らしき男が指示を出す。

「遠距離から仕留めろ! 弓部隊と魔法部隊で攻めろ! あいつとて、魔力は無限ではない!」

「良い判断と言いたいところだが——魔刃剣!」

 魔力の斬撃が飛び、後衛部隊を切り裂いていく。

「ァァァァァ!?」

「ガァ!?」

「悪く思うなよ——俺の前に出た不幸を呪え」

 俺は激情に身を任せ、兵士共を蹂躙する。
 すでに殺した数はわからないが、俺の全身は血まみれになっていた。
    本来なら、このまま駆け抜けるべきだが……そのままとある場所に進んでいく。

 「どうしても、許せない奴がいる」

 どうせ、奴は一番奥にいるのだろう。

 どっちにしろ王都への通り道だ……アークライト辺境伯、覚悟しろ。
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