反逆の英雄譚~愛する幼馴染が処刑されそうだったので国を捨てることにした~

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一章

カグヤ視点

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 何故、私は処刑されようとしているのだろう?

   処刑台の上で、走馬灯のようにこれまでの人生が流れてくる。

 私は十二歳の時、この国の皇太子の婚約者に選ばれた。

 辺境から王都に行き、私の生活は一変した。

 知らない場所で生活をし、来る日も来る日もお稽古や勉強。

 家族もいない、味方もいないところでたった一人で。

 それでも、その時はまだ良かった。

 婚約を決めた皇太子のお爺様が亡くなった時、また生活が変わり始めた。

 カイル皇太子は、小言を言う私を煙たがり、避けるようになる。

 周りの女性には『皇太子に意見なんて生意気よ!』とか『これだから辺境の娘は野蛮なのよ!』とか言われるようになった。

 しかしカイル皇太子は、一度も庇わない。

 それをいいことに、エスカレートしていく罵詈雑言の数々。

 それにより、すり減らされていく私の精神。

 私は間違ったことは言っていないのに……なんで国を良くしようとしないの?

 貴方達が少し贅沢を我慢するだけで、何十万という民が救われるのに……。

 この帝都はまだいい……でも、辺境の人々は飢えに苦しんでいる。

 それどころか、この国を命がけで守っている兵士に、補給などを渋る始末。

 彼らがいるから、私達が毎日無事に生活できることが、何故理解できないのかしら?

 これでは、お父様に顔向けができない。

   それに好きだったクロウにも……あんな啖呵をきってまで、ここまできたのに。

 お父様は最後まで反対してた。

 私が犠牲になることはないと。

 でも、私は変えたかった。

 北や東の人々は海に面している。

 そのために、水や食料が豊富にある。  

 それらを独占し、帝都の人々と共に贅沢をしている。

 それなのに国を守る南や西の辺境には、頑としてそれらを渡さない。

 私は、それをどうにかしたかった。

 そんな時、心が折れそうな私を救ったのはある男の人だった。

 その人の名前はクロウ、私の大事な幼馴染。

 私が帝都に来た後も彼は稽古に励み、西の国境へ向かったとお父様からの手紙に書いてあった。

 そして厳しい戦いを生き抜き、西の守護者にして白き虎と呼ばれるようになったと。

 私はそれを聞いた時に決めた。

 あのクロウが頑張ってるのに、私が泣き言を言ってはいられないと。

……それなのに、いつの間にか皇太子暗殺の濡れ衣を着せられた。

そして、今……私は処刑台の上にいる。





 でも、私は死ななかった。

 何故なら、クロウが助けてくれたから……私の初恋の人で、ずっと好きだった人。

 でも、私はクロウよりも国を優先した。

 そんな薄情な私を、クロウは命がけで救いに来てくれた。

 私のために強くなったって……私のために国境を守っていたって。

 嬉しい……でも、私にはその資格がない。

 婚約破棄されて処刑されそうだった、こんな女ではクロウに相応しくないもの。

 だってクロウはとっても強くて、とってもカッコいい。

 私なんかじゃ、釣り合わないわ……。

   でも、今だけはこうして甘えさせてもらってもいいかな?

   そして、この恩は絶対に忘れないと心に誓った。
   



 
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