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二章
探索
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一体どういうことだろうか?
そもそも、俺は名乗ってもいないのだが。
となると、ゼノさんが絡んでいるのかもしれない。
「これは、どういうことですか?」
「えっと……」
「私が説明しましょう」
すると、受付の後ろから男性が現れる。
シュッとした体型で、平凡な容姿をもつ三十代くらいの方だ。
「そちらのお嬢さんと、こちらへきて頂けますか?」
「……わかりました」
「なんだろう?」
「安心していい、嫌な感じはしない」
「クロウが言うなら安心ね」
これは狙った以上の効果が現れたのかもしれない。
手っ取り早く、足場作りができるか。
そのまま受付横を通り、奥の個室に通される。
すると部屋に入るなり、相手が頭を下げてくる。
「まずは、感謝を。無償で、この都市を守る手助けをしてくださったとか」
「いえ、人として当然のことをしたまでです。これからお世話になる都市ですから。
それに、お礼はとある人から頂きました」
「ふむ……この国は割と寛容です。他国からの流れ者や、追放された者達もいます。なので、貴方達の素性は問いません。ただ、犯罪を犯せば普通に処罰はされるのでご注意を。貴方が活躍してくれるなら多少のことには目を瞑りますし、貴方達が一方的に悪いわけではないなら問題にはいたしません」
やはり、ここに来て正解だった。
噂には聞いていたが、そういう土地柄のようだ。
俺の力では、どうせ目立つのは避けられない。
だったら、最初から力を見せた方がいいと思ったが……上手くいったか。
「わかりました、助かります。それで鋼等級なのは、ゼトさんのおかげですか」
「強い上に、頭の回転も悪くないようですね。ええ、貴方のことはゼトから聞いています。とんでもない新人が現れたと」
「それで、いきなり鋼等級なのですか?」
「ええ、鋼等級からでないと魔の森の中には入れませんから」
……つまりは、そういうことか。
俺に魔の森に入って欲しいと。
「では、その付近の依頼を受けるとしましょう」
「話が早くて助かりますな。幸い、あの近辺の依頼料は高いので……駆け落ちには金がいるだろうと、ゼトは言っていましたね」
「か、駆け落ち……! でも、でも、結果的に……?」
その言葉に、ガクヤが両頬に手を当てて恥ずかしがる。
……うむ、眼福である。
「いやはや、可愛らしい恋人でいいですね」
「ええ、とても可愛いです。なるほど、そういう決まりがあるのですね。ゼトさんには、お礼をしなくては」
隣を見ると、今度はカグヤが両手をパタパタさせている。
うむ、眼福……我ながら語彙力が死んでるな。
「それに関しては気にしなくてよいと、ゼトからの伝言です。都市を守る手伝いをしてくれたらチャラだ、と伝えておけと」
「それなら問題ありません。しばらくお世話になる都市ですから」
「それでは、これからよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
話を終えたら受付に戻って、カグヤのギルドカードも作る。
当然、名無しなのでまだ冒険者ですらない状態だ。
正式になるためには、名無しの欄に貼ってある依頼を三つこなす必要があるとか。
そのような説明を聞いてから、実際に依頼が貼ってある掲示板を眺める。
「名無しの欄には薬草採取、荷物の整理や運搬、都市の清掃、ゴブリン退治……私にもできることはあるかしら? 清掃とか採取とか?」
「そうだな、採取がいいんじゃないか? それなら、俺の依頼のついでに採れるだろう」
「あっ、クロウの討伐依頼の時に採取すればいいのね……でも、それってズルくはないかしら?」
相変わらず、こういうところがある。
辺境伯令嬢として生まれたが、民が貧しい生活してるのに自分がこんな生活をしてて良いのかとか言ってたな。
それは上に立つ者としては、個人的には必須だと思う。
「そんなことはないさ。パーティーで協力するようなものだ……それに、二人で協力して生活するんだろう? もしずるいと思うなら、カグヤにしかできないことをすれば良い」
「そうよね……卑屈なっても仕方ないし、私にできることをするわ 。その……た、頼りにしてるわよ?」
「ああ、任せろ。カグヤに頼られることは、俺にとって至上の喜びだ」
「もう!大袈裟なんだから!」
そう言い、俺の肩をバシバシと叩く。
なんだか、そんなことがとても楽しく感じるのだった。
結局俺自身はお試しで鉄等級の討伐依頼書と、カグヤは採取依頼書を受付に持っていく。
「はい、受注いたしました。一週間以上経つと、自動的に失敗となりますのでご注意ください。三回失敗すると降格、名無しの場合は剥奪となりますのでご注意を」
「なるほど、わかりやすいシステムですね。名無しを何回も失敗するようなら、そもそも向いていないと」
「ええ、おっしゃる通りです。では、お気をつけて」
「ありがとうございます。カグヤ、行こうか」
二人でお礼をし、冒険者ギルドから出る。
すると、カグヤが深く息を吐く。
「うー、緊張してきた……でも、少しワクワクもしてるかも……?」
「実は俺もだ。少し、昔を思い出すからか。なんというか、初めての冒険というか」
「そうなの! そういえば、小さい頃はクロウと冒険したわよね。それで、エリゼに叱られるの」
「いや、カグヤは叱られてないから。叱られ……殺されかけたの俺だけだ」
「あれーそうだったかしら? ……えへへ」
馬を一頭借りて、二人乗りで魔の森に向かう。
一時間ほどかけて、無事に魔の森付近に到着する。
随分と都市に近いと思うが、それは敢えてということか。
道中には砦がいくつかあったし、 魔の森付近には見張り台がいくつもある
これなら、すぐにでも対応ができるだろう。
そんな中俺達は、見張り台近くにある冒険者専用の馬小屋に馬を預ける。
「さて、馬小屋があるのは助かったな」
「ええ、そうね。これで、探索に集中できるわ」
「それじゃ、早速行ってみよう」
そして、いざ森の付近を歩くと……カグヤが思いのほか順調に採取をする。
自分にできることがあるのが嬉しいのか、随分とはしゃいでいる。
「あったわ! 確か、この薬草よ!あの頃、勉強していたからわかるわ!」
「ほらな? やってて無駄なことなんかないだろう?」
「クロウ……うん! そうよね!」
「おうよ。さて……俺はレッサーウルフが五匹か」
ドック系の下位の魔物だ。
五匹ほどで群れを作り、新人冒険者の死亡率が高いらしい。
四足歩行系の魔物は下位でも少しは頭が回る。
連携を取るので、調子に乗った新人がやられるということらしい。
「クロウ! あっちから何かくるわ!」
「来たか……だが所詮は下位、敵との力量差はわからんか」
俺は魔物討伐の経験は少ない。
特に四足歩行系はこの辺りにしかいないので、初めての経験だ。
俺はカグヤの前に立ち、アスカロンを下段に構える。
「ク、クロウ!? ち、近づいてくるわ!?」
「安心しろ。さて、数が多いヤツにはこれでいくか……」
「ガウッ!!」
「ガルルル!」
よし、間合いに入った。
俺は地面すれすれのところで、逆袈裟にアスカロンを振るう。
「散・魔刃剣!」
俺の放った一つの斬撃は、途中で枝分かれして飛んでいく。
これなら威力も低いが、広範囲に広がる。
「ゲヒィ!?」
「バヘェ!?」
迫ってきていた五匹を、一刀のもとに始末する。
バラバラにしてしまったので、依頼証明書を取るのが大変そうだ。
ちなみに依頼証明書は、倒した魔物の指定の部位を持ち帰ることだ。
「フゥ……相変わらず、調整がむずかしいな。もう少し、魔力を減らしても良かったか」
「す、すごい! 一発で全部倒しちゃった!」
「まあ、あのくらいなら。この技は一対多数の時に使う技なのだが、威力調整が難しい。下手をすると、味方を巻き込んでしまう。俺も、まだまだ修行をしなくては」
味方か……そういえば、アイツらは元気でやっているだろうか?
奴らには、俺の都合に付き合わせてしまった。
皆、無事でいるといいのだが……。
そもそも、俺は名乗ってもいないのだが。
となると、ゼノさんが絡んでいるのかもしれない。
「これは、どういうことですか?」
「えっと……」
「私が説明しましょう」
すると、受付の後ろから男性が現れる。
シュッとした体型で、平凡な容姿をもつ三十代くらいの方だ。
「そちらのお嬢さんと、こちらへきて頂けますか?」
「……わかりました」
「なんだろう?」
「安心していい、嫌な感じはしない」
「クロウが言うなら安心ね」
これは狙った以上の効果が現れたのかもしれない。
手っ取り早く、足場作りができるか。
そのまま受付横を通り、奥の個室に通される。
すると部屋に入るなり、相手が頭を下げてくる。
「まずは、感謝を。無償で、この都市を守る手助けをしてくださったとか」
「いえ、人として当然のことをしたまでです。これからお世話になる都市ですから。
それに、お礼はとある人から頂きました」
「ふむ……この国は割と寛容です。他国からの流れ者や、追放された者達もいます。なので、貴方達の素性は問いません。ただ、犯罪を犯せば普通に処罰はされるのでご注意を。貴方が活躍してくれるなら多少のことには目を瞑りますし、貴方達が一方的に悪いわけではないなら問題にはいたしません」
やはり、ここに来て正解だった。
噂には聞いていたが、そういう土地柄のようだ。
俺の力では、どうせ目立つのは避けられない。
だったら、最初から力を見せた方がいいと思ったが……上手くいったか。
「わかりました、助かります。それで鋼等級なのは、ゼトさんのおかげですか」
「強い上に、頭の回転も悪くないようですね。ええ、貴方のことはゼトから聞いています。とんでもない新人が現れたと」
「それで、いきなり鋼等級なのですか?」
「ええ、鋼等級からでないと魔の森の中には入れませんから」
……つまりは、そういうことか。
俺に魔の森に入って欲しいと。
「では、その付近の依頼を受けるとしましょう」
「話が早くて助かりますな。幸い、あの近辺の依頼料は高いので……駆け落ちには金がいるだろうと、ゼトは言っていましたね」
「か、駆け落ち……! でも、でも、結果的に……?」
その言葉に、ガクヤが両頬に手を当てて恥ずかしがる。
……うむ、眼福である。
「いやはや、可愛らしい恋人でいいですね」
「ええ、とても可愛いです。なるほど、そういう決まりがあるのですね。ゼトさんには、お礼をしなくては」
隣を見ると、今度はカグヤが両手をパタパタさせている。
うむ、眼福……我ながら語彙力が死んでるな。
「それに関しては気にしなくてよいと、ゼトからの伝言です。都市を守る手伝いをしてくれたらチャラだ、と伝えておけと」
「それなら問題ありません。しばらくお世話になる都市ですから」
「それでは、これからよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
話を終えたら受付に戻って、カグヤのギルドカードも作る。
当然、名無しなのでまだ冒険者ですらない状態だ。
正式になるためには、名無しの欄に貼ってある依頼を三つこなす必要があるとか。
そのような説明を聞いてから、実際に依頼が貼ってある掲示板を眺める。
「名無しの欄には薬草採取、荷物の整理や運搬、都市の清掃、ゴブリン退治……私にもできることはあるかしら? 清掃とか採取とか?」
「そうだな、採取がいいんじゃないか? それなら、俺の依頼のついでに採れるだろう」
「あっ、クロウの討伐依頼の時に採取すればいいのね……でも、それってズルくはないかしら?」
相変わらず、こういうところがある。
辺境伯令嬢として生まれたが、民が貧しい生活してるのに自分がこんな生活をしてて良いのかとか言ってたな。
それは上に立つ者としては、個人的には必須だと思う。
「そんなことはないさ。パーティーで協力するようなものだ……それに、二人で協力して生活するんだろう? もしずるいと思うなら、カグヤにしかできないことをすれば良い」
「そうよね……卑屈なっても仕方ないし、私にできることをするわ 。その……た、頼りにしてるわよ?」
「ああ、任せろ。カグヤに頼られることは、俺にとって至上の喜びだ」
「もう!大袈裟なんだから!」
そう言い、俺の肩をバシバシと叩く。
なんだか、そんなことがとても楽しく感じるのだった。
結局俺自身はお試しで鉄等級の討伐依頼書と、カグヤは採取依頼書を受付に持っていく。
「はい、受注いたしました。一週間以上経つと、自動的に失敗となりますのでご注意ください。三回失敗すると降格、名無しの場合は剥奪となりますのでご注意を」
「なるほど、わかりやすいシステムですね。名無しを何回も失敗するようなら、そもそも向いていないと」
「ええ、おっしゃる通りです。では、お気をつけて」
「ありがとうございます。カグヤ、行こうか」
二人でお礼をし、冒険者ギルドから出る。
すると、カグヤが深く息を吐く。
「うー、緊張してきた……でも、少しワクワクもしてるかも……?」
「実は俺もだ。少し、昔を思い出すからか。なんというか、初めての冒険というか」
「そうなの! そういえば、小さい頃はクロウと冒険したわよね。それで、エリゼに叱られるの」
「いや、カグヤは叱られてないから。叱られ……殺されかけたの俺だけだ」
「あれーそうだったかしら? ……えへへ」
馬を一頭借りて、二人乗りで魔の森に向かう。
一時間ほどかけて、無事に魔の森付近に到着する。
随分と都市に近いと思うが、それは敢えてということか。
道中には砦がいくつかあったし、 魔の森付近には見張り台がいくつもある
これなら、すぐにでも対応ができるだろう。
そんな中俺達は、見張り台近くにある冒険者専用の馬小屋に馬を預ける。
「さて、馬小屋があるのは助かったな」
「ええ、そうね。これで、探索に集中できるわ」
「それじゃ、早速行ってみよう」
そして、いざ森の付近を歩くと……カグヤが思いのほか順調に採取をする。
自分にできることがあるのが嬉しいのか、随分とはしゃいでいる。
「あったわ! 確か、この薬草よ!あの頃、勉強していたからわかるわ!」
「ほらな? やってて無駄なことなんかないだろう?」
「クロウ……うん! そうよね!」
「おうよ。さて……俺はレッサーウルフが五匹か」
ドック系の下位の魔物だ。
五匹ほどで群れを作り、新人冒険者の死亡率が高いらしい。
四足歩行系の魔物は下位でも少しは頭が回る。
連携を取るので、調子に乗った新人がやられるということらしい。
「クロウ! あっちから何かくるわ!」
「来たか……だが所詮は下位、敵との力量差はわからんか」
俺は魔物討伐の経験は少ない。
特に四足歩行系はこの辺りにしかいないので、初めての経験だ。
俺はカグヤの前に立ち、アスカロンを下段に構える。
「ク、クロウ!? ち、近づいてくるわ!?」
「安心しろ。さて、数が多いヤツにはこれでいくか……」
「ガウッ!!」
「ガルルル!」
よし、間合いに入った。
俺は地面すれすれのところで、逆袈裟にアスカロンを振るう。
「散・魔刃剣!」
俺の放った一つの斬撃は、途中で枝分かれして飛んでいく。
これなら威力も低いが、広範囲に広がる。
「ゲヒィ!?」
「バヘェ!?」
迫ってきていた五匹を、一刀のもとに始末する。
バラバラにしてしまったので、依頼証明書を取るのが大変そうだ。
ちなみに依頼証明書は、倒した魔物の指定の部位を持ち帰ることだ。
「フゥ……相変わらず、調整がむずかしいな。もう少し、魔力を減らしても良かったか」
「す、すごい! 一発で全部倒しちゃった!」
「まあ、あのくらいなら。この技は一対多数の時に使う技なのだが、威力調整が難しい。下手をすると、味方を巻き込んでしまう。俺も、まだまだ修行をしなくては」
味方か……そういえば、アイツらは元気でやっているだろうか?
奴らには、俺の都合に付き合わせてしまった。
皆、無事でいるといいのだが……。
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