反逆の英雄譚~愛する幼馴染が処刑されそうだったので国を捨てることにした~

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二章

冒険者登録

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 その後、朝食を済ませた俺は、宿の入り口近くにある共有スペースで紅茶を飲んでいる。

『お風呂に入ってくるからそこにいて!言っておくけれど、クロウがいるのが嫌だからじゃないからね!ただ、恥ずかしいだけなんだから!』と言われてしまったからだ。

    女性には風呂上がりにも支度があるらしい。

 「ふむ……女心とは、よくわからん。だが、好都合でもある」

 俺もシャワーの音とか聞こえたら、ドキドキしてしまう。
   湯上がり姿とか、冷静でいられるか。
 それに、これからのことを考えなくては。

 「まずは、追っ手が来るかどうか。そして、来るとしたらいつ頃か?」

 少なくとも、一週間くらいは平気だろう。
 その間に、体制を整えたいところだ。

「……そのためには、まずは金がいるな」

「クロウ、おまたせ」

 振り返ると、湯上りの美少女がいた。

「おう、カグヤ……うん、可愛いな」

「にゃ、にゃ……」

「くく、また猫がいるな」

 カグヤを下から上まで眺めてみる。
 普通の女の子が着るような、赤のワンピースを着ていた。
 いつも下ろしている紅髪を、ポニーテールにしている。
 ……うん、こういう格好も似合うな。

「う、うるさいわね!」

「はいはい、悪かったって。ところで、それどうしたんだ?」

「エリゼが持たせてくれたの。その方が溶け込めるって」

「俺が買おうと思っていたが、必要なかったか。感謝しなくてはな」

「あと、クロウにもあるわよ?  ほら、いくわよ!」

「はいはい、わかったよ」

 俺は、フリフリと揺れるポニーテールを眺めながら歩くのだが……超絶可愛い。
 まさか、俺がポニーテール好きって知ってのことか……まさかな、そんなわけない。
 部屋に入ると、そこには青を基調とする騎士服のようなものがあった。 

「これは相当良いものだな……エリゼが、これを俺に?」

「ええ、そうよ。エリゼが持っていた秘蔵品らしいわ。その効果は丈夫で破れにくく、自動修復されること。そのマントは、ドラゴンのブレスさえ軽減できるそうよ。エリゼが『照れ臭いので、お嬢様からお渡しください』って。あと……その……」

「いや、わかった。これをやるから、カグヤをきちんと守れということだな?」

 言わずとも、それくらいはわかる。
 カグヤを守ることに関しては妥協しない人だ。

「う、うん。それと『お嬢様に無理強いしたら殺す』って……」

「どういう意味だ?  俺が、そんなことをするわけがないだろうに」

「そ、そうよね! クロウは待っていてくれるわよね!」

「……よくわからんが、待つとも」

 相変わらず、女心はよくわからん。
 戦場にばかりいたからな……これから、学んでいかなくては。
   早速、着替えてみる。

「よく似合っているわ! か、格好良いと思う……」

「そうか、ありがとう。ほう、伸縮性にも優れているか。これなら、無茶な動きも可能だな」

「それで……これから、どうするの?」

 カグヤの問いに、先程考えていたことを思い出す。
 結論は変わらず、何よりもまずお金がいる。

「とりあえず、冒険者登録というものをしてみる。何をするにしても、稼がないことには始まらん」

「わ、私にもできるかしら……?」

「カグヤを危険な目に合わせたくないから、登録はしなくても……」

「そうしたら私、一人で待つの……? 私を置いていっちゃうの……?」

 そう言い、寂しそうに上目遣いをしてくる。
 それは反則だァァァァ!

「ク、クロウ……?  やっぱり、迷惑かな……」

「いや、そんなことはない。 そういう意味でなくてだな……心配だから側にいるに決まっている。ただ、冒険者登録はしなくてもいいかなということだ」

「私だって役に立ちたいわ。それにクロウがいれば、何があっても平気だもの……わ、私を守ってくれるのでしょう?」

 何ということだ、こんなに信頼してくれているとは。
 裏切るわけにはいかない……今まで以上に強くならなくては!

「わかった、安心してくれ。何があろうと、必ず守ってみせる」

「クロウ……うん!」

 話し合いも済んだので、カグヤを連れて街並みを歩く。

「わぁ……凄いわ! 人がいっぱいね!」

「人が多いのが珍しいのか? 王都では、どうしていたんだ?」

「んー……お稽古事とかお勉強とか、魔法の修行ばかりであまり出歩けなかったわ。一応皇太子妃候補だったから、外へ出してももらえなかったしね。それに友達もいないし、皇太子もアレだったから……」

「そうか……わかった。カグヤの行きたいところなら、何処へでもお供しよう」

「クロウ……そうね!クロウとならどこでも楽しいわ!」

 俺はその笑顔を見るだけで、心が温かい気持ちになる。
 そうだ……俺は、これが見たかったんだ。
 その後、冒険者ギルドの看板を掲げた建物を発見する。
 二階建ての建物で、割と敷地面積も広そうだ。

「ここが冒険者ギルドか」

「ド、ドキドキするわね」

 とりあえず、中に入ってみる。
 すると、

「さて……ほう? 意外と綺麗だな」

「そ、そうね。酒場みたいなものを想像してたわ」

「いや、帝国ならそれで合っている。ふむ、お国柄というやつかもしれん」

 中は割と広く、清潔感のある空間になっている。
 テーブルと椅子がいくつか置いてあり、人々が談笑している。
 騒がしくはあるが下品な感じではない。
 そのまま受付に向かい、女性に声をかける。

「すみません、少しよろしいでしょうか?」

「はい、なんでしょうか?」

「最近この都市に来まして、冒険者登録をしたいのですが……」

「もしかして、その出で立ち……申し訳ございません! 少々お待ち頂けますか!?」

「え、ええ、構いません」

 すると、女性が慌てて奥に行く。
 そのまま扉を開けて、中に入っていった。

「何かしら?」

「わからん」

「ねえねえ、この紙になにか書いてあるわ」

 暇なので二人でテーブルの上にある紙を覗き込む。

「なるほど……冒険者ランクというやつか」

 「えっと……上から順に、白銀等級、黄金等級、銀等級、鋼等級、銅等級、鉄等級、名無しとランクがあるのね」

「ああ、そうみたいだ。なになに……鋼等級まで行くと一人前と見なされ、それ以降はベテランの域となる。掲示板に貼ってある依頼をこなしたり、冒険者ギルドからの指定依頼などをするとランクが上がると……なるほど」

「じゃあ、クロウと私は名無しからってことね」

「そうなるな。ランクが上がれば報酬も増えるから、急いであげたいところだ」

 それを眺めていると、お姉さんが慌てて戻ってきた。
 その手には鋼色のカードがある。

「お、お待たせいたしました!こちらが貴方の冒険者カードです! ランクは鋼等級とます!」

「クロウ……名無しじゃないわね?」

 カードには、鋼等級という文字がある。

 一体、どういうことだ?
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