35 / 60
二章
宰相視点
しおりを挟む
私の名は、アルセリア-バーグ。
このベルモンド帝国の宰相にして、侯爵家の当主だ。
絶大な権力と、武力を行使できる存在である。
そう今なら……自分の望みが叶う。
「ようやく、ここまできた。ここまでくるのに長かったものよ……」
自国を追われて魔の森で迷い、死にそうになりながらもなんとか生き抜いた。
これも、私には使役魔法の才能があったからだ。
だから、魔の森でも生き残ることが出来た。
いや、魔の森で迷ったから開花したと言ってもいい。
とある古代遺跡にて、強力な使役魔法を覚えたのだ。
「それと、解読できない古文書もいくつか手に入れた。あれらをもっと解読できれば計画も前倒しに……いや、焦ってはなるまい」
私は誓った……私を追い出した奴らに復讐すると。
だが、そのためには力が必要だ。
所詮一人では、どうにもならない。
「なので、絶大な権力をもつアルセリア侯爵家に目をつけたというわけだ」
代々、多くの当主が宰相を務めていた。
まずは使役した魔物を使い、侯爵家家族が遠出をするという情報を得た。
五人家族で夫婦、長男次男、長女の家族だ。
そこを自分の魔物に襲わせて、自分が救出するという自作自演をした。
もちろん護衛の兵士や、当主以外の男は殺した。
「ただ、誤算だったのは魔の森で使役した魔物はほぼ全滅してしまった。流石は侯爵家の騎士達といったところか」
私は護衛達が全滅するのを待ち、そこで助けに入った。
そっからは簡単なことだ。
命の恩人ということで、すぐに気に入られた。
そしてうまく立ち回り、長女の婿となることができた。
「その後侯爵家を牛耳り、義理の親と嫁を事故死に見せかけて始末した」
産まれた娘は、母親に似て容姿が良かった。
こいつは使えそうなので、とっておくことにしたのだ。
「その後は侯爵家の力と、私の力で精力的に活動した」
邪魔になりそう奴の弱みを握り、場合によっては消していく。
この国では使役魔法がほとんど知られていないので、色々と容易である。
しかし……なんと平和ボケした国……いや、皇都だと思った。
自分達の平和が、当たり前にずっと続くと思っているようだ。
「……まあ、私はやりやすかったからいいがな」
ある程度時が経ち、私は古文書をある程度解読した。
そして歓喜した……この力が手に入れば、大陸の覇者にすらなれると。
「それで、まずは計画を立てることにした」
そのために、カイル皇子に取り入り、皇太子になれるように尽力した。
こいつが、一番扱いやすそうだった。
現皇帝は女にしか興味のない奴だから、こいつも扱いやすい。
そして、宰相まで上り詰める。
「だが、ここからが本番だった」
そう、まだ古文書の解読は完璧ではない。
目的の女であるカグヤ嬢を、近くで観察したい。
なので、耄碌した前皇帝に話を持っていった。
カグヤ嬢を、皇太子の婚約者にどうか?と。
辺境伯の裏切りを避けるためにもと。
「そして、計画通りにいった」
その後、ようやく解読をしたのだが……。
古文書によると、もっとも愛した者の死によって目覚めると書いてあった。
「どうする? 皇太子とは仲が悪いから、ありえない」
ただまだ幼いから、少し様子を見るとしよう。
さすがに私では、歳が違いすぎる。
最終的には、私のモノになってもらうがその前段階の話だ。
それから数年が経った。
カグヤ嬢は、相当真っ直ぐな性格のようだ。
「あれでは、皇太子とは相思相愛にはなるまい」
カグヤ嬢が愛した皇太子を、殺すという計画は見直しとなった。
そんな時だった……東の国境で、白い虎と呼ばれる男の噂が流れてきたのは。
私は気になり、色々と調べてみた。
そして、再び歓喜する。
「そうか! 生きていたのか!」
一時期仲の良い幼馴染がいたということは、情報として知ってはいた。
だが、追放後の足取りはわからなかった。
まるで、誰かが邪魔をしたように……なので、とっくに死んだと思っていた。
そして詳しく調べるうちに、色々な事実も発覚した。
「これは、本人が知っているか聞く必要がある」
よし、娘を利用してカグヤ嬢を死刑にもっていこう。
もちろん、実際にこなかった場合は、私の方で手は打っておく。
本当に死なせるわけにはいかないからな。
「そして、結果は大成功だった」
これで、東の国境の問題も解決した。
あとは、私の方でコントロールをしよう。
まだ、均衡を保たなくてはいけない。
「カグヤ嬢も、命がけで助けた幼馴染に悪い感情は持つまい」
うまくいけば、愛するかもしれん。
使役している鷹を使い、あとを追っていく。
すると、すぐに気づいた。
「……いや、すでに相思相愛だな」
これならいける……よし、計画を立てるとしよう。
フフフ、待っていろ……。
クロウ君……すまないが、私の計画のために死んでくれたまえ。
だというのに……何故だ!?
どこで間違えた!?
「ガァァァァァァァ!」
痛い! 痛い! 痛いィィィ!
目がァァァァ! 私の目がァァァァ!
「宰相様!? どうなさりましたか!?」
騒ぎを聞きつけ、護衛の騎士達がやってくる。
「ひ、光魔法を! 早くしろ!」
「はっ! ただ今、連れてまいります!」
お、おのれェェェェ!
だ、ただじゃすまんぞ……!
カグヤ嬢は、必ず手に入れる!
そしてクロウ、貴様だけは許さん……!
カグヤ嬢の前で四肢を斬り——惨たらしく殺してやろう!
このベルモンド帝国の宰相にして、侯爵家の当主だ。
絶大な権力と、武力を行使できる存在である。
そう今なら……自分の望みが叶う。
「ようやく、ここまできた。ここまでくるのに長かったものよ……」
自国を追われて魔の森で迷い、死にそうになりながらもなんとか生き抜いた。
これも、私には使役魔法の才能があったからだ。
だから、魔の森でも生き残ることが出来た。
いや、魔の森で迷ったから開花したと言ってもいい。
とある古代遺跡にて、強力な使役魔法を覚えたのだ。
「それと、解読できない古文書もいくつか手に入れた。あれらをもっと解読できれば計画も前倒しに……いや、焦ってはなるまい」
私は誓った……私を追い出した奴らに復讐すると。
だが、そのためには力が必要だ。
所詮一人では、どうにもならない。
「なので、絶大な権力をもつアルセリア侯爵家に目をつけたというわけだ」
代々、多くの当主が宰相を務めていた。
まずは使役した魔物を使い、侯爵家家族が遠出をするという情報を得た。
五人家族で夫婦、長男次男、長女の家族だ。
そこを自分の魔物に襲わせて、自分が救出するという自作自演をした。
もちろん護衛の兵士や、当主以外の男は殺した。
「ただ、誤算だったのは魔の森で使役した魔物はほぼ全滅してしまった。流石は侯爵家の騎士達といったところか」
私は護衛達が全滅するのを待ち、そこで助けに入った。
そっからは簡単なことだ。
命の恩人ということで、すぐに気に入られた。
そしてうまく立ち回り、長女の婿となることができた。
「その後侯爵家を牛耳り、義理の親と嫁を事故死に見せかけて始末した」
産まれた娘は、母親に似て容姿が良かった。
こいつは使えそうなので、とっておくことにしたのだ。
「その後は侯爵家の力と、私の力で精力的に活動した」
邪魔になりそう奴の弱みを握り、場合によっては消していく。
この国では使役魔法がほとんど知られていないので、色々と容易である。
しかし……なんと平和ボケした国……いや、皇都だと思った。
自分達の平和が、当たり前にずっと続くと思っているようだ。
「……まあ、私はやりやすかったからいいがな」
ある程度時が経ち、私は古文書をある程度解読した。
そして歓喜した……この力が手に入れば、大陸の覇者にすらなれると。
「それで、まずは計画を立てることにした」
そのために、カイル皇子に取り入り、皇太子になれるように尽力した。
こいつが、一番扱いやすそうだった。
現皇帝は女にしか興味のない奴だから、こいつも扱いやすい。
そして、宰相まで上り詰める。
「だが、ここからが本番だった」
そう、まだ古文書の解読は完璧ではない。
目的の女であるカグヤ嬢を、近くで観察したい。
なので、耄碌した前皇帝に話を持っていった。
カグヤ嬢を、皇太子の婚約者にどうか?と。
辺境伯の裏切りを避けるためにもと。
「そして、計画通りにいった」
その後、ようやく解読をしたのだが……。
古文書によると、もっとも愛した者の死によって目覚めると書いてあった。
「どうする? 皇太子とは仲が悪いから、ありえない」
ただまだ幼いから、少し様子を見るとしよう。
さすがに私では、歳が違いすぎる。
最終的には、私のモノになってもらうがその前段階の話だ。
それから数年が経った。
カグヤ嬢は、相当真っ直ぐな性格のようだ。
「あれでは、皇太子とは相思相愛にはなるまい」
カグヤ嬢が愛した皇太子を、殺すという計画は見直しとなった。
そんな時だった……東の国境で、白い虎と呼ばれる男の噂が流れてきたのは。
私は気になり、色々と調べてみた。
そして、再び歓喜する。
「そうか! 生きていたのか!」
一時期仲の良い幼馴染がいたということは、情報として知ってはいた。
だが、追放後の足取りはわからなかった。
まるで、誰かが邪魔をしたように……なので、とっくに死んだと思っていた。
そして詳しく調べるうちに、色々な事実も発覚した。
「これは、本人が知っているか聞く必要がある」
よし、娘を利用してカグヤ嬢を死刑にもっていこう。
もちろん、実際にこなかった場合は、私の方で手は打っておく。
本当に死なせるわけにはいかないからな。
「そして、結果は大成功だった」
これで、東の国境の問題も解決した。
あとは、私の方でコントロールをしよう。
まだ、均衡を保たなくてはいけない。
「カグヤ嬢も、命がけで助けた幼馴染に悪い感情は持つまい」
うまくいけば、愛するかもしれん。
使役している鷹を使い、あとを追っていく。
すると、すぐに気づいた。
「……いや、すでに相思相愛だな」
これならいける……よし、計画を立てるとしよう。
フフフ、待っていろ……。
クロウ君……すまないが、私の計画のために死んでくれたまえ。
だというのに……何故だ!?
どこで間違えた!?
「ガァァァァァァァ!」
痛い! 痛い! 痛いィィィ!
目がァァァァ! 私の目がァァァァ!
「宰相様!? どうなさりましたか!?」
騒ぎを聞きつけ、護衛の騎士達がやってくる。
「ひ、光魔法を! 早くしろ!」
「はっ! ただ今、連れてまいります!」
お、おのれェェェェ!
だ、ただじゃすまんぞ……!
カグヤ嬢は、必ず手に入れる!
そしてクロウ、貴様だけは許さん……!
カグヤ嬢の前で四肢を斬り——惨たらしく殺してやろう!
81
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる