反逆の英雄譚~愛する幼馴染が処刑されそうだったので国を捨てることにした~

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二章

宰相視点

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 私の名は、アルセリア-バーグ。

 このベルモンド帝国の宰相にして、侯爵家の当主だ。

 絶大な権力と、武力を行使できる存在である。

 そう今なら……自分の望みが叶う。

 「ようやく、ここまできた。ここまでくるのに長かったものよ……」

 自国を追われて魔の森で迷い、死にそうになりながらもなんとか生き抜いた。
 これも、私には使役魔法の才能があったからだ。
 だから、魔の森でも生き残ることが出来た。
 いや、魔の森で迷ったから開花したと言ってもいい。
 とある古代遺跡にて、強力な使役魔法を覚えたのだ。

「それと、解読できない古文書もいくつか手に入れた。あれらをもっと解読できれば計画も前倒しに……いや、焦ってはなるまい」

 私は誓った……私を追い出した奴らに復讐すると。
 だが、そのためには力が必要だ。
 所詮一人では、どうにもならない。

「なので、絶大な権力をもつアルセリア侯爵家に目をつけたというわけだ」

 代々、多くの当主が宰相を務めていた。
 まずは使役した魔物を使い、侯爵家家族が遠出をするという情報を得た。
 五人家族で夫婦、長男次男、長女の家族だ。
 そこを自分の魔物に襲わせて、自分が救出するという自作自演をした。
  もちろん護衛の兵士や、当主以外の男は殺した。

 「ただ、誤算だったのは魔の森で使役した魔物はほぼ全滅してしまった。流石は侯爵家の騎士達といったところか」

 私は護衛達が全滅するのを待ち、そこで助けに入った。
 そっからは簡単なことだ。
 命の恩人ということで、すぐに気に入られた。
 そしてうまく立ち回り、長女の婿となることができた。

 「その後侯爵家を牛耳り、義理の親と嫁を事故死に見せかけて始末した」

 産まれた娘は、母親に似て容姿が良かった。
 こいつは使えそうなので、とっておくことにしたのだ。
 
「その後は侯爵家の力と、私の力で精力的に活動した」

 邪魔になりそう奴の弱みを握り、場合によっては消していく。
 この国では使役魔法がほとんど知られていないので、色々と容易である。
 しかし……なんと平和ボケした国……いや、皇都だと思った。
 自分達の平和が、当たり前にずっと続くと思っているようだ。

 「……まあ、私はやりやすかったからいいがな」
 
 ある程度時が経ち、私は古文書をある程度解読した。
 そして歓喜した……この力が手に入れば、大陸の覇者にすらなれると。

 「それで、まずは計画を立てることにした」

 そのために、カイル皇子に取り入り、皇太子になれるように尽力した。
 こいつが、一番扱いやすそうだった。
 現皇帝は女にしか興味のない奴だから、こいつも扱いやすい。
 そして、宰相まで上り詰める。

「だが、ここからが本番だった」
  
 そう、まだ古文書の解読は完璧ではない。
 目的の女であるカグヤ嬢を、近くで観察したい。
 なので、耄碌した前皇帝に話を持っていった。
 カグヤ嬢を、皇太子の婚約者にどうか?と。
 辺境伯の裏切りを避けるためにもと。

 「そして、計画通りにいった」
 
 その後、ようやく解読をしたのだが……。
 古文書によると、もっとも愛した者の死によって目覚めると書いてあった。

「どうする? 皇太子とは仲が悪いから、ありえない」

 ただまだ幼いから、少し様子を見るとしよう。
 さすがに私では、歳が違いすぎる。
 最終的には、私のモノになってもらうがその前段階の話だ。





 それから数年が経った。
 カグヤ嬢は、相当真っ直ぐな性格のようだ。

 「あれでは、皇太子とは相思相愛にはなるまい」

 カグヤ嬢が愛した皇太子を、殺すという計画は見直しとなった。
 そんな時だった……東の国境で、白い虎と呼ばれる男の噂が流れてきたのは。
 私は気になり、色々と調べてみた。
 そして、再び歓喜する。

「そうか! 生きていたのか!」

 一時期仲の良い幼馴染がいたということは、情報として知ってはいた。
 だが、追放後の足取りはわからなかった。
 まるで、誰かが邪魔をしたように……なので、とっくに死んだと思っていた。
 そして詳しく調べるうちに、色々な事実も発覚した。

 「これは、本人が知っているか聞く必要がある」

 よし、娘を利用してカグヤ嬢を死刑にもっていこう。
 もちろん、実際にこなかった場合は、私の方で手は打っておく。
 本当に死なせるわけにはいかないからな。

 「そして、結果は大成功だった」

 これで、東の国境の問題も解決した。
 あとは、私の方でコントロールをしよう。
 まだ、均衡を保たなくてはいけない。
  
「カグヤ嬢も、命がけで助けた幼馴染に悪い感情は持つまい」

 うまくいけば、愛するかもしれん。
 使役している鷹を使い、あとを追っていく。
 すると、すぐに気づいた。

 「……いや、すでに相思相愛だな」

 これならいける……よし、計画を立てるとしよう。
 フフフ、待っていろ……。
 クロウ君……すまないが、私の計画のために死んでくれたまえ。
  





 

 だというのに……何故だ!?
    どこで間違えた!?

「ガァァァァァァァ!」

 痛い! 痛い! 痛いィィィ!
 目がァァァァ! 私の目がァァァァ!

「宰相様!?  どうなさりましたか!?」 

 騒ぎを聞きつけ、護衛の騎士達がやってくる。

「ひ、光魔法を!  早くしろ!」 

「はっ!  ただ今、連れてまいります!」

 お、おのれェェェェ!

 だ、ただじゃすまんぞ……!

 カグヤ嬢は、必ず手に入れる!

 そしてクロウ、貴様だけは許さん……!

 カグヤ嬢の前で四肢を斬り——惨たらしく殺してやろう!
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