反逆の英雄譚~愛する幼馴染が処刑されそうだったので国を捨てることにした~

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四章

王城へ

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 何を戯言をと思ったが、不思議と否定を出来ない自分がいた。

 確かに、なにやら親近感を覚える。

 だが、それとは話は別だ……相手が誰であろうとも、敵なら容赦はせん。

「で、俺に何の用で?」

「貴様、言葉を弁えろ……!」

「エリック、おやめなさい。こんなに兵士がいるのだから、無理もないことよ。ごめんなさい、少人数で来たかったのだけれど……周りが許してくれなくて」

「当たり前です! 我が国の後継ぎであるルナ様になにかあれば……」

「そういうのはいい、俺は何の用だと聞いたが?」

「全く臆していない、それに覇気を感じる……実は、魔の森の異常の知らせを受けて急いで来たのよ。そしたら、貴方の話を聞いたの。そして我が王家の者に似ていると聞いたわ。気になって見に来たんだけれど、貴方は我が王家に伝わる肖像画の人にそっくりなの」

「……それで?  俺はクロウという、愛する女性のために生きる只の男だ」

「その女性が羨ましいわ……あの子がそうかしら?」

「なに……ハァ、仕方ない」

 振り返ると窓からカグヤとシンクが覗いていた。
   すると、ハクから念が送られてくる。
 
(ご主人様ー! ごめんなさいなのだー!)

 (ハク、気にするな、ちょうど良い、連れて来てくれ)

 (了解なのだ!!)

 少し待つと、カグヤ達が外に出てくる。

「クロウ、少し聞こえてたんだけど……それで、どうなったの?」

「いや、俺にもよく分からん。さて……それで、俺になにを望む?」

「確認のために、一緒に王都まで来て欲しいのよ。お母様なら確実にわかるだろうし。もちろん、例の未知の生物についても聞きたいけれど。あと……貴方の力が見たいわ」

「断ったらどうする?」

「貴様、いい加減に……!」

「エリック! 黙ってなさい!ごめんなさい、そうね……特になにもしないけれど、皆の心証は悪くなるわね。この都市でも過ごしにくくなるかも……」

 ふむ、断るのは得策ではないか。
 王家の者に逆らったら、都市にも住めなくなるかもしれん。
 もし無理難題を言うのならば……その時は出ていけばいいだけだ。

「カグヤ、よくわからないがそういうことらしい。もちろん、カグヤがイヤなら……」

「行こう! だってクロウに家族がいるかもしれないんでしょ!?」

 そういうことになるのか。
 まあ、だからといってどうということはないが。

「それは別に良い、愛するカグヤさえいればな。だが、カグヤがそう言うなら行くか」

「にゃにゃ!?あぅぅ……!」

「一途な愛、素敵ね……では、決まりね。すぐにでも出れるかしら?」

「ああ、問題ない」

 ……俺は下手に出るのは下策だと判断した。
 このままの態度を貫くとしよう。
 権力者達は、そういう隙を突いてくるからな。
 もちろん相手が高圧的に来なければ、対応は変えるかもしれないが。
   そして、王都へ向けて出発する。

「ハク、平気か?」

「グルルー!(余裕なのだ!)」

「ハク凄いわね!  3人乗ってるのに」

「ピー!」

 今、俺とカグヤとシンクでハクに跨っている状態だ。
 体幹のある俺が一番後ろ、そのカグヤを俺が支える。
 カグヤがシンクを抱っこしている形だな。
 体長が2メートル以上あるハクなら可能だとは思っていたが。
 
「スピードも落ちないし、いやはや頼りになる奴だ」

「グルルー!(ご主人様に褒められた!)」

「王者であるハクドラが、服従しているわ。まさしく……いや、結論は早いわね」

「こ、こんな奴が……?」

 さっきからジロジロ見られている。
 一応、囲まれてはいないから平気だとは思うが。
 いざとなれば、蹴散らすのは容易いことだ。
   そして、わずか一時間ほどで城が見えてきた。

「……随分、魔の森のから近いのだな? 王族が住む城というから、安全な位置にあると思ったが」

「我々の国は魔の森から人々を守るのが使命だから。それと魔の森の見張りもね。だから、王都といえど離れすぎてはいけないわ。いざという時に対応が遅れてはいけないし。今回のように、すぐに知らせができるようにね」

「……立派な考えだと思います」

「あら?カグヤさんですよね? ありがとうございます」

「そうだな……良い国のようだな」

 少なくとも、祖国にいる王族とは違うか。
 奴らは踏ん反り返っているだけで、何もしやしない。

「あら?クロウさんまで……少しは、信用してもらえたかしら?」

「それとこれとは話は別だが」

「まあ、それもそうよね」

「……フンッ!」

「エリック……もう!」

 ……完全に嫌われたな。
 まあ、こっちだって譲れないものはある。
 都市に入り、真っ直ぐ城の方向へ進んでいく。
 住民は興味深そうに俺たちを見ていて、中には泣いている方もいた。

「おおぉ、まさしくあの方瓜二つ……生きていらしたのか?」

「バカ! 年齢が違うだろ! 子供がいたのか……いや、でもそんなはずは……」

 という声が、あちこちから聞こえてくる。
  正直言って気味が悪い……自分には、何が何だかわからないから。

「クロウ……」

「カグヤ、何があろうと俺は俺だ。そして、カグヤはカグヤだ」

「……うん! そうよね!」

 そして、いよいよ王城へと近づく。
    そこでふと疑問に思う。

「ハクやシンクを連れていっていいのか?」

「ええ、もちろん。その方が信用できるでしょ?」

「……否定はできない」

「あとは、それが証拠になると思うからね」

「それはどういう……」

「まあ、とりあえず行きましょう。お母様が、首を長くして待っているわ。本当は自分で確かめたいって行こうとしてたくらいだから」

 ルナさんの後をついて、王将内を歩いていると……また俺を見て泣いている人がいる。
   気持ち悪さを感じつつ歩いていると、一際目立つ扉に到着した。

「ここはお母様の私室よ。なので、作法とかは今回は気にしなくて良いわ。あと、流石にこの子達はここで待機ね」

「わかった。ハク、ここで待機だ。シンクを頼んだぞ?」

(……ハク、害のあることをされたなら反撃を許可する)

(了解なのだ!)

 すると、それを感じたのかエリックとやらが睨んでくる。

「いいか?何か怪しい動きをしたら後ろから斬るからな!」

「エリック!」

「いや、それが普通だろう。カグヤ、手を繋いでもらって良いか?」

「うん、もちろん……凄い汗」

「すまん、いやか?」

「ううん!クロウには私がいるからね!」

 どうやら見抜かれてしまったか。
 柄にもなく緊張していることが……真実を知ることが怖いと。
 扉が開くと、五十代くらいに見える女性の方がいた。
   そういえば、この国は女王が君主だったか。

「あぁ、まさしくあの方に瓜二つ……ごめんなさい、私が頼りないばかりに!  貴方を辛い目にあわせてしまった!」

 その女性は、俺を見るなり泣き出してしまう。

 一体、なんだというのだ?

 俺はカグヤの手を握りながら、心を落ち着かせる。

 ここまで来たら、きっちり話してもらおうか。
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