竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界転移する

おっさん、押し問答する

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 あたりを警戒しつつ、元いた場所に戻ると……。

「あっ、彼がそうですか?」

「ああ、そうだ。彼が、私達を救ってくれた恩人だ」

 すると、ローブを着た女性がタタッと駆けてくる。

「そ、それは、イノブタ……いえ、失礼いたしました。初めまして、ソーマさん。私の名前は、ミレーユと申します。この度は、命を救って頂きありがとうございました」

「ミレーユさん、頭をあげてください。たまたまですし、俺自身にも打算があったので。なにせ、迷子みたいなものですからね」

「そう言ってくださると逆に安心できますね」

「うん? どういう意味でしょうか?」

「いえ、その……女性二人のパーティーなものですから」

「……ああ、そういう」

 なるほど、確かに警戒されてもおかしくないな。
 二人とも、かなりの美人さんだし。
 クレアさんはもちろん、この方も綺麗なお姉さんって感じだ。
 眼鏡が似合ってるし、全体的にすらっとした体型をしている。

「す、すみません、恩人相手に……」

「いえ、警戒するのは当然のことかと」

「だから言っただろう。それに、子連れなのだから」

「わかってますけど……えっと、ソラちゃんで良いのかな?」

「ひゃ、ひゃい!」

 それまで俺の服の端を掴んでいたソラが、びっくりした声を上げる。
 これも勉強だと思い、ミレーユさんの前に押し出す。

「ほら、挨拶するといい」

「ソ、ソラって言います……よろしくお願いします」

「よし、よく言えたな」

 その頭を優しく撫でる。
 この子に足りないのは、自己肯定感だろうから。

「えへへ……褒められちゃった」

「ソラちゃん、私はミレーユっていうの」

「ミレーユさん……」

「うん、そうよ。ひとまず、よろしくね」

「は、はいっ!」

 すると、クレアさんが手を叩く。

「ほら、自己紹介はその辺にしとこう。というより……まずは、それについて聞かなくては」

「あっ、これですか。いや、実は……」

 先程の出来事を説明すると……二人の表情が変わる。

「イ、イノブタを木に叩きつけた?」

「えっ? 突進を止めた上に、素手でイノブタを……」

「あの、何か問題ありましたかね?」

「い、いや、オーガを倒したのだ。むしろ、それくらいできて当然か」

「そ、そうですよね。でも、これで信憑性が増しました」

 何やら、結構おかしなことをしてしまったらしい。
 豚の体当たりを止めただけなのだが?

「ひ、ひとまず、それをどうするかだな」

「良ければ、みんなで食べませんか?」

「良いのか? それは、ソーマ殿が狩った獲物だろうに」

「こんなにあっても、一人では食べきれませんからね。それに、食事はみんなで食べた方が美味しいですし」

「……ふふ、ではありがたくご相伴にあずかるとしよう。その代わり、お金は支払わせてもらうが」

「い、いえ、これからお世話になるお礼だと思ってください。こちらは、何もわからないので」

 すると、クレアさんが身を乗り出して近づいてくる。
 自然と、その端正な顔が近づき……年甲斐もなく照れそうになる。
 銀髪に青い瞳の美女なんかと、知り合ったことないから仕方ないよなぁ。

「いや、払わせてくれ。そもそも、初めて街に入る人間は入場料がかかるぞ? 異世界から来たお主に、この世界のお金があるのか? その魔石は価値がありすぎるし、現金ではないから受け取ってもらえんぞ?」

「ぐっ……」

「それに、お礼ならいらない。私はすでに命を助けてもらっている。この上で、これ以上甘えるわけには……」

 そう言いながら、さらに近づいてくる。
 そうなると、女性特有のいい香りがしてくる。
 彼女いない歴十年の独身には中々辛い。

「ソーマさん、諦めてください。クレアは、頑固なところがあるので」

「むっ? 頑固とはなんだ、私はただ……」

「わ、わかりましたから! 一度、離れてくれると……」

「へっ? ……っ~!?」

 すると、物凄い勢いでクレアさんが引き下がる。
 どうやら、気づいてなかったらしい。

「す、すまぬ!」

「い、いえいえ」

 どうにも照れ臭くて下を向くと……ぽかんとした顔をしたソラと目が合う。

 俺は心を落ち着かせるために、その頭を優しく撫でるのだった。

 ……やれやれ、良い歳して何をやってんだか。
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