10 / 64
おっさん、異世界転移する
おっさん、獲物を見つける
しおりを挟む
その後雑談をしつつ、馬車を走らせていると……段々と日が暮れてくる。
「おっと、そろそろ野営の準備をするか」
「暗くなる前にやった方が良いですね」
「ああ、その通りだ……よし、あそこにある大きな木の近くにしよう」
そして、大きな木の近くで馬車が止まる。
するとタイミングよく、ソラが目を覚ます。
「はぇ?」
「ソラ、おはよう。よく寝ていたな?」
「はわっ!? ご、ごめんなさい!」
「何を謝る必要がある?」
「だ、だって、わたしだけ寝て……ずっと膝の上で……」
「別に良いんだよ、今日は疲れていただろうし。それにソラは軽いし、なんてこともない」
「うぅー……」
「はいはい、よしよし」
その背中を優しくさする。
優しくされることに慣れていないから、こういう時にどうして良いのかわからないのだろう。
俺自身も、昔はそうだった。
「ふふ、優しい殿方だな?」
「いえいえ、普通ですよ」
「獣人の立場はあまり良くないのだが……」
「えっと?」
「それについても、今日のうちに伝えておこう。ひとまず、野営の準備をしてからだ。私は、ミレーユの様子を見てくる」
「俺にできることはありますか?」
「そうだな、燃えそうな草木を集めてくれると助かる」
「わかりました。ソラ、俺達も手伝うぞ」
「は、はい!」
俺とソラは馬車から降りて、近くにある森の方に向かっていく。
「奥には行かないようにしよう。あんまり離れると、クレアさん達が襲われたら助けに行けないからな」
「は、はい!」
「大丈夫だ、何か出てきても……お父さんがいる」
「お父さん……えへへ」
自分で言って恥ずかしくなるが……これも、この子のためだ。
三十五歳、土方相馬……自他共に認めるお父さんになったようです。
まだ独身なのに……いや、自分が決めたことだから良いんだけど。
その後、順調に草木を集めていると……。
「お父さん、また川の音が聞こえるよ」
「ん? 川の流れが聞こえる?」
注意して耳を澄ませると……確かに聞こえる。
「そういえば、飲み水が減っていたな。それじゃあ、ついでに水を汲むとしよう」
「はい、そうしましょう」
「っと、その前に……ソラ」
「え、えっと? なんでしょう?」
「敬語を使う必要はない。もっと、普通の言葉でいい」
「で、でも……怒ら」
「俺は怒らないから平気だ。まあ、無理にとは言わない。ただ、伝えておく」
俺がそういうと……静かにコクリと頷く。
時間はかかるが、地道にやっていくしかないな。
そして、数分ほど歩き……発見する。
「おっ、川というよりは泉だな」
「綺麗……大きなお風呂みたいです!」
「まあ、そう見えなくもないか?」
すると、なにかの気配を感じる。
すると、泉で水を飲んでいる大きな生き物と視線が合う。
大きさこそ体長一メートルを軽く超えるが、その姿は見知った生き物に近い。
「 ……あれは、イノシシか? 姿形はそっくりだが、大きさが桁違いだな」
「ブルルッ」
相手も俺達に気づき、威嚇をしてくる。
どうやら、敵認定されたようだ。
「お、大きいです……」
「ソラ、俺の後ろから動くなよ?」
「は、はい」
さて、どうしたものか。
このまま引いてくれれば……いや、逆か。
クレアさんは、基本的に魔物は二足歩行だと言っていた。
あれはどう見ても、四足歩行なので……食べられる魔獣ってことじゃないか?
だったら、倒して今晩の夕食にしてしまえばいい。
というより、俺に料理をさせてくれ。
「ブルルッ!」
「き、きました!」
「平気だ。今の俺なら……ふんっ!」
突っ込んできたイノシシ?の角を両手で掴む!
そして、引き下がることなく受け取める。
「ブルルッ!?」
「おっと、中々の力だな……だが!」
そのままの状態から、イノシシを横にぶん投げて木に叩きつける!
「ブルァ!? ……ガ、ガ……」
「……気絶したか」
「お、お父さんすごい!」
「ふふ、そうだろ? これでも、前の世界ではラグビー部の体当たりにも負けたことないからな」
なにせ高校の時に、ラグビー部に勧誘されたくらいだ。
そもそも、剣道だって当たりが強いスポーツだったし。
なので、受け止めることには慣れている。
「らぐびー?」
「すまんすまん、わからないよな。まあ、体当たりには慣れてるってことだ」
「……えいっ!」
「うおっ? ど、どうした?」
急に、ソラが俺に飛びついてきた。
というより、体当たりに近い。
無論、ビクともしないが。
「た、体当たりしま……体当たりしたの! お父さん、びくともしないね!」
「……ああ、そうだろ? お父さんは強いからな」
「うんっ!」
そう言い、満面の笑みを浮かべる。
敬語も取れたし、また一つ信頼を得たらしい。
見ず知らずの他人ならともかく、子供がむやみに敬語を使うものではない。
この調子で、慣れていってくれたら良い。
「さて……じゃあ、水を汲んでくれるか? 俺はこいつを担いで行く」
「うん! でも、持てるかなぁ?」
「まあ、任せておけ」
ソラが水を汲んでいるのを視界に入れつつ、イノシシを背中に背負い込む。
そして俺たちは、クレアさん達の元に戻るのだった。
~本日二話更新~
「おっと、そろそろ野営の準備をするか」
「暗くなる前にやった方が良いですね」
「ああ、その通りだ……よし、あそこにある大きな木の近くにしよう」
そして、大きな木の近くで馬車が止まる。
するとタイミングよく、ソラが目を覚ます。
「はぇ?」
「ソラ、おはよう。よく寝ていたな?」
「はわっ!? ご、ごめんなさい!」
「何を謝る必要がある?」
「だ、だって、わたしだけ寝て……ずっと膝の上で……」
「別に良いんだよ、今日は疲れていただろうし。それにソラは軽いし、なんてこともない」
「うぅー……」
「はいはい、よしよし」
その背中を優しくさする。
優しくされることに慣れていないから、こういう時にどうして良いのかわからないのだろう。
俺自身も、昔はそうだった。
「ふふ、優しい殿方だな?」
「いえいえ、普通ですよ」
「獣人の立場はあまり良くないのだが……」
「えっと?」
「それについても、今日のうちに伝えておこう。ひとまず、野営の準備をしてからだ。私は、ミレーユの様子を見てくる」
「俺にできることはありますか?」
「そうだな、燃えそうな草木を集めてくれると助かる」
「わかりました。ソラ、俺達も手伝うぞ」
「は、はい!」
俺とソラは馬車から降りて、近くにある森の方に向かっていく。
「奥には行かないようにしよう。あんまり離れると、クレアさん達が襲われたら助けに行けないからな」
「は、はい!」
「大丈夫だ、何か出てきても……お父さんがいる」
「お父さん……えへへ」
自分で言って恥ずかしくなるが……これも、この子のためだ。
三十五歳、土方相馬……自他共に認めるお父さんになったようです。
まだ独身なのに……いや、自分が決めたことだから良いんだけど。
その後、順調に草木を集めていると……。
「お父さん、また川の音が聞こえるよ」
「ん? 川の流れが聞こえる?」
注意して耳を澄ませると……確かに聞こえる。
「そういえば、飲み水が減っていたな。それじゃあ、ついでに水を汲むとしよう」
「はい、そうしましょう」
「っと、その前に……ソラ」
「え、えっと? なんでしょう?」
「敬語を使う必要はない。もっと、普通の言葉でいい」
「で、でも……怒ら」
「俺は怒らないから平気だ。まあ、無理にとは言わない。ただ、伝えておく」
俺がそういうと……静かにコクリと頷く。
時間はかかるが、地道にやっていくしかないな。
そして、数分ほど歩き……発見する。
「おっ、川というよりは泉だな」
「綺麗……大きなお風呂みたいです!」
「まあ、そう見えなくもないか?」
すると、なにかの気配を感じる。
すると、泉で水を飲んでいる大きな生き物と視線が合う。
大きさこそ体長一メートルを軽く超えるが、その姿は見知った生き物に近い。
「 ……あれは、イノシシか? 姿形はそっくりだが、大きさが桁違いだな」
「ブルルッ」
相手も俺達に気づき、威嚇をしてくる。
どうやら、敵認定されたようだ。
「お、大きいです……」
「ソラ、俺の後ろから動くなよ?」
「は、はい」
さて、どうしたものか。
このまま引いてくれれば……いや、逆か。
クレアさんは、基本的に魔物は二足歩行だと言っていた。
あれはどう見ても、四足歩行なので……食べられる魔獣ってことじゃないか?
だったら、倒して今晩の夕食にしてしまえばいい。
というより、俺に料理をさせてくれ。
「ブルルッ!」
「き、きました!」
「平気だ。今の俺なら……ふんっ!」
突っ込んできたイノシシ?の角を両手で掴む!
そして、引き下がることなく受け取める。
「ブルルッ!?」
「おっと、中々の力だな……だが!」
そのままの状態から、イノシシを横にぶん投げて木に叩きつける!
「ブルァ!? ……ガ、ガ……」
「……気絶したか」
「お、お父さんすごい!」
「ふふ、そうだろ? これでも、前の世界ではラグビー部の体当たりにも負けたことないからな」
なにせ高校の時に、ラグビー部に勧誘されたくらいだ。
そもそも、剣道だって当たりが強いスポーツだったし。
なので、受け止めることには慣れている。
「らぐびー?」
「すまんすまん、わからないよな。まあ、体当たりには慣れてるってことだ」
「……えいっ!」
「うおっ? ど、どうした?」
急に、ソラが俺に飛びついてきた。
というより、体当たりに近い。
無論、ビクともしないが。
「た、体当たりしま……体当たりしたの! お父さん、びくともしないね!」
「……ああ、そうだろ? お父さんは強いからな」
「うんっ!」
そう言い、満面の笑みを浮かべる。
敬語も取れたし、また一つ信頼を得たらしい。
見ず知らずの他人ならともかく、子供がむやみに敬語を使うものではない。
この調子で、慣れていってくれたら良い。
「さて……じゃあ、水を汲んでくれるか? 俺はこいつを担いで行く」
「うん! でも、持てるかなぁ?」
「まあ、任せておけ」
ソラが水を汲んでいるのを視界に入れつつ、イノシシを背中に背負い込む。
そして俺たちは、クレアさん達の元に戻るのだった。
~本日二話更新~
44
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~
御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。
十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。
剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。
十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。
紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。
十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。
自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。
その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。
※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる