竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界転移する

おっさん、獲物を見つける

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 その後雑談をしつつ、馬車を走らせていると……段々と日が暮れてくる。

「おっと、そろそろ野営の準備をするか」

「暗くなる前にやった方が良いですね」

「ああ、その通りだ……よし、あそこにある大きな木の近くにしよう」

 そして、大きな木の近くで馬車が止まる。
 するとタイミングよく、ソラが目を覚ます。

「はぇ?」

「ソラ、おはよう。よく寝ていたな?」

「はわっ!? ご、ごめんなさい!」

「何を謝る必要がある?」

「だ、だって、わたしだけ寝て……ずっと膝の上で……」

「別に良いんだよ、今日は疲れていただろうし。それにソラは軽いし、なんてこともない」

「うぅー……」

「はいはい、よしよし」

 その背中を優しくさする。
 優しくされることに慣れていないから、こういう時にどうして良いのかわからないのだろう。
 俺自身も、昔はそうだった。

「ふふ、優しい殿方だな?」

「いえいえ、普通ですよ」

「獣人の立場はあまり良くないのだが……」

「えっと?」

「それについても、今日のうちに伝えておこう。ひとまず、野営の準備をしてからだ。私は、ミレーユの様子を見てくる」

「俺にできることはありますか?」

「そうだな、燃えそうな草木を集めてくれると助かる」

「わかりました。ソラ、俺達も手伝うぞ」

「は、はい!」

 俺とソラは馬車から降りて、近くにある森の方に向かっていく。

「奥には行かないようにしよう。あんまり離れると、クレアさん達が襲われたら助けに行けないからな」

「は、はい!」

「大丈夫だ、何か出てきても……お父さんがいる」

「お父さん……えへへ」

 自分で言って恥ずかしくなるが……これも、この子のためだ。
 三十五歳、土方相馬……自他共に認めるお父さんになったようです。
 まだ独身なのに……いや、自分が決めたことだから良いんだけど。



 その後、順調に草木を集めていると……。

「お父さん、また川の音が聞こえるよ」

「ん? 川の流れが聞こえる?」

 注意して耳を澄ませると……確かに聞こえる。

「そういえば、飲み水が減っていたな。それじゃあ、ついでに水を汲むとしよう」

「はい、そうしましょう」

「っと、その前に……ソラ」

「え、えっと? なんでしょう?」

「敬語を使う必要はない。もっと、普通の言葉でいい」

「で、でも……怒ら」

「俺は怒らないから平気だ。まあ、無理にとは言わない。ただ、伝えておく」

 俺がそういうと……静かにコクリと頷く。
 時間はかかるが、地道にやっていくしかないな。
 そして、数分ほど歩き……発見する。

「おっ、川というよりは泉だな」

「綺麗……大きなお風呂みたいです!」

「まあ、そう見えなくもないか?」

 すると、なにかの気配を感じる。
 すると、泉で水を飲んでいる大きな生き物と視線が合う。
 大きさこそ体長一メートルを軽く超えるが、その姿は見知った生き物に近い。

「 ……あれは、イノシシか? 姿形はそっくりだが、大きさが桁違いだな」

「ブルルッ」

 相手も俺達に気づき、威嚇をしてくる。
 どうやら、敵認定されたようだ。

「お、大きいです……」

「ソラ、俺の後ろから動くなよ?」

「は、はい」

 さて、どうしたものか。
 このまま引いてくれれば……いや、逆か。
 クレアさんは、基本的に魔物は二足歩行だと言っていた。
 あれはどう見ても、四足歩行なので……食べられる魔獣ってことじゃないか?
 だったら、倒して今晩の夕食にしてしまえばいい。
 というより、俺に料理をさせてくれ。

「ブルルッ!」

「き、きました!」

「平気だ。今の俺なら……ふんっ!」

 突っ込んできたイノシシ?の角を両手で掴む!
 そして、引き下がることなく受け取める。

「ブルルッ!?」

「おっと、中々の力だな……だが!」

 そのままの状態から、イノシシを横にぶん投げて木に叩きつける!

「ブルァ!? ……ガ、ガ……」

「……気絶したか」

「お、お父さんすごい!」

「ふふ、そうだろ? これでも、前の世界ではラグビー部の体当たりにも負けたことないからな」

 なにせ高校の時に、ラグビー部に勧誘されたくらいだ。
 そもそも、剣道だって当たりが強いスポーツだったし。
 なので、受け止めることには慣れている。

「らぐびー?」

「すまんすまん、わからないよな。まあ、体当たりには慣れてるってことだ」

「……えいっ!」

「うおっ? ど、どうした?」

 急に、ソラが俺に飛びついてきた。
 というより、体当たりに近い。
 無論、ビクともしないが。

「た、体当たりしま……体当たりしたの! お父さん、びくともしないね!」

「……ああ、そうだろ? お父さんは強いからな」

「うんっ!」

 そう言い、満面の笑みを浮かべる。
 敬語も取れたし、また一つ信頼を得たらしい。
 見ず知らずの他人ならともかく、子供がむやみに敬語を使うものではない。
 この調子で、慣れていってくれたら良い。

「さて……じゃあ、水を汲んでくれるか? 俺はこいつを担いで行く」

「うん! でも、持てるかなぁ?」

「まあ、任せておけ」

 ソラが水を汲んでいるのを視界に入れつつ、イノシシを背中に背負い込む。

 そして俺たちは、クレアさん達の元に戻るのだった。




~本日二話更新~
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