竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界生活を始める

おっさん、一息つく

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 俺が依頼を受け終わったタイミングで、外からクレアさんが戻ってくる。

「ソーマ殿……どうやら、無事に依頼を受けられたみたいだな」

「ええ、どうにか」

「それにしても、何かあったのか? なにやら、ざわざわしているが……」

「すみません、早速騒ぎを起こしてしまいまして……」

 どうやら、あの男はいなくなったようだ。
 だがギルド内の人間は、相変わらず俺に視線を向けている。

「ふむ、それならさっさと去るとしよう」

「ええ、そうですね」

 俺達は眠っているソラを迎えにいき、冒険者ギルドを後にするのだった。





 クレアさんの案内の元、迷路のような路地を進んでいく。

 土地勘がなかったら、たどり着けないような道だ。

 そして敷地の広い、二階建て風の宿に到着する。

「……ふぁ?」

「おっ、起きたか」

「……おとうしゃん?」

 ……ぐはっ!? なんだこれは?
 なにか、身体に電流が流れてくる!
 思わず、膝から崩れ落ちそうになる。

「へ、平気か? ふらふらしているが……」

「え、ええ、何とか」

「流石のソーマさんでもお疲れでしょう。さあ、宿に入りましょう」

 中に入ると、一階部分は食事処になっているようだ。
 カウンターキッチンがあり、テーブル席がいくつかある。
 天井は吹き抜けになっており、左端には階段が見える。

「幸い、部屋は私達の隣が空いていた。ここの宿は安くて一泊鋼貨七枚だ。さらに、朝と夜には食事が出る。ちなみに、ソーマ殿の代金は一週間分払ってあるからな」

「何から何までありがとうございます」

 日本円で言えば、一泊七千円くらいか。
 一泊二食付きなら安い方だろう……多分、立地が関係してそうだ。
 俺も店をやるなら、この世界の相場とかを考えておかないとな。

「まあ、命を救ってもらった恩からしたら安いものだ」

「それなんですが……これをもらってくれませんか? その、失礼ながら……見たところ、お金が潤沢にあるような感じには見えないので」

 俺はポシェットの中から、オーガの魔石を取り出す。
 あちらからしたら、大したことではないかもしれない。
 だが、異世界人の俺と元奴隷のソラにとって、この出会いは運が良い。
 だから、この方々にしっかりとお礼がしたい。

「いや、お主はその魔石の価値をわかっていないから……」

「いえ、なんとなくは分かってます。オーガがという魔物が、C級ランクの魔物だということくらいは」

 さっき、掲示板を眺めているときに目に入った。
 確か報酬金額は、銀貨3枚と書いてあったはず。

「むむっ……依頼書を見たな? ずるいぞ!」

「い、いや、ずるいと言われても……」

 そう言って膨れる様は、少し可愛らしい。
 やはり、大人っぽく見えても二十二歳だな。

「ほらほら、時間が勿体無いですよ。ソーマさん、ありがたく頂戴しますね」

「ミレーユ?」

「良いじゃないですか。ソーマさんはお金の価値や、この世界の内情について知らないのですから。その代わり、私たちが教えてあげれば良いかと」

「……わかった。じゃあ、責任を持って教えよう」

「決まりですね」

 その後、店主に挨拶をして部屋に入る。
 そしてまずは、入り口横にある部屋にいく。

「ソラ、まずは顔を洗いなさい」

「わかった!」

 俺はその間に、部屋の中を確認する。
 広さは10畳程度に、手前にベットが二つ。
 奥には二人掛けのテーブルと椅子がある。
 部屋の入り口の脇には、洗面台やトイレ、そして小さなシャワールームがある。

「ユニットバスタイプか……シャワー自体はないから、魔法で洗えってことか」

「お父さん! 洗ったよ!」

「おっ、そうか。んじゃ、このタオルで拭きなさい」

「うん!」

 洗面所のタオルを渡したあと、色々と確認を続ける。

「おっ、シャンプーと石鹸がある……」

 正直言って、シャンプーや石鹸があるのはありがたい。
 歯ブラシは貰うことはできたが、移動中は水浴びしかしてないし。

「お父さん、お腹空いた……」

「そうだな」

 その時、ドアをノックされる。

「ソーマ殿、食事の時間だ」

「おっ、タイミング良いな。ソラ、行くぞ」

「うんっ!」

 手を繋いで部屋を出て、四人で下に降りていく。
 そして、店員さんに窓際の席に案内される。

「おっ、すでに料理が置いてある」

「大体、決まった時間に出されるようになってるんだ。その前に宿に戻って来なければ、その日は食事抜きとされる。ダンジョンや依頼によって戻れない日もあるので、その時は前もって言っておけば料金が返ってくる」

「なるほど……時間? どのように確かめるのですか?」

「ん? 普通に時計があるだろう?」

 ふと視線を向けると、壁に時計が置いてある。
 シャンプーと石鹸といい、生活するには困らなそうで助かるな。
 とりあえず、四人掛けのテーブルに着く。
 メニューは根菜類のスープとパン、なにやら照り焼きチキンのような肉の塊だ。

「貴重なものなんですか? ソラの村にはあったか?」

「ううん、わたしの村にはなかったよ」

「そこまで貴重なものではないが、村程度なら必要はないだろう。朝の光と鐘の音で起きたりするしな。ここは一日中誰かが起きてる都市だ。時計は必須というわけだ」

「ふんふん……あっ、美味いな」

「あったかくて美味しい! お野菜もたくさん!」

「ああ、そうだな」

 スープを一口飲んで、野菜の出汁がしっかり出てるのがわかる。

「そうだろ? 値段の割に料理も美味くてな……作れない身で何を言ってるんだという話だが」

「いえいえ、別にいいと思いますよ。うん……肉も美味い」
 
 シンプルに醤油とみりんで味付けされている感じだが、焼き方は悪くない。
 ただ、割とシンプルな料理が多そうだ。
 コース料理という考え方もないみたいだし、そういう世界なのかもしれない。

「ハフハフ……」

「ソラ、食べたいのはわかるが、ゆっくり食べなさい。そうしないと、きちんと栄養にならないからな」

「んっ……」

「答えなくて大丈夫だ。今は食べることに集中しなさい」

 俺の言葉に、ソラがコクコクと頷く。
 しっかり、栄養をとってもらわないな。

「さて、我々は明日からの予定を話すとしよう」

「何か依頼を受けていましたよね?」

「ええ、三つほど」

 ひとまず、受けた依頼内容を伝えると……。

「ほう? 感心だな」

「ですが、私達が手伝うことはできませんね。私達二人はDランクなので」

「ふむ……借りた恩を返せてないな。私たちでよければ、明日ソラを預かるか? 私達は明日は休みだしな」

「それは確かに助かります。あと、不躾なお願いなんですが……」

 俺は二人に伝えると快く了承してくれた。

 これで、心置きなく明日から仕事ができる。











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