竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界生活を始める

おつさん、眠っていた記憶を呼び覚ます

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……久々にベットで寝たな。

これまでは野宿だったので、短い睡眠しかとってなかったが……。

「一応、夜から朝まで寝れる身体ではあると」

「んにゃ……」

ふと隣をみると、ソラが俺と一緒のベッドで寝ている。
そういえば、昨日寝かしつけようとしたら、お父さんと一緒に寝ると言われたんだっけ。

「ソラ、起きなさい」

「……おとうしゃん」

そう言い、俺にしがみつく。
これは昨日と同じ……グハッ!? 可愛いのだが!!

「い、いかんいかん……ソラ、きちんと起きない朝ごはんはないぞ? ここは時間が決まってるんだからな」

「……う、うん、起きる……!」

少し語気を強めたからか、ソラが慌ててベットから降りて洗面所に向かう。

「……はぁ」

境遇からいって、思いきり甘やかしてあげたい。
だが、俺自身が経験しているようにそれだけではいけない。
きちんと自立させるためには、厳しくすることも必要だ。

「……女の子だし、色々と加減が難しいが」

その時、俺の頭に封印していた記憶が蘇る。

『お兄ちゃん! あそぼ!』
『やだよ、おままごとだろ?』
『えぇ~!? やってよぉ~!』
『……はぁ、わかったよ。ただし、一回だけだ』
『わぁ! お兄ちゃん大好き!』

……しばらくの間、忘れていたな。
いや、忘れていたわけではない。
ただ、辛いから思い出したくなかったんだ。
多分、ソラといたから……思い出してしまったのだろう。

「……さん! お父さん!」

「ソラ? どうした? 顔は洗ったのか?」

「う、うん……お父さん、どっか痛い?」

「うん? どうしてだ?」

「だって、悲しい顔をしてたから……」

「……いや、平気だ。ほら、朝飯を食べに行くぞ」

強引に話を切り替え、ソラを連れて部屋から出る。
……こんな小さい子に心配させるわけにはいかない。



部屋を出て、階段を降りていくと……昨日の夜と同じ席に二人がいた。

すでに料理が並んでいたので、急いで席に着く。

「おおっ、起きたな」

「少しお寝坊さんですね」

「おはようございます!」

「おはようございます。すみません……ソラは起きたのですが、俺が少しぼけっとしてたみたいで」

「いやいや、仕方あるまい。いきなり知らないところに来て、疲れも溜まっていたのだろう。さあ、まずは食べよう」

宿の主に迷惑をかけるわけにはいかないので、四人とも黙々と食べ進める。
今日のメニューは、昨日と同じスープに、パンに肉を挟んだものだ。
俺とクレアさんは一足早く食べ終えたので、少し話をすることにした。

「……もしや、あまりメニューはない感じですか?」

「ん? ……そうだな、大体決まったメニューが出る。すまないな、他の宿なら変わったりするのだが」

「いえいえ、別に悪い意味ではないので。材料費を抑えるためと、残り物を出さないために必要ですから」

「そういえば料理人だったな。自分がやるときのことを考えていたのか?」

「ええ、そうです」

食べる時間帯が決まっていることも、料金が安い理由なのだろう。
そうすれば、一度の料理で済む。
となれば電気代しかり、ガス代しかりが安くなる。
さらには人件費や、片付ける手間なども省けると。

「ふむ、確かに色々と考えられてるな」

「……あれ?」

「どうしたのだ?」

「少し気になったのですが、ガスとか電気ってどのようになっているのですか?」

「どのようにとは?」

「「……ん??」」

思わず、二人して顔を見合わせてしまう。
すると、食べてる途中のミレーユさんが話しかけてくる。

「クレア、ソーマさんは異世……田舎から来たんですよ。きっと、ガスとか電気が必要ないところから来たんですから」

「う、うむ、そういえばそうだ。簡単な話だが、全て魔石によって成り立っている。電気なら雷属性を、火なら火属性といった感じでな」

「なるほど……だから魔石が売れるし、生活に必要なのですね」

「そういうことだ。魔物は人に被害を与えるが、恵にもなるというわけだ。そして、冒険者という仕事もできた」

「ふむふむ」

……瘴気が魔物と化すとは聞いたが、それを生活に組み込むか。
人は強いし、慣れるともいうが……都合が良すぎる気もするな。
まあ、俺が考えることじゃないか。



その後、食べ終えたので……いよいよ仕事に取り掛かる。

「さて……ソラ、二人の言うことを聞いて良い子にしてるんだぞ?」

「う、うん……お父さん、ここに帰ってくる?」

「ん? そりゃ、そうさ。ここに泊まってるわけだし、夕方には帰ってくるよ」

「わかった! 良い子で待ってる!」

「よし、偉いぞ」

「えへへー」

頭を撫でると、顔がくしゃっとなる。
……懐かしいわけだ、昔は妹によくやってたな。
結局、あれ以来……大事な人を作ることが怖くなったっけ。

「では、クレアさんにミレーユさん。ソラをお願いします」

「ああ、任せておけ。ふふ、楽しみにしてると良い」

「ええ、これくらいでお礼ができるなら安いものです」

「なになに? なにをするの?」

「ソラ、二人に任せてあるから安心しなさい。それでは、行ってくる」

「う、うん、行ってらっしゃい!」

三人に見送られ、一足先に宿を出る。

行ってらっしゃいか……悪くないものだな。
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