竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界生活を始める

おっさん、ティアーロを狩る

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 つい、勢いで倒してしまったが……まだ戦ってもいなそうな状態だった。

 こういう時は、どっちに転ぶがわからない。

 プライドや感情が邪魔をして、こっちに文句を言ってくる場合もある。

「すまない、お節介だったか?」

「い、いえ! ありがとうございます!」

「本当にありがとうございます!」

 二人して、頭を下げてくる。
 どうやら、していいお節介だったらしい。
 感謝を求めたわけではないが、やはりこちらの方が気分はいい。

「それなら良かったよ」

「そ、それにしても、強いですね?」

「本当だよね! F級のコボルトソルジャーを倒しちゃうなんて!」

 見たところ、10代後半くらいの男女の組み合わせのようだ。
 真面目そうな少年と、活発そうな少女である。
   おそらく、新人の冒険者だろう。

「それで、何があったのかな?」

「それが、H級のゴブリン退治に来たんですけど……そしたら、Gコボルトの群れに出会ってしまいました。さらには、そのボスまで」

「普段は、こんなところにいないんですよ!それが、コボルトだけならまだしもソルジャーまで」

 聞いた話では、魔物は進化するらしい。
 条件はわからないが、ソルジャーやジェネラル、キングといったように。

「なるほど……」

「どうしたんだろ?」

「うーん、困るよね。私達にとって、ここは安全な狩場というか…」

「なんか、少し様子が違う気がするよな」

 もしかして……これってドラゴンのせいとか?
 オーガも、いつもと違う場所に現れたとか言ってたし。
 別に俺の責任ではないが……相談するか。

「でも、私達の前に来た人達はふつうだって言ってたよね?」

「ああ、言ってたな。じゃあ、たまたまか?」

 俺がひとまず戻ろうと言いかけた時、何かが聞こえる。

「二人とも、何かくる」

「えっ!?」

「こ、今度は何?」

 そして、茂みから何かが飛び出してくる!
 それは鹿のような生き物だった。
 ただし、地球で見たものほど可愛くないが。
 そのツノはドリルのようになっており、人を貫くには十分だろう。
 筋肉質だし、大きさも俺の肩くらいはある。

「ディアーロ!? なんでこんな手前の森にいるんだよ!?」

「ディアーロ?」

「気をつけてください! 魔物ではありませんが、強い魔獣です! そのツノを使った突進は、先程のコボルトソルジャーをも貫きます!」

「フルルッ!」

 どうやら、興奮している様子だ。
 多分、完全に敵だと思われている。
 背を向ければ、おそらく後ろから貫かれるな。

「ところで、こいつは美味いのか?」

「へっ? い、いや、独特の臭みがあって美味しくはないって聞いたことが……」

「あと、肉が硬いとかって聞いたことあります」

「なるほど」

 目線を逸らさずに、思案する。
 個人的に、殺すなら食べるべきだと思っている。
 ただのエゴかもしれないが、生き物を殺す以上は。
 魔物とかは食えないから話は別だが。

「……やるか。君たち、そこから一歩も動くなよ? おそらく、動いた奴が狙われる」

「わ、わかりました」

「は、はい……!」

「良い子だ……さあ、かかってこい」

 俺が動きを見せると……。

「フルルッ!」

 予想道理に突っ込んでくる!
 しかし……受け止めるつもりだったが、予想外の出来事に判断を変えて避ける。

「ふむ……強いと言われるわけだ」

「フルルッ!」

 その突進は、大木を倒していた。
 奴が走ってくる瞬間、そのツノが回転をしたのが見えた。
 さながら、ドリル回転といったところか。

「ひぃ!?」

「か、身体がバラバラになっちゃうよ……」

「大丈夫だ、次は止める」

「「へっ??」」

 惚ける二人を尻目に、少し腰を落として構える。 
 目に力、腕に力を込めるイメージ。

「さあ、こい」

「フルルッ!」

「フンッ!」

 もう一度同じように突進してくるのを……ドリルの付け根を押さえることで止める!
 ギュルルルル!!とドリルが回転する音が耳を直撃する!
 そして俺の腹を貫こうと、ディアーロが押してくる。

「おっさん! む、無理だって!」

「早く手を離さないと!」

「問題ない……!」

 俺の計算が正しければ……よし! 回転が止まった!
 回転が止まったツノを握り——叩き折る!

「フルァァァ!?」

 そのショックか、ディアーロが地に伏せる。

「う、嘘だろ……?」

「あのドリルを止めちゃった……?」

「ふぅ、上手くいったか」

 膝をついて、心臓の位置に手を触れる。

「……よし、生きてるな」

「ど、どういうことですか?」

「こ、殺さないの?」

「いや、殺すのは後だ」

「どういうことですか?」

「いや、食べるためにはそっちの方がいいかと思ってな」

 正直言って、殺すだけだったら難しくはなかった。
 突進を避けて、首に剣を叩き込めば良い。
 しかし、それではダメだ。
 この場で食べないなら、どんどん鮮度が落ちていく。
 だからあえて突進を受け止めて、気絶させる方向に持っていった。

「じゃあ、どうするんですか?」

「ひとまず、送って行くから帰ろう。そして、ギルドに報告だ」

「そ、そうですね」

「はいっ! ありがとうございます!」

 アルトとレナと名乗る二人を連れて、俺は都市へと戻るのだった。


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