竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界生活を始める

おっさん、おかえりと言われる

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 ディアーロを担ぎつつ、二人と話しながら都市へと向かう。

 というよりは、俺が一方的に話を聞く感じだが。

 だが、若い子と話す機会など滅多にないから楽しいものだ。

「いやぁ、本当に危ないですよ。アレを受け止めるなんて……ソーマさん、何者ですか?」

「うんうん、アルトの言う通りです。ディアーロのランクは魔獣に例えるとE級で、そこまで強いってわけじゃないですけど……もちろん、私達にとっては強敵ですが。ただ、あの突進を受け止めるような真似をした人は見たことないです」

「そうだよなぁ。聞いた話だと壁や木に誘導して、そこに体当たりをさせる。その隙をついて、遠距離攻撃で仕留めるのが普通だって。ソーマさん、素手で止めたもんなぁ……カッケェ」

 ……なんだが、むず痒いな。
 ただ単に、俺には遠距離攻撃がなかったのも理由だし。

「別に、どこにでもいる普通のおっさんだよ。まあ、真似はしない方がいい」

「「しませんよ!!」」

「そ、そうか」

 いかんいかん、この身体になってから精神的に麻痺しているようだ。
 目立たないためにも、もう少し穏便に済ませられるようにしないと。

「そういえば、どうしてあのやり方だったんですか?」

「あいつのドリル回転って、突っ込む時にしか出来ないんだなと思ってさ。だったら、それが止まる時が来るはずだ。あいつの武器はあれだけみたいだし、あとは掴んで待てば良い」

「あぁ~……って納得しませんって!」

「そうですよ! 危ないからやめた方がいいですって!」

「……ハハ」

 やはり、若い子達と話してるとくすぐったいものがあるな。

 ただ、気持ちのいい若者達だ……死なないでもらいたいものだ。





 森を抜け、魔物や魔獣に出会うことなく、無事に都市に到着する。

 そのまま冒険者ギルドに行き、出来事を報告をする。

 二人は別の場所にいき、俺はディアーロを預けた後、アリスさんに呼ばれた。

「というわけで、少し注意喚起が必要かと」

「ソーマさん、貴重な情報をありがとうございます。ゴブリンソルジャーやディアーロがいる区域ではないのですが……」

「それなんですが……」

 あれ? どこまで話して良いんだ?
 竜殺しは言えないが、オーガを倒したことは言って良いのか?

「あっ、ソーマさんのことはギルドマスターから聞いてるので平気ですよー。オーガを倒すくらいの実力者だけど、ちょっと特殊だから面倒を見てやってくれって。確か、ものすごい田舎から来たって。私はこの都市育ちですから、色々と知ってますのでー」

「……はは、すいません」

 なるほど、そういう話になっていると。
 だから、俺専用ってことだ。

「とりあえず、私の方からマスターには伝えておきますねー。それと、依頼はバッチリです。まさか、三つを日が暮れる前に終わらせちゃうとは思いませんでしたけど」

「よろしくお願いします。もしかして、早いのですか?」

「早いですよー。片付けだって、清掃だって重労働ですから。重い荷物も持ちますし、あちこちに歩いたりしますし。しっかり休憩してから、次の仕事に取り掛かるものですよ?」

「……そうですか」

 ……まあ、言われてみれば。
 今日一日を通して、一度しか休憩してないな。
 前の世界ではアラフォーだったから、すぐに疲れるようになっていた。
 しかし、この世界に来てからは疲れ知らずか……うん、この恩恵は助かるな。

「ふふ、期待の新人さんですねー。では、引き続きよろしくお願いします」

「ええ、こちらこそ」

「では、次ですね。コボルトソルジャーのランクは適正ではないので、特別に保留扱いにしておきます。そのランクになったらプラスにします」

「ありがとうございます。魔石は、こちらで買い取ってくれるのでしょうか?」

「もちろんですよー。それと、解体しているディアーロはどうしますか? 肉や皮など買取もできますけど……」

「そうですね……肉を残して買取でお願いします」

「あの肉を……珍しいですね。いえ、わかりましたー。それでは、そのように手配しておきます。一時間くらいかかりますが、どうしますか?」

「一度、宿に戻ろうかと思います」

「了解です。それでは、お待ちしてますねー」

 報告を終える外に出ると、ギルドの前で二人が待っていた。

「ソーマのおっさん、本当にありがとうございました!」

「こら! 命の恩人になんてこというのよ!」

「いて!? い、いや、だって……」

 少し話をしたからか、都市に着いたから、二人の空気が軽くなる。
 こちらが本来の二人なのだろう。
 無理もない、危うく命を落とすところだったんだ。

「気にすることない、俺がおっさんなのは確かだしな。新人同士だ、良かったら仲良くしてくれ」

「それはもちろん!」

「はいっ! こちらこそお願いします!」

「それなら良かった。よかったら、あとで飯でも食べるか? ディアーロの肉だが」

「えぇー……え、遠慮しようかと……」

「す、すみませんが……」

 そういや、あんまり美味しくないとか言ってたか。
 美味しくする自信はあるが、無理に誘うのも悪いな。

「なら仕方ない。一応、この宿にいるから気が向いたらきてくれて良い」

「わ、わかりました」

「は、はいっ」

 そして二人に別れを告げ、俺は宿に戻る。
 すると、宿の扉が勢いよく開く!

「お父さん!」

「おっと……」

 体当たりをしてきたソラを優しく受け止める。

「お帰りなさい!」

「ああ、ただいま」

 お帰りなさいに、ただいまか……このやり取りをしたのはいつ以来だろう。
 心が温かくなって、気持ちが和らぐ。

「あ、あのね! お父さん! これ……」

「ああ、よく似合ってる」

 俺からソラが離れ、その場でくるりと回る。
 その際に、青いワンピースがゆらゆら揺れていた。
 白い髪と青の瞳とマッチし、とてもよく似合っている。

「ほ、ほんと? ……えへへ」

「ああ、本当だ」

「あ、ありがとう! えっと、クレアさん達が色々と見てくれたの! あと、お父さんに頼まれたって!」

「男ではわからないことがあるからな」

 どうやら、二人に任せて正解だったようだ。
 オーガの代金は無くなったが、この笑顔を見れるなら安いものだろう。

「あと……ごめんなさい!」

「うん? どうした?」

「そ、その……お父さんが帰ってこないかと思って……捨てられたのかなって」

「俺はそんなこと一言も……」

 自分で言って気づいた、自分が如何に馬鹿だったかを。

 この子は両親に捨てられ、奴隷として生きてきた。

 そんな子が、頼りにしてる俺から離されて不安にならないはずがない。

「……すまん、俺が浅はかだった」

「ち、違うよ! わたしが悪いんだもん!」

「じゃあ……お互い様ということで、これで終わりだな」

「はいっ! お父さん帰ってきてくれたもん!」

 そう言い、再び俺にしがみつこうとするので……両手で抱き上げる。

「わわっ!?」

「ソラ、お前が俺から離れない限り側にいる。だから、安心するといい」

「……うんっ!」

 すると……顔をくしゃっとして、子供らしく笑うのだった。
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