竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界生活を始める

おっさん、宿にて話す

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ソラを抱いたまま、くるくる回っていると……。

「コ、コホン! 心温まる風景に水を差してすまないが……」

「ふふ、そうですね」

いつの間にか、クレアさんとミレーユさんも表に出てきていた。

「す、すみません」

「いや、良いんだ。ひとまず、無事で何よりだ」

「ええ、ほんとに。どんなに強くても、死んでしまうことがありますから」

「どうにも、ソーマ殿は無茶をしそうな雰囲気があるからな」

先輩冒険者の助言だ、心に留めておこう。
ただ、もう遅い気もするが……うん、これから気をつけよう。

「はは……」

「……どうやら、遅かったらしい」

「とりあえず、中で話を聞きましょうか。ソラちゃんも寝てしまったようですし」

「えっ? ……あらら」

「すぅ……」

俺に抱かれていたソラが、いつの間に寝息をたてている。
そんなソラを抱えつつ、中に入り食堂の席に着く。

「やれやれ、良く寝てるな」

「窓の席にいて、ずっと待ってたからな。疲れたし、きっと安心したのだろう」

「大変だったんですよ? ずっとここで待つって」

「それはすみませんでした。俺の配慮が足りなかったですね」
 
「いや、仕方なかろう。それより、どうだったのだ?」

ソラを抱いたまま、俺は今日の出来事を説明する。
依頼をきちんとこなしたこと、知り合った冒険者達。
そして、ディアーロのことなど。

「なるほど、そんなことが……しかし、ディアーロの突進を素手で受け止めるか」

「なんか、前にもこの会話をしたような……?」

「まあ、イノブタの突進を止めるくらいだ。それにしても、食べるためか……アレは美味いとは言えないぞ? 硬いし、結構匂いもきつい」

「そうみたいですね。まあ、一応考えがあるので」

味自体が不味かったら、どうにもならないかもしれないが……そうでないなら、やりようはある。
もし成功すれば、それが俺の強みになるかもしれない。

「むにゃ……」

「それより、本当にありがとうございます。ソラの洋服なども見てもらって」

「いやいや、大したことじゃない。お主からもらったオーガの魔石を換金しても、お釣りがきたくらいだ」

「残りはお二人に差し上げます。それと、今日はラフな格好ですね?」

鎧とは違い、柔らかい印象を受ける。
ただ、カッコいい女性に変わりはない。

「あ、ああ、今日は休みだしな」

「何を言ってるんですか。普段はそんな格好しないじゃないですか」

「そうなんですか?」

「そうですよ、クレアったらソーマさんが——むがぁ」

「な、なんでもないからな!?」

クレアさんが思い切り、ミレーユさんの口を塞いでいる。
本当に、仲が良さそうだ。
さっき会った二人もそうだが、この歳になるとそういう光景が微笑ましく映る。

「ええ、わかりました」

「わ、わかられても……」

「とりあえず、よくお似合いですね」

「そ、そうか!」

「ふふ、よかったですね?」

「べ、別に……それより、そろそろ行かないで良いのか?」

時計を見ると、確かに時間が経っていた。
ギルドに戻る頃には、一時間くらい経っているだろう。

「そうですね。さて、ソラはどうするか……」

「そもそもの話、ディアーロを夕飯にするのだろう? 夕飯は断るとして、どこで調理するのだ?」

「あっ、そうでしたね……本当なら、屋台とか出したいんですけど」

あの噴水広場では、屋台があった。
料理人としては、作って食べるのも良いが、やはり皆に食べさせたい欲がある。

「屋台か……ソーマ殿が料理をするなら、何か美味くなる考えがあるのだな?」

「ええ、もちろん」

「だったら決まりだ、私達の方で手はずを整えておこう。屋台に出すには許可もいるが、それもやっておく」

「そ、そんなことまでお願いするわけには……」

「いえ、平気ですよ。私たちには伝手があるので」

「そうだ、遠慮しないでくれ。それに、まだ恩を返せてない」

「……すみません、ありがとうございます」

少し図々しい願いだったが、2人の好意に甘えることにする。

良い加減、料理を提供したいという気持ちは勝てなかった。

だが、これで……ようやく、料理人らしいことができるな。
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