竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界生活を始める

おっさん、美女と歩く

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 結局、ソラをミレーユさんに預けて、クレアさんと宿を出る。

「まずは、ギルドに向かうとしようか」

「ええ、そうですね」

 二人で並んで都市の中を歩いていく。
 その際に、俺はさり気なく車道側にくる。
 馬車なんかが走ってたりして、危険な可能性もあるからな。

「……むぅ」

「どうかしましたか?」

「い、いや、何でもない」

「そうですか?」

「き、気にしないで良い! ただ……こんな格好は久しぶりなのでな。こう、動き辛くて敵わん」

 確かに鎧とは違うだろうなぁ……ん? そういえば、季節感とかどうなってる?

「そういえば、この国の気候ってどうなってますか? あと季節感とか日付とか」

「ああ、言ってなかったか。別に難しい話じゃない。一ヶ月は三十日、一年は十二ヶ月で三百六十日。曜日は火、水、風、地、闇、光となってる。季節は今は涼しい季節で、この先暖かくなる。そして、次に寒くなってくるという感じだ」

「……なるほど、ありがとうございます」

 春→夏→冬→春を繰り返す感じか。
 梅雨とかはないと……まあ、水魔法があるから問題ないと。
 四季はないが、季節感くらいはありそうだ。
 それによって、作る料理も変わってくる。

「今は四月だから、過ごしやすい季節だな」

「そうですね、歩いていて気持ちがいいですし」

 ふと横を見ると、風にたなびく銀髪が目に入る。
 陽の光を浴びて輝く姿は、とても美しい。
 今更ながら……とてつもない美女と歩いているのだな。

「な、なんだ?」

「いえ、綺麗な髪だと思いまして」

 割と率直な感想だ。
 なにせ西洋料理を学んだとはいえ、俺は生粋の日本人だ。
 銀髪の美女など、そうそうお目にかかれるものじゃない。

「……へぁ?」

「ヘアー? ええ、そうですね」

「っ~!! は、早く行くぞ!」

 そう言い、俺を置いていく勢いで歩き出す。

「ちょっ!?」

「日、日が暮れてしまうからな!」

 ……何か間違ったことを言っただろうか?


 ◇

 き、綺麗だと?

 いや、確かにの娘として手入れはしている。

 それに、男性に言われたことがないわけではない。

 なのに、どうして……こんなに動揺している?

 やはり、ミレーユの言った通りだったのだろうか……?

 あれはソーマ殿に出会ってから、初めて宿に着いてからのことだった。

 重たい荷物や鎧を脱ぎ、私達はようやく落ち着くことができた。

「ふぅ……どうにか着いたか」

「流石に駄目かと思っちゃいましたよ。まさか、オーガが現れるなんて」

 安心からか、二人してベットに寝転がる。

「ほんとにな。ソーマ殿と出会ってなかったら、どうなっていたか……間違いなく死んでいたな」

「ええ、そうだと思います。覚悟はしてましたが、私もまだまだ甘かったですね。助けるなんて言ってたのにすみません……」

「何を言うか、ミレーユが付いてきてくれて私は嬉しかった。だが、確かに甘かったな。登録をして、トントン拍子にランクが上がって行って……別にパーティーを組まなくてもやっていけると思ってしまった」

 当然、私たちも最初はパーティーを組もうとしていた。
 しかし、女二人のパーティーに寄ってくる男達がろくなもんじゃなかった。
 見張り役が、私達が寝ているテントには入ろうとするし……女だからという理由だけで、見下した視線を向けられる。
 そんな状態では、パーティーなど組めるわけがない。
 かと言って、女性冒険者が少ないので……それも難しい。

「私達、男の人にとっては魅力的に映るみたいですからね」

「うむ……複雑なことにな。ただ、そんな見た目だけで寄ってくる男など願い下げだ」

「あら、そんな男嫌いなクレアですが……ソーマさんには心を許してますね?」

「……はい? そ、そんなことは……」

 確かに彼は、私に対して自然体だ。
 へりくだるわけでもなく、偉そうにもしない。
 それが異世界人だからなのかわからないが、それが心地いいのは事実だ。
 生まれから敬遠されるか、邪な気持ちで近づかれることが多かったから。

「ふふ、気になってますね?」

「そ、そんなんじゃない」

「よーし……ソラちゃんの服を買うついでに、クレアもお洒落もしましょう」

「な、なに?」

「別に女子らしいことしても、バチは当たりませんよ。それに、息抜きも必要ですから」

「……ちょっ!?」

「決まりですね。では、お洋服を決めていきましょう。ふふ、久々で楽しみです」

「お、おい!?」

 そうして私は、以前のようにミレーユに着せ替え人形にされるのだった。


 ◇

 ……こうして、男性と並んで歩くなど初めてだ。

 私を気遣って、しっかり壁際に誘導するし……洋服や髪のことも褒めてくれた。

 ……実はプレイボーイなのか?

「むむっ……」

「クレアさん? どうしました? まだ何か怒ってます?」

 ただ恥ずかしかっただけなのだが、どうやら勘違いをされたらしい。
 しかし、それを訂正することもできない。
 我ながら、なんと可愛げのない女だ。

「……怒ってなどいない」

「まあ、お詫びに美味しい料理でも作りますから」

「あ、ありがとう……すまぬ」

「いえいえ」

 そう言って、苦笑いをしている。

 私がこんな態度を取っているのに、器の大きい男性だ。

 ……いやいや、私はそんなことにかまけてる時間などない。

一刻も早く手柄を立てるなり、強くならねばなるまい。
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