竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界生活を始める

おっさん、ドワーフに出会う

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 その後、ギルドに到着すると……奥から、すぐに声がかかる。

「ソーマさーん! ちょうど今、終わったみたいですよー!」

「了解です!」

「私はここで待ってるから行くと良い」

 俺が慌ててアリスさんに近づくと、下から声がする。

「おい」

「……はい?」

 遠くからは気がつかなかったが、どうやら人がいたらしい。
 身長は俺の腰の高さほど……小学生高学年くらい。
 しかし、その顔は五十代くらいに見える。
 全体的にずんぐりむっくりしてる体、逞しい鬚……アンバランスだ。
 ……もしかして、これってアレか?

「何をジロジロ見ている?」

「失礼いたしました。田舎者で不勉強で申し訳ないですが、ドワーフ族の方でよろしいでしょうか?」

 俺は姿勢を正し、しっかりとお辞儀をする。
 人の大半は、最初の印象で決まると言われてるからな。

「ふむ……いかにも」

「ありがとうございます。すみません、初めてお会いしたので、少し不躾な視線を向けてしまいました」

「い、いや、構わん……変な奴じゃ。アリスよ、お主の言った通りじゃな」

「ふふ、だから言ったじゃないですか」

 ……話が見えないが、どうやら悪印象は避けられたみたいだ。

「すみません、話が見えないのですが……」

「あっ、すみません。こちらの方は、ドワーフ族のガランさんといいます。鍛治師の傍、解体のお仕事をしているんですけど……あとは、自分でお願いしますねー」

 鍛治師で解体屋さんなのか……それは、是非とも仲良くなりたい。
 するとアリスさんが身を引き、ガラン殿が前に出てくる。

「お初目にかかる、ドワーフ族のガランという」

「初めまして、ソーマと申します」

「ディアーロを倒した者が気になったので、一目見ようとやってきたのだ」

「何か気になる点がありましたか?」

「いや、生きたまま持ってくる者など珍しいのでな。それに、あのツノを折ることができるとは、新人冒険者のできることではないわい。しかし、見て納得した……お主は、只者ではない」

「そんなことはありませんよ、ただのおっさんですから」

「ワシに比べれば、まだまだ若造ではないか。だが、近頃の奴よりは見込みがありそうじゃ」

「あ、ありがとうございます?」

「ふん……今度解体して欲しい物があれば、直接ワシのところに持って来い。そして、装備が欲しければ店を訪ねるが良い」

 それだけ言い、併設してある解体部屋に入っていく。

「……えっと?」

「ふふ、気に入られましたね?」

「そうなんですか?」

「ええ、もちろんです。ガランさんは、気に入らないと話すこともしませんから。腕利きの解体屋にして鍛治師さんですから、仲良くなっておいた方が良いですよー」

「わかりました、今度行ってみますね」

「是非是非~」

 なるほど、ドワーフ族のいうのは職人気質な方が多いのかもしれない。
 しかし、縁が出来たことは嬉しいことだ。




 諸々の代金を受け取り、俺がクレアさんの元に戻ろうとすると……以前俺に絡んできた男が、クレアさんに話しかけている。

「どうする?」

 なにやら言い争ってる感じだが、違っていたら悪い。
 しかし、そうじゃない場合、クレアさんにはお世話になってるからどうにかしたい。

「……まあ、いいか。勘違いだったら、俺が恥をかくだけだ。それに、謝ればいい」

 そうと決めた俺は、素早く相手に近寄り——その肩を掴む。

「おい、何をしている?」

「ああん? なんだ、おっさん——うおっ?」

 肩に圧力をかけて、動けないようにする。

「その方に何か用かな? 俺の連れなんだが?」

「……えぇ!? ソ、ソーマ殿!?」

「こいつの連れ……あれ? 良く良く見たら、あの時のおっさんじゃん」

「ああ、そうだ」

「ま、待て!ソーマ殿! こいつは、一応知り合いだ!」

「あれ? ……そうでしたか。どうもすみませんでした。君も勘違いして悪かった」

 どうやら、俺の勘違いだったらしい。
 だが、何かあってからでは遅いからな。

「い、いや、私は……その」

「ははーん、そういうアレな訳ね? いやいや、お前も」

「うるさいっ!」

「ぐはっ!?」

 その男は腹パンをくらい……地に伏せた。

「お、おい? 平気か?」

「お、おうよ……これくらい日常茶飯事だ。あと、俺にしたことは気にしないでくれ。俺も、あんたに絡んでしまったからな」

「わかった。それではおあいこだな。改めて名乗るが、ソーマという」

 すると、男が何とか立ち上がり……。

「オレの名前はダインっていうぜ。ランクD級の若手有望の冒険者だ」

「自分で言う奴がいるか……」

「う、うるせいやい!」

「なるほど、仲がいいのですね」

 さっき言い争って見えたのは、じゃれていたというところか。
 ……あれ? むしろ、邪魔者は俺だったのでは?

「うむ、ダイン君。悪かった、おっさんが邪魔したみたいだ」

「はっ?」

「ち、違うから! っ~!! ソーマ殿! 解体した魔獣は!?」

「えっ? もう終わったんで、あとは隣に行って受け取るだけです」

「なら行くぞ!」

 そう言って、俺の手を引く。

 そういえば、女性と手を繋ぐのは何年振りだろうか?

 柔らかいなぁ……そんなことが頭をよぎるのだった。
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