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おっさん、異世界に慣れる
おっさん、ソラから学ぶ
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まず思ったことは……異世界に刀があるのかということだった。
鞘から引き抜いてみると、おじさんが稽古場で使っていた刀と遜色ない。
刃渡りは60センチ前後、直刀でもない正真正銘の刀タイプ。
俺の身長的には太刀でも良いが、この刀の方がしっくりきそうだ。
「良いですね……ただ、先ほどの言い方から珍しいのでは?」
「うむ、珍しくはある。ワシの師匠に当たる方が、若い頃にとある人族から依頼を受けたらしい。ただ、この師匠は知らなかったものらしく、中々作るのは大変だったと聞いておる。依頼人の意見をもとに、何とか作り上げたとか」
……その人は、昔の転移者だったのかもしれない。
もしくは、この世界の何処かにそういう文化があったとか。
ただ、それを知る術はない。
ドワーフの寿命はエルフほどではないが、150年くらいと聞いている。
人族が生きていることは難しいだろう。
「そうなんですね」
「うむ。しかし、その作りと完成美は見事だったと。ただ、作るのが難しい上に使い手がいなくての。ワシも師匠に習って作ってみたが、残ったのはこの一振りだけじゃ」
日本刀を作るのは難しいのは当然だ。
以前テレビで見たことあるし、知り合いの方にもいたから。
むしろ、再現したドワーフ族の方が凄い。
それだけで、ドワーフ族の鍛治師としての腕がわかる。
「そうなると……お高いですよね」
「いや、これはタダでやる」
「……へっ? いやいや! それはダメですって!」
「ふんっ、使い手がいない武器など宝の持ち腐れよ。それに、お主には美味い飯を食わせてもらったしの」
確かに、この一ヶ月の間に屋台を何回かやった。
その際にご馳走したり、余った部位を譲ったりはしていた。
ただそれは、あくまでも俺が勝手にやったことだ。
「お父さん、貰っちゃダメなの? このおじさん、お父さんに貰って欲しいって言ってるんだよね?」
「いや、そうかもしれないが……この方に得がない」
「その、難しい話はよくわからないんだけど……わたしは、お父さんにいっぱい優しくして貰ったでしょ? その時に、お父さんは何か損得を考えたの?」
「そんなわけはない」
あの時の俺は、確かに不安ではあった。
見ず知らずの場所に来て、何をして良いのか分からず……。
だが、損得などは考えてなかった。
ただ、この子のために何ができるかと考えて……そっか、そういうことか。
ガラン殿も、そういう気持ちってことか。
「えへへ、知ってるもん。あのね、わたしはお父さんにいっぱい感謝してるんだ。だから、これからわたしなりに沢山返さなきゃなって。えっと……うまく言えないんだけど、お父さんも違う形で返せば良いのかなって」
「小娘……ソラといったか。娘の方がよくわかっておる。ワシは、これをお主に譲りたいと思っただけじゃ。それは、ある意味で自分勝手な話じゃ」
「……そういうことなら、お受けいたします。ガラン殿、感謝いたします」
「ふんっ、そんなもんはいらん。お礼をするなら、腹の足しになるものが良い」
その言葉は口調とは裏腹に、俺が気を使わないように言ってるのだとわかる。
そっぽを向いてるし、明らかに照れているし。
「わかりました。それでは昇格した際には、食事をご用意させてください」
「ふむ、楽しみにしておるぞ。お主の作る料理は美味いからの。さて、武器はいいとして防具じゃ。肉体はアレでも服はダメージを受けるから、きちんとしたものを着ろ。D級ということは、それなりのランクだ。勘違いする後輩達がいちゃいかん」
「……その通りですね。では、そちらを見繕ってくれますか?」
「任せるが良い。お主の体格から言って……よし、わかった」
そう言い、裏の部屋に向かう。
「ソラ、ありがとな」
「ううん! えへへ、役に立てて良かった」
ソラの頭を撫でながら思う。
話だけは聞いていたが、実感したことはなかった。
親が子供に教えられることは、たくさんあるのだなと。
鞘から引き抜いてみると、おじさんが稽古場で使っていた刀と遜色ない。
刃渡りは60センチ前後、直刀でもない正真正銘の刀タイプ。
俺の身長的には太刀でも良いが、この刀の方がしっくりきそうだ。
「良いですね……ただ、先ほどの言い方から珍しいのでは?」
「うむ、珍しくはある。ワシの師匠に当たる方が、若い頃にとある人族から依頼を受けたらしい。ただ、この師匠は知らなかったものらしく、中々作るのは大変だったと聞いておる。依頼人の意見をもとに、何とか作り上げたとか」
……その人は、昔の転移者だったのかもしれない。
もしくは、この世界の何処かにそういう文化があったとか。
ただ、それを知る術はない。
ドワーフの寿命はエルフほどではないが、150年くらいと聞いている。
人族が生きていることは難しいだろう。
「そうなんですね」
「うむ。しかし、その作りと完成美は見事だったと。ただ、作るのが難しい上に使い手がいなくての。ワシも師匠に習って作ってみたが、残ったのはこの一振りだけじゃ」
日本刀を作るのは難しいのは当然だ。
以前テレビで見たことあるし、知り合いの方にもいたから。
むしろ、再現したドワーフ族の方が凄い。
それだけで、ドワーフ族の鍛治師としての腕がわかる。
「そうなると……お高いですよね」
「いや、これはタダでやる」
「……へっ? いやいや! それはダメですって!」
「ふんっ、使い手がいない武器など宝の持ち腐れよ。それに、お主には美味い飯を食わせてもらったしの」
確かに、この一ヶ月の間に屋台を何回かやった。
その際にご馳走したり、余った部位を譲ったりはしていた。
ただそれは、あくまでも俺が勝手にやったことだ。
「お父さん、貰っちゃダメなの? このおじさん、お父さんに貰って欲しいって言ってるんだよね?」
「いや、そうかもしれないが……この方に得がない」
「その、難しい話はよくわからないんだけど……わたしは、お父さんにいっぱい優しくして貰ったでしょ? その時に、お父さんは何か損得を考えたの?」
「そんなわけはない」
あの時の俺は、確かに不安ではあった。
見ず知らずの場所に来て、何をして良いのか分からず……。
だが、損得などは考えてなかった。
ただ、この子のために何ができるかと考えて……そっか、そういうことか。
ガラン殿も、そういう気持ちってことか。
「えへへ、知ってるもん。あのね、わたしはお父さんにいっぱい感謝してるんだ。だから、これからわたしなりに沢山返さなきゃなって。えっと……うまく言えないんだけど、お父さんも違う形で返せば良いのかなって」
「小娘……ソラといったか。娘の方がよくわかっておる。ワシは、これをお主に譲りたいと思っただけじゃ。それは、ある意味で自分勝手な話じゃ」
「……そういうことなら、お受けいたします。ガラン殿、感謝いたします」
「ふんっ、そんなもんはいらん。お礼をするなら、腹の足しになるものが良い」
その言葉は口調とは裏腹に、俺が気を使わないように言ってるのだとわかる。
そっぽを向いてるし、明らかに照れているし。
「わかりました。それでは昇格した際には、食事をご用意させてください」
「ふむ、楽しみにしておるぞ。お主の作る料理は美味いからの。さて、武器はいいとして防具じゃ。肉体はアレでも服はダメージを受けるから、きちんとしたものを着ろ。D級ということは、それなりのランクだ。勘違いする後輩達がいちゃいかん」
「……その通りですね。では、そちらを見繕ってくれますか?」
「任せるが良い。お主の体格から言って……よし、わかった」
そう言い、裏の部屋に向かう。
「ソラ、ありがとな」
「ううん! えへへ、役に立てて良かった」
ソラの頭を撫でながら思う。
話だけは聞いていたが、実感したことはなかった。
親が子供に教えられることは、たくさんあるのだなと。
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