竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界に慣れる

おっさん、迷宮に潜る

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 準備を整えた翌日の朝……いよいよ、昇格試験の日がやってくる。

 少し早めに起きた俺は着替えを済ませ、ソラとミレーユさんと朝食を食べる。

 クレアさんは用事があるとかで、早めに出て行ったらしい。

「こんな朝早くからですか?」

「ええ、そうなんです。ふふ、どこに行ったかは内緒ですからね?」

「ええ、わかってます。そこまで踏み込むつもりはないですよ」

 きっと、俺たちのためにプライベートな時間を割いてしまっている。
 いくら優しい方々で、俺に恩義を感じているとはいえ……やはり、そろそろ出て行く準備をした方が良さそうだ。

「えっ、いや、そこは聞いてくれないと……」

「ん? どういうことですか?」

「あっ、いえ……はぁ、失敗しました」

「えっと……?」

「すみません、なんでもないです。とりあえず、ソラちゃんのことは任せてくださいね」

「ありがとうございます。それでは、お願いいたします」

 すると、それまで夢中でパンを頬張っていたソラが顔を上げ……。

「お父さん! 試験頑張ってねっ!」

「ああ、任せておけ。ったく、顔にジャムがついてるぞ?」

「わわっ!?」

 口の周りについたジャムをぬぐってあげる。
 このオレンジジャムは俺が作ったもので、みんなに好評を得ている。
 ようはマーマレードだが……特に、ソラは気に入ってるらしい。

「ほら、取れたぞ」

「えへへ~」

「ふふ、これは美味しくて良いですね。味気のなかったパンが美味しくなって……皮を使うなんて考えたことなかったです」

「食材を捨てるのはもったいないですからね。結構、こういうものはあるんですよ。また機会があれば、別の物を作りましょう」

「楽しみっ!」

「ええ、そうですね」

 それこそ、渋皮モンブランとか。
 本来使える部位を捨てている可能性は高そうだ。
 俺が店を開いた際には、そういったものをメインにしても良いかもしれない。
 どうせなら、この世界にないものを作りたいし。

「……さて、ではそろそろ時間なので行ってきます」

「いってらっしゃい!」

「健闘を祈ります」

「ええ、行ってきます」

 ソラをミレーユさんに任せ、俺は指定された場所に向かうのだった。




 指定された場所は、都市の北西にある迷宮区域だ。

 食後の運動がてら、軽く早歩きで向かうと……そこには見知った人がいた。

「あれ? ……クレアさん? それに、ダイン殿だったか?」

「おっす、おっさん」

「ソーマ殿、おはよう。ふむ、よく似合っているぞ」

「ありがとうございます」

 俺の今の格好は、Tシャツに黒のレザージャケットを羽織っている。
 下半身は柔軟性のある紺色のズボンを履いている。
 つま先から天辺まで、ガランさんがこしらえてくれたものだ。
 俺自身の防御は必要ないので、洋服自身の耐久性のみを考えたとか。
 滅多なことでは、破れたりしないと太鼓判をもらった。

「ほらクレア、ささっと行こうぜ」

「ああ、分かっている」

「うん? なるほど……お二人で迷宮に潜るところだったと。やはり、仲が良いのですね」

 前は何でもないと言っていたが……これは、やはり良い感じというやつなのでは?
 俺に付き合ってることで、勘違いされたら申し訳ないな。

「……あん? このおっさん、何言ってんだ?」

「な、な……違う! そういうアレじゃない! 我々は先導者だっ!」

「……ああっ! そういうことですか! ……これは失礼しました」

「ったく、誰がこんな男女と……わかった!悪かった! だから殴るポーズをとるな!」

「全く、こんなことなら黙ってるんじゃなかった。びっくりさせようかと思って黙っていたんだが……むぅ」

 そう言い、何やら不機嫌な表情を浮かべた。
  いかん、よくわからないが……これはいかん気がする。 
 早く、話を変えなくては。

「いえ、驚きましたよ。お二人が先導者をしてくれるのですね?」

「おう、そうだよ」

「……うむ」

「そ、それじゃあ、よろしくお願いします」

 若干、クレアさんに睨まれながら、俺は迷宮の洞窟に向かうのだった。

 ……おっさんには、女性の事がわからん。




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