竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界に慣れる

おっさん、試験を受ける~その一~

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 迷宮……それは突然世界に現れたらしい。

 何もない場所に洞窟という形で突如現れ、当初は大変だったらしい。

 見た目の狭さと違って中は異空間になっていて、その規模はものによるが大きい。

 中は迷路になっていて、魔物や魔獣が存在する。

 時に罠や宝、オアシスなども出現するらしい。

 しかも中で死んだ生き物や魔獣は放置しておくと、迷宮が吸収するらしい。

 なんとも、摩訶不思議な現象である。

 コンクリートのような作りの壁を伝いつつ、そんな簡単な説明を受けた。

 ちなみに今は、天井は三メートル、道幅は二メートルくらいの道を歩いている。

 当然、この辺りは隅々まで探索済みなので、こうして話すこともできるというわけだ。

「それでは、理由は解明されてないのですか?」

「ああ、情けないことにな。今でも、各国が解明を進めているが……最近では、別にいいのでは?という結論に至ったところも多い」

「えぇ……それで良いのですか?」

 何か問題や、重大なことがあったらどうするのだろう。
 何も知らない身ではあるが、少し心配になる。

「いや、ソーマ殿が言いたいことはわかる。だが、もう迷宮が現れてから約千年が経っているのだ。ひとまず、人類の利益になること。何より、戦争が減ったのでな」

「利益はわかりますが、戦争ですか?」

「ああ、そうだ。戦いを求める者や名誉を求める者は迷宮で代用が効く。それに、盗賊や山賊なども以前よりはマシになったはずだ。各国も魔物の出現や迷宮の資源によって、他国を襲うことも減ってきたしな……無論、それでもやる馬鹿はいるが」

「なるほど……それは良いことですね。もしかしたら、人類のために神様が用意したものだったり」

「ふふ、そういう考えをする人も多かったようだな。こんなものを作れるのは神様くらいだろうから、信憑性が高いと言われている」

 すると、前を先行するダインさんが舌打ちをする。

「ちっ、お喋りとは余裕だな? 今は、試験中なんだぜ? そろそろ、魔物も出てくる」

「むっ、迷宮の説明も先導者の仕事だ。それに、ソーマ殿はほとんど何も知らないのだ」

「クレアさん、ありがとうございます。ですが、ダイン殿の言う通りですね。すみません、以後は気をつけます」

「お、おう、わかれば良いんだよ」

 クレアさんは、俺が異世界人だから親切に説明してくれただけだ。
 正直言って命の危険は感じないが、それでも油断をして良い理由にはならない。
 俺は気を引き締めて、刀の鞘を握るのだった。



 そして、歩くこと数分……魔物が出てきた。

 緑色の皮膚に人型に近い姿だが、その姿は醜くかった。

 ギルドにある本で読んだが、実在するのだな。

「ギャキャ!」   

「ギャキャー!」

「ギキー!」

 目の前には道を塞ぐように、三匹のゴブリンが立っている。

「ソーマ殿、奴らはゴブリンだ。最弱と呼ばれる魔物だが、とにかく数が多く仲間を呼ぶ習性がある。なので、鉄則は仲間を呼ぶ前に倒すことだ」

「ちっ、 一階にしてはゴブリンの数が多いな。これは、前に来た奴がサボったか?」

「というと?」

「迷宮での魔物は、一定時間が過ぎると復活するのだ。初心者の者には大変なので、慣れている冒険者は間引きをするのが決まりとなっているのだが……それをしてないようだ」

「なるほど、そういう仕組みですか」

「全く、嘆かわしいことだ。自分とて、そうして助けてもらってきたというのに」

 クレアさんのこういう考えは、個人的に好ましい。
 ならば俺も、そうなるように頑張っていこう。
 あの時にあった若い冒険者達をみすみす死なせたくはない。
 そのためには、俺も迷宮に慣れていかなくては

「おっさん、少し下がってろ。俺がや……おい?」

「ダイン殿、お気遣いありがとう。ですが、心配は無用です」

「ダイン、ソーマ殿なら平気だ。あの時に、力の片鱗は見ただろう?」

「……死んでも知らねえからな」

 二人が下がるのを確認し、俺は前に出る。

 そして左手を鞘に添え、抜刀の構えを示すのだった。


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