竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

おとら@ 書籍発売中

文字の大きさ
51 / 64
おっさん、異世界に慣れる

おっさん、ワイバーンを狩る

しおりを挟む
 さて、刀を構えたが……ここからどうするかが問題だ。

 相手は飛んでおり、地上からでは攻撃は届かない。

 ジャンプすれば届くかもしれないが……隙がでかく、カウンターを食らう恐れがある。

 俺自身がダメージを負うことは構わないが、その隙に後ろの二人を狙われてはいけない。

「そうなると……」

「ソーマ殿! くるぞっ! そいつが風の竜、または緑竜と呼ばれる所以の技が!」

「ほう?」

 ワイバーンを見ると、なにやらお腹が膨らみ……体と同じ緑色の玉が吐き出される!
 その大きさはバスケットボール並みだ!

「グァァ!」

「よっと……中々速いな。そして、威力も高いと」

 俺が避けた場所には、小さな穴が出来ていた。

「気をつけろ! 次々くるぞ!」

「ええっ!」

 クレアさんのいう通り、次々と風の玉が吐き出される!
 俺は左右にステップをすることで、それを躱していく。

「お父さん!」

「問題ない! クレアさん! こいつのコレは無限ですか!?」

「いや、そんなことはない! ただ、まだ余力はあると思って良い! 普通なら弓使いや魔法使いで、倒したり怯ませたりするのがセオリーなのだが……すまん、私もこんな格好でなければ。せめて、槍だけでも持って来れば良かった」


「いえ、お気になさらずに。大丈夫です、すぐに片付けます」

 おそらく、倒すこと自体は問題ない。
 あとは、ソラのためにもいかに早く倒すかだ。
 弱い者から狙ったり、空から風の玉を打ってくるということは、頭は悪くなさそう。
 そうなると……挑発するしかないか。

「グァァ!」

「よっと……それでいくか」

 俺は鞘から手を離し、両手をぶらんとさせて棒立ちする。
 更には目を閉じ、自分を無防備な状態にする。

「ソーマ殿!?」

「平気です……よっと」

 目を閉じてても、風の玉は音でわかる。
 なので、避けるのは容易い。

「グカァァァァァ!!」

「くっ!?」

「ひぃ!?」

「どうした? 言っておくが、いくら放っても当たることはないぞ?」

「グ——シャャャャ!!」

 ワイバーンの顔つきが変わり、目が大きく見開く。
 そして、俺を食らおうと急降下してくる。
 どうやら、理性を無くしたらしい。
 俺は脱力した状態から、素早く居合の構えを取る。

「所詮は獣か——シッ!」

「グカ? ……カ、カ……」

 迫り来る首にカウンターを決める。
 すると、頭と胴体が別れ……地に伏せた。
 ガラン殿の刀が良いのか、血一つ付いていない。

「ふぅ、これでよし」

「お父さん! すごい!」

「まあ、上手くいって良かった」

 刀を仕舞い、飛びついてくるソラを抱き上げる。

 「さて、ただ殺してしまいましたね。さすがに、処理をしないとまずいですよね?」

「ああ、そうだな。待て、首だけならどうにかなる。火の魔石があったな……これでよしと」

 クレアさんが荷物から魔石を取り出し、首の部分をバーナーの炎のように炙ってくれた。
 これなら、しばらく血が漏れ出すこともない。
 何より、保存方法としても悪くない。

「ありがとうございます」

「いや、これくらいはな。戦いを全て任してしまったし」

「いえいえ、せっかくの可愛いワンピースが汚れたらいけませんから」  

 ひとまずソラを下ろし、ワイバーンを担ぐ。
 流石に大きすぎて、引きずるような形になってしまう。

「か、可愛い……女の子扱い……」

「クレアお姉ちゃん? お顔真っ赤だよ?」

「き、気のせいだっ! と、とにかく……一度、都市に戻ろう。このことは、ギルドマスターと領主に報告せねばなるまい」

「わかりました。それでは、戻るとしましょう。ソラ、また来くるか?」

「うんっ! 楽しかったっ!」

 危険な目にはあったが、どうやら楽しんでくれたらしい。

 まあ、この世界に完全に安全な場所などない。

 この子のために俺ができることは、それを排除することくらいだな。

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...