竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界に慣れる

おっさん、自問自答する

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 ギルドに入ると、すぐに奥の部屋に通される。

 そして、ハウゼン殿と対面する。

「ソーマ殿、今回はすまなかった」

「いえ、ハウゼン殿が謝る事ではないですよ。ギルドメンバーとは言っても、雇われのようなものでしょうから。全てを把握することは難しいかと」

「そう言ってくれると助かる。しかし、ことはそう単純ではなかったのだ」

「それはどういう?」

「ハウゼン殿もソーマ殿も、まずは座ったらどうだろうか?」

「おっと、俺としたことが慌ててしまったな。まずは、二人ともかけてくれ」

「では、失礼します」

 対面のソファーにはハウゼン殿、となりにクレアさんが座る。

「さて、何から話したものか」

「先ほど、単純ではないと言ってましたが……」

「うむ、そうなのだ。順を追って説明しよう……全ての話は繋がっていたらしい」

 そうして説明される。
 そもそもの発端が、ブライの依頼に発端していたと。
 とある魔物退治の依頼を受けたブライは、依頼自体は成功させたが……本人の不注意で、その際に人々に被害を出してしまったらしい。

「それが、どう繋がるのですか?」

「うむ……その帰りに腹いせにワイバーンの巣を襲ったらしい」

「……なるほど、そういうことですか。その生き残りが、あの森にやってきたと」

「ああ、そういう話に繋がる。そして、これは重大な違反だ。A級冒険者として、無差別に依頼ではない殺戮をするのは認められん」

「なるほど……ところで、相手を殺した俺の処分は?」

「いや、お主には何もない。もともと、攫ったのはあっちだ。あとは、俺の怠慢でもあるので申し訳無いのだが……ザザの証言でわかったことがある。奴らは、以前も似たようなことをやっていたらしい。何人かの行方不明の冒険者はいるが、確かな証拠はなかった」

「まあ、そうでしようね」

「うん? どういう意味だ?」

 別に驚くことじゃない。
 あいつの態度から、それは何となくわかっていたから。
 本当の戦闘狂は、あんなものではない。
 あれはただの、弱者をいたぶりたいだけのしようもない男だ。

「そういえば、ソーマ殿は以前も言っていたな。あいつは、強いやつと戦いたいという男ではないと」
   
「ええ、それはわかっていました。自分より弱い者やそれなりに強い者を倒して、愉悦感に浸りたいだけかと……ただ、一つだけ疑問がありました。そういう奴は人の強さを見抜くのも得意です。それだけに、俺に喧嘩を売ることがないと甘く見ていたのですが……」

「ふむ、まさしくその通りだった。そして、お主に喧嘩を売った理由だが……俺の所為なのだ。あいつにはドラゴンスレイヤーだから絡むなと注意したのだが、それが返って良くなかったらしい」

「どういう意味ですか?」

「あやつも、運良く力を手にした男だったのだ。それで増長して、ああなった経緯がある。故に、同じようなソーマ殿が謙虚なのが許せなかったのだろう」

 ……そういうことか。
 だから、俺も読み違えてしまったのか。
 結局、大それたことはできないだろうとタカを括ってしまっていた。

「……つまり、俺もああなっていた可能性があるってことですね」

「むしろ、あちら側に行ってしまう人間の方が多い。お主は稀有な存在だよ」

「それは、育ての親のおかげですね。強さとは、人に見せるものではないと教わったので」

「うむ、良き親だな……さて、つまらない話は以上だ。お主は、そのままでいい。しかし、殺せるとはな。その後も平然としていたとか」

「いえ、情けないことに吐きそうでしたよ。ずっと迷ってましたし……甘いですよね」

 戦いながらも、ずっと迷っていた。
   本当に、人を殺していいのかと。
 すると、クレアさんが俺の手に触れる。

「いや、そんなことはない。その甘さに、ソラや私は救われたのだ」

「クレアさん……」

「そして私は、甘いお主が好きだ」

「あ、ありがとうございます……」

 頬を赤らめて言うので、俺の方も照れ臭くなってしまう。
 おいおい、一回り下の女性に何を狼狽えているんだ。

「コホン」

「す、すまない!」

「い、いえ!」

 その咳払いで、お互いに再び距離をとる。
 まったく、良い歳して何をやってるんだか。

「それで、ここからが本題でお主には報酬を受け取る権利がある」

「権利ですか?」

「ああ、あいつらの財産と冒険者ギルドからの迷惑料とかを含めたな。それは正当な権利なので、受け取ってくれい」

 ふとクレアさんを見ると、ゆっくりと頷いている。
 どうやら、正当な理由らしい。

「そうなんですね……では、受け取らせて頂きます」

「助かる。さて、話はこんなところだ。あとは、俺達に任せておけ。それくらいはしないと、ギルドマスターとして面目が立たない」

「わかりました。それでは、お願いします」

 少し後悔していた部分はあったが、もう出てこれないなら安心である。

 何より……クレアさんの言葉に救われたような気がする。






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