竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界に慣れる

おっさん、日常に戻る

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それから一日が経ち、平穏な日々が戻っている。

迷ったが、結局ソラには何も伝えないことにした。

ソラに過失があったなら注意もするが、今回はそういう話ではない。

教えることで注意を促そうかとも思ったが……ただでさえ人族を怖がっているこの子に、再び恐怖を植え付けるのは憚れる。

それはもう少し後になってからでも良いだろう。

それまでは、俺が今以上に気をつけていかなくては。

この子が自分の意思と力で生きていけるように。

「お父さん! おはよう!」

「ああ、おはよう。ソラは朝から元気だな」

無事を確かめるように、その頭を撫でる。
本当に、何事もなくてよかった。

「えへへ。お父さん、今日はどうするの?」

「とりあえず、ギルドに呼ばれてるからいくかな。そのついでに解体してもらったワイバーンを取りに行ってくる。ソラは、今日は家にいてくれるか?」

「うんっ! 平気!」

「良い子だ。それじゃあ、朝ご飯を食べに行こう」

流石に昨日の今日で出かけさせるのは、個人的に心配である。
ミレーユさんも依頼から帰ってきたし、宿の中にいれば安全だろう。
……ただ、いつまでも迷惑をかけるわけにはいかない。
こちらの方で、何か手を打っておかないと。





朝ご飯を食べたら、クレアさんと一緒にギルドに向かう。

「クレアさん、改めて昨日はありがとうございました」

「いや、私など大したことしてないさ。そもそも、私の不注意で攫われてしまった……すまない」

「それは違いますよ。攫ったあいつらが悪いのであって、クレアさんに非はありません。クレアさんがいたおかげで、ソラを無傷で救うことができたのです」

それは俺の偽りのない本心だ。
たとえアレでソラに何かあっても、クレアさんを責めるのは筋違いだ。
だったら、自分の不徳さを責めるべきである。

「そう言ってくれると助かる……うむ、だが稽古は無駄ではなかったな」

「どういうことです?」

「そういえば、言う暇もなかったな。実はソーマ殿に稽古をつけてもらったことが活きたのだ。ステータスとは関係ない体の使い方などが。多分、あいつらの計算はそこで狂っていたのだ。まさか、武器を持たない私が三人の暴漢に勝つとは思ってなかったのだろう」

「そうですね。結果的に、クレアさんがギルドに来てくれなかったら……間に合ったかどうか」

「あのままやられてたら、私はきっと慰み者にでもなっていた。つまり、礼を言うのはこちらというわけさ」

「その場合は、俺が助けに行きます」

クレアさんは、俺にとって……既に大事な人になっている。
ソラを救ってくれただけでなく、その人柄が素敵だと。

「そ、そ、そうか! だが、ソラが優先だぞ?」

「うっ……それを言われると」

「ふふ、その言葉だけで十分だ。さあ、ギルドに着いたぞ。話の流れはわかってるな?」

「ええ、分かってます」

「うむ、それもある。あとは、どういう経緯でこうなったか説明をしてくれるそうだ」

「わかりました。では、行きましょう」

……両方を助けないといけない時か。

その時は、どうしたら良いのだろう?

……その辺りのことも考えていかねばなるまい。
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