63 / 64
おっさん、異世界に慣れる
おっさん、料理を仕込む
しおりを挟む
再び一階に戻ったら、キッチンにて準備を始める。
幸い、魔石によってガスや水道も通っているし、冷蔵庫なども完備してあった。
これなら、すぐにでも店を始められるくらいに。
そしてクレアさんと、軽く打ち合わせをする。
「これならすぐにでも始められそうなので、夕飯に皆を呼ぶのはどうでしょうか? できれば、お世話になった方々にお礼がしたいのですが……」
「なるほど、それは良い手かもしれない。それなら、この店が復活したというアピールにもなる」
「あっ、良いですね。今回は知り合いだけで、今後は店としてやりますよってことで看板を作ったり」
「うむ、そうするとスムーズに進みそうだ。そうなると、何から始める? 私で良ければ手伝おう。恥ずかしながら、料理は手伝えそうにないが」
「いえ、クレアさんに……いえ、ではお願いします」
手伝わせるのは悪いと言おうとしたが、何とか思い留まる。
多分、そういうのが失礼になってしまう。
それくらいの関係性は築けているし。
「ふふ、わかってきたじゃないか。それで、何をしたら良い?」
「それでは……まずはミレーユさんとソラに説明をお願いできますか? そのあとはソラを店に、クレアさんは私の知り合いの方々にお声掛けをして頂けると助かります」
「うむ、お安い御用だ。では、私は一度宿に戻るとしよう。そのあとは、私の方でやっておく」
「はい、よろしくお願いします。その間に、俺は夕飯の支度をしときますね。買い物ついでに、昼食も適当に買ってきますか」
「決まりだな。では、早速行動するとしよう」
そうと決めた俺達は、店の外に出て別行動をとるのだった。
そのまま俺は、商店街に向かい買い物をしていく。
メインの肉はあるから、あとは汁物とサラダがあれば良い。
手早く済ませたら、屋台で買ったうどんを買って店に戻る。
すると、そこには既にソラとミレーユさんが立っていた。
「お父さん! ここが新しいお家!?」
「まあ、一応そうなる予定ではある」
「なにやら、一気に話が進んだみたいですね」
「ええ、そうみたいで。とりあえず、二人共中に入りましょう」
興奮するソラを宥めつつ、店内に入ると……。
「わぁ……! 広いねっ!」
「だろ? テーブルもあるが、ぎっちりというわけもないし」
「あら、中々良いお店ですね。なるほど、スペース的にもこれなら平気そうです」
「そう言ってもらえて良かった。それじゃあ、まずは軽く食べましょう。食べ終わったら、お二人にはお掃除をお願いできますか?」
「うんっ! 頑張るっ!」
「はい、任せてください」
「ありがとうございます」
その後手早くうどんを食べて、俺は自分の作業に集中する。
「まずはシンプルが一番だろう」
解体されたワイバーン肉を、さらに食べやすい大きさに切っていく。
それを森でとったパイナップルに漬ける。
こうすることによってブロメラインという成分が、肉を硬くする要素であるタンパク質を分解してくれる。
「別に前に使った椎茸でも良かったけど、こっちの方が甘みも出るにいいだろう。椎茸は、味噌汁の方に使うとするか」
普通は十五分くらいでもいいが、今回はかなり長く漬けることにした。
大体、四時間くらいは漬けたいところだ。
そうすれば、トロトロの食感になるはず。
「次にポットのお湯を沸かして……うん、それにしてもコンロが三つあるのは助かるな」
二十人くらいの料理なら、俺一人でどうでもなる。
幸い、今の俺の体力は半端ないし。
以前は……うん、四十肩とかで悩まされていたけど。
「よし、今のうちに千切りキャベツを用意するか」
包丁でキャベツを切ると、タタタッと心地いい音が耳に入る。
やはり、戦いよりこっちの方が良い。
もちろん、美味いモノを食べるために戦うのは吝かではないが。
「お湯が湧いたら、ワイバーンの骨に注いで……」
ワイバーンの切れ端と骨を鍋に入れ、弱火で煮込む。
これで、美味い出汁が取れるだろう。
「あとは食べる直前に、キャベツの千切りにお湯を注いで……あれってシャキシャキ感が残りつつ、いくらでも食えるんだよなぁ」
その後は買ってきた食材を使って漬物を用意したり、具材だけを先に切っておく。
そこまでやったら、あとは待つ。
「ソーマさん、こっちもひとまず終わりました」
「お父さん! 綺麗になったよ!」
「おお、ありがとな」
元々綺麗だったからか、すんなりと終わったようだ。
ひとまずテーブルについて、休憩を挟むことにする。
「それで、この家に住んで良いとか……」
「ええ、ミレーユさんが良ければ」
「私としては問題ないですよ。ソラちゃんとも、いられますし」
「えへへ、わたしも嬉しいっ!」
「それでは、引き続きよろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ」
二人には迷惑をかけたくなかったが……それは俺のエゴでもあるな。
ソラが喜んでいるし、これで良かったのだろう。
~あとがき~
みなさま、いつも本作を読んでくださり誠にありがとうございます(*´∇`*)
実は本日アルファポリス様より「前世では家族に恵まれなかった俺、今世では優しい家族に囲まれる」という作品が発売となりました。
もしよろしければ、買ってくださると嬉しいです🙇♂️
幸い、魔石によってガスや水道も通っているし、冷蔵庫なども完備してあった。
これなら、すぐにでも店を始められるくらいに。
そしてクレアさんと、軽く打ち合わせをする。
「これならすぐにでも始められそうなので、夕飯に皆を呼ぶのはどうでしょうか? できれば、お世話になった方々にお礼がしたいのですが……」
「なるほど、それは良い手かもしれない。それなら、この店が復活したというアピールにもなる」
「あっ、良いですね。今回は知り合いだけで、今後は店としてやりますよってことで看板を作ったり」
「うむ、そうするとスムーズに進みそうだ。そうなると、何から始める? 私で良ければ手伝おう。恥ずかしながら、料理は手伝えそうにないが」
「いえ、クレアさんに……いえ、ではお願いします」
手伝わせるのは悪いと言おうとしたが、何とか思い留まる。
多分、そういうのが失礼になってしまう。
それくらいの関係性は築けているし。
「ふふ、わかってきたじゃないか。それで、何をしたら良い?」
「それでは……まずはミレーユさんとソラに説明をお願いできますか? そのあとはソラを店に、クレアさんは私の知り合いの方々にお声掛けをして頂けると助かります」
「うむ、お安い御用だ。では、私は一度宿に戻るとしよう。そのあとは、私の方でやっておく」
「はい、よろしくお願いします。その間に、俺は夕飯の支度をしときますね。買い物ついでに、昼食も適当に買ってきますか」
「決まりだな。では、早速行動するとしよう」
そうと決めた俺達は、店の外に出て別行動をとるのだった。
そのまま俺は、商店街に向かい買い物をしていく。
メインの肉はあるから、あとは汁物とサラダがあれば良い。
手早く済ませたら、屋台で買ったうどんを買って店に戻る。
すると、そこには既にソラとミレーユさんが立っていた。
「お父さん! ここが新しいお家!?」
「まあ、一応そうなる予定ではある」
「なにやら、一気に話が進んだみたいですね」
「ええ、そうみたいで。とりあえず、二人共中に入りましょう」
興奮するソラを宥めつつ、店内に入ると……。
「わぁ……! 広いねっ!」
「だろ? テーブルもあるが、ぎっちりというわけもないし」
「あら、中々良いお店ですね。なるほど、スペース的にもこれなら平気そうです」
「そう言ってもらえて良かった。それじゃあ、まずは軽く食べましょう。食べ終わったら、お二人にはお掃除をお願いできますか?」
「うんっ! 頑張るっ!」
「はい、任せてください」
「ありがとうございます」
その後手早くうどんを食べて、俺は自分の作業に集中する。
「まずはシンプルが一番だろう」
解体されたワイバーン肉を、さらに食べやすい大きさに切っていく。
それを森でとったパイナップルに漬ける。
こうすることによってブロメラインという成分が、肉を硬くする要素であるタンパク質を分解してくれる。
「別に前に使った椎茸でも良かったけど、こっちの方が甘みも出るにいいだろう。椎茸は、味噌汁の方に使うとするか」
普通は十五分くらいでもいいが、今回はかなり長く漬けることにした。
大体、四時間くらいは漬けたいところだ。
そうすれば、トロトロの食感になるはず。
「次にポットのお湯を沸かして……うん、それにしてもコンロが三つあるのは助かるな」
二十人くらいの料理なら、俺一人でどうでもなる。
幸い、今の俺の体力は半端ないし。
以前は……うん、四十肩とかで悩まされていたけど。
「よし、今のうちに千切りキャベツを用意するか」
包丁でキャベツを切ると、タタタッと心地いい音が耳に入る。
やはり、戦いよりこっちの方が良い。
もちろん、美味いモノを食べるために戦うのは吝かではないが。
「お湯が湧いたら、ワイバーンの骨に注いで……」
ワイバーンの切れ端と骨を鍋に入れ、弱火で煮込む。
これで、美味い出汁が取れるだろう。
「あとは食べる直前に、キャベツの千切りにお湯を注いで……あれってシャキシャキ感が残りつつ、いくらでも食えるんだよなぁ」
その後は買ってきた食材を使って漬物を用意したり、具材だけを先に切っておく。
そこまでやったら、あとは待つ。
「ソーマさん、こっちもひとまず終わりました」
「お父さん! 綺麗になったよ!」
「おお、ありがとな」
元々綺麗だったからか、すんなりと終わったようだ。
ひとまずテーブルについて、休憩を挟むことにする。
「それで、この家に住んで良いとか……」
「ええ、ミレーユさんが良ければ」
「私としては問題ないですよ。ソラちゃんとも、いられますし」
「えへへ、わたしも嬉しいっ!」
「それでは、引き続きよろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ」
二人には迷惑をかけたくなかったが……それは俺のエゴでもあるな。
ソラが喜んでいるし、これで良かったのだろう。
~あとがき~
みなさま、いつも本作を読んでくださり誠にありがとうございます(*´∇`*)
実は本日アルファポリス様より「前世では家族に恵まれなかった俺、今世では優しい家族に囲まれる」という作品が発売となりました。
もしよろしければ、買ってくださると嬉しいです🙇♂️
56
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~
御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。
十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。
剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。
十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。
紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。
十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。
自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。
その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。
※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる