竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界に慣れる

第1部エピローグ

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 その後は待つだけなので、戻ってきたクレアさんと泊まっていた宿に改めて説明をしたり。

 皆で協力して宿にある荷物を運んだり、簡易的な看板などを作ったりしていた。

 仕込みをしつつ、皿やコップ、フォークやスプーンなども用意し……時間は過ぎていく。

 すると、作業が終わるころ……少し日が暮れてくる。

「ふぅ、これでいいかな。三人とも、ありがとう」

「えへへ、頑張りましたっ!」

「いえいえ、これくらいはお安い御用ですから」

「うむ、受けた恩に比べたらなんて事はない」

「本当に助かりました。では、三人は少し休んでいてください。俺は夕飯の仕上げに入りますので」

 俺だけ席を外し、キッチンに立つ。

「さあ、ささっと仕上げてしまうか」

 まずは、野菜や骨から出汁を取っていた鍋をボールに濾す。
 こした素材は捨てると、黄金色のスープだけが残る。
 それを味見用スプーンですくい、口に含むと……スープなのに噛めるほどの食感を感じた。
 しっかりとアク抜きをし、じっくり煮込んだ証拠だろう。

「うん……美味いな。これなら、そのままでもいけそうだ。足すなら醤油を何滴と、きのこ類とネギを具材にするくらいか」

 鍋にスープを戻し、キノコと刻んだネギを入れる。
 あとは火が通ったら、醤油を入れるだけだ。

「次は千切りキャベツにお湯を注いで……塩で揉み込むと」

 このワンポイントを入れると、ものすごく食べやすくなる。

「終わったら、いよいよメインか」

 鍋に油を入れ、火にかける。
 その間に醤油や酒、ニンニクに生姜やパイナップルのジュースに漬けておいたワイバーン肉を取り出す。
 それに粉にまぶし、よくはたいておく。
 すると、店の前に気配を感じる。

「ソラ! 頼む!」

「はーい!」

「では、我々もやりますか」

「ああ、そうだな」

 休憩をしていた三人も動き出すと……店のドアが開く。  

「あららー、良い匂いがしますね」

「ほう、もう使いこなしているのか」

「きてやったわい」

「へぇー、おっさんは料理人でもあったのか」

 そこにはギルドマスターのハウゼン殿、受付嬢のアリスさん、ドワーフのガランさん、冒険者のダイン殿がいた。
 ここにきてから、俺がお世話になった方々だ。

「皆さん、来てくださりありがとうございます。特にハウゼン殿、こんなに良いお店を本当にいいですか?」

「ああ、あいつも喜ぶだろうよ。手紙を出しておくから、帰ってきたらお主にも見せよう」

「是非、その際はお礼のお手紙を出したいですね」

「ああ、わかった。席は適当でいいか?」

「ええ、お好きな席にどうぞ」

 すると、四人テーブル席に四人が座る。

「さて、少々お待ちくださいね。すぐに仕上げに取り掛かりますので。ソラは飲み物を用意してくれるか?」

「うんっ!」

「お二人は汁ものと付け合わせ、そしてご飯を用意してください」

「うむ、わかった」

「ええ、わかりました」

 そちらは三人に任せて、俺は手を鍋に近づけ温度を確認する。

「……よし、良いだろう」

 おそらく160度前後になっている油に、粉のついたワイバーン肉を投入する。
 すると、ゴァァァ!と心地よい音と共に、香ばしい香りが鼻をくすぐる。

「おっ、美味そうな匂いだわい」

「ああ、そうだな」

「良いですねー」

「……俺はなんで、ここにいるんだ?」

 ……ダイン殿を呼んだのはまずかったか?
 だが、試験でお世話になったしなぁ。

「……まあ、いいか」

 その間にも、テーブルにスープやサラダが用意されていく。
 ソラが一生懸命に動いており、それを二人がフォローしているようだ。
 俺はそれを見守りつつ、唐揚げの様子を確かめる。

「……よし、良いだろう」

 感覚的に達したと思い、鍋から上げると……こんがり色の唐揚げが目の前にあった。
 それを手早く紙に乗せ、余分な油を吸わせる。
 その工程を繰り返し、先にできたものから皿に盛り付けていく。

「お父さん! 終わったよ!」

「よし、偉いぞ。こっちも、今終わったところだ。それじゃあ、席について食べるとしよう」

 仕事を終えた俺たちも四人掛けのテーブルにつく。
 その際に視線を感じていた、早く食べさせてくれという。

「さて、皆さん。今日はささやかですが、お世話になってるお礼に料理をご用意しました。よろしければ、召し上がってください。熱いうちが美味しいので、今すぐに」

「「「「「「「頂きます!!!」」」」」」」

 俺以外の声が一致して、唐揚げを口に入れていく。

「なにっ!? 信じられぬ! あ、あの硬くてパサパサしたワイバーン肉が……柔らかくなっているだと?」

「これは! ……なんという酒に合う料理じゃ! かぁぁー! 進むわい!」

「すごいですねー! 柔らかいし、外はカリカリで……ニンニク醤油も効いていますね」

「これは米が進むぜ! おっさん、やるじゃんか!」

 隣のテーブルからは、そんな声がする。

「お父さん! 熱々でおいちい!」

「これは良いな! まさか、あのワイバーン肉がこんなに柔らかくなるとは……」

「ええ、ほのかな甘みもあって良いですね」

「よかったです。それでは俺も……っ!? うめぇ……!」

 サクッとした食感だが、中は柔らかく口の中で溶けるようだ。
 ほのかな甘みも含め、パイナップル効果のおかげだろう。

「少し油っぽいが、スープを飲むことで調和されてまた食べたくなるな」

「キャベツもいいですね」

「ええ、それが狙いなので」

「よくわかんないけど美味しい!」

「そうかそうか」

 隣に座るソラの頭を撫でつつ、周りを見てみると……そこには懐かしい景色があった。

「かははっ! 美味いのう!」

「全くだ!」

「もう~皆さんうるさいですね」

「かぁー! うまっ!」

 美味しい食事をしながら、気心の知れた人達と食べるのは至福の時間であると思う。

 そして、俺はそれを見るのが一番好きだった。

「お父さん! みんな笑顔だねっ!」

「……ああ、そうだな」

 そうか……俺はこの世界で、もう一度夢を見て良いのか。

 前の世界で叶えきれなかった、料理人として生きていくことを。

 ならば、何も言うことはない……俺はこの異世界で、料理をしながら生きていこう。
 



~あとがき~

みなさま、本作品を読んでくださり誠にありがとうございます。

これにて一章完となります。

引き続き、第二部を書く予定ですので、お付き合いして頂けると嬉しいです。
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感想 12

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みんなの感想(12件)

クマのままだ

やっちゃえお父さん!!

2023.11.26 おとら@ 書籍発売中

ありがとうございます! やっちゃいますか! (*´∀`*)

解除
マッチリ
2023.11.22 マッチリ

いつも楽しく拝読さております。
相馬さーん!はよ!ソラちゃんのところにはよう来てください!!と数日間オロオロしております。明日も配信楽しみにしております!!
できるだけソラちゃんが怖い思いをしませんように…(祈)

2023.11.22 おとら@ 書籍発売中

マッチリさん、ありがとうございます!

出来るだけ早く届けるように頑張ります(*´∀`*)

解除
伊予二名
2023.11.18 伊予二名

53話。なんというか、主人公さんはクッソ甘ちゃん臭がするお人好しだから、命は取らないとか最悪手を打ってしまいそうな気がするなあ。ちゃんと禍根は絶たないといけない。禍根だよ?根っこだ。根は絶やしてはじめて意味がある。でも娘の目の前では人は殺せない予感がするのよね。

解除

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