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初めての飛行機
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そして寂しい一夜が開けて
光り輝く春の太陽が昇った翌日の朝……
*****
「おはようお婆ちゃん!
今日は卒業式だから、私と一緒に学校へ行こうねー」
と笑顔で挨拶をしながら
大きな仏壇に手を伸ばした恵はこのままの勢いで
小さな黒い御位牌を優しく掴んでタオルに包み、
そして鞄の中にそっと位牌を入れた後……
「さてとー!じゃあ今から学校に行ってきますね。
お父さんお母さん、お爺ちゃんお婆ちゃん、今日までお世話になりましたー!」
と元気に最後の挨拶を告げた後で家を出て、
わりと大きなトートバッグを肩に掛けた状態で
近所のバス停を目指して山の坂道を歩き始めていたけれど
そもそも恵はどうして朝から一人ぼっちなのか……
その答えはとても単純な事が原因だから、ここで少し説明をしておこう。
*****
星野恵は3歳の頃に事故で両親を亡くしているが、
両親が居なくなった後は優しい祖父母と一緒に毎日を幸せに生きていた。
しかし祖父は今から2年ほど前に、そして優しいお婆ちゃんも持病の悪化が原因で、
半年前に帰らぬ人となったから……
お世辞にも裕福とは言えない生活をしていた恵に進学の道はなく、
かと言って、過疎化が進む春川村の地場産業は既にオワコンで、
なんの資格も持たない恵が地元で就職する事はとても難しかったので
結局恵は高校を卒業したら その足で都会の繁華街に上京して、
学歴不問のレストランで、コックの見習いとして就職をする事しか出来なかったのだ。
だから今日の卒業式が終わったら、
人生初の飛行機に乗らなきゃいけないのだが……
そもそも今まで一度も都会に行った事がない田舎育ちの恵には、
何か困った事があった時に頼れる様な、都会の知人が全く一人も居ないから
なんだか早くも不安で憂鬱になっていたのに、そんな恵の目の前で、
今日も田舎の小さなバスは、時間通りにピタッと停まったもんだから
*****
このあと急いでガラガラのバスに乗った恵は
いつもの窓際の席にチョコンと座った後すぐに、
今日も長閑でメッチャ静かな春川村の景色を眺めながら……
『お誕生日おめでとう恵ちゃん。今年は なんと!
恵ちゃんの大好きな、紅茶のシフォンケーキを焼いたよ』
『えっ?凄~い!
お婆ちゃんはシフォンケーキを作れるの?ありがとうお婆ちゃん!』
と心の中で無意識に……
幸せだった昔の誕生日を思い出していたけれど
そんな事は関係ないと言わんばかりの暇なバスは全く空気を読まないで
「次は春川高校前~、春川高校前~」といつものアナウンスと共に
ちょっぴり切ない顔の恵をサッサと学校に連れてきたので、
(えっ?もう学校に着いちゃったの?
じゃあ今日は一生に一度の卒業式だから
今から二人で明るく元気に登校しようね~、お婆ちゃん!)
と僅か3秒で、暗い頭を太陽モードに切り替えて
今日も元気にガラガラのバスを降りた恵はこの後すぐに
県下で一番生徒数が少ない春川高校の校舎に向かい
そしていつもの様に教室の中で皆とワイワイ談笑した後、小さな体育館に移動して
勿論このまま卒業式に参加をしたのだが……
残念な事に卒業生が24人『だけ』しか居ない、春川高校の卒業式は、
今年も去年も来年も、きっと未来永劫に
「はいはい 3年生の皆さん、卒業おめでとう!
では以上で卒業証書の授与式を終わります。卒業生退場!」
こうして毎年たったの1時間で式が終了してしまうから
朝の10時にはもう既に、春川高校のOBにされた恵はこのままの勢いで
卒業式とは思えないレベルのショボい花道をテクテクと歩いて正門に向かい、
「恵先輩!卒業おめでとうございまーす!」
「星野会長、都会に行ってもどうかお元気でー!」
「星野終身名誉会長!お餞別の苺キャンディーをどうぞー!」
と次々にエールを贈ってくれるヒーロー研究会の後輩に見送られながら春川高校を後にして……
そしてこの後いざ遂に!初めての空港へと向かったが
*****
人生初の空港に到着しても
正義のヒーローは全く緊張しないので
チビの恵は人の波に紛れながら、
見様見真似で搭乗手続きを終わらせて
その後サッサと羽田行きの格安的な怪しい飛行機に乗り込んで、
そして自分の席にチョコンと座って、
さっき後輩に貰った苺キャンディをガリガリガリガリ噛んでいたら
「それでは皆様お待たせしました。
ただ今より当機は離陸を始めますので、
ブザーが鳴る迄の間はシートベルトをしっかりと締めて下さい。
なお羽田空港到着は、午後3時10分頃の予定となっております」
て感じのアナウンスが流れた後すぐに
ガタガタガタガタ、ズバーン!と派手な音を響かせて、
物凄いスピードで怪しい飛行機が離陸を始めたので
もちろん恵はワクワクしながら小窓の景色を見つめていたが、
その後10分も経たないうちに、スマホ&ゲーム機OKのアナウンスが聞こえたから
(えっ?飛行機の中でゲームをしてもいいの?
じゃあ久し振りに~、脳内彼氏のアンディーと一緒に遊ぼうかな?)
と更にワクワクしながら善は急げと言わんばかりに、
超ボロボロのレトロなゲーム機を鞄の中から取り出して
トキメキだらけの恥ずかしい乙女ゲームを起動させた後すぐに、
いまどき珍しいタッチペンでゲームの画面をツンツンさしながら
隣のお客さんに変な顔で見られながらも威風堂々とした態度で
脳内彼氏のアンディーと一緒に海辺の小さな教会で
そりゃあもうカオスな結婚式を挙げてハートマークを出しまくる!
ムチャクチャ恥ずかしいグッドエンドを華麗に出して一人で遊んでいたけれど、
いつ聞いても優しいアンディの声を聞いているうちに、段々と恵は眠くなってきたので、
「おやおや~?もう眠くなったのかい?僕の可愛いシンデレラ」
て感じ恥ずかしいセリフを聞きながら、
レトロなゲームの電源をオフにして、そしてこのまま静かに寝落ちをしていたが
その後たったの1時間で……
ズドーン!ゴゴゴゴゴーー!
と大きな衝撃音に起こされた恵はこの瞬間もう既に、
人生で初めてのリアルな大都会である、めっちゃ大きな羽田空港に到着していた。
光り輝く春の太陽が昇った翌日の朝……
*****
「おはようお婆ちゃん!
今日は卒業式だから、私と一緒に学校へ行こうねー」
と笑顔で挨拶をしながら
大きな仏壇に手を伸ばした恵はこのままの勢いで
小さな黒い御位牌を優しく掴んでタオルに包み、
そして鞄の中にそっと位牌を入れた後……
「さてとー!じゃあ今から学校に行ってきますね。
お父さんお母さん、お爺ちゃんお婆ちゃん、今日までお世話になりましたー!」
と元気に最後の挨拶を告げた後で家を出て、
わりと大きなトートバッグを肩に掛けた状態で
近所のバス停を目指して山の坂道を歩き始めていたけれど
そもそも恵はどうして朝から一人ぼっちなのか……
その答えはとても単純な事が原因だから、ここで少し説明をしておこう。
*****
星野恵は3歳の頃に事故で両親を亡くしているが、
両親が居なくなった後は優しい祖父母と一緒に毎日を幸せに生きていた。
しかし祖父は今から2年ほど前に、そして優しいお婆ちゃんも持病の悪化が原因で、
半年前に帰らぬ人となったから……
お世辞にも裕福とは言えない生活をしていた恵に進学の道はなく、
かと言って、過疎化が進む春川村の地場産業は既にオワコンで、
なんの資格も持たない恵が地元で就職する事はとても難しかったので
結局恵は高校を卒業したら その足で都会の繁華街に上京して、
学歴不問のレストランで、コックの見習いとして就職をする事しか出来なかったのだ。
だから今日の卒業式が終わったら、
人生初の飛行機に乗らなきゃいけないのだが……
そもそも今まで一度も都会に行った事がない田舎育ちの恵には、
何か困った事があった時に頼れる様な、都会の知人が全く一人も居ないから
なんだか早くも不安で憂鬱になっていたのに、そんな恵の目の前で、
今日も田舎の小さなバスは、時間通りにピタッと停まったもんだから
*****
このあと急いでガラガラのバスに乗った恵は
いつもの窓際の席にチョコンと座った後すぐに、
今日も長閑でメッチャ静かな春川村の景色を眺めながら……
『お誕生日おめでとう恵ちゃん。今年は なんと!
恵ちゃんの大好きな、紅茶のシフォンケーキを焼いたよ』
『えっ?凄~い!
お婆ちゃんはシフォンケーキを作れるの?ありがとうお婆ちゃん!』
と心の中で無意識に……
幸せだった昔の誕生日を思い出していたけれど
そんな事は関係ないと言わんばかりの暇なバスは全く空気を読まないで
「次は春川高校前~、春川高校前~」といつものアナウンスと共に
ちょっぴり切ない顔の恵をサッサと学校に連れてきたので、
(えっ?もう学校に着いちゃったの?
じゃあ今日は一生に一度の卒業式だから
今から二人で明るく元気に登校しようね~、お婆ちゃん!)
と僅か3秒で、暗い頭を太陽モードに切り替えて
今日も元気にガラガラのバスを降りた恵はこの後すぐに
県下で一番生徒数が少ない春川高校の校舎に向かい
そしていつもの様に教室の中で皆とワイワイ談笑した後、小さな体育館に移動して
勿論このまま卒業式に参加をしたのだが……
残念な事に卒業生が24人『だけ』しか居ない、春川高校の卒業式は、
今年も去年も来年も、きっと未来永劫に
「はいはい 3年生の皆さん、卒業おめでとう!
では以上で卒業証書の授与式を終わります。卒業生退場!」
こうして毎年たったの1時間で式が終了してしまうから
朝の10時にはもう既に、春川高校のOBにされた恵はこのままの勢いで
卒業式とは思えないレベルのショボい花道をテクテクと歩いて正門に向かい、
「恵先輩!卒業おめでとうございまーす!」
「星野会長、都会に行ってもどうかお元気でー!」
「星野終身名誉会長!お餞別の苺キャンディーをどうぞー!」
と次々にエールを贈ってくれるヒーロー研究会の後輩に見送られながら春川高校を後にして……
そしてこの後いざ遂に!初めての空港へと向かったが
*****
人生初の空港に到着しても
正義のヒーローは全く緊張しないので
チビの恵は人の波に紛れながら、
見様見真似で搭乗手続きを終わらせて
その後サッサと羽田行きの格安的な怪しい飛行機に乗り込んで、
そして自分の席にチョコンと座って、
さっき後輩に貰った苺キャンディをガリガリガリガリ噛んでいたら
「それでは皆様お待たせしました。
ただ今より当機は離陸を始めますので、
ブザーが鳴る迄の間はシートベルトをしっかりと締めて下さい。
なお羽田空港到着は、午後3時10分頃の予定となっております」
て感じのアナウンスが流れた後すぐに
ガタガタガタガタ、ズバーン!と派手な音を響かせて、
物凄いスピードで怪しい飛行機が離陸を始めたので
もちろん恵はワクワクしながら小窓の景色を見つめていたが、
その後10分も経たないうちに、スマホ&ゲーム機OKのアナウンスが聞こえたから
(えっ?飛行機の中でゲームをしてもいいの?
じゃあ久し振りに~、脳内彼氏のアンディーと一緒に遊ぼうかな?)
と更にワクワクしながら善は急げと言わんばかりに、
超ボロボロのレトロなゲーム機を鞄の中から取り出して
トキメキだらけの恥ずかしい乙女ゲームを起動させた後すぐに、
いまどき珍しいタッチペンでゲームの画面をツンツンさしながら
隣のお客さんに変な顔で見られながらも威風堂々とした態度で
脳内彼氏のアンディーと一緒に海辺の小さな教会で
そりゃあもうカオスな結婚式を挙げてハートマークを出しまくる!
ムチャクチャ恥ずかしいグッドエンドを華麗に出して一人で遊んでいたけれど、
いつ聞いても優しいアンディの声を聞いているうちに、段々と恵は眠くなってきたので、
「おやおや~?もう眠くなったのかい?僕の可愛いシンデレラ」
て感じ恥ずかしいセリフを聞きながら、
レトロなゲームの電源をオフにして、そしてこのまま静かに寝落ちをしていたが
その後たったの1時間で……
ズドーン!ゴゴゴゴゴーー!
と大きな衝撃音に起こされた恵はこの瞬間もう既に、
人生で初めてのリアルな大都会である、めっちゃ大きな羽田空港に到着していた。
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