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銀次とアンコPart1
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そして昔から感が鋭い弟の蓮に
思いっきり図星を突かれた鈍感すぎるコミュ障の玲は
無駄に一人でオタオタしながら自分の部屋に入った後で、
未だにドキドキ動揺している心を落ち着ける為に、
ベランダ側の窓を開けて夜空をボーッと眺めていたら……
(なんか蓮って子供の頃から時々メッチャ鋭いよね……
私みたいなオタクの姉の事なんて放っとけばいいのに
どうして ちょいちょい絡んでくるのかなぁ。
昔は可愛い弟だったのに、最近はなんだかちょっと嫌味っぽいよね~)
と このタイミングで
色々な『訳あり』の事情を思い出したので
今から少し、玲と蓮の関係を説明しておこう。
*****
一条玲の実の母親、一条聖は玲が7歳の時に病気で他界した。
そして母の死後、当時プロゴルファーだった父親の一条龍太郎は
ヨーロッパの大会で優勝した時に通訳をしてくれた、アメリカ人モデルのマリー・ローズと再婚をしたのだが、
この時すでにマリーは6歳の男の子Lenを持つシングルマザーだったので
玲にとっての母親マリーは継母であり、もちろん弟の蓮とも全く血が繋がっていないのだ。
そして1歳違いの蓮は子供の頃はとっても可愛い弟だったのに
玲が中3になった頃から段々嫌味っぽい弟になってきて……
最近では先ほど玲が言われた様な、わりと鋭いツッコミをかましてくる様になったから
(そもそも蓮はリア充なんだから、
私の事なんて放っといてほしいんだよね。
派手系の蓮と違って私は地味子なんだから!)
と心で悪態をつく玲は ここ数年、 弟の扱いに少々手を焼いていたけれど
それは仕方がない事なのだ。なぜなら金髪美人のマリーにそっくりな蓮は
普通に街を歩いただけでスカウトされるレベルのイケメン男子であり
しかも最近は、人気ロックバンドでボーカリストの活動をやっている訳だから、
当然カースト最上位のリア充なのに、それに引き換えヘタレの玲は……
ぼっち、コミュ障、オタクの三冠王を持つ上に
残念な容姿でお馴染みの父親と めっちゃソックリな、
奥二重の小さい瞼&超くせ毛の地味子へと成長したのだから……
(はぁ…なんかイライラするから今からお散歩に行こうかな?)
と心で呟く典型的な日本人の玲は
天然の金髪と天然のブルーアイを武器に持つ、
とにかくド派手な弟の存在を今だけ少し忘れる為に……
(最近連続で外出をしたから身体も動く事に慣れてきたし、
…って事で今から駅前の第一公園に行ってみようかな?
もしかしたら今夜も白麗に逢えるかもしれないし、
じゃあ早速いつもの普段着に着替えをしなくっちゃ!)
こうして玲はベランダ側の窓を閉めてすぐ
いつものジーンズとパーカーに着替えて自転車に乗り、
意気揚々と夜の第一公園に向かったが
*****
誰も居ないシーンと静かな公園に着いた後で
最近リニューアルをした新しいブランコに乗った玲は時々夜空を見上げながら
可愛い子犬の白麗が来てくれるのを待っていたけど
薄暗い街灯がぼんやりと灯る夜の公園に誰かが来る気配は全く無かったので、
なんだか一気にシラけた玲は
そろそろ家に帰ろうと思ってブランコから立ち上がろうとしていたのに
この後いきなり唐突に……!
『へぇ?じゃあ あの女はもう用済みって事ッスか?』
『涼子か?フッ…あの女は既に用済みのボロ雑巾さ』
と若い男性の声が聞こえた瞬間、
なんと、公園の小さな花壇から!
『まぁ確かに、あんな使えねぇ鉄砲玉を仕込んだ涼子はバカですよね
つうか それよりもさぁ…あの女に飼われてなくて本当に良かったッスね、銀次の兄貴』
『だよな~アンコ…さてさて、涼子は今頃どうなっているのかねぇ?
そろそろ手首を切ってるかもなぁ。なにせ あの女は根暗だからな?
互いの利害の一致がなければ、うちの親父はあんな女を相手にしねぇよ。
つうか お前こそ良かったじゃねぇか。根暗の涼子に飼われてなくてよぉ』
て感じのトンデモナイ会話をはっきりと聞いたのだが
あんな狭い所に『二人の男性』が入れる訳は無いのだから……
『ですよねぇ兄貴、ところであの店はどうなるんスか?』
『んん?あぁベルサイユか…まぁこうなった以上は、
店も家も全部璃音に取られて終わりなんじゃねぇの?
龍崎璃音は猫業界でも冷酷な男で通っているからな』
『そーっスよねぇ。璃音の債権回収はエグい事で有名ですよね~。
つうか そんな事よりも銀次の兄貴、例の金塊強奪の件は上手くいきそうなんスか?
こないだ佐竹組長が盗んだ璃音の金塊は、全部フェイクのインゴットだったんでしょ?』
『あぁアレか。ぶっちゃけ あん時はキレた親父が家で暴れて
メチャメチャ大変な目に遭ったんだよ俺。正直あの時はさぁ……
親父の愛人3号に飼われている、気楽なお前が本気で羨ましいと思ったよ~』
と更に盛り上がってきた二人の男の正体は……
花壇の中で香箱座りをしている2匹の猫と言う事になるのだが
この猫達の会話はあまりにもショッキングな内容だったので
『つーかホントに2トンの金塊を龍崎璃音が持ってんの?
それ やっぱガセネタでしょ?だって純金が2トンって事はさぁ……
日本円に換算したら200億以上の価値がある『とんでもないブツ』を
いち個人がドコかに隠しているって事になるんだぜ?だから璃音の件は絶対にガセですよ~銀次の兄貴 』
『クックックック…だからお前は愛人猫なんだよ。
いいかよく聞けアンコ、璃音の親父は去年死んだだろ?
…って事で一人息子の璃音は棚ぼた式のスタイルで
龍崎グループの前会長だった龍崎詩音の個人資産を
ぜーんぶ一人で相続したって事なのさ?わかったかアンコ』
『ヒューヒューッ!!
やっぱり大金持ちはスケールが違うねぇ
俺の飼い主の愛人キャバ嬢とは大違いだよ~』
て感じの会話をしている猫の声を聞きながら
(えっと2トンもの金塊をいったいどうやって盗むつもりなの?
まさかこの猫達が盗むって事なの?いやいや流石にそれは無理じゃん)
とカオスな事を密かに呟く玲はブランコに座ったままの状態で
夜の花壇にひっそりと潜む、怪しい猫達の話に耳をすませていたけれど……
この後も喋り続ける小さな猫の会話の続きは、そりゃあもうトンデモナイ内容だった。
思いっきり図星を突かれた鈍感すぎるコミュ障の玲は
無駄に一人でオタオタしながら自分の部屋に入った後で、
未だにドキドキ動揺している心を落ち着ける為に、
ベランダ側の窓を開けて夜空をボーッと眺めていたら……
(なんか蓮って子供の頃から時々メッチャ鋭いよね……
私みたいなオタクの姉の事なんて放っとけばいいのに
どうして ちょいちょい絡んでくるのかなぁ。
昔は可愛い弟だったのに、最近はなんだかちょっと嫌味っぽいよね~)
と このタイミングで
色々な『訳あり』の事情を思い出したので
今から少し、玲と蓮の関係を説明しておこう。
*****
一条玲の実の母親、一条聖は玲が7歳の時に病気で他界した。
そして母の死後、当時プロゴルファーだった父親の一条龍太郎は
ヨーロッパの大会で優勝した時に通訳をしてくれた、アメリカ人モデルのマリー・ローズと再婚をしたのだが、
この時すでにマリーは6歳の男の子Lenを持つシングルマザーだったので
玲にとっての母親マリーは継母であり、もちろん弟の蓮とも全く血が繋がっていないのだ。
そして1歳違いの蓮は子供の頃はとっても可愛い弟だったのに
玲が中3になった頃から段々嫌味っぽい弟になってきて……
最近では先ほど玲が言われた様な、わりと鋭いツッコミをかましてくる様になったから
(そもそも蓮はリア充なんだから、
私の事なんて放っといてほしいんだよね。
派手系の蓮と違って私は地味子なんだから!)
と心で悪態をつく玲は ここ数年、 弟の扱いに少々手を焼いていたけれど
それは仕方がない事なのだ。なぜなら金髪美人のマリーにそっくりな蓮は
普通に街を歩いただけでスカウトされるレベルのイケメン男子であり
しかも最近は、人気ロックバンドでボーカリストの活動をやっている訳だから、
当然カースト最上位のリア充なのに、それに引き換えヘタレの玲は……
ぼっち、コミュ障、オタクの三冠王を持つ上に
残念な容姿でお馴染みの父親と めっちゃソックリな、
奥二重の小さい瞼&超くせ毛の地味子へと成長したのだから……
(はぁ…なんかイライラするから今からお散歩に行こうかな?)
と心で呟く典型的な日本人の玲は
天然の金髪と天然のブルーアイを武器に持つ、
とにかくド派手な弟の存在を今だけ少し忘れる為に……
(最近連続で外出をしたから身体も動く事に慣れてきたし、
…って事で今から駅前の第一公園に行ってみようかな?
もしかしたら今夜も白麗に逢えるかもしれないし、
じゃあ早速いつもの普段着に着替えをしなくっちゃ!)
こうして玲はベランダ側の窓を閉めてすぐ
いつものジーンズとパーカーに着替えて自転車に乗り、
意気揚々と夜の第一公園に向かったが
*****
誰も居ないシーンと静かな公園に着いた後で
最近リニューアルをした新しいブランコに乗った玲は時々夜空を見上げながら
可愛い子犬の白麗が来てくれるのを待っていたけど
薄暗い街灯がぼんやりと灯る夜の公園に誰かが来る気配は全く無かったので、
なんだか一気にシラけた玲は
そろそろ家に帰ろうと思ってブランコから立ち上がろうとしていたのに
この後いきなり唐突に……!
『へぇ?じゃあ あの女はもう用済みって事ッスか?』
『涼子か?フッ…あの女は既に用済みのボロ雑巾さ』
と若い男性の声が聞こえた瞬間、
なんと、公園の小さな花壇から!
『まぁ確かに、あんな使えねぇ鉄砲玉を仕込んだ涼子はバカですよね
つうか それよりもさぁ…あの女に飼われてなくて本当に良かったッスね、銀次の兄貴』
『だよな~アンコ…さてさて、涼子は今頃どうなっているのかねぇ?
そろそろ手首を切ってるかもなぁ。なにせ あの女は根暗だからな?
互いの利害の一致がなければ、うちの親父はあんな女を相手にしねぇよ。
つうか お前こそ良かったじゃねぇか。根暗の涼子に飼われてなくてよぉ』
て感じのトンデモナイ会話をはっきりと聞いたのだが
あんな狭い所に『二人の男性』が入れる訳は無いのだから……
『ですよねぇ兄貴、ところであの店はどうなるんスか?』
『んん?あぁベルサイユか…まぁこうなった以上は、
店も家も全部璃音に取られて終わりなんじゃねぇの?
龍崎璃音は猫業界でも冷酷な男で通っているからな』
『そーっスよねぇ。璃音の債権回収はエグい事で有名ですよね~。
つうか そんな事よりも銀次の兄貴、例の金塊強奪の件は上手くいきそうなんスか?
こないだ佐竹組長が盗んだ璃音の金塊は、全部フェイクのインゴットだったんでしょ?』
『あぁアレか。ぶっちゃけ あん時はキレた親父が家で暴れて
メチャメチャ大変な目に遭ったんだよ俺。正直あの時はさぁ……
親父の愛人3号に飼われている、気楽なお前が本気で羨ましいと思ったよ~』
と更に盛り上がってきた二人の男の正体は……
花壇の中で香箱座りをしている2匹の猫と言う事になるのだが
この猫達の会話はあまりにもショッキングな内容だったので
『つーかホントに2トンの金塊を龍崎璃音が持ってんの?
それ やっぱガセネタでしょ?だって純金が2トンって事はさぁ……
日本円に換算したら200億以上の価値がある『とんでもないブツ』を
いち個人がドコかに隠しているって事になるんだぜ?だから璃音の件は絶対にガセですよ~銀次の兄貴 』
『クックックック…だからお前は愛人猫なんだよ。
いいかよく聞けアンコ、璃音の親父は去年死んだだろ?
…って事で一人息子の璃音は棚ぼた式のスタイルで
龍崎グループの前会長だった龍崎詩音の個人資産を
ぜーんぶ一人で相続したって事なのさ?わかったかアンコ』
『ヒューヒューッ!!
やっぱり大金持ちはスケールが違うねぇ
俺の飼い主の愛人キャバ嬢とは大違いだよ~』
て感じの会話をしている猫の声を聞きながら
(えっと2トンもの金塊をいったいどうやって盗むつもりなの?
まさかこの猫達が盗むって事なの?いやいや流石にそれは無理じゃん)
とカオスな事を密かに呟く玲はブランコに座ったままの状態で
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