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初めての龍崎サファイアホテル
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そしてこの後、次の目的地へと向かう車はたったの5分も経たないうちに
歓楽街の一等地では結構目立つ『龍崎サファイアホテル』の前でピタッと停まったので、
プレタポルテの時からずっとザワザワしている玲の心臓は今まさに、
歯医者さんの順番待ちをしているみたいにドッキンドッキンしていたが、
そんな事よりも次の瞬間ヘタレの玲は、まるでセレブなお嬢様の様に……
「お疲れ様でございました。サファイアホテルの玄関前でございます。
それでは一条様。お足元を充分お気をつけになって車をお降りくださいませ……」
…って感じの上品な挨拶をしてくれた運転手さんに車のドアを開けてもらったから
「はぃ…ぁりがとぉござぃますぅ…」と今日も元気に震える声で返事をした後この勢いで
「じゃあ早速レストランに行こうか玲」
なんだかとっても穏やかなムードの璃音と二人で高級レストランの中に入ったが……
*****
どの角度から見ても高そうな店へと到着してすぐに
「お疲れでございます!お待ちしておりました社長。
そしていらっしゃいませ御連れ様。では本日ご予約を頂きました
インペリアルルームへとご案内致しますので、こちらの方へどうぞ!」
とハキハキ喋る支配人の男性に案内されたトンデモナイ部屋は、
まるでブルネイの宮殿みたいなキンキラキンの広い広い個室だったから
過去最大級にド派手な部屋をテクテクと歩く地味子の玲は、思わず密かに心の中で
(なんだか凄い部屋だけど……
あれってクリスタルのシャンデリアなのかなぁ)
なんて事を呟きながら、高い天井でキラキラと輝く
豪華なシャンデリアを璃音の後ろでボーッと眺めていたのに……
この後なぜか どう言う訳か、
「ん?どうした玲、天井がどうかしたのか?」と前方を歩く璃音に声を掛けられたので
もちろん玲はいつもの様に「えっと、なんでもないです…」と慌てて話をごまかしたけど、
次の瞬間、玲は璃音にハッキリと……!
「そんなにシャンデリアが綺麗か?」
「……えっ??!」
まるで心を見透かされている様な事をズバッと言われたから
(やっぱりこの人…出来る人だ!きっと私が思っている事なんて、
聡明な璃音さんには何もかもお見通しなんだ…どうしよう!こんなのホントにヤバいよもう!)
と心の中で焦りまくっていたけれど……
そんな事よりも このあと玲は あっと言う間にテーブル席へと到着したので
「そんなに緊張しなくても大丈夫だからココに座れよ」
「あっ、はい。わかりましたー」
と今は一旦、パニック気味の頭を上手にリセットしながら
引きつった笑顔でいつもの様に全然平気なふりをして……
あいかわらずドキドキと高鳴る胸の鼓動を隠して平静を装っていたけれど、
そんな玲の目の前に、いきなり突然、テレビでよく見るソムリエの男性がやって来たので
「失礼します龍崎社長。本日のワインは如何致しましょうか?」
「そうだなぁ……じゃあ今夜はシンデレラワインを貰おうか」
ついついゲコの玲は璃音とソムリエの話に聞き耳を立てていたが
(シンデレラワインなんて名前のワインがあるの?)
なんて ごくごく普通の素朴な疑問でさえも、
毎日必ずコミュ障の玲には質問できる勇気がないから、
「シャトー・ル・パンで御座いますね?かしこまりました」
(えっ?今度はルパンが出てくるの?)
と心の中でツッコミを入れまくるボッチの玲が
珍しいワインの話に食い付く事はなかったけれど
*****
この後すぐにテーブル席へと運ばれたドリンクは
真っ赤に輝くシンデレラワインとオシャレなガラス瓶に入ったウーロン茶だったから
「さてと…玲はまだ未成年だから今日のところは取り敢えず
ワイングラスのウーロン茶を飲んでもらう事になるが、そろそろ乾杯しようか玲」
「はい!よ、よ、よろしくお願いします」
こうして遂に始まった二度目のお食事会で再び璃音と乾杯をした玲は
このままの勢いでカラフルな前菜とコンソメスープを平らげる事が出来たので
ほんのチョッピリ心に余裕が生まれたが……
やはりこのお店は歓楽街の一等地に堂々と聳え立つ
超高級なドレスコードのフレンチレストランなので、やっぱり結局この直後
「失礼します龍崎社長、そしてお待たせしました御連れのお客様、
こちらの料理は本日シェフお勧めの、彩り野菜とマグレ・ドゥ・カナール、
ブラックトリュフのソース・ヴァン・ルージュで御座います」
まるで早口言葉みたいに意味不明な訳の分からない料理が運ばれて
(あのぉ、すいません店員さん。まぐれのカナールって何ですか?
それとこれはお肉?お魚?それとも外国のヤバい物質で作った危険な物体ですか?)
とは言えない貧乏舌の失礼な玲は、早くもキョロキョロと首を振りながら
お魚用の三叉フォークを右手で掴んで冷凍ハンバーグみたいに固まっていたけれど……
そんな庶民丸出しの残念な玲を、ニコニコと見つめる優しい璃音はそっと一言
「大丈夫だ玲。これは鴨のローストだから気軽に食えばいいさ」
なんてメッチャかっこよく
マグレ・ドゥ・カナールの正体が鴨である事を教えてくれたので
「えっ?これって鴨だったんですか?
えっと鴨って食べた事がないけど、これって美味しいのかなぁ」
「鴨は癖がないから食べやすいとは思うが、
一口食べて不味いと感じたら遠慮なく残していいからな」
「わかりました、じゃあ早速このお料理を頂いてみますね~」
こんな風に段々と今の雰囲気に慣れてきて、
そしてこの後も、あんがい結構いいムードで……
(鴨さん、ごめんなさい)
「あっ!これ凄く美味しいですよ璃音さん」
「そうか それは良かったな、じゃあ俺の分も食うか?」
「えっ?いいんですか~じゃなくて…えっと そのぉ、遠慮~しておきますね」
こうして初めてのフランス料理を心から楽しんでいたけれど、
この時のフレンドリーな玲はまだ、まさか璃音がこの後いきなり唐突に!
コミュ障ぼっち高校生の自分に向かって最終兵器を繰り出す事に全く気付いていなかった。
歓楽街の一等地では結構目立つ『龍崎サファイアホテル』の前でピタッと停まったので、
プレタポルテの時からずっとザワザワしている玲の心臓は今まさに、
歯医者さんの順番待ちをしているみたいにドッキンドッキンしていたが、
そんな事よりも次の瞬間ヘタレの玲は、まるでセレブなお嬢様の様に……
「お疲れ様でございました。サファイアホテルの玄関前でございます。
それでは一条様。お足元を充分お気をつけになって車をお降りくださいませ……」
…って感じの上品な挨拶をしてくれた運転手さんに車のドアを開けてもらったから
「はぃ…ぁりがとぉござぃますぅ…」と今日も元気に震える声で返事をした後この勢いで
「じゃあ早速レストランに行こうか玲」
なんだかとっても穏やかなムードの璃音と二人で高級レストランの中に入ったが……
*****
どの角度から見ても高そうな店へと到着してすぐに
「お疲れでございます!お待ちしておりました社長。
そしていらっしゃいませ御連れ様。では本日ご予約を頂きました
インペリアルルームへとご案内致しますので、こちらの方へどうぞ!」
とハキハキ喋る支配人の男性に案内されたトンデモナイ部屋は、
まるでブルネイの宮殿みたいなキンキラキンの広い広い個室だったから
過去最大級にド派手な部屋をテクテクと歩く地味子の玲は、思わず密かに心の中で
(なんだか凄い部屋だけど……
あれってクリスタルのシャンデリアなのかなぁ)
なんて事を呟きながら、高い天井でキラキラと輝く
豪華なシャンデリアを璃音の後ろでボーッと眺めていたのに……
この後なぜか どう言う訳か、
「ん?どうした玲、天井がどうかしたのか?」と前方を歩く璃音に声を掛けられたので
もちろん玲はいつもの様に「えっと、なんでもないです…」と慌てて話をごまかしたけど、
次の瞬間、玲は璃音にハッキリと……!
「そんなにシャンデリアが綺麗か?」
「……えっ??!」
まるで心を見透かされている様な事をズバッと言われたから
(やっぱりこの人…出来る人だ!きっと私が思っている事なんて、
聡明な璃音さんには何もかもお見通しなんだ…どうしよう!こんなのホントにヤバいよもう!)
と心の中で焦りまくっていたけれど……
そんな事よりも このあと玲は あっと言う間にテーブル席へと到着したので
「そんなに緊張しなくても大丈夫だからココに座れよ」
「あっ、はい。わかりましたー」
と今は一旦、パニック気味の頭を上手にリセットしながら
引きつった笑顔でいつもの様に全然平気なふりをして……
あいかわらずドキドキと高鳴る胸の鼓動を隠して平静を装っていたけれど、
そんな玲の目の前に、いきなり突然、テレビでよく見るソムリエの男性がやって来たので
「失礼します龍崎社長。本日のワインは如何致しましょうか?」
「そうだなぁ……じゃあ今夜はシンデレラワインを貰おうか」
ついついゲコの玲は璃音とソムリエの話に聞き耳を立てていたが
(シンデレラワインなんて名前のワインがあるの?)
なんて ごくごく普通の素朴な疑問でさえも、
毎日必ずコミュ障の玲には質問できる勇気がないから、
「シャトー・ル・パンで御座いますね?かしこまりました」
(えっ?今度はルパンが出てくるの?)
と心の中でツッコミを入れまくるボッチの玲が
珍しいワインの話に食い付く事はなかったけれど
*****
この後すぐにテーブル席へと運ばれたドリンクは
真っ赤に輝くシンデレラワインとオシャレなガラス瓶に入ったウーロン茶だったから
「さてと…玲はまだ未成年だから今日のところは取り敢えず
ワイングラスのウーロン茶を飲んでもらう事になるが、そろそろ乾杯しようか玲」
「はい!よ、よ、よろしくお願いします」
こうして遂に始まった二度目のお食事会で再び璃音と乾杯をした玲は
このままの勢いでカラフルな前菜とコンソメスープを平らげる事が出来たので
ほんのチョッピリ心に余裕が生まれたが……
やはりこのお店は歓楽街の一等地に堂々と聳え立つ
超高級なドレスコードのフレンチレストランなので、やっぱり結局この直後
「失礼します龍崎社長、そしてお待たせしました御連れのお客様、
こちらの料理は本日シェフお勧めの、彩り野菜とマグレ・ドゥ・カナール、
ブラックトリュフのソース・ヴァン・ルージュで御座います」
まるで早口言葉みたいに意味不明な訳の分からない料理が運ばれて
(あのぉ、すいません店員さん。まぐれのカナールって何ですか?
それとこれはお肉?お魚?それとも外国のヤバい物質で作った危険な物体ですか?)
とは言えない貧乏舌の失礼な玲は、早くもキョロキョロと首を振りながら
お魚用の三叉フォークを右手で掴んで冷凍ハンバーグみたいに固まっていたけれど……
そんな庶民丸出しの残念な玲を、ニコニコと見つめる優しい璃音はそっと一言
「大丈夫だ玲。これは鴨のローストだから気軽に食えばいいさ」
なんてメッチャかっこよく
マグレ・ドゥ・カナールの正体が鴨である事を教えてくれたので
「えっ?これって鴨だったんですか?
えっと鴨って食べた事がないけど、これって美味しいのかなぁ」
「鴨は癖がないから食べやすいとは思うが、
一口食べて不味いと感じたら遠慮なく残していいからな」
「わかりました、じゃあ早速このお料理を頂いてみますね~」
こんな風に段々と今の雰囲気に慣れてきて、
そしてこの後も、あんがい結構いいムードで……
(鴨さん、ごめんなさい)
「あっ!これ凄く美味しいですよ璃音さん」
「そうか それは良かったな、じゃあ俺の分も食うか?」
「えっ?いいんですか~じゃなくて…えっと そのぉ、遠慮~しておきますね」
こうして初めてのフランス料理を心から楽しんでいたけれど、
この時のフレンドリーな玲はまだ、まさか璃音がこの後いきなり唐突に!
コミュ障ぼっち高校生の自分に向かって最終兵器を繰り出す事に全く気付いていなかった。
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