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早瀬地区の奇跡 前編
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そしてこの後30分で、目的地の駅に到着した玲は、
トムに貰った地図を片手にトットと駅を出た後すぐに
早瀬地区と呼ばれる街を目指して早速歩き始めたが……
*****
やはりココはチンピラ街で有名なトンデモナイ場所なので
(うわぁー!なんか怖い男性が いっぱい歩いてるよ~!)
こうして早くも、ガラの悪い商店街をサッサと見つける事が出来たのに
夜のネオンがギラギラと輝く早瀬地区の繁華街は、思った以上に複雑で
しかも碁盤の目の様に、たくさんの細い道が縦横無尽に交差をしている、
超~面倒くさいカオスな街だったので
(えーっと、この地図に載っている画廊のビルは確か、
さっきの商店街の外れにあった筈~…だよね?)
…と何度も何度も心の中で
残念すぎる独り言を繰り返している方向音痴の哀れな玲は、
さっきから ずー―と目的地のビルを探し求めて歩き回っていたけれど、
歩いても歩いても、どんなに頑張って歩いても
まるで煙に巻かれたみたいに、ドコの道も同じ様な裏通りが続くばかりで
一向に目的地の画廊を見付ける事が出来なかったから
(なんか細い路地ばっかりでメッチャわかりにくいから……
ちょっとドコかで休憩しようかなぁ…丁度あそこに公園があるし……)
こうして早くも迷子になったボッチの玲は、一旦休憩を取る為に
偶然見つけた公園のベンチに座って、何か冷たいドリンクでも飲もうと思ったのだが
やはり今夜は七夕だからなのか……
それともチンピラ街で有名な、早瀬地区の不思議な街に奇跡が起きて、
どこかの誰かが孤独な玲を導いてくれたのか、
それはもちろん誰にもわからないけれど、この後いきなり 迷子の玲は!
*****
誰も居ない真っ暗な公園の近くで見つけた自販機で、
いつも飲んでいるメーカーのアイスティーを一本買って、
そしてそのまま公園の奥までトコトコ歩いて、小さなベンチにチョコンと座り、
さっそく冷えたアイスティーをゴクゴクと飲んでいる最中に……!
『ま~たアンコのホラ話かよ~!
つうかエスパーってなんだよカツオ、マジで意味わかんねぇし~』
『まぁ普通は誰でもそう思うよなぁ…でも聞いてくれよマグロの兄貴、
アイツはどこにでも居る東京のハチワレ猫なのに、アンコの怪しい嘘だけは、
何がなんでも必ず一日で、横浜の港まで流れてくるんだぜ?逆に凄くね?』
(えっ?アンコ?東京のハチワレ猫?
…って事はまさか…愛人猫のアンコの事?)
なんと!塀の上で楽しそうに会話をしている二匹の猫達が
愛人猫のアンコの話で盛り上がっている現場を偶然発見できたので
もちろん玲はこのまま無言でアイスティーを飲みながら、
横浜の可愛い猫達の会話を聞く事にしたのだが、この猫達の話は何故か……!
『いやいや悪いけどカツオ、やっぱり凄いとは思えねぇよ、
だってアイツは子猫の頃から嘘ばっか吐いてる狼猫じゃねぇか!
でもまぁ「あの銀次」が野良猫になった噂は本当の情報だったから
もしもアンコのホラ話が、今回だけはマジな話だとしたら、きっと今夜は
あの「いわく付きのヤバい画廊」で、何かスゲェ事が起きちまうかもな?』
『だよね~、実は俺もそう思ってたんだよマグロの兄貴、
やっぱ早瀬組の画廊って~、昔から絶対に「出る」よね~。
じゃあさぁ、もしもマジで今夜、あの画廊にエスパーが来たら
鉄壁の要塞で有名な早瀬組の画廊は 一体全体どうなっちまうの~?』
『さぁな…あの画廊がどうなるかなんて、俺にはサッパリ想像も出来ねぇけど
もしもアンコが騒いでるエスパーが、ガチのすげぇエスパーだったら そん時は、
残念だけどシェルターの純金は、全部ソイツに盗まれて終わりなんじゃねぇの?』
『そっかぁ~、つまりエスパーが相手だったら
あの龍崎璃音がアッサリと負けちまうって事なのかぁ……
じゃあ やっぱさぁ、一周回ってアンコのホラ話はスゲェって事じゃん!』
こうして なんだか明らかに……
今夜エスパーが画廊にやって来る前提の会話だったから
この猫達の話を聞いているうちに、段々と気持ちが焦ってきた玲は、
無意識にペットボトルのアイスティーをギュッと握りしめた状態で
(ぶっちゃけ佐竹の雇ったエスパーが本物だろうと偽物だろうと、
そんな事はどっちでもいいけど、とにかく私は今すぐ画廊の最上階で、
犯行現場の動画を撮らなきゃいけないのに、その為に急いでココに来たのに!
迷子の私はこんな所で何をしているの?一刻も早く、サッサと画廊を見付けなきゃ!)
と更に焦って携帯電話の時計表示を見てみたが
電話の待ち受け画面には……!
(えっ?もう10時を過ぎてるの?)
残念な事に大きな文字で、夜の10時15分が表示されていたから
この後2秒で石像みたいに固まった玲は、もはや半泣きで
(やっぱ私じゃダメなんだ。所詮私みたいなボッチでヘタレで方向音痴で
しかも人間の友達がゼロとかの、情けない人間が何をやっても結局ダメって事なんだ……)
って感じの超ネガティブな感情に駆られて
がっくりと肩を落とした挙句の果てに、
真っ青な顔で下を向く事しか出来なかったのに
次の瞬間、玲の耳に届いた声は……!
『なる程ね~……じゃあさぁカツオ、
今から画廊に行ってみる?どうせ暇だし』
『おぉいいねぇマグロの兄貴~、
俺も暇だからさぁ、今日は画廊に寄り道しようと思ってたんだよねぇ』
なんと!奇跡の一言だったから!
この瞬間に運命が変わったボッチの玲は、思わず心でガッツポーズを取りながら
(えっ!?今からこの猫達が…早瀬観光の画廊に行ってくれるの?
ありがとうカツオ!ありがとうマグロ!織り姫様もありがとうー!)
と歓喜の声を上げてすぐ、喜んで今からこの猫達の後ろをついて行こうと思ったけれど、
やはり玲の頭は基本的に単細胞なので……
(よかった よかった、本当に私は運がいいよ、やっぱ七夕って最高ー!)
なんて他力本願な事ばかりを考えて、このあと画廊に到着したらその時は、
もう二度と誰にも頼れない非情な現実が待っている事を、もちろん全く考えていなかった。
トムに貰った地図を片手にトットと駅を出た後すぐに
早瀬地区と呼ばれる街を目指して早速歩き始めたが……
*****
やはりココはチンピラ街で有名なトンデモナイ場所なので
(うわぁー!なんか怖い男性が いっぱい歩いてるよ~!)
こうして早くも、ガラの悪い商店街をサッサと見つける事が出来たのに
夜のネオンがギラギラと輝く早瀬地区の繁華街は、思った以上に複雑で
しかも碁盤の目の様に、たくさんの細い道が縦横無尽に交差をしている、
超~面倒くさいカオスな街だったので
(えーっと、この地図に載っている画廊のビルは確か、
さっきの商店街の外れにあった筈~…だよね?)
…と何度も何度も心の中で
残念すぎる独り言を繰り返している方向音痴の哀れな玲は、
さっきから ずー―と目的地のビルを探し求めて歩き回っていたけれど、
歩いても歩いても、どんなに頑張って歩いても
まるで煙に巻かれたみたいに、ドコの道も同じ様な裏通りが続くばかりで
一向に目的地の画廊を見付ける事が出来なかったから
(なんか細い路地ばっかりでメッチャわかりにくいから……
ちょっとドコかで休憩しようかなぁ…丁度あそこに公園があるし……)
こうして早くも迷子になったボッチの玲は、一旦休憩を取る為に
偶然見つけた公園のベンチに座って、何か冷たいドリンクでも飲もうと思ったのだが
やはり今夜は七夕だからなのか……
それともチンピラ街で有名な、早瀬地区の不思議な街に奇跡が起きて、
どこかの誰かが孤独な玲を導いてくれたのか、
それはもちろん誰にもわからないけれど、この後いきなり 迷子の玲は!
*****
誰も居ない真っ暗な公園の近くで見つけた自販機で、
いつも飲んでいるメーカーのアイスティーを一本買って、
そしてそのまま公園の奥までトコトコ歩いて、小さなベンチにチョコンと座り、
さっそく冷えたアイスティーをゴクゴクと飲んでいる最中に……!
『ま~たアンコのホラ話かよ~!
つうかエスパーってなんだよカツオ、マジで意味わかんねぇし~』
『まぁ普通は誰でもそう思うよなぁ…でも聞いてくれよマグロの兄貴、
アイツはどこにでも居る東京のハチワレ猫なのに、アンコの怪しい嘘だけは、
何がなんでも必ず一日で、横浜の港まで流れてくるんだぜ?逆に凄くね?』
(えっ?アンコ?東京のハチワレ猫?
…って事はまさか…愛人猫のアンコの事?)
なんと!塀の上で楽しそうに会話をしている二匹の猫達が
愛人猫のアンコの話で盛り上がっている現場を偶然発見できたので
もちろん玲はこのまま無言でアイスティーを飲みながら、
横浜の可愛い猫達の会話を聞く事にしたのだが、この猫達の話は何故か……!
『いやいや悪いけどカツオ、やっぱり凄いとは思えねぇよ、
だってアイツは子猫の頃から嘘ばっか吐いてる狼猫じゃねぇか!
でもまぁ「あの銀次」が野良猫になった噂は本当の情報だったから
もしもアンコのホラ話が、今回だけはマジな話だとしたら、きっと今夜は
あの「いわく付きのヤバい画廊」で、何かスゲェ事が起きちまうかもな?』
『だよね~、実は俺もそう思ってたんだよマグロの兄貴、
やっぱ早瀬組の画廊って~、昔から絶対に「出る」よね~。
じゃあさぁ、もしもマジで今夜、あの画廊にエスパーが来たら
鉄壁の要塞で有名な早瀬組の画廊は 一体全体どうなっちまうの~?』
『さぁな…あの画廊がどうなるかなんて、俺にはサッパリ想像も出来ねぇけど
もしもアンコが騒いでるエスパーが、ガチのすげぇエスパーだったら そん時は、
残念だけどシェルターの純金は、全部ソイツに盗まれて終わりなんじゃねぇの?』
『そっかぁ~、つまりエスパーが相手だったら
あの龍崎璃音がアッサリと負けちまうって事なのかぁ……
じゃあ やっぱさぁ、一周回ってアンコのホラ話はスゲェって事じゃん!』
こうして なんだか明らかに……
今夜エスパーが画廊にやって来る前提の会話だったから
この猫達の話を聞いているうちに、段々と気持ちが焦ってきた玲は、
無意識にペットボトルのアイスティーをギュッと握りしめた状態で
(ぶっちゃけ佐竹の雇ったエスパーが本物だろうと偽物だろうと、
そんな事はどっちでもいいけど、とにかく私は今すぐ画廊の最上階で、
犯行現場の動画を撮らなきゃいけないのに、その為に急いでココに来たのに!
迷子の私はこんな所で何をしているの?一刻も早く、サッサと画廊を見付けなきゃ!)
と更に焦って携帯電話の時計表示を見てみたが
電話の待ち受け画面には……!
(えっ?もう10時を過ぎてるの?)
残念な事に大きな文字で、夜の10時15分が表示されていたから
この後2秒で石像みたいに固まった玲は、もはや半泣きで
(やっぱ私じゃダメなんだ。所詮私みたいなボッチでヘタレで方向音痴で
しかも人間の友達がゼロとかの、情けない人間が何をやっても結局ダメって事なんだ……)
って感じの超ネガティブな感情に駆られて
がっくりと肩を落とした挙句の果てに、
真っ青な顔で下を向く事しか出来なかったのに
次の瞬間、玲の耳に届いた声は……!
『なる程ね~……じゃあさぁカツオ、
今から画廊に行ってみる?どうせ暇だし』
『おぉいいねぇマグロの兄貴~、
俺も暇だからさぁ、今日は画廊に寄り道しようと思ってたんだよねぇ』
なんと!奇跡の一言だったから!
この瞬間に運命が変わったボッチの玲は、思わず心でガッツポーズを取りながら
(えっ!?今からこの猫達が…早瀬観光の画廊に行ってくれるの?
ありがとうカツオ!ありがとうマグロ!織り姫様もありがとうー!)
と歓喜の声を上げてすぐ、喜んで今からこの猫達の後ろをついて行こうと思ったけれど、
やはり玲の頭は基本的に単細胞なので……
(よかった よかった、本当に私は運がいいよ、やっぱ七夕って最高ー!)
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