Ray of Light ~コミュ障ぼっち女子高生と恋愛スキルゼロの寡黙な天然イケメン社長~

Pink Diamond

文字の大きさ
72 / 96

勇敢な空手オタクの玲 後編

しおりを挟む
そしてこの後、あっと言う間に

絶体絶命のピンチを迎えたヘタレの玲は……

人生で初めて目撃をしたパンチパーマの変なおじさんに

やたらとジロジロ見られながらも平静を装っていたけれど

そんな事よりも、この後いきなり、パンチパーマの後ろから!

*****

「おい涼子~…本当にこの地味な嬢ちゃんが
あの龍崎璃音のイロなのか?あんまパッとしねぇ女だなぁ」

「そうね佐竹さん、私も玲ちゃんの事を美人だなんて思ってないし、
そもそも この程度の顔の女を可愛らしいと思った事は一度もないわ」

なんと突然、Clubベルサイユの荒木涼子が現れたから!

いきなりの登場にビックリしすぎた玲は勿論いつもの様に

冷凍のアジフライみたいにカチカチに固まっていたけれど……

そんな事よりも今の状況は、どう考えても絶対にヤバいから!


(佐竹さんって事はつまり…このパンチパーマのオジサンが
お金の為なら平気で人を殺す、元組長の佐竹次郎なんだから、
とにかく隙を見つけてダッシュで走って逃げた方がいいよね絶対!)

と誰よりも平和的に、

そして建設的にスタコラサッサと逃げる準備を始めていたのに、

この後も佐竹の隣でワナワナと、

今にもキレそうな眼差しの涼子はこのままの勢いで


「えぇ そうよ、10年前に桜ヶ丘でこの女を見た時も
久し振りにClubベルサイユでこの女と再会をした時も……
いつでも私はこの女の事を、地味で平凡なブスだと思っていたわ!」

と大きな声で玲をブスだと誹謗して

しかもこの後ヘタレの玲を指差しながら


「でも璃音が選んだ唯一の女は、この一条玲なのよ!
だから私は許さない…私の璃音を奪った女を、私は一生許さないわ!」

こうして最後は夜叉やしゃみたいな怖い女になったので

初めてClubベルサイユで彼女に会った時の事を思い出した玲はこの瞬間、

もちろん悲しい気持ちになったけど、しかしこんな人生最悪の場面でさえ

対人スキルがゼロの玲は、結局無言で立っている事しか出来ない訳だから

*****

つまり このタイミングで唐突に

「そうかそうか、じゃあそうだなぁ
お前に嬢ちゃんの始末を任せてやるから好きにしな?
さてさて どうする涼子、この嬢ちゃんを外国に売り飛ばすか、
それともシャブ漬けにして裏のソープに沈めるか、どっちがいい?」

な~んてモロに警察案件の

めちゃくちゃヤバい提案をされてもヘタレのコミュ障は案の定、

(はあぁあ??そんなの どっちもイヤに決まってるでしょ!)

…って感じのカッコいい反論は全く言えなかったので、今日も黙って下を向きながら

一体どうやって佐竹達を振り切って、いつダッシュで逃げれば良いのかと……

そんな事を平和な頭で あーだこーだと考えていたのに、この後、いきなり突然に!


「ダメよ佐竹さん、かりに今すぐこの子をソープに沈めても、
あっと言う間に足が付くから、どのみち私達は璃音が雇った殺し屋に、
一番酷い方法で始末される事になるわ。だから証拠を残さない為にも
今すぐ画廊で この女を撃ち殺して、そして今夜中に死体を山に埋めるのよ!」

「んん?今ここでヤルだと?だがまぁ確かに……
璃音はいざとなったらマジで冷酷な男だからなぁ、
じゃあ あんまり気は進まねぇが、とりあえず今ここでるか?」

こうしてめでたく銃殺刑が決定したので

この瞬間に人生最大のピンチを迎えたヘタレの玲は、もちろん無難な脳内で……

(はい?殺す?私を殺して山に埋める?なにそれ?どんなサバゲーなの?
…って言うかこの人達はそもそも一体何者なの?新種の動物?それとも宇宙人?)

って感じの饒舌な独り言を呟いていたけれど、やはり今はそんな事よりも!


(えっと今ここでやるって事はつまりそのぉ……
早い話が今すぐ私は佐竹に殺される訳だから、
この場合はえっと、えーっと、とにかく逃げなきゃダメって事じゃん!)

この段階になってようやく玲は今の状況を理解できたので

もちろん今すぐダッシュで逃げようとしたのだが……

この時すでに佐竹次郎が胸元から出した黒いリボルバーの銃口は

カチッ……!

「おーっと、動くなよ~?嬢ちゃん……」

確実に玲の背中へと向けられていたので

こんな間近で背後を取られた玲は勿論、一歩も動く事が出来ないけれど

だからと言ってこのまま佐竹に撃ち殺される訳にはいかないから、とにかく今すぐ勇気を出して


「あのっ!こんな事をすれば、璃音さんが怒ると思いますよ?
た、た、例え皆さんが!私を殺した証拠を全然残していなくても、
絶対にそのぉ、璃音さんは、えっと かなり!物凄く怒ると思います!」  

と残念すぎる意味不明な命乞いをしてみたが……


「なんだいそりゃ!小学生の弁論大会か?」  

やはり結果は玲の惨敗だったから、

いつピストルの引き金を引かれてもおかしくない危険な状況で

何がなんでも助かりたい玲は、なんとかして奇跡を起こせないものかと

残念な頭をフル回転させていたけれど、これが負の連鎖と言う物なのか、

それとも まさにこれそこが、ヘタレの悲しい運命なのか、

今の玲にとっては、どっちでも変わらない事かもしれないが……

とにかくこの後、唐突に!


「おやおや~可愛いお嬢さん、なんだかとっても残念ですねぇ、
あの時に勇気を出して騎乗位を頑張ってくれたら~命だけは助けてあげたのに~」

なんと、このタイミングで

いきなり大きな階段の踊り場に現れた仮面のエスパーから

「でもまぁ佐竹組長は~貴女の様にパッとしない地味な女には
全くぜんぜん興味はありませんからねぇ。御愁傷様でした~、ウフフフ~」

あいかわらず気持ちが悪い裏声で

早くも『お悔やみ』を言われてしまったので……


(どうしよう、もうこうなった以上は
最強の必殺技であるダブルキックを同時進行で
佐竹とエスパーの後頭部にカマして逃げるしかないよね?)

こうして遂にヤケを起こしたヘタレの玲は

最期までキックにこだわる勇敢な空手オタクとしての人生を

迷路みたいな画廊の中で、ヒッソリと終わらせる覚悟を無理やり決めたけど

やっぱりそんな事よりも、人生の最後は何がなんでも絶対に

大好きな璃音に感謝の気持ちを言い残したかったから……


「悪いな~嬢ちゃん、今夜必ず璃音も殺して
お前の隣に埋めてやるから、二人共あの世で幸せになってくれや」

と最後までムカつく佐竹が何かを喋った後すぐに

シーンと静かな画廊の中で……

カチャッ!とピストルのトリガーが引かれるイヤな音を聞きながら


(ごめんね璃音さん……
やっぱり、ぼっちの私に奇跡は起こせませんでした……
でも私は貴方の事が誰よりも大好きだから、天国に行ったら
毎日ずっと璃音さんの幸せを、草葉の陰から祈っていますね。
じゃあ私は先に行くけど、どうか幸せになってください璃音さん、さようなら……)

まるで少女マンガのヒロインが残した遺書の様に、

大好きな璃音に向かって心の中で感謝と別れを告げた玲は

次の瞬間、一か八かの大勝負をする為に、

ピストルを持った佐竹に背中を向けたままの姿で、意味不明なダブルキックの構えに入ったが

やはりこの後、薄暗い画廊の中は無情にも……

パーン!パーン!パーン! と乾いた3発の銃声が響き渡っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

最後の女

蒲公英
恋愛
若すぎる妻を娶ったおっさんと、おっさんに嫁いだ若すぎる妻。夫婦らしくなるまでを、あれこれと。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

処理中です...