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2月のマリッジブルー
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こうしてこの後も、
次から次へと色んな企業の面接を受けまくったのに
まともな会社からは不採用の封筒がドカドカと自宅に送られて
そしてまあまあ まともな個人経営のお店屋さんにも、
100パーセントの確率で今回はごめんなさいねと優しく断られ、
そしてあっと言う間に1ヶ月が過ぎた頃………
*****
とにかく毎日がブルーで憂鬱な一条玲は遂に今日、
(どうしよう、私本当にどうしよう!潰れかけのパチンコ屋さんと
めちゃめちゃ怪しいダーツの飲み屋が奇跡的に受かっちゃたよ~!
どうして璃音さんが絶対に反対する職場だけしか受からないの?
せめて駅前のケーキ屋さんに受かれば行かせてくれたかも知れないのに~……)
こうしてヤクザ予備軍のパンチパーマが経営している、
今にも潰れそうなパチ屋と、恐ろしいダーツバー以外の店は全て綺麗に落ちたので
もちろん朝から全滅フラグの結果を嘆いて、自分の部屋でゲッソリしながらヘコんでいたのに、
この後ふいに、壁のカレンダーを見てみると、今日の日付けは2月の10日だったから、
(はぁ~…ついに来月の10日で高校卒業かぁ……
桜ヶ丘は私立の学校だから、3年生は明日から自由登校だし、
つまりこれって、もう殆ど卒業している状態って事なんだよね?
じゃあ これからの予定は取り敢えず、今日の夜の7時になったら
璃音さんが私を迎えに来てくれて、明日になれば私の部屋の荷物を全部、
引っ越し業者が璃音さんのマンションに運んでくれて~…その後は……
えっと えーっと、そ、そ、その後は……まさか、何もやる事がない…とか?)
こうして暇人の玲は、まさにこの瞬間、
絶対に気付いてはいけない、めっちゃ残念な事に気が付いたから
(そっ、そんな!じゃあ私はまさか一生、
龍崎プレジデントヒルズの籠の鳥にならなきゃいけないの?
そんなの絶対にイヤだよぉ、どうしよう…私本当にどうしよう!)
と更に焦ってどんどんブルーな気持ちになっていたけれど
そんな玲の気持ちなんて何も知らない時計の針は、夜に向かって規則正しく進んでいたから、
この後すぐに、ピンポーーン!と家のインターホンが鳴り響いて、
そして夜の7時までは、まだ50分も時間があるのに、
全く空気を読まない玲のフィアンセは……
「今日は思ったよりも早く仕事が終わったから、
今から久し振りにサファイアホテルで外食をしないか?」
て感じの上機嫌な態度で、ゲッソリしているプー太郎を迎えにきたので
「はぃ、わかりましたぁ…」とインターホンのモニター画面に小さな声で返事をした玲は
今日も無愛想な態度でリビングのソファーに璃音を案内してすぐに、
「じゃあ、ぃまから出かける用意をするのでぇ、ちょっと待っててくだしゃい璃音さん」
と明らかにションボリしながら自分の部屋に戻った後で
ため息まじりに出掛ける準備を始めたが、そんな事よりも、
ぼーっとしながらクローゼットをガタンと開けた瞬間に!
(本当はどこにも行きたくないよ……
もしも願いが叶うなら、このまま誰とも結婚しないで
このままずっと永遠に、親から毎月お小遣いをもらって、
自分の部屋でアニメを見ながら年をとっていきたいよー!)
こうして早くもメッチャわかりやすいマリッジブルーを発症したので
この後ダラダラと服を着替えて出かける準備を終わらせて、
そしてヤル気なし子の亀みたいにノロノロと階段を下りてすぐ
優しい笑顔の璃音と一緒に無言でトットと家を出て、
しかも今世紀最大級の暗い態度で璃音の車に乗り込んだのに
なんと、この直後!
*****
今夜も白い高級外車の助手席に座った玲は
いつもの様に まごまごしながらシートベルトを付けている最中に
「さてと、レストランに行く前に……
今からお前を連れて行きたい所があるんだが、
まだ夕方の6時半だから、腹は減っていないよな?」
と急に璃音から、
なんだか訳がわからない話をされたので
思わずヘタレもこの後すぐに
「ぁ、はい、まだお腹は空いていないから
晩ご飯とかは全然大丈夫ですけど、えっと そのぉ、ドコに行くんですか?」
と小さな声で聞き返してみたら……
「ん?今からお前を連れて行く場所は彰の店だから
何も心配しなくて大丈夫な所だが、実は彰の店の事務員がな?
来月の末で寿退社をする事になって、それで新しい事務員を探しているんだが、
もしもお前さえ良かったら、高校を卒業した後は彰の店で働いてみないか?」
て感じで唐突に!
円行寺彰の店で事務員をやらないかと誘ってくれたので!
次の瞬間、ここ数ヶ月のブルーな気持ちが僅か2秒でサッパリ消えた、
誰よりも立ち直りが早い単細胞の玲は、さっそく密かに心の中で
(彰の店って何?まさかのClubベルサイユ?
でも事務員って事は、どう考えても違うお店だから……
それってつまり、どんなお店なの?いやいや、そんな事よりも、
きっと璃音さんは、最近の私が次々と面接に落ちまくって
ブルーな気持ちだった事を気付いていたから こうして親切に、
高卒ニートの予備軍だった私に仕事を紹介してくれたんだよね?
て事で、ありがとう璃音さん!来月無事に高校を卒業したら
一生懸命、事務員のお仕事を頑張りたいと思います!)
な~んて事をウキウキしながら考えていたけれど、
そもそもこの時の玲はまだ、今から向かう彰の店を全く知らない訳だから
このあと急いで璃音に向かって明るい声で
「事務員さんの仕事って、コツコツしてていいですよね~。
素晴らしいお仕事を紹介してくれてありがとう璃音さん!」
と元気に返事をしても、
まだ見ぬ彰の真っ赤な店が、どれほどキラキラ眩しくて
そしてどんなに素晴らしい場所であるのかは、もちろんサッパリわかっていなかった。
次から次へと色んな企業の面接を受けまくったのに
まともな会社からは不採用の封筒がドカドカと自宅に送られて
そしてまあまあ まともな個人経営のお店屋さんにも、
100パーセントの確率で今回はごめんなさいねと優しく断られ、
そしてあっと言う間に1ヶ月が過ぎた頃………
*****
とにかく毎日がブルーで憂鬱な一条玲は遂に今日、
(どうしよう、私本当にどうしよう!潰れかけのパチンコ屋さんと
めちゃめちゃ怪しいダーツの飲み屋が奇跡的に受かっちゃたよ~!
どうして璃音さんが絶対に反対する職場だけしか受からないの?
せめて駅前のケーキ屋さんに受かれば行かせてくれたかも知れないのに~……)
こうしてヤクザ予備軍のパンチパーマが経営している、
今にも潰れそうなパチ屋と、恐ろしいダーツバー以外の店は全て綺麗に落ちたので
もちろん朝から全滅フラグの結果を嘆いて、自分の部屋でゲッソリしながらヘコんでいたのに、
この後ふいに、壁のカレンダーを見てみると、今日の日付けは2月の10日だったから、
(はぁ~…ついに来月の10日で高校卒業かぁ……
桜ヶ丘は私立の学校だから、3年生は明日から自由登校だし、
つまりこれって、もう殆ど卒業している状態って事なんだよね?
じゃあ これからの予定は取り敢えず、今日の夜の7時になったら
璃音さんが私を迎えに来てくれて、明日になれば私の部屋の荷物を全部、
引っ越し業者が璃音さんのマンションに運んでくれて~…その後は……
えっと えーっと、そ、そ、その後は……まさか、何もやる事がない…とか?)
こうして暇人の玲は、まさにこの瞬間、
絶対に気付いてはいけない、めっちゃ残念な事に気が付いたから
(そっ、そんな!じゃあ私はまさか一生、
龍崎プレジデントヒルズの籠の鳥にならなきゃいけないの?
そんなの絶対にイヤだよぉ、どうしよう…私本当にどうしよう!)
と更に焦ってどんどんブルーな気持ちになっていたけれど
そんな玲の気持ちなんて何も知らない時計の針は、夜に向かって規則正しく進んでいたから、
この後すぐに、ピンポーーン!と家のインターホンが鳴り響いて、
そして夜の7時までは、まだ50分も時間があるのに、
全く空気を読まない玲のフィアンセは……
「今日は思ったよりも早く仕事が終わったから、
今から久し振りにサファイアホテルで外食をしないか?」
て感じの上機嫌な態度で、ゲッソリしているプー太郎を迎えにきたので
「はぃ、わかりましたぁ…」とインターホンのモニター画面に小さな声で返事をした玲は
今日も無愛想な態度でリビングのソファーに璃音を案内してすぐに、
「じゃあ、ぃまから出かける用意をするのでぇ、ちょっと待っててくだしゃい璃音さん」
と明らかにションボリしながら自分の部屋に戻った後で
ため息まじりに出掛ける準備を始めたが、そんな事よりも、
ぼーっとしながらクローゼットをガタンと開けた瞬間に!
(本当はどこにも行きたくないよ……
もしも願いが叶うなら、このまま誰とも結婚しないで
このままずっと永遠に、親から毎月お小遣いをもらって、
自分の部屋でアニメを見ながら年をとっていきたいよー!)
こうして早くもメッチャわかりやすいマリッジブルーを発症したので
この後ダラダラと服を着替えて出かける準備を終わらせて、
そしてヤル気なし子の亀みたいにノロノロと階段を下りてすぐ
優しい笑顔の璃音と一緒に無言でトットと家を出て、
しかも今世紀最大級の暗い態度で璃音の車に乗り込んだのに
なんと、この直後!
*****
今夜も白い高級外車の助手席に座った玲は
いつもの様に まごまごしながらシートベルトを付けている最中に
「さてと、レストランに行く前に……
今からお前を連れて行きたい所があるんだが、
まだ夕方の6時半だから、腹は減っていないよな?」
と急に璃音から、
なんだか訳がわからない話をされたので
思わずヘタレもこの後すぐに
「ぁ、はい、まだお腹は空いていないから
晩ご飯とかは全然大丈夫ですけど、えっと そのぉ、ドコに行くんですか?」
と小さな声で聞き返してみたら……
「ん?今からお前を連れて行く場所は彰の店だから
何も心配しなくて大丈夫な所だが、実は彰の店の事務員がな?
来月の末で寿退社をする事になって、それで新しい事務員を探しているんだが、
もしもお前さえ良かったら、高校を卒業した後は彰の店で働いてみないか?」
て感じで唐突に!
円行寺彰の店で事務員をやらないかと誘ってくれたので!
次の瞬間、ここ数ヶ月のブルーな気持ちが僅か2秒でサッパリ消えた、
誰よりも立ち直りが早い単細胞の玲は、さっそく密かに心の中で
(彰の店って何?まさかのClubベルサイユ?
でも事務員って事は、どう考えても違うお店だから……
それってつまり、どんなお店なの?いやいや、そんな事よりも、
きっと璃音さんは、最近の私が次々と面接に落ちまくって
ブルーな気持ちだった事を気付いていたから こうして親切に、
高卒ニートの予備軍だった私に仕事を紹介してくれたんだよね?
て事で、ありがとう璃音さん!来月無事に高校を卒業したら
一生懸命、事務員のお仕事を頑張りたいと思います!)
な~んて事をウキウキしながら考えていたけれど、
そもそもこの時の玲はまだ、今から向かう彰の店を全く知らない訳だから
このあと急いで璃音に向かって明るい声で
「事務員さんの仕事って、コツコツしてていいですよね~。
素晴らしいお仕事を紹介してくれてありがとう璃音さん!」
と元気に返事をしても、
まだ見ぬ彰の真っ赤な店が、どれほどキラキラ眩しくて
そしてどんなに素晴らしい場所であるのかは、もちろんサッパリわかっていなかった。
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