愚者の狂想曲☆

ポニョ

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1章

愚者の狂想曲 13 盗賊団との激闘

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俺とマルコは、馬のリーズに乗って、マルガを探す為に、森の中を走っている。



「マルコ。この村の周辺で、最低6人位の女の人を隠せる所を優先的に頼む!」

「それって…ハンスさんは、マルガ姉ちゃんの他に、あの6人の女の人も連れてったって事?」

「恐らくね。皆眠って居た時に、居なくなってる事と、直前にハンスさんに会ってる事を考えるとね」

俺の話に、なるほどと頷くマルコ。



「しかし、本当にハンスさんが、マルガ姉ちゃん達を連れて行った理由が解ら無いね」

「ああ、俺もそれが1番解らない所なんだ」

そう、理由が解らない。ハンスは、特段マルガに興味があった様には見えなかった。

マルガに興味のある男は、大体顔に出ている。男特有の目線であったり等、解りやすいのだ。

それに、他の女性を5人攫っている。その事も引っかかる。合計6人もの女性をどうするつもりなのか…



「葵兄ちゃん!アレが最初の山小屋だよ!」

マルコが指をさす方を見ると、小さな山小屋が見える。



「彼処は狩りをする時の中継地点なんだ。6人位なら入れるし、暖炉なんかもあるしね」

俺とマルコは山小屋の近くまで行く。俺の感知範囲である30m以内に入っても、気配はなかった。居ないとは思うが、セレーションブレード付きの黒鉄マチェットを鞘から引き抜き、山小屋の中を確認するが、やはり誰も居なかった。



「どうやら、此処ではなさそうだ。マルコ他の場所を頼む」

「じゃ~次は、西の山小屋に行ってみよう!」

再度馬のリーズに乗り、森の中を走って行く。

マルガ…何処なんだ…

拐われてから、半日近くは経っているが、朝までハンスは村に居た事を考えれば、まだそう遠くには、連れて行かれていない可能性の方が高い。

酷い事をされていなければ良いけど…。もしマルガが汚されていたら…俺は…

そんな事を考えると、握っている手綱に力が入ってしまう。

…無事で居て欲しい…そう思いながら、マルコが知っている、マルガがいそうな場所を探すが、発見出来無かった。



「此処にも居ないんだ…って事になると、一番遠い川向うの山小屋が最後だけど…彼処は、モンランベール伯爵家御一行様達が襲われた所に近いんだよね…」

「…つまり、盗賊の集団に、会う可能性が高いって事だね?」

マルコは静かに頷き肯定する。



「とりあえず傍まで行こう。マルコは危なくなりそうなら、馬のリーズと待機して貰う。その子屋に行ってみよう」

マルコは頷き、その小山まで案内してくれる。



モンランベール伯爵家一行を全滅させた盗賊団。あのラウテッツァ紫彩騎士団、第5番隊、隊長のハーラルトを、一方的に倒した頭がいて、大きな結界魔法陣を、発動出来るだけの力を持った上級のメイジもいる。

出来ればそんな奴等を相手にしたくはない。考えるだけで、悪寒がする。今向かっている山小屋は、その盗賊団と遭遇する可能性が高い。

もし、盗賊団が、マルガ達の存在に気がついて、攫われてしまっていたら…

マルガは陵辱されずにいるだろうか…そんな盗賊の集団に…特に頭とメイジに勝てるだろうか…

そんな事を、頭の中でグルグルと考えていたら、件の山小屋に就いた様で有った。



「此処にも居ないんだ…山小屋は此処で最後なんだけど…」

「他に、隠せれそうな場所はないのマルコ?」

「う~ん。ちょっと思い出してみる!」

マルコは必死に思い出している。その時、横の茂みが揺れる



「ガサガサガサ」

その音に、咄嗟に腰につけていた、セレーションブレード付きの黒鉄マチェットを鞘から引き抜く。

そんな警戒している俺とマルコの前に現れたのは、見覚えのある、可愛く小さな甘えん坊、白銀キツネのルナであった。



「ルナ!」

俺の声を聞いたルナは、タタタと走って来て、俺の胸の中に、勢い良く飛び込んで来た。そして、小さな頭を、俺の胸にグリグリして擦りつけてくる。



「お前無事だったんだな!今迄何処に居たんだ?」

俺はそんな事を言いながら、ルナの頭を撫でていると、ルナは何か言いたそうに、俺を見つめている。

そう言えばルナは何故こんな所に居るんだ?白銀キツネのルナは、主人であるマルガの元を、片時も離れたがらない甘えん坊。って事は…マルガがこの近くに居るのか!? 

でも、俺の感知範囲30m以内には、マルガらしき気配はない。つまり、ルナだけで彷徨っていたと言う事。ルナは、例えマルガに何か有っても、マルガの傍から離れる事は無いだろう。

そのルナが一匹で行動する…俺はそこに、マルガの意図があると確信した。



「ルナ。お前のご主人様は何処だ?マルガの居所を知っているね?」

俺の言葉に反応したのか解らないが、ルナは胸から飛び出すと、テテテと5m位離れて此方を振り返って見ている。まるで、付いて来て欲しいとでも言っている様だった。

俺はマルコを抱え上げ、馬のリーズに乗せる。俺もリーズに乗り手綱を握る。それを見たルナはタタタと走りだした。俺はルナの後をについて、リーズを走らせる



「あ…葵兄ちゃん!何処に向かって走ってるの?」

「恐らくルナは、マルガの居場所を知っている。ルナの後を付いて行くと、きっとマルガに辿り着ける!」

「ほ…本当なの?白銀キツネの子供に、そんな事が出来るの!?」

「ああ!マルガと白銀キツネのルナは特別な関係なんだよ!」

俺の得意そうに笑い顔に、戸惑っているマルコ。

ルナは、先を走りながらも、俺達が付いて来てるか、時折此方を振り返りながら、走っている。

これで、マルガに辿り着ける!…マルガ待っててね…すぐに行くから!

俺は必死に、ルナの後を付いて行くのだった。











「も…もうやめて…くだ…さい…」

「ヘヘヘ!ほら!口が開いてるぞ!」

「ムグ…むうんん…」

「ハハハハ!こいつだんだんと、口でするのが上手くなってきてやがるぜ!」

男達に犯されながら、口に男の物を、無理やり咥えさせられている女性。

残りの女性も、この女性と同様に、口、膣、尻の穴に、男のモノを放り込まれ、苦しそうに喘いでいる。マルガとリーゼロッテ、そして、アロイージオは、目を細めて、それを眺めていた。

恐らく、村の襲撃が始まるまで、女達を犯し、楽しむのであろう。そんな事を、3人が考えていた時に、アジトに馬に乗った人が入って来た。マルガ達は、その馬に乗っている人物の顔を見て、驚愕する。



「ハ…ハンスさん!な…何故此処に!」

マルガ達がハンスに戸惑いの表情を向けていると、アジトの奥から声がした



「そりゃ~こいつが、俺達の仲間だからだ!」

そう言いながら、ハンスの方に向かうベルント。驚いているマルガ達を見て、ニヤッと嗤い、



「何も驚く事は無いぜ?亜種の少女や、そこの5人の女達を連れて来れたのも、こいつのが手引きしたからだからな!」

「ど…どういう事ですか!?ハンスさん!」

マルガは戸惑いながら叫ぶが、ハンスは返事をしなかった。ハンスは、馬に乗せて来た男を、地面に下ろす。



「あん?なんだ~この男は?」

ベルントが、男を足で小突きながら言うと



「これは…俺の兄…副村長のエイルマーだ。村を脱出して、港町パージロレンツォの守備隊に助けを求めようとしたので、気を失わせて此処に連れてきた」

ギュっと拳を握らせて、淡々というハンス



「なるほど…約束を守ったって訳だな?」

ベルントはニヤニヤしながらハンスに言うと、ハンスは何も言わずに、ベルントをきつい目をして見つめているだけであった。



「まあいい。こいつが副村長ね…使えるか?おい!こいつを縛って、水をかけて起こせ!」

ベルントの命令に、兵隊がエイルマーを後ろ手に縛る。そして、バケツに汲んだ水を、エイルマーの頭に掛ける。ビクっと体を悶えさせるエイルマー。



「ゲホッ!ゲホホ!…グッゲホ!」

むせながら意識を取り戻すエイルマー。そして、身動きが取れなくなっているのに気が付いた



「な…なんだ?何が…。此処は…どこだ?」

キョロキョロ辺りを見回すと、兵隊達に犯されている女達が目に入り、それが、居なくなった村の女達だと解り絶句しているエイルマー。



「ここは、盗賊団のアジトで、エイルマーさんも、あの女性達も、私達も、攫われて、捕らえられてしまったんですよ」

その声にエイルマーが振り向くと、マルガ、リーゼロッテ、アロイージオが、同じように縛られて、座らされている。そして、自分が今どの様な状況に居るか理解したエイルマー。



「兄さん…済まない…こうするしか…無かったんだ…」

エイルマーが振り返ると、ハンスが俯きながら、立っていた。



「ハンス!!これは一体どういう事なんだ!?なぜこんな事をしているんだ!答えろ!ハンス!!」

困惑の表情を浮かべて、声高にハンスに問いかけるエイルマー。



「それは、こいつが、俺達と取引をしたからだ!」

エイルマーにニヤっと笑いながら言うベルント



「取引だと!?何の事だ!ハンスはお前達と、一体どんな取引をしたんだ!」

「それはな、お前達イケンジリの村人を生かす事を条件に、お前達村の人間を、全て俺達の奴隷にさせて、絶対服従させると言う取引だ」

「なぜ…そんな取引を…」

ハンスを見るエイルマー。ハンスは握った拳に力を入れて



「仕方無かったんだよ!村人を守る為には!……俺は少し前に、たまたま、このアジトに向かう盗賊達を見つけたんだ。様子を窺う為に後をつけたら、気が付かれて捕まって、此処に連れて来られた。その時に、こいつらの目的を聞かされた。それは、村人を全員殺して、イケンジリの村を乗っ取ると言うものだった。当初、こいつらにとって必要なのは、イケンジリの村と言う器だけだった。しかし、村人を奴隷にして、働かせる事で、この村でのこいつらの生活や、収入もある程度維持出来るのではないかと、俺が提案した。だから殺すよりも、奴隷にして働かせる代わりに、村人の命は奪わないで欲しいってね…」

顔を歪めながら言うハンス。そんなハンスに、瞳を揺らしてエイルマーは



「じゃ…なぜ、俺が港町パージロレンツォに向かうのを、止めてこんな事をしたんだ?港町パージロレンツォから守備隊が来るまで待てなかったのか?」

「…今日の襲撃の時に、村人が1人でも減っていたら、皆殺しと言う約束だったんだ。港町パージロレンツォからの守備隊が来る迄、早くても2日…その間に村は全滅さ…。だから兄さんを、港町パージロレンツォに、行かせる訳には行かなかったのさ…」

俯きながら言うハンスに、やりきれない気持ちでハンスを見るエイルマー。そんな2人を見て卑しい哂いを浮かべるベルントが



「ま~此れから俺達が奴隷としてお前達を生かせてやる!感謝するんだな!だが…一つだけ、変更があるんだハンス」

そう言って、ハンスの傍に寄るベルント。その言葉を聞いて、顔をきつくするハンス



「そんな!約束が違うじゃないか!これ以上の変更は無いって言っていたじゃないか!」

「ああ…本当ならそうなんだがな…。お前…俺達が襲う予定に無かった、モンランベール伯爵家一行を、何故襲撃したかの理由を知ってるか?」

ニヤっと哂いながらハンスに言う。ハンスは目をキツくして



「…そんな事は…知らない…」

「…これを見ても知らないと言えるのか?」

ベルントは懐から、何かを取り出して、ハンスの足元に投げつけた。それは、直径10cm弱の、装飾された青銅のメダルであった。メダルの中心には、鷹が羽ばたく姿が装飾されている。

その青銅のメダルを見たハンスは、一筋の汗を流す。同じく青銅のメダルを見たアロイージオは



「そ…そんなメダルを手に入れる為に…我がモンランベール伯爵家、ラウテッツァ紫彩騎士団、第5番隊を、全滅させたのか!?そのメダルに…そんな価値が有るとは思えないが…」

考える様に言うアロイージオ



「貴族の坊ちゃんは知らねえのさ!このメダルの重要性がな!このメダルはな、『沈黙の守護』って言ってな、このメダル自体は、素材も青銅で価値は無いが、バルテルミー侯爵家には、重大な意味がある。このメダルは、バルテルミー侯爵家に助けを求めるって言う意味のメダルなのさ。もし、俺達がこのメダルを奪わずに、バルテルミー侯爵の元に渡っていたら、このメダルを見たバルテルミー侯爵は、きっとこの村に何かあったと思い、すぐに守備隊を村に派遣していただろう。だから、それを阻止する為に、モンランベール伯爵家一行を襲撃したのさ!」

きつい目をしながら、ハンスを見ているベルント。ハンスは、軽く溜め息を吐きながら



「…それが何なんだ?私と何か関係があるのか?」

「お前このメダルを、港町パージロレンツォの領主、バルテルミー侯爵に献上品だといって、渡して貰える様に、そこの貴族の坊ちゃんに渡しただろ?内緒でこっそり渡して欲しいとか言ってな!」

「しょ…証拠は有るのか!」

「証拠か…そこの貴族の坊ちゃんに、拷問して吐かせても良いんだが、貴族の坊ちゃんは大事な人質だからな。なるべく手荒な事はしたくねえ。…オイ!こっちにこい!」

ベルントがそう叫ぶと、アジトの奥から、一人の女声が現れた。その女性を見て、ハンスもエイルマーも同時に声を上げる。



「「メラニー!!」」

ハンスと、エイルマーがその女性を見て驚いていると



「こいつにな、お前の事を監視させていたんだ。どんな細かい事でも報告しろってな」

メラニーを引き寄せて、肩を抱くベルント



「何故だ!何故君が、そんな男の言いなりになっているんだ!」

そう言って、ひどく狼狽しているエイルマーの顔を見て、何かに気が付いたベルント



「…ほう…そうか…なるほど。お前が、この女の許嫁の男か?噂は聞いてたぞ。この女からな!」

「貴様…メラニーに何をした!答えろ!」

「何って…俺はこの女…メラニーの初めてを奪って女にした、初めての男だからな!」

そう言ってメラニーをきつく抱く。そう言われたメラニーは、両手で顔を抑え、



「やめて!!こ…この人の…エイルマーの前で…そんな事言わないで…」

そう叫んで、泣き崩れるメラニー



「この女はいいぜ!村の近くで攫って、犯してやったんだ!それで、犯された事を秘密にするのと、お前を殺さないと言う条件で、そこのハンスの監視をさせていたのさ!」

「貴様あああああああ!!!!」

その言葉に発狂したエイルマーが、ベルントに飛びかかろうとするが、兵隊達に押さえつけられた。



「ま~そうキリキリするなよ。たまになら、このメラニーを抱かせてやってもいいんだぜ?俺は心が広いからよ!このメラニーも喜ぶだろうしな!」

そう言って、メラニーの両腕を掴み、身動きの取れない様にして、スカートを捲し上げる。そして、パンツを一気に引き下げる。



「ほら見ろよ!こいつの恥ずかしい所を!俺がついさっき中に出してやった、精子が流れ出てるだろ?タップリと出してやったからな!」

「うおおおおおお!!!!」

そう言って卑猥な笑みを浮かべながら言うベルント。エイルマーは発狂しながら叫び声をあげ、動こうとするが、押さえつけられて動けなかった。



「ハンス…そういう訳で、お前がそのメダルを、貴族の坊ちゃんに渡して居たのは、知っていたんだ。まさか自分が、村の中で監視されていたなんて、解らなかっただろう?」

そう言って、メラニーをエイルマーの方に放り投げ、ハンスの傍まで行くベルント。



「…お頭からの伝言だ。『約束は守ってやる』だそうだ。良かったな~」

そうハンスに告げて、腰に付けていたロングソードを引き抜き、一気にハンスの胸を貫く。呻き声を上げ、胸から夥しい血を流すハンス。心臓を一突きにされていた。



「これが最後の変更だ。『裏切り者はいらねえ!』だそうだ。欲をかかなきゃ、助かったものを…」

ベルントは、ロングソードを引き抜くと、ハンスはダラっと脱力して地面に倒れる。ハンスの体の回りに、血溜まりが出来て行く。



「ハンスーーー!!!」

エイルマーが涙を流しながら、名前を叫ぶが、ハンスは既に事切れていた。



「き…貴様!殺す!!!メラニーだけじゃなく、ハンスまで!!!!」

ギリリと歯ぎしりしながら、エイルマーがベルントに言い放つ。そんなエイルマーを嘲笑いながら、



「ま~そうキリキリするなって言ってるだろ?此処からは、エイルマー?だったか?お前と取引してやる」

「と…取引だと!?」

「そうだ!エイルマーおめえが、ハンスの代わりに、此れから村の事を管理するって言うなら、そこのメラニーをおめえに返してやろう。勿論俺も、もう手はださねえ。俺達が村人を管理するより、おめえが管理した方が、村人も安全だと思うんだがな。ま~裏切ったら、村人も殺すし、メラニーもおめえも、殺しちまうがな!どうする?」

ベルントの話を聞いて、エイルマーは、顔を激しく歪めている。そして、死んでいるハンスに目をやって、涙を浮かべて泣きながら



「本当だな…メラニーを俺に返し、村人の命も取らないと約束してくれるんだな?」

ギリっとベルントを睨むエイルマー。ベルントは卑しい哂いを浮かべながら



「ああ。約束してやるよ」

「解った…取引に…応じる…」

力なく小さく呟いたエイルマーに、メラニーが抱きついた。



「ごめんなさい…私…ごめんなさい…貴方に私が汚された事を、知られたくなくて…貴方が殺されたくなくて…私…」

大粒の涙を流しながら、そう言うメラニーに、



「ううん…君の事を、気が付けなかった僕を許してくれ…メラニー」

涙を流しながらメラニーに答えるエイルマー。そのやりとりを見ていた、マルガ、リーゼロッテ、アロイージオの3人も、やりきれない表情で2人を見ていた。

そんな鬱屈した雰囲気の中、何かがマルガの元に走り寄ってきた。それはマルガの大切な、小さな友達だった。

その小さな友達、白銀キツネのルナと目を合わせたマルガが、歓喜の表情に染まる。



「どうやら…私が貴方に予言した事が、此れから貴方に、起こる様ですね!」

ベルントをキッと睨みながら、不敵に笑うマルガの視線の先には、黒髪に黒い瞳の少年が立って居た。











「マルコ。ルナは何処に向かって走っているか、予想出来る?」

「う~ん。この先はビブルレ山の方角だね。あ…そう言えば、ビブルレ山には、オイラ達も近づかない、何百年前に捨てられた廃坑があるよ!そこは大きい廃坑らしいから、6人の女性を隠す位、余裕だと思う!」

なるほど…マルコの話なら、確かに行けそうだ。近くの人も近寄らない廃坑なら、隠すのには打って付けだ



「やっぱり!ほら!廃坑が見えてきた!」

マルコの声に前を見ると、山の麓近くに、洞窟の入り口の様な物が見える。俺は、馬のリーズの速度を落として、近くの森の中で馬のリーズを止める。ルナも俺が止まったのに気がついて、近寄ってきた。



「マルコは此処でリーズと待機していてくれ。時間が経っても俺が帰って来なかったら、リーズに乗って、港町パージロレンツォの守備隊に報告してきてくれ」

「でも、港町パージロレンツォにはエイルマーさんとハンスさんが向かっているはずだけど?」

「そうだけど、マルガ達を攫ったハンスさんと一緒なんだろ?ひょっとしたらハンスさんが何かやって、エイルマーさんが港町パージロレンツォに、着けない可能性もある。解った?」

俺の言葉にコクっと頷くマルコ。



俺はゆっくりと、廃坑の入り口に近寄って行く。警戒LVはMAX状態。半径30m以内には脅威は感じない。俺の動きに合わせる様に、ルナが付いてきている。本当に賢い白銀キツネだ。入り口に見張りは居ない様だ。

俺は気配をなるべく消しながら、廃坑の奥に入って行く。どうやら、此処に誰かが居るのは確かな様だ。

沢山の足跡に、廃坑の壁には、篝火の後、馬の足跡や馬車の轍まである。注意深く奥に進むと、広い空間が見えてきた。そこは、天井が少し地上につながっていて、光が差し込んでいて明るかった。その光の中で、40人近い人の気配がする。もっと近寄って見て、俺は息を呑んだ。



その広い空間には、沢山の兵隊の様に武装した男達が、数人の女達を犯している。

俺は直感で、こいつらが、モンランベール伯爵家、ラウテッツァ紫彩騎士団、第5番隊を全滅させた盗賊団だと思った。犯されている女は5人。兵隊達の数は30人位。逃げて来た、生き残りのラウテッツァ紫彩騎士団、第5番隊の兵士の言っている内容と合致する。

兵隊達の様子を見ていた俺の横で、ルナがソワソワしたような感じで、俺の顔と、広間の方を何度も見ていた。

俺はルナの視線の先の方を見ると、そこにはマルガとリーゼロッテ、アロイージオが居た。



『マルガ!無事に生きている!リーゼロッテさんも!良かった…』

心の中で安堵する俺。しかし、どうする?こいつらはラウテッツァ紫彩騎士団、第5番隊を全滅させた盗賊団。あのハーラルトを殺った奴や、結界魔法陣を発動させれる上級のメイジも居る。



『とりあえず、霊視でどれ位の奴等なのか、視てみよう』

俺は広間に居る盗賊団を、次々と霊視で視てゆく。

LV30からLV40台迄の、戦士系しか居ない…。あのハーラルトを殺った奴や、結界魔法陣を発動させれる上級のメイジは、確認出来ない。つまり此処には居ない。



何処かに出かけている可能性が高い。助けるなら、ややこしい奴等が居ない今がチャンス!

俺は、ルナの体をポンポンと軽く叩き、マルガの元に戻るように、少し前にやると、ピュ~っとマルガの元に走って行った。ルナとマルガは顔を見合わせている。そして、マルガが俺の方を見た。

その顔は、なんとも言えない嬉しそうな顔だった。俺はゆっくりと、広間の中に入って行く。

すると、マルガの傍にいた男が、マルガの視線の先の俺を発見して、此方に歩いて来た。



「お前…何者だ?此処に何しに来たんだあ~?」

その男は、俺を上から足元迄見て、嫌らしい哂いを浮かべている。その男の行動に、女を犯していた男達も、此方に振り向いていた。



「此処に何をしに来ただって?そんな事決まってるじゃないか…俺の奴隷と、知り合い達を返して貰いに来た」

俺がそう告げると、可笑しそうに嗤う男



「アハハハ!そうか!お前がこの亜種の少女のご主人様か!こいつはいい!探す手間が省けたってえもんだ!まさか、お前の方から、ノコノコやって来るとはな!お前を殺して、この亜種の少女を、俺達の奴隷にしてやるよ!オイ!オメエら!」

その声に、女を犯していた男達も、その男の傍に集まって来た。広間の入り口に居る俺を、取り囲む様に、移動を始める。



「おめえも、俺達の奴隷になるなら、命は助けてやってもかまわねえんだがな。どうする?それとも、この人数相手に、その腰につけている、剣…いやマチェットか?それで、俺達と戦おうって気じゃあるめえ?どう考えても、おめえに勝ち目はねえぞ?」

きつい目をしながら、俺に卑しい哂いを向ける男。その言葉に、マルガは心配そうに俺を見つめていた



「そうだな…普通に戦ったら、まず無理だね。でも…此処からは普通の戦いじゃない…お前達は…一方的に俺に殺されて終了だ!」

俺のその淡々とした言葉に、男の傍にいる兵隊が



「ベルントさん!こいつ舐めてやすぜ?殺しちまってもいいですか?」

「ああ。こいつも現実が解ってないみてえだからな。さっさと殺っちまえ!」

ベルントは、俺をギラっとした目で見ながら、部下の兵隊にそう告げると、3人の剣を持った、武装した兵隊が俺の前に出て来た。



「へへヘ。切り刻んで殺してやる。行くぞ!」

そう言い放って、3人の兵隊は、剣を構えて飛び掛かって来た。

しかし、3人の剣先は、俺には届く事は無かった。



「ガオン!ガオン!ガオン!」

3つの爆発音の様な、乾いた音が、アジトの広間に響き渡り、木霊する。

斬り掛かった3人の兵隊達は、頭に風穴を開けて、血を流しながら地面に倒れ絶命した。

一瞬の出来事に、誰もがその場を動けないでいた。

それは俺が両手に持っている、あるモノによって、もたらされた結果であった。



ソレは特殊なカタチをしていた。特徴の有る容姿をしている短剣の柄の部分には、細い筒の様な物と、引き金、撃鉄、弾倉の様な物がある。その細い筒の様な物の穴からは、煙が微かに出ていた。その両手に握られているソレは、短剣と拳銃が、融合した様な容姿をしていた。



「この銃剣2丁拳銃が、俺の真の武器、グリムリッパーだ。S&G社製、ベルギアンボウイナイフスタイルピストル。別名、回転式リボルバーナイフだ。グリムリッパーっていうのは、俺がこの2丁につけた名前ね」

そう、俺は、あの変なゲームを起動させた時、この2丁拳銃で遊んでいた。その後、この世界に飛ばされる時に、両手に持っていた。そして、そのままこの世界に持って来てしまった、イレギュラーな品物である。



この世界に持ってこれた物は、衣料以外は全てマジックアイテム、魔法具になっている。この2丁拳銃も例外なく、マジックアイテムになっていた。

魔法で強化され、魔力や気力、そう言った精神的エネルギーを弾に変換して、発射する事が出来る。精神的エネルギーが尽きるまで、弾を撃つ事が出来る魔法拳銃だ。ナイフ部分も、強化されており、非常によく斬れる。

しかも、この銃剣二丁拳銃は召喚武器と呼ばれる物で、通常時は、自分の体の中に収納出来る。武器と契約する事により、武器と融合する事によって、自在に召喚出来る様になるのだ。



「な…なんだあその武器は!?只の…短剣じゃないのか!?や…野郎ども!一斉にやってしまえ!」

ベルントのその掛け声とともに、兵隊達は一斉に襲い掛ってきた。



「ちょっと急いてるから、即効で終わらす!!」

俺は気勢を上げる。俺の体は、薄紅色のオーラで包まれる。兵隊達の攻撃を、瞬時に躱し、兵隊達の頭に、銃剣2丁拳銃のグリムリッパーの銃撃を、次々と入れていく。



「ガガガオン!ガガオン!」

連続の銃声が、兵隊達の声に混じって聞こえている。その銃声がする度に、兵隊達は頭や心臓を撃ち抜かれて絶命して行く。兵隊達は、一瞬で殺される仲間を見て、恐怖し後退りする。

そこには、15人近い兵隊達の死体が転がっていた。



「なんなんだその武器は!?しかも…お前から出ているオーラは…気戦術の身体強化か!?クソ!お頭の居ない時に、上級者の相手とはな!」

ベルントや兵隊達は、顔を歪めている。俺は一歩前に出て



「…さっきも言ったけど、急いでるから、とっとと終わらせる。今度は此方から行くぞ!」

銃剣2丁拳銃のグリムリッパーを構え、次々と射撃して行く。兵隊達はその顔を恐怖に染めながら、頭を撃ち抜かれて絶命する。辺りには血を流して倒れている兵隊の死体の山となっていた。

そして、最後にベルントのみとなった。その顔を蒼白にして、俺を見るベルント。



「ひ…た…助けて…くれ!お…俺は、お頭の命令で、やっただけなんだ!」

顔を引き攣らせているベルントの頭に、銃声と共に風穴が開く。ベルントは頭から血を吹き出し倒れて絶命した。



「だから、急いでるって言ったろ?お前の言葉なんか、聞いている時間は無いの」

最後のベルントが死んだ事で、兵隊達は全滅した。

俺はマルガの元に小走りに向かう。そして、後ろ手に縛られている縄を斬る。



「ご主人様~~!!!」

そう叫んでギュッと俺に抱きつくマルガ。マルガの暖かく柔らかい体が、俺を包み込む。

ふとマルガの顔を見ると、左頬が赤く腫れ上がっている。



「…マルガ、左頬大丈夫?それに…変な事されなかった?」

「ハイ!大丈夫です!マルガは変な事はされていません!ご主人様~会いたかったです~」

瞳に涙を溜めながら、俺の胸に顔を埋めるマルガ。優しく頭を撫でてあげると、涙目になりながら、ニコっと微笑んでいる。良かった…マルガが汚されなくて…本当に良かった…

そんな俺とマルガを見ていたリーゼロッテが



「意外と…お強いんですね葵さんは。ちょっとビックリしました」

「ハハハ。リーゼロッテさんも大丈夫ですか?酷い事されませんでした?」

「私とマルガさんは、奴隷商に売られる予定だったみたいで、酷い事は一切されていません」

ニコっと微笑むリーゼロッテだが、肩から血が流れている。



「ご主人様、リーゼロッテさんが、私を庇ってせいで、怪我を…」

マルガはそう言ってシュンとなっている。俺はマルガの頭を撫でながら



「またリーゼロッテさんに、マルガを助けて貰ったみたいですね。本当にありがとうございます」

そう言って微笑むと、リーゼロッテも同じように微笑んでくれている。俺は、アイテムバッグから、傷薬と包帯を取り出す。



「マルガ。この傷薬と包帯で、リーゼロッテさんの傷を、治療してあげて。リーゼロッテさん、マルガに治療して貰ったら、マルガの左頬に薬を塗ってやってくれますか?俺は他の人の縄を切って来ますから」

リーゼロッテは頷き、マルガは、ハイ!と右手を上げて返事をすると、俺から傷薬と包帯を受け取って、リーゼロッテの治療を始めた。俺は縛られている、アロイージオの所に行くと、そこにはエイルマーと数人の女性が震えていた。



「やっぱり、エイルマーさんも、捕まっていたんですね」

俺はそう言って、エイルマーの縄を斬る。エイルマーは複雑な表情で



「やっぱりと言う事は、弟のハンスの事を…」

「ええ、僕を睡眠薬で眠らせたのはハンスさんですからね。そのハンスさんと一緒に向かったと、聞いていましたのでね。さ!アロイージオ様も、縄を切ります!」

アロージオの縄を切っている時に、ハンスの死体が目に入ってきた。その事に気がついたエイルマーが、此れまでの事を説明してくれる。その表情は、悲しみに染まっていた。

それを聞いて、部屋でハンスから聞いた言葉を思い出す。



『私は…この村を何としても守りたいんです。ですから…この村を守る為なら…なんでもします』

あの言葉は、もう既に後に引けない者の言葉だったのであろう。全てを掛けた言葉…



「とりあえず、話は此処を出て、村に帰ってからにしましょう。この盗賊団の頭が帰って来ない内に、急いで此処から脱出します。皆さん馬車に集まって下さい!」

俺の言葉に、一同は馬車に集まる。



「葵殿のその武器が有れば、この盗賊団の頭も倒せるんじゃないのかい?」

アロイージオのその言葉に、一同も頷き肯定しているが、俺だけは首を横に振り



「いえ、無理です。勝てないと思います。僕にはハーラルト様を圧倒して倒すと言う事は出来ません。出来たとして、奇襲、奇策でですね。まともにやりあったとして、勝てるかどうかです。そんなハーラルト様を圧倒して倒す奴に、僕なんかじゃ勝てませんよ」

「と言う事は…この盗賊団の頭は、かなりの凄腕なのですね?」

「ええ。リーゼロッテさんの言う通りです。きっと、かなりの手練ですね」

その言葉に、一同の顔色が変わる。ハーラルトを圧倒できる相手なんかと、戦うなんて、マジで御免被りたい。命がいくつあっても、足りないよ。一刻も早く、この場から立ち去りたい。



「ですから、此処から脱出して、エイルマーさんには早馬で、港町パージロレンツォの守備隊に報告して、兵を村に送って貰って下さい。その間僕達は、村で防御線を張って、守備隊が来る迄、守ると言うのが一番です」

俺の提案に、一同が頷いた。そして、各々が馬車と早馬に移動を開始した時だった。アジトの入り口の方に気配を感じた。それと同時に声がする



「オイオイ~なんだこりゃ?ちょっと迎えに行ってる間に、何があったんだ?」

その声に振り向くと、3人の男女が立っていた。



20代後半、身長180cm位の、グレーの髪に、切れ長の男前の顔に、体格は普通だが、戦闘を数多くこなしていると解る男が中心に居て、その左には、身長170cm位の、褐色の肌にダークブラウンの髪、艶かしく張りのあるプロポーションの20代中頃の美しい女性、その右には、身長200cmを軽く超えているであろう巨躯に、筋肉の塊の様な鍛えられた体、その背中には、大きな斧をぶら下げている。

その3人は、辺りを確認する様に見回している。そして、左の女性が



「どうやら…ベルントの隊は全滅している様ですねギルス」

「そんな事言われなくったって、見りゃ~解るよカチュア。…うん?」

そんな会話をしていた、ギルスが、俺の視線に気がついて、



「なんだ行商人じゃねえか。なんでこんな所に居るんだ?…なるほど…これをやったのはお前の仕業か?」

ニヤっと嗤うギルスに、背中に冷たいものを感じた。その瞬間、俺は無意識に、2丁拳銃のグリムリッパーを召喚して、ギルスに向けて発砲していた。



「ガガガオン!」

三発の銃声が鳴り響き、魔法弾が高速でギルスに襲いかかる。しかし、その三発の魔法弾は、ギルスに届く事は無かった。



「バシィィン!!」

ギルスを庇う様に、一歩前に出たカチュアの、突き出された左手から、黄緑色の障壁の様な物が発生して、その障壁に魔法弾が弾かれてしまった。



「あっぶね~!今のはまともに食らってたら、流石の俺でも、やばかったな!ありがとよカチュア」

「良いのです。私は貴方の剣であり、盾でも有るのですから」

「でも良く、マジックシールドで防いだな。あの一瞬で判断したのか?」

「いいえ。全滅している死体に残っている傷からです。どの遺体も、魔法痕が残っていたので、敵は魔法か何かの使い手だと、判断していただけです」

「は!抜かりはねえてか!流石俺のカチュアだな!」

ギルスの言葉に、妖艶な微笑で答えるカチュア。そして、再度前に出てくるギルスが哂いながら、



「いきなりやってくれるじゃねえか行商人。その武器…剣みたいなのがついてるけど、拳銃ってやつか?」

「恐らく…マジックアイテムでしょう。拳銃から発射された弾は、魔力属性でした。きっと、魔力か何かを魔法弾に変換して、撃ち出して居るのでしょう」

「しかも、何も持って無かった行商人の手に、いきなり現れたよな?って事は…召喚武器か!うほ!良いもん持ってるじゃんかよ行商人!」

そう言って嗤うギルス。

解っていたけど、こんな簡単に防がれてしまうとは…。俺が無意識に発砲したのは、きっとこいつらに恐怖を感じたからだ。無意識に恐怖を排除したかったんだと思う。とりあえず…こいつらの情報を得よう…

俺は霊視で3人の能力を視る。そして、戦慄する。



『…ギルスと呼ばれる男が、LV97、戦闘職業はアサルトバスター、カチュアと呼ばれた女が、LV86、戦闘職業はアークセージ、巨躯の男が、LV72、戦闘職業がソリッドファイター…3人共、スキルもかなりヤバイものが揃ってる…』

体の芯から、震え出す様な、悪寒がする。

どうする…こんな高LVの上級者を、3人も相手にするのは無理だ!な…何か手を考えなければ…間違いなく、殺される。どうすれば…

俺がその様なことを思案していると、ギルスが一歩前に出て



「ま~兎に角、行商人!お前の後ろに居る奴等は、俺達の物だ。返して貰う。それに、お前のその召喚武器も、金になるから、貰うとしようか」

「…そう言われて、はいそうですかって、簡単に渡せるほど、人間は出来てないね!」

ギルスの言葉に、俺が身構えながら言うと、クククと哂いながら



「だよな!…カチュア、ホルガー!こいつは、俺だけでやる。手を出すなよ?」

ギルスの言葉に、頷くカチュアとホルガーと呼ばれた巨躯の男。

とりあえず、3人同時に相手をしなくて済むのか?…俺にとっても、そっちの方が良い。この3人と同時に戦うなど、無謀すぎる所だったし。そんな俺の思考を読み取ったかの様にギルスは



「おいおい~。俺だけが相手だからって、安心してて良いのか?一対一だからって、お前が俺に勝てる保証はないんだぜ?」

ギルスはニヤっと哂いながら俺を見ている。

確かにそうだ。一対一の勝負でも、俺の方が、かなり分が悪い。実力差がありすぎる。どうする…

初めの…無意識で撃った魔法弾は、女のメイジに邪魔されなければ、こいつに当たっていて殺れたのでは?まともに、殺り合うのはマズイ。やはり、一撃必殺を狙って、チャンスに賭けるしか無い!

俺は覚悟を決めて、ギルスと対峙して、身構える。そんな俺を見て、ギルスは楽しそうに哂い



「しかし…全く予想外だったぜ。お前がベルント達を全滅出来る、力と武器を持っていたとはな!彼奴等みたいに、先にお前を殺しておけば良かったな!」

「奴等みたいに…それはエドモンさん達の事か?」

「うん?そうか…知っていたんだったな。その通りだ。彼奴等には、俺達の部下になる様に提案したんだが、断りやがったからな。だから、始末した」

冷たい目でそう言い放つギルス。

…やっぱりコイツらが、エドモン一行を殺った奴等なのか。出来れば、こうやって対峙はしたくなかったな…



「どうした?掛かってこないのか?折角一対一のサシの勝負なんだぜ?それとも臆したのか?」

「うるさい!すぐにその口を開けなくしてやるよ!」

俺はそう叫んで、グリムリッパーを構える。乾いた銃声と共に、4発の魔法弾が発射され、ギルスに襲いかかる。



「キィン!キィン!キィン!キィン!」

金属と魔法弾の衝突する、綺麗な音が鳴り響く。ギルスの体からは、淡黄色に光るオーラが、体を包んでいて、その右手には一振りの剣が、鞘から抜かれて握られてる。魔法弾は、その剣によって、弾き飛ばされていた。



「この剣は、ちょっとした名剣でな。名前をフラガラッハと言う。昔に何処かの魔女が鍛えて、どこぞの英雄が使っていたって言われてるらしいが、そんな事は俺には興味はねえ。だが、コイツは風の魔法で、強化をされているマジックアイテムだ。己の力量に合わせて、力を貸してくれる回答者。俺が使うコイツの切れ味は、一味違うぜ?…ま~お前のマジックアイテムの、その拳銃には劣るだろうがな」

ギルズはそう言って哂いながら、剣を肩に担いで、トントンと楽しげに剣を揺らし、



「どうした?もう終わりか?所詮、良いマジックアイテムを持っていても、宝の持ち腐れなのか?」

「だまれ!」

俺はそう叫ぶと、グリムリッパーを、次々と撃って行く。けたたましい銃声が響き渡り、何十発もの魔法弾がギルスに襲いかかる。



「うほ!こりゃ~数が多いな!」

そう言いながら、魔法弾をフラガラッハで弾き、魔法弾を躱してゆく。そして、アイテムバッグらしき物から、何かを出した。



「バシィィン!!」

激しい金属音が鳴り渡る。ギルスがアイテムバッグから出したのは、直径60cm位の、ラウンドシールドだった。そのラウンドシールドで、グリムリッパーの魔法弾を防いだのだ。



「このラウンドシールドも、魔法で強化された物だ。ま~このフラガラッハや、お前の拳銃とは、比べ物にならない品だけどな。でも、魔法弾を防ぐにゃ~十分みたいだな」

俺の悔しそうな顔を見て、ニヤっと笑っているギルス。



「確かに、お前のその拳銃の、魔法弾の速さは凄い。気戦術の身体強化を使って、身体能力と五感を上げている俺でも、全て見切るのは難しい。でもな、撃つ瞬間の気や、筋肉の動き、タイミングを読む事と、フラガラッハとラウンドシールドで、全ていなす事が出来る。…で、お前はどうする?」

ギルスの目が冷たく光る。俺は背中に冷たいものを感じる。

確かに、此のままじゃ埒が開かないのは解っている。だか…今はこれしかない!

俺は再度、グリムリッパーを構える。そして、魔法弾を次々とギルスに、撃ち込んで行く。



「…またそれか。いや…遠距離タイプのお前には、此れしか無いか…」

ギルスは魔法弾を、フラガラッハとラウンドシールドでいなしながら、俺に一気に間合いを詰めてきた



「もう飽きて来た事だし、一気に終わらせて貰うぜ!じゃあな!行商人!」

名剣フラガラッハを振り上げて、斬撃の体制に入った。そして、一気に振り下ろされる名剣フラガラッハ。

気戦術で攻撃力の上がった、名剣フラガラッハの剣先が俺に迫る。



『掛かった!此れでも喰らえ!』

心の中で、歓喜混じりに叫ぶと、俺は一気に気勢を上げる。俺の体は、薄紅色の輝くオーラで包まれる。



「な…なにいィー!!」

ギルスは驚き戸惑いの声を上げるが、もう遅い。完全に俺の間合いに入った!

俺は、闘気術で身体強化をされ、闘気を刃に十分に蓄えた、銃剣2丁拳銃のグリムリッパーを振るう。



「迦楼羅流銃剣術、奥義、雪月花!!!」

闘気術で高められた気を、一気に爆発させる。俺の体を包む薄紅色の輝くオーラは輝きを増し、グリムリッパーの剣先から、薄紅色に輝く三段の斬撃波が、ギルスに襲いかかる。



「く…くそったれー!!!」

断末魔に近い叫び声を上げるギルス。その次の瞬間、



「ギャリィィィィン!!!」

甲高い金属の斬れる音が鳴り響く。そこには、ガラガラと音を立てて地面に落ちる、3つに斬られたラウンドシールドの姿があった。暫くの沈黙の後、その男は話しだした。



「やってくれたな行商人…まさか…俺が斬り込んで行く所を、狙って待って居たとはな…正直驚いたぜ!」

鋭い眼光に、光を宿らせ、静かに力強く言うギルス。その視線に、体が凍りそうになる。



「あの斬撃波を、あんな躱し方をするお前の方が、どうかしてると思うけどな!」

ギルスの迫力に気圧されながら俺が応える。ギルスに雪月花の斬撃波を避けられた…。



ギルスはあの瞬間、雪月花の斬撃波を、このままじゃ躱せないと理解し、瞬時にシールドアタックを放って、雪月花の斬撃波を躱したのだ。

通常、シールドアタックは、盾で相手を弾き飛ばす技であるが、気戦術で強化されたシールドアタックを空撃ちし、その時に出る空圧を利用して、後方に跳躍して、雪月花を躱したのだ。

しかも、雪月花の斬撃波を弱める為に、ラウンドシールドを我が身の代わりに、投げ捨てた。そのお陰で、ギルスの体には、わずかしか雪月花の斬撃波は届かなかった。

恐らくマジックアイテムであるハーフプレートに、僅かに傷がついただけで終わってしまった。



「そのお前の体を包み込む、薄紅色の輝くオーラ…どうやら、気戦術系のスキルみたいだな。身体強化も出来ると…。なるほど…遠距離タイプの攻撃しか出来無いと思わせ、俺が一気に勝負を決める為に近づいた所を…か。あの無駄な銃撃も、俺にそう思わせる為のもの…。は!その歳であの状況の中、こんな事を実行するなんて、なかなかどうして、大した策士だなお前は!こんなに、ヒヤリとさせられて、楽しませて貰ったのは、久しぶりだぜ!」

ギルスは鋭い目をしながらも、楽しそうにそう言うと、名剣フラガラッハの剣先を俺に向け



「さあ!続きを楽しもうぜ、行商人の少年よ!此処からが楽しい所なんだからよ!その気戦術もどきのスキルを使って、全力でかかってこい!」

死刑宣告に近いその言葉に、思わず嫌な汗が背中を伝う。ギュっとグリムリッパーを握る。

最大の罠は失敗に終わった。此処からは、真正面にぶつかって行く事になる…絶望が頭を過る。



「クソが!」

吐き捨てる様に俺は言うと、闘気術で強化された能力を使って、一気に間合いを詰める。グリムリッパーの2本の刃で、ギルスに斬りつける。



「は!流石に速ええな!さっきとは、段違いだぜ!」

口元に哂いを浮かべながら、グリムリッパーの刃を躱して行くギルス。その躱した先に、俺は魔法弾を撃ち込んで行く。



「おお!剣術だけじゃなく、銃撃も出来るんだったな!その拳銃は!」

そう言って口元に哂いを浮かべながら、名剣フラガラッハで、魔法弾を弾くギルス。



「なるほど…。拳銃に付いている短剣と、銃撃による射撃か。お前の就いている戦闘職業は、かなり特殊なもんだな。遠距離と近距離を得意とする、戦闘職業か…面白いな」

面白そうにニヤっと嗤うギルス。



「もっと見たいな…俺も此処からは本気だ!今度は此方から行くぞ!」

そう叫ぶと、ギルスの体を包んでいた、淡黄色に光るオーラが、輝きを増す。闘気術で強化された、俺の動体視力でも、やっと捕らえられる位の速さで、間合いを詰めてくるギルス。

俺も再度気勢を上げる。俺の体を包む薄紅色の輝くオーラは輝きを増し、闘気術で高められた気を、一気に爆発させ、グリムリッパーの剣先から、薄紅色に輝く三段の斬撃波が、ギルスに襲いかかる。



「迦楼羅流銃剣術、奥義、雪月花!」

俺の流派の奥義を放つが、薄紅色に輝く三段の斬撃波の先には、ギルスの姿は無かった。



「…大技ってのはな、使う時に隙が出来やすいんだ。さっきみたいに、此処ぞと言う時以外は使うもんじゃねえな!!」

俺の後ろから声が聞こえる。その声に、振り向くやいなや、名剣フラガラッハの剣先が目の前に迫る。



「グッ!!!」

そのギルスの斬撃を、危機一髪躱したが、肩口に一刀、致命傷ではないが入れられてしまった。肩から、血が溢れ流れ出す。



「へ!完全にじゃなくても、良く今の斬撃を躱せたな!さあ…次はどうする?これでもう終わりか?」

「ま…まだまだだ!!!」

俺は叫びながら、闘気術を全開にして、ギルスに斬り掛かり、銃撃を放ってゆく。

そこから数十手打ち合うが、当然、地力で劣る俺が、ギルスに一撃を加える事は出来ずに居た。

ギルスからの一方的な攻撃によって、俺の体からは、至る所から鮮血が流れだしていた。

余りの斬られ様に、ダメージが蓄積して、片膝をついて蹲ってしまった。そんな真っ赤に血に染まる俺を見て、マルガが悲愴の声を上げる



「ご主人様!!!!」

マルガはそう叫んで、俺の傍に走り寄ろうとしたのを、言葉で止める。



「マルガ来ないで!お願いだから…そこで待ってて…」

鮮血で染まっている、力なく微笑む俺を見て、マルガの目に涙を溜めながら俺を見ていた。



「…技の威力も、武器の威力も、申し分ない。だが…お前には…経験が足りてないな。武器とスキルに依存して、助けられている…まだまだ、使いこなせていないな」

「は!ぬかせ!…そんな事はな…はなから解ってんだよ!」

フラフラになりながら、何とか立ち上がる事が出来た俺を見て、呆れた様に、軽く溜め息を吐くギルスが、



「は~。まだ立てるのかよ。普通そんだけ斬られりゃ~出血が多すぎて、死ぬかも知れねえってのによ。身長も高くないし、体も筋肉が有る訳でもなく細身だし、そんな体の何処に、それだけの力が有るって言うんだ?」

剣を肩に担ぎ、トントンと揺らして、呆れているギルス。



そう、俺が何とか立てているのは、ヴァンパイアハーフの力、ヴァンパイアハーフの加護、限定不老不死の力の超回復お陰だ。そこらじゅう体を斬られてはいるが、表面上の傷は回復している。ただ、斬られすぎて、回復がダメージの量に追いついていないのだ。純血の始祖のヴァンパイアなら、いくら斬られ様が関係ないかも知れないが、俺は回復量を超える攻撃をされれば、死んでしまう。このまま、斬られ続ければ、いずれ回復量を超えて、殺されてしまう。まさに、時間の問題だ。



だが…どうする? 実力も経験もすべて相手の方が上…先ほどの、最大の罠をも躱してしまう手練。

もう一度罠を張ろうにも、十分警戒はしているだろうし、もう一度、罠を張るとしたら、よっぽど解らない、とんでもない罠じゃないとダメだろう。何か…ないのか…この状況を一変させる様な何かが…

それか…やっぱり…アレしか残されてないのか…

そんな事を考え、身構えている俺を見て、ニヤっと哂い、顎に手を当てて考えながらギルスが



「フム…経験もLVもまだまだ足りないが…スキルと武器の力を合わせれば…ラウテッツァ紫彩騎士団、第5番隊の、あの隊長と同等か…。殺すには惜しいか…?」

そう呟いて、俺を見つめるギルスが



「おい!行商人の少年!どうだ?俺の部下にならないか?お前じゃ~俺には勝てないのは、十分に解っただろ?もし、俺の部下になるなら、お前の奴隷の亜種の少女は、手を付けず、お前の物のままにしてやる。お前も、奴隷じゃなくて、俺達の仲間として扱ってやろう。勿論、俺の部下だから、俺の命令には従って貰うが、お前の行商や、利益には手を付けないと、約束してやろう。良い条件だと思うがどうだ?無駄に命を散らせる事は無いだろう?」

剣を肩に担いで、トントンと楽しげに剣を揺らし、諭すように言うギルス。



…甘言…その言葉が頭に浮かぶ。確かにその条件なら、これ以上俺は命を掛けなくて済む上、マルガも俺の物のままでいられる。しかも、行商での利益も守ってくれると、約束すると言っている。

当然、部下になるので、命令は有るだろうが、こんな所で死ぬよりも、遥かにマシだ。

今…俺に出来る最後の事は…まさに最後の切り札、種族能力解放だけだ。

ヴァンパイアハーフの始祖の力を開放し、その力で戦う事だ。だが、大きな問題がある。



一つ目は、一番重要な事。その力を使って、このギルスと言う男と、残りの2人に勝てるかどうか、解らない事だ。

俺はこの世界に来て半年、幸運にも、此処まで追い詰められた事は無かった。マジックアイテムの2丁拳銃グリムリッパーと、スキルと3種類のレアスキルで乗り越える事が出来た。なので、1番の攻撃力を秘めている可能性のある、種族能力解放のスキルを、一度も使った事が無いのだ。なので、どの様な効果が有るのか、どれ位の強さが有るのか、全く理解していない。その力で、この男と、残りの2人を倒せれば良いが、もし、倒せなかったら、俺の命はまず無い。俺は死に、マルガは何処かの奴隷商に売られ、他の男に汚され続けるしかなくなる。



二つ目は、目撃者が多い事だ。種族能力解放する事により、俺が魔物とのハーフ、魔族である事がバレてしまう事。

この世界の人や亜種の大半は、魔物、魔族を敵として認識している。完全に違う生き物として、認識されているのだ。そんな、魔物と取引したい奴など、この世には居ないだろう。

このギルスと言う男に、もし勝てたとして、村人のエイルマー達や、魔物を嫌うエルフのリーゼロッテ、そして、大貴族のアローイジオが、どういった対応をするかが、解らない。

この人達が、国や教会などに、俺の事を密告すると、俺は討伐される側の人間になりかねない。

世界から追われる様な事は避けたいので、この人達を口封じの為に、殺さなければならならい。

今の俺には、俺の正体を知って尚、俺に忠誠を誓って、俺を好きと言ってくれるマルガしか、信じられる者などいないのだ。

そうなると、種族能力解放を使って、口封じの為に殺してしまうよりか、ギルスとの取引に応じ、奴隷にされてしまうかもしれないが、生きている方がましであろう。危険を犯して種族能力解放をするメリットがまるで無い。



「どうした?まだ考えているのか?お前の安全と、奴隷の亜種の少女の安全も確保できてる上に、行商で利益も上げれるんだぜ?村の奴等だって、ま~たまに、雇った兵隊に犯されるかもしれないが、その他はいつもと同じ様に、生活をさせてやるつもりだ。お前が心配する事は無い。そこの貴族の坊ちゃんは、モンランベール伯爵家から、しこたま身代金をふんだくったら、薬で記憶を消して、モンランベール伯爵家に帰してやるつもりだ。そこのエルフの美女だけは、恐らくかなりの金になるから、奴隷商に売る事になるが、どっかの金持ちに買われて、普通の生活よりましな生活が出来るだろうさ。お前が心配する事は、何も無いはずだが?」

俺を見ながら不思議そうに言うギルス。



確かにギルスの言う通りだ。俺が此処で無駄に命を掛ける理由は無い。多少の理不尽はあるが、力ある者は理不尽を通すもの。力が無い自分が悪いだけなのだ。アローイジオや、村の人達の顔を見ると、その取引を受ける事に、仕方が無いと言った感じの表情で、俺を見ていた。力なき者にとって当然の顔だろう。

俺は、理解力の高いリーゼロッテも、同じような表情で、取引を肯定するだろうと思って、リーゼロッテに視線を向ける。しかし…そこには…



…必死に助けを求め縋り付く様な…金色の透き通る瞳を揺らしている、リーゼロッテの姿があった。



まるで、何時かのマルガの様なその瞳…

リーゼロッテのその顔を見た俺は、なぜか血が滾って居た。理由なんか解らない。



嫌だ…リーゼロッテのこんな顔は見たくない。リーゼロッテには笑顔が良く似合うんだ。優しく、余裕のある微笑が、スラリとした超美少女のリーゼロッテには似合うんだ。何時も強気で、凛としてて、そして、たまに見せる、優しい微笑みが似合ってるんだ…

俺は…嫌だ…リーゼロッテを奴隷商なんかに売らせない…他の奴に渡す位なら…いっそ俺が…

そんな感情が、俺の中を渦巻き、大きくなる。リーゼロッテは…渡さない!



「もし…俺が…お前の取引を…断ったらどうなる?」

「はああ?こんな好条件を出してるのに、断ろうってのか!?…その時は、いつぞやの行商人よろしく、お前にも死んで貰うだけだ!解ってると思うが、お前が俺に勝てる事は、まず無い。万が一に、俺を倒せたとしても、その後は、カチュアとホルガーになぶり殺しにされるだけだな!ま~俺が、お前に負けるなんて事は、世界がひっくり返りでもしなけりゃねえけどな!お前が、俺より優れているのは、そのしぶとさだけだろうしな!それだけ斬られて、まだ動けるのだけは、褒めてやるよ!」

ギルスは冷たい目をしながら、嗤っていた。



そうだろう…それは解っているが…マルガも大切だけど、リーゼロッテの事を諦めるつもりもない!

しかし、どうする…コイツに勝つ事は、今の俺には…コイツの言う通り、しぶとさのみ勝っているだけだ…

俺はそう考えていた時、何かが引っかかった。



『俺が唯一勝っている部分は、しぶとさだけ…』

心の中で、もう一度そう呟いた時、体中に電撃が走ったかの様な、感覚にとらわれる。



『ある!あるじゃないか!種族能力解放を使わずに、俺が唯一勝っている部分で、アイツを倒す方法が!』

俺の心は歓喜にとらわれる。若干の心配要因もあるが、それは仕方ない。今より遥かに、希望的な展開になるかもしれないからだ。

俺は決意した顔で、一歩前に出る。ギルスはニヤッと嗤って、俺の言葉を待つ



「俺は…お前達と取引はしない!俺はお前達3人に勝って、俺は俺だけの道を歩む!!」

俺の言葉を聞いたギルスは、静かに冷たい目を俺に向けていた。



俺は、リスボン商会の恩師、ギルゴマによく言われる事がある。



『何度も言いましたが、貴方はすぐに顔に出る癖があります。そんな顔に書いてますって言う様な事では、大きな商談はまだまだ出来ませんね』

そんな言葉を思い出す。今の俺はきっと、隠そうと思っても、顔に出ているだろう。

だって…口元がニンマリしているのを、俺自身が解っているからだ。

戦いはこれから…俺は…このまま、進み続ける!!



俺とギルスは、静まり返るアジトの広間で、睨み合っていた。
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