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2章
愚者の狂想曲 28 執着心と言う名の毒と仕組まれた罠
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ここは、翌日の俺達の客室。
昨日、専任商人の権利を掛けて、契約をしてきた俺は、この客室に帰ってすぐに、事の重大さに血の気が引いた。
至極当然であろう。専任商人権だけじゃなく、そこに…マルガとリーゼロッテを掛けてしまったのだから…
何故こんな事をした?何故こんな事になった?何故もっと上手く立ち回れなかった?何故専任商人権を捨てれなかった?何故…何故…何故………
その様な気持ちが、昨日から頭をグルグル駆け巡っている。
そして一番の何故は…
『何故…我慢できなかったか…』
この言葉に尽きる。これしか無い。
いつもの…いや…以前の俺なら、すぐに取引を辞めていただろう。
実際昨日も、途中までは、取引を止めるつもりであった。ルチアも瞳を閉じ、俺の気持ちを察し、取引を止める事を肯定してくれていた。それなのに…
「葵さん、食後の紅茶が入りましたわ。飲んでくださいね」
リーゼロッテは何時もと変わらない雰囲気で、俺に紅茶を渡してくれる。
俺のすぐ隣では、俺に腕組みをしながら、膝の上に白銀キツネの子供、甘えん坊のルナ抱いているマルガが、俺と同じ様に紅茶を飲んでいた。
『このいつもの光景が…見れなくなってしまうかもしれない…』
その気持ちが胸を刺し、思わずギュっと拳に力が入る。
その時、俺達の扉がノックされ、部屋に人が入ってくる。ルチアとマティアスだった。
お互いに挨拶をし合う中、ルチアは俺の座っている、ベッドの迄来ると、何も言わずに俺の隣に座る。
リーゼロッテがルチアに紅茶を手渡すと、ありがとうと言って、黙って紅茶を飲んでいる。
暫く黙って、俺の隣にただ座って紅茶を飲んでいたルチアであったが、静かにその口を開く。
「…葵…ごめんなさい…こんな事になるなんて…予想もしてなかった…本当に…ごめんなさい…」
初めて聞いたルチアの謝罪だった。いつも勝気なルチアらしからぬその言葉…
『違う…ルチアのせいじゃない…俺のせいだ…全て俺の責任…』
そう…全ては俺の浅はかさから来ている結果だ。
あの時…ヒュアキントスの言葉に我慢出来なかった。あの言葉を聞いた俺は、目の前が真っ赤になる位に血が上り、激昂していた。マルガを侮辱したヒュアキントスが…只々許せなかった。
その感情の赴くままに行動してしまった。実際、暴言に近い事を言っていた事すら、微かにしか覚えていない位、頭に血がのぼっていた。
そして、それに都合の良い理由もつけた。
ルチアの事も諦められない。それに勝てば、儲けもでる。商人にとって利益は必要だと…
それは事実だが、俺の本心では無かったはず…俺は自ら、泥沼にはまって行ったのだ。
それに比べヒュアキントスは、俺と玉座の前で対面した時、一瞬で俺への対策を考えていたのだろう。
俺がマルガやリーゼロッテを、普通の一級奴隷の様に思っていない事も、当然理解していた。
だから、アノ条件を提示した。
俺が降りれば、何もせずに専任商人になれ、飲めば勝った時に、欲しがっていたマルガやリーゼロッテが手に入る。どっちに転んでも、いいように。
誤算はリーゼロッテが追加で条件をつけた事だろう。アノ条件を聞いた時だけ、目を細めていた。
ルチアを目の前に、ルチアの名誉を傷つける事に二の足を踏む事も知っていた。
俺とルチアが、金銭的な繋がりだけでは無い事も感じていただろう。じゃないと俺みたいな一介の行商人を、ルチアが推挙しないと解っていたはずだ。
そして、極めつけは、どちらを選ぶかの決定権を持っていた、アルバラードの言葉だ。
アルバラードは何も勝負させる必要は無いのだ。女王のアウロラからこの件を一任…つまり委任され、代理権を持っている。好きな方を、自分の気分で専任商人に決めれる権利を持っているのだから。
ヒュアキントスの言葉に、一理あると言ったからは、それを受けないと、アルバラードはそれを理由に、勝負させずに決めていただろう。それだけの意志は感じられた。
あそこでヒュアキントスの提案を受けない訳には行かなかった。どんな理由が有るにせよ、ドライに利益をあげれなければ、商人として失格だからだ。
ある意味、避けれない交渉を、こっちのデメリットだけではなく、利益を上げる提案をしたリーゼロッテの頭の回転の早さは、たいしたものであろう。
それに…アルバラードとヒュアキントスが、通じていた可能性もある。いや…その可能性の方が高い。
ヒュアキントスの提案にすぐさま否定しない所も…まあ…考え出したらきりがないが…恐らくは…
そんな事をしていたヒュアキントス相手に…俺は何をしていた…?
『本当に自分の浅はかさに、反吐が出る…』
大きな溜め息を吐きながら、俺は飲んでいた紅茶をテーブルに置くと、マルガの腕を振りほどき、ベッドに仰向けに寝転がり、静かに瞳を閉じる。
俺は瞳を閉じながら、マルガと会ってからの事を考えていた。
『いつからだろう…俺がこんなにも冷静でいられなくなったのは…』
ふと、その言葉が心に浮かぶ。
俺は地球で20年生きて、特に何もなく、ちょっと喧嘩が強い位の、普通の学生だった。
見た目も普通、頭も普通、全てが普通づくし。当然、大切な人も居ない、恋人や彼女も居ない生活だった。
だが俺は、それを特別、不幸に思った事はなかった。
そりゃそうだ、地球のほとんどの人が『普通の人』なのだから。
普通に生活して、普通に死んでいく。特に歴史を動かす訳でもなく、『何かの役に立ったはず』と言う自己満足を抱えて、死んでいく人が殆どなのだ。明確に『歴史を動かした』なんて人は、70億人の内、数える程であろう。まさに、神が与えた因果の様に…
俺はそう思って生活してきた。俺は普通の人。何も特別でもなく、完璧でもない。それが『普通』なのだ。
昔は、喧嘩をする事はあっても、ここまで何かに執着し、後先考えずにキレる事は無かった。
『普通』の感情を持って、生活してきたはずだった。
『しかし、マルガに出会ってからの俺はどうだ?俺は何故…こんなに執着しているんだ?』
ふと心の底から沸き上がる疑問。
俺は今までに、後先を考えず、マルガやリーゼロッテを優先してきている。それは…何故だ…?
大好きだから?そりゃそうだ。マルガもリーゼロッテも大好きだ。いや…それ以上に…愛しているだろう。
初めにマルガを買った時も、後先考えず、大量の金貨を払い、マルガとリーゼロッテが攫われた時も、後先考えず、助けようとした。リーゼロッテがオークションで売られそうになった時もだ。
自らの命を掛けて、後先考えず可能性の低い事に、身を投じている。
そして極めつけは今回だ…怒りに身を任せ、そのまま事を進めている…後先どころか、何も考えずに、怒りにその身を燃やしてしまった…
こんな事は『普通』では無い。明らかに異常だ。いつもの俺ではない。
まるで…何かに、取り憑かれてしまったかの様に…
そんな事を思っていると、左手に温かい感触が伝わる。
ふと瞳を開けてソレを見ると、マルガが俺の左手を両手で握り、心配そうな面持ちで俺を見ていた。
その、暖かさに癒されながら、俺もマルガの両手を握り返す。
するとマルガは嬉しそうな顔をして、金色の毛並みの良い尻尾を、フワフワわせている。
『こんな愛おしいマルガを…もし失ってしまったら…』
その様な絶望と、嫌悪感が体を包んだ時だった。俺はいつかのソノ感覚と、シンクロしている自分に気がついた。そして…全てを理解する。
『…ああ…そうか…だから俺は…こんなに執着してしまったのか…』
俺は、心の中で結論をつぶやく。
俺はこの世界に飛ばされる前、18歳の時に両親を飛行機事故で無くし、天涯孤独の身となってしまった。あの感覚は、今でも覚えている。一瞬で大好きな…大切な人が居なくなる、あの感覚…
今も思い出すだけで、絶望感が体中を支配する。拭えない悲しさと寂しさ…孤独感…
決して消える事の無い…トラウマ…
その後、時間とともに、その傷も癒えてきているとばかり思っていた。
なんとか楽しい日常を取り戻し、『普通』に生活をする事によって…
でも実際は違った。いや…違っていたんだ。
その傷は毒の様に、知らず知らずに体中を駆け巡り、じわじわと侵していた…
その毒は体の中で、俺の『普通』を、侵していたんだ。
『俺は…大切な何かを奪われる…失う事が怖い…なくすのが怖い…大好きで大切だった、父さんと母さんを…失う様な…アノ感覚を…二度と味わいたくなかったんだ…』
そう…だから執着した。
大好きなマルガやリーゼロッテを、両親と同じ様に失う事が怖かったのだ。
その毒はより大きく体を侵し、汚される事が…許せない位にまで成長していた。
無意識に成長した毒は、更に成長を続けた。見えない心の奥底で…
だから…止まれなかったんだ…その燃え上がる感情を、消す事が出来なかった。
俺は…大切なモノを手に入れる代わりに、毒に侵され…その瞳をどんどん曇らせていっていたんだ…
だから…いつもの…いや…以前の俺の様に、冷静でいられなくなったんだ…
『そう…俺は執着心に毒された一種の野獣。俺の普通は…もう毒されていたんだな…』
思わず口元が緩む。自分自身に呆れ、またその毒の恐ろしさに、絶望する。
理由が解った今でも、その毒は消えてくれない。当然だろう。
今もマルガとリーゼロッテを汚そうとする奴の事を考えただけで、心の底から、毒の炎が激しく燃え上がる。
だけど…理由が解って…ソノ毒が消えないものだと解っても…俺にはやらなければならない事がある。
『俺は進む…この毒を抱えながら…毒に侵されながら進んでやる!!!!』
俺はこの毒と共存してやる。
今までは、自分の身を焼く事しか出来なかったこの毒の炎を、大切な…愛おしいマルガやリーゼロッテを守る為…手放さない為の力に…毒を糧にしてでも…進み続ける!!
俺はベッドに起き上がり座る。そして、その手を伸ばす。
「マルガ…リーゼロッテ…こっちにおいで…」
俺のその手を見て、マルガはニコっと微笑みながら、リーゼロッテは優しい微笑みを湛えながら俺の手を取る。そんな愛おしいマルガとリーゼロッテをギュット抱きしめる。
それを感じたマルガとリーゼロッテも、ギュと俺を抱き返してくれる。マルガとリーゼロッテの甘い香りに包まれ、その柔肌が俺を暖かく包み込んでくれる。
「大好きだよ…マルガにリーゼロッテ。絶対に手放なさないからね…」
俺の突然の言葉に、一切の揺るぎを感じさせないマルガとリーゼロッテは
「私もご主人様が大好きです…ずっと傍に置いてくださいね…」
「私も大好きですよ葵さん…私を二度と手放さないでくださいね…」
マルガとリーゼロッテは、最高の微笑みを俺に向けてくれている。
『毒よ…もうお前に、俺の身を焼かせてはやらない…お前は俺の…前に進む為の…力になって貰う!主導権は俺だ!』
俺はゆっくりと、マルガとリーゼロッテの体から離れる。そして、大きく深呼吸をする。
うん、大丈夫。空気が美味しいね!俺は進まなくちゃね!不細工でも…汚れていようとも…前に進む!
そして俺は勢い良く、ベッドから立ち上がり、皆に振り向く。
「マルガ!昨日の取り決めが書いた、羊皮紙を出して!今から、皆でそれを確認する!」
そのいつもと同じ俺の雰囲気を感じたマルガの瞳は、喜びの色を湛えながら、少し潤んでいた。
「ハイ!ご主人様!すぐに用意しますのです!」
元気良くハイ!と右手を上げて、テーブルの上に羊皮紙を用意するマルガ。
「ルチア…さっき言った言葉だけど、あれはルチアのせいじゃない。俺の責任だから。ルチアが気にする事は何もないし、俺もこのままでは終わらない」
その言葉に、ルチアの表情はみるみる明るくなる。そして、ルチアの肩に手を置きながら、
「俺はルチアの事も諦めるつもりはない。俺も商人だしね。勝って大儲けしてやるさ!」
俺の微笑みながらの言葉に、フンと元気良く言うルチアは
「…なんか吹っ切れた様ね葵。いつもの貴方の瞳の色ね。ま~貴方は馬鹿だから、仕方ないけどさ!」
そう言いながら、嬉しそうな表情のルチアに、ルチアらしさを感じる。
「よしまずは、取り決めの内容を確認しよう。リーゼロッテ読み上げてくれる?」
「解りましたわ葵さん」
そう言って、テーブルの取り決めの羊皮紙を読み上げるリーゼロッテ。
「まずは…商品を仕入れるお金は、渡した金貨100枚のみで、それ以上のお金は使用禁止。金貨100枚以外の、お金に変わる、関わる取引事由も認めない。その中には、関税や通過税、滞在税等の税も含む。その他の旅費についてはこの限りではない」
「なるほど…仕入れるお金や、税の支払いは、この金貨100枚の中でしなさいって事ね。食費やその他は自分のお金を出しても良い訳ね。これは資産の少ない、貴方には有利ね」
「確かにね。でもそれだけ実力の出やすい勝負でもあるって事でもあるけどね。後は…お金に変わる取引事由も認めない…つまり、後でお金を払うから、金貨100枚で、200枚分売ってくれと言う様な取引も認めないと言う訳か…品物に関しては、本当に金貨100枚でなんとかしないとダメなんだね」
俺の言葉に、頷くルチア。
「次に、フィンラルディア王国内での、不正行為は一切禁止。厳正に審査する」
「つまり…賄賂や税金を払わないのは、ダメって事ですかご主人様?」
「そうだね。それを含めて、厳重に監視するって事だろうね」
マルガの頭を優しく撫でながら言うと、嬉しそうにパタパタ尻尾を振っている。
「しかし、バイエルント国内に入れば…どうなるかわかりませんわね葵さん」
「うん。ま…俺が想像するに、そこは商人の適性を見ているのかも、知れないだけかもだけどね」
「適性って…どういう事なの?葵兄ちゃん」
マルコの問に、フフっと笑うリーゼロッテは
「恐らくですが…どれだけの不正をするか…を、見たいのかも知れませんわね。勝負には直接関係ありませんが、あえてバイエルントを外す事により、その商人の本質は見えますからね。どちらが勝つにせよ、それを見極める様にしておけば、対応はしやすい。言うなれば…餌でしょうね」
それを聞いたマルガにマルコは、なるほどと頷く。
「でも注意は必要ね。相手はあの天才的商才のあると言われるヒュアキントス。油断は出来ないわ。きっと何か仕掛けてくる。…注意してね葵」
「うん…解ってる」
ルチアの言葉に頷く俺。
「まだ続きがありますわ皆さん。バイエルントへの移動手段は、用意した魔法船を使うものとする。それ以外の移動手段は禁止。バイエルント国内は各自の荷馬車を使うものとする」
「バイエルント迄は、魔法船で移動して、バイエルント国内は荷馬車でと、言う事ですかご主人様?」
「だね。フィンラルディア王国内は、魔法船に荷馬車を積み込みするだけだね。これもある意味公平かな?」
俺の言葉にウンウンと頷くマルガとマルコ。
「最後は…推薦者は、いかなる理由があろうと、勝負に加担してはいけない。これが最後ですわね」
リーゼロッテの説明にルチアの顔が歪む。
「どうしたのルチア姉ちゃん?何か不味い事でもあるの?」
「大有りね。一見平等の様に見えるけど、葵とヒュアキントスじゃ差があるわ。人脈、権力、財力どれをとっても、全てヒュアキントスの方が上。つまり、本人の持っている力だけで、勝負しないといけない」
「ですが…優遇をして貰う事も出来ませんわ。それをしたら、契約上で平等では無くなってしまいますから」
「そうねエルフちゃん。…厄介だわ」
リーゼロッテの言葉に、腕組みしながら、渋々頷くルチア。
「仕方ないよ。本来なら、力を持った商人が、対決の場にいなければいけなかったのだから。それにいつも対等な相手と、取引出来る訳じゃない。むしろ不公平があって当然だよ。今の俺からしたらね」
俺の言葉に、渋々納得しているルチア。
「さて…詳しい内容も解った事だし…とりあえず情報を集めるか。ルチア聞きたいんだけどさ…アルバラードとヒュアキントスが、通じている可能性は…あるよな?」
俺のその言葉に、思い当たる節のあるルチアは
「…あるわ。アルバラードはお母様の信用のおける専属商人だけど、今回、私の側には回ってくれなかった。理由は解らないけど…」
「なるほど…ですから、ヒュアキントスの提案を、支持したのでしょうね。…今回、勝負という形にしてくれたのは…ルチアさんの尽力のお陰かもですわね。形上、公平にする為に勝負にした。こうすれば、ルチアさんを無下にした訳では無くなりますからね」
リーゼロッテの言葉に、そうねと、小さい声で言うルチア。
やっぱりか…アノ話の流れは、おかしかったからな。ま…確かに一理あるし、商人としては正解だが。
アルバラードには、隙を見せれないな。注意しないと。
でも…アウロラ女王は、何故アルバラードに全権を任せたんだ?そして、何故アルバラードは、ルチアの敵に回ったか…
アウロラ女王は俺に、ルチアを頼むと言っていた。しかし、そのアウロラ女王が信用する、アルバラードは、向こうに回っている。どういう事なんだ?…ダメだ…情報が少なすぎる。
アウロラ女王に直接聞いても、教えてくれないだろうし…とりあえずこの件は後回しか。
「次はバイエルントの情報を知りたいな。俺は行った事もないし、噂も知らない。特産品や利益が上がる物を、詳しく知っておかないといけないし」
「バイエルントは、高速魔法船で6日程よ。バイエルントの大まかな事は、この羊皮紙を見て。一応、役に立ちそうな物を、書き留めておいたから」
そう言ったルチアの羊皮紙を、リーゼロッテが受け取り、目を通している。
「一番重要な所だけど…あのヒュアキントスって、どんな奴なの?大手の商組合、ド・ヴィルバン商組合の、統括理事かなんかの息子みたいだけど…そんなに凄い奴なの?」
「そうね。実力だけなら、私も認めているわ。彼のお陰で、幾つもの商会の支店や、商組合の支店が、息を吹き返した位だからね。しかも、その遣り方も、全く無駄は無いわね。商才は天才的ね。でも…欲しい物は、何が何でも手に入れる様な所もあるらしいわ。今回のキツネちゃんやエルフちゃんの様にね」
確かにアノしつこさは異常だ。まあ~商人らしいと言えばそうだけど。
「解った。出発は明日だからきちんと準備するよ。俺達はちょっと出かけるから、皆用意して」
俺の言葉に準備を始める一同。
「葵…私は取り決め上、これ以上の力は貸せないわ…」
「…解ってるよルチア。俺も出来るかぎりの事はやるつもりだしさ。むざむざ、マルガとリーゼロッテを渡す様な事はしないよ。当然ルチアの事もね」
ルチアの肩に手を置くと、それをギュッと握り返してくるルチア。
俺達は準備をして、部屋を出て行くのであった。
準備をして部屋から出て来た俺達は、王都ラーゼンシュルトの街並みを見ながら、大きな通りを歩いている。
「ご主人様~。これから何処に行かれるのですか?」
マルガは俺に腕組みをしながら聞いてくる。
「今向かっているのは、リスボン商会の王都ラーゼンシュルト支店だよ。港町パージロレンツォで仕入れた、塩と香辛料の取引ついでに、情報を得ようと思ってね。それに、このリスボン商会の王都ラーゼンシュルト支店には、今、ギルゴマさんとリューディアさんが居るからね。2人から情報を得られればありがたいしさ」
「なるほどです!リューディアさんに会うのは久しぶりなので、嬉しいのです!ギルゴマさんは…苦手ですけど…」
「だね!リューディアさん優しいもんね!オイラも嬉しいよ!ギルゴマさんは葵兄ちゃんの師匠さんだから、オイラ会うの楽しみだよ!」
「嬉しそうですわねマルガさんとマルコさんも。確か葵さんから聞いた話ですと、葵さんの師匠さんと姉弟子さんらしいですね。私も楽しみですわ」
マルガとマルコに、微笑みかけるリーゼロッテ。
港町パージロレンツォの売り子公証人であったリューディアは、ギルゴマの計らいで、王都ラーゼンシュルト支店に移動になったのだ。この王都ラーゼンシュルトには魔法船で先に到着している。
俺は2人から得られる情報を、活用しようと思っていた。
暫く歩いて行くと、少し大きなレンガ作りの建物が見えてくる。割りと新しい作りのその建物は、リスボン商会の象徴、象のシンボルが入った旗を高らかに掲げ、沢山の荷馬車や商人達が、忙しそうに商会に出入りしている。その数の多さから、繁盛しているのが容易に想像できる。
そのリスボン商会の王都ラーゼンシュルト支店の入り口に行くと、一人の男が近寄ってきた。
「どうも。本日はどう言った御用でしょうか?」
「えっと、取引の予約に来ました。リューディアさんかギルゴマさんは居らっしゃいますか?いつも他の町で、担当して貰っていましたので」
その言葉を聞いた受付の男は、少し眉を動かす。
「ギルゴマ支店長と…リューディア副支店長にですか?…貴方のお名前は…?」
「あ!僕は、葵 空と言います。名前を言って貰えれば解ると思いますので」
俺の言葉を聞いた受付の男は、少し疑いの目で俺を見ながら、建物の中に入っていく。
暫く待っていると、受付の男が帰って来た。そして、俺を見てニコっと微笑み、
「お待たせしました!ギルゴマ支店長とリューディア支店長が、今からお会いになるとの事です。ご案内しますので、こちらにどうぞ!」
対応の良くなった受付の男に苦笑いしながら付いて行くと、割りと作りの良い扉の前で止まる。
「ギルゴマ支店長。葵様をお連れしました」
「はい。入って貰って下さい」
その懐かしい声に、部屋の中に入って行くと、沢山の書類の置かれた、作りの良い大きな机に、見覚えのある顔を見つける。その横には、ニコっと微笑むリューディアの姿があった。
「そろそろ私の所にやって来る頃だと、思ってましたよ葵さん。お久しぶりですね」
その涼やかで、全てを見抜いてしまいそうな瞳を、嬉しそうに緩ませるギルゴマ
「お久しぶりですギルゴマさん。それにリューディアさんも。お元気そうで何よりです」
「ああ!お前もな葵!そして、マルガもマルコも元気そうだな!」
笑顔で挨拶をするリューディアとギルゴマを見て、マルガとマルコはリューディアに飛びつく。
「リューディアさんお久しぶりです~。逢いたかったです~」
「オイラもだよリューディアさん!逢いたかったよ!」
「そうかそうか!お前達は可愛いね~。ホレホレ!」
リューディアはマルガとマルコを抱きしめながら、2人の頭をワシャワシャと撫でている。キャキャと嬉しそうに喜んでいるマルガとマルコ。
「マルガさんお久しぶりですね。私には…挨拶をしてくれないのですか?」
ギルゴマがニヤッと微笑むと、ぎこちない表情をするマルガは
「あ…あう…ギ…ギルゴマさんも、お久しぶりなのです~。元気そうで良かったです~」
少しリューディアの後ろに隠れながら、ぎこちなく言ったマルガを見て、面白そうな顔をしているギルゴマ。マルガの尻尾は、奇妙な動きでカクカクしていた。
「ギルゴマ師匠!オ…オイラは、葵兄ちゃんの弟子をさせて貰ってますマルコです!よろしくです!」
緊張しながらも、元気良く言ったマルコを見て、フフと嬉しそうに笑うギルゴマは
「貴方の事は、リューディアさんから聞いています。葵さんの弟子になったそうですね。葵さんを見て、きっとどこかにあるだろう、砂粒程の良い所を探しだして、自分の身に付けるのですよ?」
ニコっと微笑むギルゴマに、照れながら微笑むマルコ。
何となく酷い事を言われたギルゴマに、苦笑いしている俺を見て、リーゼロッテが前に出る。
「初めましてギルゴマさんに、リューディアさん。私は新しく葵さんの一級奴隷になったリーゼロッテでございます。ご覧の通り、エルフの血筋の者です。よろしくお願いします」
そう言って微笑み、気品のあるお辞儀をする知的なリーゼロッテを見て、ほう…と言った顔をするギルゴマ。
「葵…お前…また…新しい一級奴隷だと?…ギルゴマ師匠の弟子で…お前の姉弟子で…リスボン商会の王都ラーゼンシュルト支店の副支店長を務める私でさえ…まだ持ってないのに…本当に…良い度胸だよな葵ちゃん…今回も説明は…あるんだろうね?」
リューディアは俺に近寄ると、俺の頬を両手で引っ張って、ミョイ~ンと人間の限界を試す様に、引っ張る。それを見て、可笑しそうに笑っている、マルガにマルコ。
そんな、俺とリューディアを見て、ニヤッと笑うギルゴマは、
「まあまあリューディアさん許してあげましょう。なにせ葵さんは、ルチア王女様の専任商人の選定戦を、安っぽい挑発に乗って、受けてしまう位、力をつけたのですから。そんな安っぽい葵さんは、さぞや儲かっているのでしょうからね」
ニヤニヤと微笑むギルゴマの瞳は冷たく、笑ってはいなかった。俺がその言葉を聞いて狼狽えていると
「何を狼狽えているんですか葵さん?私は曲がりなりにも、このリスボン商会の王都ラーゼンシュルト支店の長ですよ?私の情報網を、甘く見ないで欲しいですね」
ギルゴマの一瞬ギラッと光り輝く瞳に、ゾクッとしたものを感じながら、
「はい…怒りに我を忘れて…安っぽい挑発に、乗ってしまいました…」
俺のその言葉を聞いたギルゴマは、盛大に溜め息を吐くと、右手で顔を押さえる。
「貴方は何をしているんですか…。その一級奴隷である、マルガさんやエルフのリーゼロッテさんは、貴方にとって、大切な者なのでしょう?全く…貴方という人は…」
呆れ顔のギルゴマを見て、心配そうに俺を見るリューディアは
「でもどうするんだい葵?このマルガやリーゼロッテの事を…。もし負けたら、この2人は、あのヒュアキントスの物になってしまうんだろ?何故そんな事になってしまったんだよ。いつものお前らしくない…」
リューディアは寂しそうに俺に言う。俺はキュッと唇を噛みながら、
「…俺は昔…両親を一瞬で亡くしています。その時の気持ちを引きずっていて、大切なモノを失う事や…汚される事に、過剰に反応してしまう様になっていたみたいなんです。自分でも気が付かなかった事なんですがね…」
「なるほど…そこを上手く突かれたのですね葵さん。…色々思い当たる節はありますが、これからどうするのですか?そして…またそこを突かれたらどうするつもりなのですか?相手はあの天才ヒュアキントス。私も彼の噂は良く聞きます。そんな人を相手にすれば…必ず同じ弱点を突いてきますよ?」
静かに語るギルゴマに、俺は静かに暫き目を閉じる。そして、見開きギルゴマに語りかける。
「俺は今迄、我を忘れて、その身を焦がして来ました。今も…その気持は消えていません。マルガやリーゼロッテを汚そうとした奴は、許す事は無いでしょう。…でも…もう我を忘れたりはしません。その気持を…前に進む力に使います。マルガやリーゼロッテを守る…手放さいない為に」
俺の言葉に、嬉しそうに抱きつくマルガとリーゼロッテの頭を優しく撫でる。その愛おしい微笑みに思わず微笑んでしまう。
それを見たギルゴマはフフっと笑い
「なるほど…きちんと自分の気持ちを理解し、利用出来る様になった訳ですか…。貴方も少しは成長したのですかね」
その言葉に、俺が苦笑いをしていると、少し目を細めるギルゴマは
「少しだけですので。それと成長したと言っても、ほんの微々たるもの。本当の自分を知るなんて事は、とっくの昔にしておかなければいけなかった事。浮かれない様に。…それに、また顔に出てますよ葵さん。本当に何度言えば…」
そう言って軽く溜め息を吐くギルゴマ。再度苦笑いする俺。
「とりあえず、選定戦の事を知っているなら話が早いよ。バイエルントの詳しい情報が欲しいんだ」
俺のその言葉を聞いた、ギルゴマはフフッと鼻で笑うと、
「貴方は私を誰だと思っているのですか?最初に言いましたでしょう?そろそろ、貴方が来る頃だと。…リューディア、例のモノを葵さんに」
「はい!ギルゴマ師匠!」
ギルゴマの言葉を聞いたリューディアは、俺の手に複数の羊皮紙を手渡す。
「それは、ここ最近の、このリスボン商会の王都ラーゼンシュルト支店で、バイエルントからの品物を取引した商談表を書き写した物だ。取引した商人の名前は書いていない。だが、それを見たら、バイエルントからの商品がどれ位で取引されているのかが、かなり解る様になっている。それとこれは、バイエルントと、その周辺の地図だ。きっと役に立つ」
それを俺の手から受け取ったリーゼロッテの瞳が、キラリと光る。
「これは凄いですね…バイエルントからの品物が数量ごとに…これを見たら、何が高値で取引されているか、一目瞭然ですわね」
金色の透き通る様な綺麗な瞳を、輝かせているリーゼロッテを見て、フフっと笑うギルゴマは
「それは良かったです。貴方の様な利口そうなエルフさんに見て貰えて。それと…その資料は、読み終わったら、全て焼却して下さい。絶対に、他者に渡る事が無い様にお願いします」
そりゃそうだ。これを見たらリスボン商会の王都ラーゼンシュルト支店にいくらで売れるか一目瞭然だ。こんな内部資料を渡したとなれば、大変な事になる。
リーゼロッテはその羊皮紙の束を、自分のアイテムバッグにしまうと、
「これは私が責任をもって処分しますわ。ご安心下さい」
ニコっと微笑むリーゼロッテを見て、フフッと笑うギルゴマは、
「貴方に任せていれば、安心そうですね。葵さんじゃ少し心配ですからね」
ニヤッと笑いながら、俺を見るギルゴマに苦笑いする。
「私が出来る事はここまでです。後は貴方が自分の力で何とかしなさい。そして、専任商人をもぎ取って、再び私とリューディアの前に来るのです。解りましたか?」
優しく微笑みながらも、キツイ目をするギルゴマの瞳を、正面から見返し、
「うん解ってる。必ず、もぎ取ってくる。そして、また皆でここに来るよ」
「…商人の約束は絶対ですからね?」
「うん…解ってる…ありがとうギルゴマさん…」
お互いに微笑み合う俺とギルゴマ。それを嬉しそうに見ているリューディアと、一同。
「それから、荷馬車の塩と香辛料を売りたいんだけど良い?」
それを聞いたリューディアは、顎に手を当てしばし考え
「葵。塩と香辛料は、バイエルント国内で売る方が良い。バイエルントは内陸で、岩塩の取れない国なんだ。だから、塩が高値で売れるし、香辛料も人気がある。それに、何かの役に…立つかもしれないだろ?」
ニヤッと笑うリューディアに頷く俺。
「じゃ~葵さんも準備をしなさい。私も暇ではありませんからね。もう行きなさい」
ギルゴマの言葉に頷き、挨拶をして、俺達は部屋を出ていく。
俺達の出て行った扉を見つめ、ハア~と溜め息を吐くギルゴマ
「ギルゴマ師匠どうしたのですか?」
「いえ…まさか、あの時に感じていた懸念が、当たってしまうとは、思ってなかったもので」
そう言って、寂しそうな顔をするギルゴマ
「あの時…と言われますと?」
「ええ…。ラングースの町で、葵さんが初めて…マルガさんを連れてきた時の事なんですけどね。その時、私は葵さんを見て、何か少し違和感を感じたのですよ。今までとは違う…何か…瞳が曇っているかの様な感じがしましてね。そこで少し葵さんに苦言を呈していたのですが…懸念通りになってしまった。ま…それは克服したみたいですけどね」
ギルゴマの話を聞いていた、リューディアは
「ギルゴマ師匠!私達に出来る事はまだあるはずです!葵の為に…出来る事が!」
切なそうにギルゴマを見るリューディア。そのリューディアの頭を優しく撫でるギルゴマは、
「…確かに、他に出来る事はありますが…貴女も解っているでしょうリューディア?…私達はまだ…ド・ヴィルバン商組合と事を構える事は出来ません。今はまだ…です」
そのギルゴマの言葉に、キュッと唇を噛むリューディア。
「それにこれは…葵さん自身が乗り越えなければいけない壁なのです。大手の商会や、大手の商組合を相手にすると言う事が、どういう事なのかをね。これは、葵さんが商人として、これからやっていく為には、避けて通れない事…」
「ですが…それでは…」
ギルゴマの言葉に、言葉を濁すリューディア。
「…石を積むのです」
「石…ですか?ギルゴマ師匠…」
ギルゴマの言葉に、キョトンとしているリューディア。
「そうです。石を積み上げるのですよリューディア。崩されても、蹴られても、汚されても、恥かしくても、不細工でも…石を積み続ける。何度も何度も積み上げ続ける…。そうやって、崩されながらも、石を高く積み上げた者のみが、先に進む事が出来るのです。例え今…石を崩されたとしても…今の葵さんなら…石を積み上げて行くでしょう。それを、見守ってあげるのです。解りましたかリューディア?」
ギルゴマの言葉に、静かに頷くリューディア。
「まあ…この私と約束しましたので、もぎ取って来なければ許しませんけどね」
ニヤッと笑うギルゴマを見て、フフフと笑うリューディア。そんなリューディアを見て、軽く溜め息を吐くギルゴマは
「それから…私の事は、支店長と呼ぶ様にと、いつも言っているでしょう?全く…」
「だって…葵達や、2人だけで居る時は、良いじゃありませんかギルゴマ師匠」
少し拗ねる様に言うリューディアの額に、優しくキスをするギルゴマ。嬉しそうに頬を赤らめているリューディア。
「葵さん…あの時の様に…必ずもぎ取って来るのですよ…」
「きっと何とかしますよねギルゴマ師匠!なんたって、私達の弟子なんですから!」
「…そうですね。そうでないと困りますね」
フッ笑うギルゴマ。それを見て微笑むリューディア。
「そう言えば…キリクがあの商会にいましたね…リューディア、今すぐに手紙を書きますので、今日出航する高速魔法船のビルリウスに渡して貰えますか?キリクに渡して欲しいと言えば解りますから」
その書かれた手紙を持って、部屋を出ていくリューディア。
ギルゴマは少し溜め息を吐いて、いつもの業務に戻っていくのであった。
ここは、とある高級な宿屋。
その中でも、一番高級な部屋で、複数の影が交じり合っていた。
「ほら!どうした!もっと腰を振らないかミーア!この役立たずのワーキャットが!」
「す…すいません!ヒュアキントス様!すぐに…ご奉仕します!」
そう言って、お尻をヒュアキントスの股間に擦りつけている、ワーキャットのミーアと呼ばれた少女。
あどけなさの残る可愛い童顔の顔を歪めている。肩に掛からないショートの紫色の綺麗な髪を振り乱し、茶色の大きな瞳を苦痛で潤ませている。そんなミーアの腰を持ち、強引に腰を可愛いお尻に叩きつけるヒュアキントス。部屋の中に、パンパンと乾いた悲愴な音が、鳴り響いていた。
「ええい!つまらぬ!役立たずが!」
吐き捨てる様に言うヒュアキントスは、ミーアを床に投げ捨てる。ドッと床に倒れこむミーア。
「シノン!役立たずのミーアの代わりに、お前が奉仕しろ!私を喜ばせろワーラビット!」
「はい!ヒュアキントス様!」
慌てながら、ミーアと同じ様に、お尻をヒュアキントスの股間に擦りつけて、腰をふるワーラビットのシノンと呼ばれた少女。
ヒュアキントスに腰を掴まれ、肩より少し伸びた強く紫色掛かった黒髪を振り乱し、可愛さの残る綺麗な顔を歪ませ、日本人に近い肌色の肌から、玉の様に汗を流す。その髪の毛と同じ紫の瞳には、かすかに涙を浮かべていた。
「まだまだだぞ!もっと激しく腰をふらぬか!このグズが!」
そう言って、手に鞭を取り、シノンの尻に打ち込む。
「ハンンン!!」
「ほらほらどうした!もっと喜びの声をあげぬか!」
そう言いながら、鞭を打ち込んでいくヒュアキントス。シノンは苦痛に耐えながら、必死にヒュアキントスの股間に腰を振っている。
「グズが!一向に役に立たぬ!」
そう言ってシノンも床に投げ捨てるヒュアキントス。ミーアと同じ様に床に打ち捨てられて、ミーアと抱き合いながら、かすかに震えているシノン。
「最後の仕上げはお前だステラ!最後まで奉仕せよ!ワーウルフのお前が頑張れねば、また罰を与えるぞ?」
「はい!ヒュアキントス様!すぐにご奉仕致します!」
少し震えた声で言うステラと呼ばれたワーウルフの少女は、他の少女達と同じ様に、ヒュアキントスに可愛いお尻を擦り付ける。少し大人びた大人しめの美しい顔を引き攣らせて、必死に腰を振り、少し銀色掛かった黒髪を振り乱し、銀色掛かった紫の瞳に涙を浮かべるステラ。
「ほらもっとだ!もっと腰を振れ!クククいいぞ!こうすればもっと良くなるか?」
「グッツウウウッツ」
ヒュアキントスは卑しい微笑みを称えると、ステラの細い首を両手で締め上げる。その苦しさに、顔を歪めながらも、必死に腰を振るステラ。
「イクぞ!激しく奉仕せよ!」
それに頷くステラは必死に奉仕する。首を締められて、意識を朦朧とステラがさせる中、ヒュアキントスが絶頂を迎える。
そして、精を出し終えたヒュアキントスは、ステラを床に投げ捨てる。ステラの秘所から、ヒュアキントスの精が滴っていた。
ゴホゴホと咳き込みながら、蹲っているステラに、ミーアとシノンが近寄る。
その床に蹲り、震えながら自分を見ている美少女の姿に、喜びを感じているヒュアキントス。
「ほら!何を休んでいる!さっさと、俺の高貴なモノを、綺麗にせぬか!」
その声を聞いた、ミーア、シノン、ステラの3人は、ヒュアキントスのモノを口で綺麗にしていく。
「全く…お前達は仕事はそこそこ出来るが、夜の奉仕は3人で1人前なので困るな。まあ…あの葵とか言う行商人の少年の一級奴隷…ワーフォックスの少女と、エルフの女が手に入れば、お前達になど夜の奉仕はさせぬがな。あの2人にさせる。あの美しい生意気な2人を、一からきっちり調教しなおしてやる…楽しみだ…」
そう言って、ベッドから立ち上がったヒュアキントスを見て、平伏するミーア、シノン、ステラの3人。
「「「今日もご奉仕させて頂き、ありがとうございましたヒュアキントス様!!」」」
3人が声を揃えて、床に頭を擦りつけていた。それを見て、フっと軽く笑うヒュアキントスは、
「ウム。あの2人が手に入っても、お前達は一級奴隷のままにしてやっても良い。良き仕事をするのだぞ?」
「「「はい!ありがとうございます!ヒュアキントス様!!!」」」
声を揃え、平伏しながら返事をする3人
「ウム。子卸の薬は、皆きちんと飲んでおけ。お前達ごときに、私の高貴な種はやらぬ。もし、俺の子を宿そうものなら、力を使ってすぐに処分してしまうからな。きっちり飲んでおけよ」
「「「はい!承知しております」」」
「ウム。では私は寝室に戻る。後片付けをしておけ!」
「「「はい!かしこまりましたヒュアキントス様!おやすみなさいませ!良き夢を!!」」」
その声を聞いて、3人の美少女の一級奴隷たちの部屋を出るヒュアキントスは、自分の寝室に戻る。
部屋の中に入り、バスローブの様な物を羽織りながら、豪華なソファーに腰を下ろし、グラスにワインを注ぐ。
暫く豪華なソファーに座りながら、美酒に酔いしれていたヒュアキントスの寝室の扉が開く。
すると部屋の中に一人の男性が入って来た。その男性は、豪華なソファーでくつろいでいるヒュアキントスの傍まで近寄る。
太陽の様に燃える様な赤み掛かった金髪に、その燃える様に赤い瞳、男と思えぬ白い肌、気品を漂わせる美しい顔立ち。身長はヒュアキントスより少し低い位か。そのヒュアキントスに勝るとも劣らない美男子の顔を見て、嬉しそうな微笑みを向けるヒュアキントス。
「お帰りアポローン。待っていたよ」
優しく語りかけるヒュアキントスに、ニコっと微笑むアポローンは
「ただいまヒュアキントス。君の言う通り、全て手はず通りになったよ。全て予定通りだよ」
「いつもすまないねアポローン。助かってるよ」
「僕は君の使者だからね。君の命令とあらば、なんだってするよ?」
ニコっと微笑むアポローンを見て、豪華なソファーから立ち上がったヒュアキントスは、アポローンに抱きつく。そして、アポローンの唇に、吸い付くようなキスをするヒュアキントス。
「そんな言い方はやめてくれアポローン。僕は君の為に全てを実行してるのだから」
「そうだったね。…でも、君は女の方が良いのではないのかい?さっき迄…あの亜種の一級奴隷達に奉仕させていた様だけど?」
その言葉を聞いて、再度アポローンの唇にキスをするヒュアキントス。
「僕が愛してるのは君だけだよアポローン。僕にとって女達は…綺麗な使い捨ての洋服と同じさ。それだけの価値しか無い。只僕を引き立たせる物でしかないよ」
「意地悪を言ったねヒュアキントス。ごめんよ」
ニコっと微笑むアポローンに優しく微笑むヒュアキントス
「これで、もうすぐ…あのルチア王女の専任商人になって近づける様になる。そして、他の女達の様に、僕の魅力で、第三位王位継承権のあるルチア王女の心を奪い、僕に跪かせてみせるよ。そうなれば僕も王族。その先で他の兄弟達を蹴落として、ルチア王女を王位につかせる。その後ルチア王女を人知れず…始末すれば…僕がこの国の全てを握る事になる。そうなれば…君を何時も隣において、天高く光る太陽の様に、光り輝かせて上げるからねアポローン。それまで…暫く我慢しておくれ…」
「…僕は君と一緒に居れるだけで…良いけどね。でも、君が望むなら…僕はなんでもするよ…」
「可愛い事を言ってくれるじゃないかアポローン。今日も寝かせないよ…」
ヒュアキントスはアポローンを抱き寄せると、そのままベッドに雪崩れ込む。
「フフフ…楽しみだよ…全てが美しい僕と君の物になる日が…」
こうして選定戦前の最後の夜は、更けていくのであった。
今日は、選定戦の開始日だ。
準備の出来た俺達は、それぞれの荷馬車に乗り、取り決めの魔法船が停泊している、、ロープノール大湖の桟橋まで来ていた。
俺達が乗り込むのは、アルバラードが用意した高速魔法船。それでバイエルントに向かう事になった。
高速魔法船に近づいた時、文官と兵士達がやってきて、俺達のネームプレートを確認する。
「確かに葵殿一行であると確認しました。荷馬車を高速魔法船に搬入して下さい」
その言葉に、高速魔法船に荷馬車を乗せようとした時だった。俺達の右側から、2匹のストーンカに引かれた鋼鉄馬車と、作りの頑丈そうな、2台の大きな荷馬車がやってきた。
それを見て、目を丸くしているマルコ
「すごいね葵兄ちゃん!鋼鉄馬車1台に、大きな丈夫そうな荷馬車が2台。しかもそれぞれが、2頭のストーンカで引っ張ってるよ」
「本当です~。あんな大きな荷馬車なら、沢山の商品が積めますし、2匹のストーンカさんなら、もの凄い重量を引っ張れそうなのです~」
マルガの言葉に、ウンウンと頷いているマルコ。その一行を、目を細めて見ているリーゼロッテ。
すると、荷馬車を操っていた、亜種の一級奴隷が、係りの者と話をしている。
ひと目でそれが、ヒュアキントス一行である事を、皆が理解していた。
高速魔法船に荷馬車を積み込み暫くすると、高速魔法船はゆっくりと桟橋を離れ、みるみる速度を上げ、一路、バイエルントに向かって進み出す。
高速魔法船で一段落した俺達は、甲板に出てきていた。
結構な速度で進む、高速魔法船の心地良い風を感じながら、その移りゆく景色を皆で眺めていると、背後に複数の気配を感じた。それに、振り返ると、そこにはヒュアキントスと3人の亜種の美少女達が立っていた。
「これはこれは、葵殿。良く逃げ出さずに、この高速魔法船に乗り込めましたね。僕はてっきり、もう既に何処かに消えてしまったと思っていましたよ。まあ…逃げ出しても、君のその2人の一級奴隷は、契約放棄とみなして、僕の物にするつもりでしたけどね」
ニヤっと微笑むヒュアキントス。その言葉を聞いて、若干一名が噛み付こうとしたが、それを予期していた俺は、その一名を優しく止める。
「ご…ご主人様…」
俺に優しく止められたマルガの頭を優しく撫でると、落ち着いてきたのか、気まずそうにしながらも、嬉しそうに尻尾をフワフワさせていた。
「そんなくだらない事を言いに来たの?意外と天才様も暇なのかな?…大商組合の御曹司も大した事はないね」
ニコっと微笑みながらの俺の言葉に、きつい表情をするヒュアキントス。少し顔に傷のある亜種の3人の美少女の一級奴隷達は、その言葉に恐れを感じて居る様であった。
「…言ってくれるじゃないか。だがしかし、僕と君とでは全てが違う。そう…全てがね。今から楽しみだよ。低能だが、その見た目だけは素晴らしい、君の亜種の一級奴隷とエルフの一級奴隷を調教出来るのがね。くだらない考えなど二度と起こさない様に…君の事など、一瞬で忘れさせる位、調教してあげるよ。低能で愚かで…浅はかな君の奴隷にね!!」
ニヤ~ッといやらしく笑うヒュアキントスに、激しい毒の炎が、俺の体を激しく包み込む。
俺はツカツカとヒュアキントスの傍まで歩み寄ると、顔に傷のある亜種の一級奴隷の頬に触る。
「酷い事を…ま…俺も人の事は言えないが…」
「何がおかしい?粗相をした奴隷を、主人が躾けただけだろう?それに、君が気にする事では無いはずだが?」
ヒュアキントスの言葉を軽く流し、その亜種の一級奴隷の美少女の頬を優しく撫でながら、
「もうちょっとだけ我慢しな。すぐにこの暴君から、君達を開放してあげる。だから…もうちょっとだけ…待っててね…」
そう言って優しく微笑むと、その亜種の一級奴隷の美少女は、顔を少し赤らめて俺を見ていた。
その、一級奴隷の美少女を見たヒュアキントスが、激昂する。
「ミーア!貴様何を顔を赤らめている!僕はそんな命令を出してはいないぞ!」
そう言い放って、懐から鞭を取り出して、ミーアと呼ばれたワーキャットの美少女に向かって、鞭を振り下ろす。
それを見たミーアは体を竦めて、その罰に恐れていたが、ソレが実行される事は無かった。
何故なら、俺がヒュアキントスの腕を掴み、ソレを阻止したからだ。
「君…何をしているんだ?」
「何って…当たり前の事をしてるんだけど?」
「あ…当たり前の事だと!?」
「そう当たり前の事。その3人の亜種の一級奴隷達は、俺のマルガやリーゼロッテと同様、掛けの対象にされている物…つまり商品だ。契約している以上、お前は商品を安全に、その品質を落とさない様に管理しなければならない義務がある。…専任商人選定戦中は、この3人の亜種の美少女達には、危害を加えないで貰おうか。俺の一級奴隷になる、この3人に、これ以上傷を付けるな。その品質を落とすのなら、契約不履行で、報告させて貰う。それがどう言う事を意味するのか、天才様なら解るよな?」
俺の嘲笑う言葉を聞いたヒュアキントスの顔が歪む。グッと、声を出して、ゆっくりと鞭を持った手を
静かに下ろす。
「解って貰えて何よりです天才様。じゃ…僕は暇じゃありませんので、この辺で失礼しさせて貰いますね」
そう言って客室に帰っていく俺の後ろ姿を、激しく睨みつけるヒュアキントス。
「そうそう…。後、鋼鉄馬車も大切に扱ってね。それも俺の物になるのだから…汚さないでくれよ?こっちはマルガとリーゼロッテを大切に扱って、管理するから。では…」
俺の軽い言葉に、キツイ目で見つめるだけのヒュアキントスを甲板に残し、俺達は客室に戻って行く。
甲板に取り残されたヒュアキントスは、顎に手を添える。
「…もう挑発には乗ってこないか…流石に気がつくか。…まあいい。もう既に…事は成っている。後はただ待つだけなのだからな。もうすぐ…その全てが…」
流れ行く景色を見ながら、口元を上げ、微笑んでいるヒュアキントスであった。
「やっとバイエルントに到着しましたねご主人様!」
マルガが俺に腕組みをしながら、嬉しそうに尻尾をフワフワさせていた。
高速魔法船で6日、俺達はバイエルント国に上陸していた。
ここはバイエルント国の割りと小さな町、アッシジ。人口3万人位の町だ。
この町の周辺には、小さな村が存在するのみで、他のこれ位の規模の町には、荷馬車で10日位掛るらしい。選定戦の期日は20日、高速魔法船で往復12日掛かるので、バイエルント国内に滞在出来るのは8日。実質この町で商品を仕入れる事になるだろう。
リーゼロッテは既に頭の中に記憶させている、この町の周辺や、特産物、利益の高い物の事を考えながら、
「とりあえず、すぐ傍にある商会から、足を運んでみましょうか葵さん」
「だね。リーゼロッテ、利益率の高い品物は、前に聞いた物でいいのかな?」
「はい。このアッシジの町で、一番利益が上がるのは、黒鉄と果実酒、それに毛皮ですね。次いで、山で取れる果物系、山菜、干し肉、ですね。鉱石系は黒鉄の他に、金や銀も採れますが、金や銀は関税が高すぎるので、論外でしょう。黒鉄、果実酒、毛皮をメインに、交渉しましょう」
リーゼロッテの言葉に頷く俺達は、一番近い商会に向かっていた。
少し小さい、ラングースの町の様な街並みに、懐かしさを感じながら進んで行くと、一件の商会に到着した。
俺は荷馬車を降りて、受付の男に向かう。こちらに気がついた受付の男は、俺達を見て、少し眉を動かす。
「すいません。商品を仕入れたいのですが、良いですか?」
「ええ!結構ですよ!ささ!どうぞどうぞ!」
俺達は案内されるまま、商談室に入る。
「今日はどんな物を、お望みですか?」
「黒鉄、果実酒、毛皮が欲しいんだ。予算は金貨100枚。お願いできますか?」
その言葉を聞いた男は、あ~っと言いながら、残念そうに顔に手を当てる。
「今、黒鉄、果実酒、毛皮は10日程前から品切れ中なんだ!結構人気のある品物だからね。でも、果実や山菜、干し肉なら沢山あるよ!儲けも出しやすいから、金貨100枚分も買ってくれるなら、価格も相談に乗るけどね。どうだろう?」
ニコニコしながら言う男。
俺とリーゼロッテは顔を見合わせる。リーゼロッテが首を微かに横に振る。俺もリーゼロッテと同じ気持ちであった。
「悪いけど出直すよ。また来るかも知れないから。その時はよろしく」
俺達は男に挨拶をして、荷馬車に乗り込み、商会を後にする。
「やっぱり、人気商品は品薄なのかな?」
「そうですね葵さん。とりあえず、次の商会に行ってみましょう」
リーゼロッテの言葉に頷き、別の商会に足を運ぶ俺達。
そして商会の男と話すが、黒鉄、果実酒、毛皮は品切れであった。再度荷馬車に乗り込み、別の商会に向かう俺達。
「やっぱり人気なのですねご主人様~。ここも品切れでしたし~」
「だね。ま…儲けの出る物は人気があるからね。他の商会もまだ沢山あるし、他を当たってみよう」
「そうですねご主人様!」
嬉しそうにしているマルガの頭を撫でると、ニコっと微笑んで金色の毛並みの良い尻尾をブンブン振っていた。
そして、3件目の商会にやって来た。そこで受付の男と話すが、ここでも黒鉄、果実酒、毛皮は品切れだった。それを残念そうにしている俺達。その中でリーゼロッテだけが、目を細めて、何かを考えていた。
「ここでも品切れですねご主人様~」
「仕方無い。他の商会を回ろう」
俺の言葉に一同が頷き、4件目の商会に入った時だった。受付の男が、俺達をまじまじと見つめている。そして、その受付の男と一緒に商談室に入る。
「今回は、どの様な物を仕入れたいのでしょうか?」
「えっと…黒鉄、果実酒、毛皮なんですが…ありますか?」
その言葉を聞いた男は、軽く溜め息を吐くと、
「申し訳無いですが…黒鉄、果実酒、毛皮は品切れですね」
その言葉に、マルガとマルコは残念そうな顔をしている。そして、俺達をマジマジと見る受付の男は
「貴方は…ひょっとして葵さんですか?」
俺はまだ自己紹介もしていないのに、名前を呼ばれた事に戸惑っていると、
「私の名前は、キリクと言います。リスボン商会、王都ラーゼンシュルト支店長、ギルゴマさんとは、ちょっとした知り合いで、昔大変お世話になった恩人なんですよ」
「え!?そうなんですか!?」
「はい。それでギルゴマさんから手紙を頂きまして…貴方達の事は知っていたのですよ」
苦笑いしながら言うキリク。そして、その表情を引き締めて、小声で話しだす。
「この話は、ここだけにして欲しいのですが…貴方達が欲している、黒鉄、果実酒、毛皮は、手に入らないでしょう。10日前に、この町の全ての黒鉄、果実酒、毛皮が予約済み…売却予定だからです」
「え…それはどういう事なのですか!?」
思わず声を上げてしまった。キリクは俺に静かにする様に言うと、話を続ける。
「全てお話する事は出来ません。ですが、先ほどの品物が全て、この町に無いのは事実です。…詳しい取引相手などは言えませんが、その、大口の取引をしてくれた人達から1日前より、いい遣っている事があるのです」
「…それは、どんな事なのですか?」
リーゼロッテが目を細めながら聞き返す。
「それは…黒髪に、黒い瞳をして、亜種の美少女とエルフの美少女を一級奴隷にして、もう一人子供を共にしている、行商人の少年が来たら、果物、山菜、干し肉を薦めて売ってくれと、言われています。理由は知りませんが、大口のお客の言う事なので、その一行が来たら、私も言うつもりでした。…ですが、ギルゴマさんから手紙を頂きまして、もし、貴方達が来たら、言える範囲で良いので、協力してやって欲しいとお願いされました。なので…こうやって、内密に話をさせて貰ってます」
キリクの話を聞いた俺達は顔を見合わせ、困惑する。
「とりあえず、貴方達に売れるのは、果実、山菜、干し肉…。他の商品もありますが、黒鉄、果実酒、毛皮は諦めて下さい」
キリクの言葉に戸惑ったが、今は少し考えたい。
「とりあえず、出直します。貴重な情報、ありがとうございます」
「いえ…良いのです。ギルゴマさんの頼みなのですから。…この事は…絶対に内密にお願いします」
そう俺達に釘をさしたキリクと、挨拶をして別れる。
俺達は町の広場の隅に荷馬車を止め、集まっていた。
「どうしよう葵兄ちゃん!この街中の、黒鉄、果実酒、毛皮が売り切れで手に入らないなんて!」
「そうなのです!全て買われてしまってます!私達には少しも手に入らないかもなのです!」
マルガとマルコは、顔を見合わせながら、困惑していた。
その中で、ハア~ッと大きく溜め息を吐くリーゼロッテ。リーゼロッテは俺に向き直り、金色の透き通る様な美しい瞳に、何かの核心を秘めた光を放ちながら、
「やられましたね葵さん。私達は…どうやら…出来レースの上を進まされて居るだけの様ですわ」
「できれーす?リーゼロッテさん、それはどんな食べ物なのですか?」
マルガは可愛い小首を傾げながら、う~んと唸っていた。
俺は地球の勉強をしていたリーゼロッテの、その余りにも解りやすい言葉に、全てを理解するのにさして時間は掛からなかった。
「そうか…そう言う…事…だったのか…」
力なくそう呟いて、石段に座り込む。それを心配そうに見つめる、マルガにマルコ。
「どういう事なのですかご主人様?」
「…全て仕組まれていたんだよマルガ。専任商人選定戦も…何もかもね…」
俺はマルガに説明を始める。
今思い返してみれば、おかしい所だらけであった。
商人としては、一応筋が通っているとは言え、ヒュアキントスの言葉を、すぐに容認したアルバラード。
全ての決定権を持つアルバラードは、最初から選定戦など、どうでも良かったのだ。
この選定戦をしたのは、ルチアへの配慮のみ。無下に扱っていないと言う事を証明するだけの茶番だったのだ。
俺が出された条件を飲まなければ、力不足と勝手に決めつけ、排除する。
如何に立ち回ろうとも、決定権を持つのはアルバラード。彼の気分次第でどうとでもなる。
彼にはそれだけの権限が、女王から与えられているのだ。彼の失敗は委任した女王の失敗になる。彼の言葉を簡単に流せないのも、これが理由だ。
たまたまヒュアキントスが、マルガとリーゼロッテを欲しただけで、それ以外は全て予定通り。
あそこで、奴隷を商談に持ちだしたヒュアキントスも、普通にドライに考えれば、利益を上げる交渉をしただけの事。何も可笑しくはない。奴隷は資産。はなから商品なのだ。むしろ商品に感情を持っている、俺こそが『普通』ではないのだから。別に法律的にも、慣習的にも可笑しくない。
そして、条件を飲んで選定戦に出たとしても、一番利益の上がる物は手に入らない。
一番利益の上がる物は、当然ヒュアキントスが全て抑えている。しかも10日前から。
選定戦の契約前なら、何をしていても問題は無い。契約期間外だからだ。
そしてそれを知らない俺達は、四苦八苦した挙句、2番めに利益の上がる品物を取引して、アルバラードの前に出し、僅かながら負ける。あくまでも接戦したかの様に見せて…
そう…全てはルチアを諦めさせる為の茶番。仕組まれた出来レース…
俺達の出番は、はなから予定されていたものだったのだ。
俺の話を聞いて、絶望的な顔をする、マルガとマルコ
「じゃあ…何をしても…オイラ達は負ける事が決まっていたの…?葵兄ちゃん」
「そんな酷い…対等の勝負どころか…全て決められていたなんて…」
「そう…全ては決まっていたんだ。俺達が王都ラーゼンシュルトに就く前からね」
その言葉に顔を蒼白にさせるマルガとマルコ。
「そうしたらさ、何故全ての品物を、ヒュアキントスは押さえなかったのかな?」
「それが彼の凄い所なんだよマルコ。俺の居た世界には…窮鼠猫を噛むって言葉があってね…」
俺はマルコに話を続ける。
人間というものは、追い詰めると、何をしでかすか解らない生き物なのだ。
例えるならば、悪徳金貸しが解りやすいだろうか。
素人や三下、知性の低い奴らは、その対象、つまり、金を貸している人間を、とことん追い込み、簡単に自殺や、弁護士団体に駆け込ませてしまう。
そうなると、もう利益は上げれない。それと、自分の身に危険も回ってくる。
しかし、一流の者や、頭の良い物は、そのギリギリのラインで、一瞬力を抜く。
つまり、対象者に、思いきりさせないのだ。
もう少し我慢すれば…逆らうと怖い…ギリギリ生きていられる…
そういった恐怖を維持し続けさせ、一線を越えないように管理をする。
それが、差なのだ。細く長く、とれる時に取り、危ない時は一瞬希望を与える。
長く長く安全に絞りとる…そのバランスが取れる…それが一流であり、賢い者の選択なのだ。
「もし、金貨100枚分で、金貨10万枚分の商品を提示したら、あの頭の回転の早いルチアが黙っていると思う?今も、ルチアは疑っているのに、そんなもの出したら、すぐに解っちゃうよ。この選定戦自体が、全て仕組まれた事だってね。そんな阿呆な事を、天才的商才のあるヒュアキントスは絶対にしない。この選定戦は、あくまでもルチアの為の物。そんな阿呆な奴を、誰も推薦しないって事さ。絶妙なバランスをとれる…ヒュアキントスだから選ばれて居るんだよ」
俺の言葉に静かに頷くマルガにマルコ。
「そういう事ですわ。頭の回転が早いルチア様が、文句の言えない様な、絶妙なバランスで、勝ちをもぎ取って行くでしょう。あくまで取り決めの中で勝負したかの様に見え、文句が言えない…又は、言い難い、絶妙なバランスを…それが出来るのでしょうね…ヒュアキントスと言う人は。まさに天才ですね」
リーゼロッテの言葉に静かに頷く俺。
「恐らく、この町以外は、買い占められていないだろう。実質、この町にいられるのは8日。小さな村で取引したら、金貨100枚分、余程高額で、取引されている金や銀以外は、すぐに品が無くなる。そうなれば、あちこちの村を移動する事になる。そんな事してたら、すぐに期限が迫って、終了さ。それもきっと織り込み済みだと思う。ヒュアキントスと言う男ならね」
俺の言葉に頷くリーゼロッテ
「実際俺達も、あのキリクの言葉が無かったら、気がつけなかっただろう。少し怪しむが、無いなら他の商品で何とか対応等、そっちに気が行っていただろうしさ。この町は大きくない。商品が無くなる事も、多々有る事だしね」
マルガとマルコはなるほどと頷く。
「そして、彼の取引の品は恐らく黒鉄。大きく丈夫な荷馬車に、かなりの重量を引ける、ストーンカを2頭ずつ。あれは、かなりの重量を引くという事…」
リーゼロッテはそう言うと、静かに目を閉じる。
「とりあえず、期限は8日しか無い。二手に分かれて、この町すべての商会を回ろう!新しく商品が入ってきている可能性もある。まずは…この町を調べ尽くそう!」
俺の言葉に、皆が頷く。
こうして俺達は、アッシジの町を駆けまわるのであった。
昨日、専任商人の権利を掛けて、契約をしてきた俺は、この客室に帰ってすぐに、事の重大さに血の気が引いた。
至極当然であろう。専任商人権だけじゃなく、そこに…マルガとリーゼロッテを掛けてしまったのだから…
何故こんな事をした?何故こんな事になった?何故もっと上手く立ち回れなかった?何故専任商人権を捨てれなかった?何故…何故…何故………
その様な気持ちが、昨日から頭をグルグル駆け巡っている。
そして一番の何故は…
『何故…我慢できなかったか…』
この言葉に尽きる。これしか無い。
いつもの…いや…以前の俺なら、すぐに取引を辞めていただろう。
実際昨日も、途中までは、取引を止めるつもりであった。ルチアも瞳を閉じ、俺の気持ちを察し、取引を止める事を肯定してくれていた。それなのに…
「葵さん、食後の紅茶が入りましたわ。飲んでくださいね」
リーゼロッテは何時もと変わらない雰囲気で、俺に紅茶を渡してくれる。
俺のすぐ隣では、俺に腕組みをしながら、膝の上に白銀キツネの子供、甘えん坊のルナ抱いているマルガが、俺と同じ様に紅茶を飲んでいた。
『このいつもの光景が…見れなくなってしまうかもしれない…』
その気持ちが胸を刺し、思わずギュっと拳に力が入る。
その時、俺達の扉がノックされ、部屋に人が入ってくる。ルチアとマティアスだった。
お互いに挨拶をし合う中、ルチアは俺の座っている、ベッドの迄来ると、何も言わずに俺の隣に座る。
リーゼロッテがルチアに紅茶を手渡すと、ありがとうと言って、黙って紅茶を飲んでいる。
暫く黙って、俺の隣にただ座って紅茶を飲んでいたルチアであったが、静かにその口を開く。
「…葵…ごめんなさい…こんな事になるなんて…予想もしてなかった…本当に…ごめんなさい…」
初めて聞いたルチアの謝罪だった。いつも勝気なルチアらしからぬその言葉…
『違う…ルチアのせいじゃない…俺のせいだ…全て俺の責任…』
そう…全ては俺の浅はかさから来ている結果だ。
あの時…ヒュアキントスの言葉に我慢出来なかった。あの言葉を聞いた俺は、目の前が真っ赤になる位に血が上り、激昂していた。マルガを侮辱したヒュアキントスが…只々許せなかった。
その感情の赴くままに行動してしまった。実際、暴言に近い事を言っていた事すら、微かにしか覚えていない位、頭に血がのぼっていた。
そして、それに都合の良い理由もつけた。
ルチアの事も諦められない。それに勝てば、儲けもでる。商人にとって利益は必要だと…
それは事実だが、俺の本心では無かったはず…俺は自ら、泥沼にはまって行ったのだ。
それに比べヒュアキントスは、俺と玉座の前で対面した時、一瞬で俺への対策を考えていたのだろう。
俺がマルガやリーゼロッテを、普通の一級奴隷の様に思っていない事も、当然理解していた。
だから、アノ条件を提示した。
俺が降りれば、何もせずに専任商人になれ、飲めば勝った時に、欲しがっていたマルガやリーゼロッテが手に入る。どっちに転んでも、いいように。
誤算はリーゼロッテが追加で条件をつけた事だろう。アノ条件を聞いた時だけ、目を細めていた。
ルチアを目の前に、ルチアの名誉を傷つける事に二の足を踏む事も知っていた。
俺とルチアが、金銭的な繋がりだけでは無い事も感じていただろう。じゃないと俺みたいな一介の行商人を、ルチアが推挙しないと解っていたはずだ。
そして、極めつけは、どちらを選ぶかの決定権を持っていた、アルバラードの言葉だ。
アルバラードは何も勝負させる必要は無いのだ。女王のアウロラからこの件を一任…つまり委任され、代理権を持っている。好きな方を、自分の気分で専任商人に決めれる権利を持っているのだから。
ヒュアキントスの言葉に、一理あると言ったからは、それを受けないと、アルバラードはそれを理由に、勝負させずに決めていただろう。それだけの意志は感じられた。
あそこでヒュアキントスの提案を受けない訳には行かなかった。どんな理由が有るにせよ、ドライに利益をあげれなければ、商人として失格だからだ。
ある意味、避けれない交渉を、こっちのデメリットだけではなく、利益を上げる提案をしたリーゼロッテの頭の回転の早さは、たいしたものであろう。
それに…アルバラードとヒュアキントスが、通じていた可能性もある。いや…その可能性の方が高い。
ヒュアキントスの提案にすぐさま否定しない所も…まあ…考え出したらきりがないが…恐らくは…
そんな事をしていたヒュアキントス相手に…俺は何をしていた…?
『本当に自分の浅はかさに、反吐が出る…』
大きな溜め息を吐きながら、俺は飲んでいた紅茶をテーブルに置くと、マルガの腕を振りほどき、ベッドに仰向けに寝転がり、静かに瞳を閉じる。
俺は瞳を閉じながら、マルガと会ってからの事を考えていた。
『いつからだろう…俺がこんなにも冷静でいられなくなったのは…』
ふと、その言葉が心に浮かぶ。
俺は地球で20年生きて、特に何もなく、ちょっと喧嘩が強い位の、普通の学生だった。
見た目も普通、頭も普通、全てが普通づくし。当然、大切な人も居ない、恋人や彼女も居ない生活だった。
だが俺は、それを特別、不幸に思った事はなかった。
そりゃそうだ、地球のほとんどの人が『普通の人』なのだから。
普通に生活して、普通に死んでいく。特に歴史を動かす訳でもなく、『何かの役に立ったはず』と言う自己満足を抱えて、死んでいく人が殆どなのだ。明確に『歴史を動かした』なんて人は、70億人の内、数える程であろう。まさに、神が与えた因果の様に…
俺はそう思って生活してきた。俺は普通の人。何も特別でもなく、完璧でもない。それが『普通』なのだ。
昔は、喧嘩をする事はあっても、ここまで何かに執着し、後先考えずにキレる事は無かった。
『普通』の感情を持って、生活してきたはずだった。
『しかし、マルガに出会ってからの俺はどうだ?俺は何故…こんなに執着しているんだ?』
ふと心の底から沸き上がる疑問。
俺は今までに、後先を考えず、マルガやリーゼロッテを優先してきている。それは…何故だ…?
大好きだから?そりゃそうだ。マルガもリーゼロッテも大好きだ。いや…それ以上に…愛しているだろう。
初めにマルガを買った時も、後先考えず、大量の金貨を払い、マルガとリーゼロッテが攫われた時も、後先考えず、助けようとした。リーゼロッテがオークションで売られそうになった時もだ。
自らの命を掛けて、後先考えず可能性の低い事に、身を投じている。
そして極めつけは今回だ…怒りに身を任せ、そのまま事を進めている…後先どころか、何も考えずに、怒りにその身を燃やしてしまった…
こんな事は『普通』では無い。明らかに異常だ。いつもの俺ではない。
まるで…何かに、取り憑かれてしまったかの様に…
そんな事を思っていると、左手に温かい感触が伝わる。
ふと瞳を開けてソレを見ると、マルガが俺の左手を両手で握り、心配そうな面持ちで俺を見ていた。
その、暖かさに癒されながら、俺もマルガの両手を握り返す。
するとマルガは嬉しそうな顔をして、金色の毛並みの良い尻尾を、フワフワわせている。
『こんな愛おしいマルガを…もし失ってしまったら…』
その様な絶望と、嫌悪感が体を包んだ時だった。俺はいつかのソノ感覚と、シンクロしている自分に気がついた。そして…全てを理解する。
『…ああ…そうか…だから俺は…こんなに執着してしまったのか…』
俺は、心の中で結論をつぶやく。
俺はこの世界に飛ばされる前、18歳の時に両親を飛行機事故で無くし、天涯孤独の身となってしまった。あの感覚は、今でも覚えている。一瞬で大好きな…大切な人が居なくなる、あの感覚…
今も思い出すだけで、絶望感が体中を支配する。拭えない悲しさと寂しさ…孤独感…
決して消える事の無い…トラウマ…
その後、時間とともに、その傷も癒えてきているとばかり思っていた。
なんとか楽しい日常を取り戻し、『普通』に生活をする事によって…
でも実際は違った。いや…違っていたんだ。
その傷は毒の様に、知らず知らずに体中を駆け巡り、じわじわと侵していた…
その毒は体の中で、俺の『普通』を、侵していたんだ。
『俺は…大切な何かを奪われる…失う事が怖い…なくすのが怖い…大好きで大切だった、父さんと母さんを…失う様な…アノ感覚を…二度と味わいたくなかったんだ…』
そう…だから執着した。
大好きなマルガやリーゼロッテを、両親と同じ様に失う事が怖かったのだ。
その毒はより大きく体を侵し、汚される事が…許せない位にまで成長していた。
無意識に成長した毒は、更に成長を続けた。見えない心の奥底で…
だから…止まれなかったんだ…その燃え上がる感情を、消す事が出来なかった。
俺は…大切なモノを手に入れる代わりに、毒に侵され…その瞳をどんどん曇らせていっていたんだ…
だから…いつもの…いや…以前の俺の様に、冷静でいられなくなったんだ…
『そう…俺は執着心に毒された一種の野獣。俺の普通は…もう毒されていたんだな…』
思わず口元が緩む。自分自身に呆れ、またその毒の恐ろしさに、絶望する。
理由が解った今でも、その毒は消えてくれない。当然だろう。
今もマルガとリーゼロッテを汚そうとする奴の事を考えただけで、心の底から、毒の炎が激しく燃え上がる。
だけど…理由が解って…ソノ毒が消えないものだと解っても…俺にはやらなければならない事がある。
『俺は進む…この毒を抱えながら…毒に侵されながら進んでやる!!!!』
俺はこの毒と共存してやる。
今までは、自分の身を焼く事しか出来なかったこの毒の炎を、大切な…愛おしいマルガやリーゼロッテを守る為…手放さない為の力に…毒を糧にしてでも…進み続ける!!
俺はベッドに起き上がり座る。そして、その手を伸ばす。
「マルガ…リーゼロッテ…こっちにおいで…」
俺のその手を見て、マルガはニコっと微笑みながら、リーゼロッテは優しい微笑みを湛えながら俺の手を取る。そんな愛おしいマルガとリーゼロッテをギュット抱きしめる。
それを感じたマルガとリーゼロッテも、ギュと俺を抱き返してくれる。マルガとリーゼロッテの甘い香りに包まれ、その柔肌が俺を暖かく包み込んでくれる。
「大好きだよ…マルガにリーゼロッテ。絶対に手放なさないからね…」
俺の突然の言葉に、一切の揺るぎを感じさせないマルガとリーゼロッテは
「私もご主人様が大好きです…ずっと傍に置いてくださいね…」
「私も大好きですよ葵さん…私を二度と手放さないでくださいね…」
マルガとリーゼロッテは、最高の微笑みを俺に向けてくれている。
『毒よ…もうお前に、俺の身を焼かせてはやらない…お前は俺の…前に進む為の…力になって貰う!主導権は俺だ!』
俺はゆっくりと、マルガとリーゼロッテの体から離れる。そして、大きく深呼吸をする。
うん、大丈夫。空気が美味しいね!俺は進まなくちゃね!不細工でも…汚れていようとも…前に進む!
そして俺は勢い良く、ベッドから立ち上がり、皆に振り向く。
「マルガ!昨日の取り決めが書いた、羊皮紙を出して!今から、皆でそれを確認する!」
そのいつもと同じ俺の雰囲気を感じたマルガの瞳は、喜びの色を湛えながら、少し潤んでいた。
「ハイ!ご主人様!すぐに用意しますのです!」
元気良くハイ!と右手を上げて、テーブルの上に羊皮紙を用意するマルガ。
「ルチア…さっき言った言葉だけど、あれはルチアのせいじゃない。俺の責任だから。ルチアが気にする事は何もないし、俺もこのままでは終わらない」
その言葉に、ルチアの表情はみるみる明るくなる。そして、ルチアの肩に手を置きながら、
「俺はルチアの事も諦めるつもりはない。俺も商人だしね。勝って大儲けしてやるさ!」
俺の微笑みながらの言葉に、フンと元気良く言うルチアは
「…なんか吹っ切れた様ね葵。いつもの貴方の瞳の色ね。ま~貴方は馬鹿だから、仕方ないけどさ!」
そう言いながら、嬉しそうな表情のルチアに、ルチアらしさを感じる。
「よしまずは、取り決めの内容を確認しよう。リーゼロッテ読み上げてくれる?」
「解りましたわ葵さん」
そう言って、テーブルの取り決めの羊皮紙を読み上げるリーゼロッテ。
「まずは…商品を仕入れるお金は、渡した金貨100枚のみで、それ以上のお金は使用禁止。金貨100枚以外の、お金に変わる、関わる取引事由も認めない。その中には、関税や通過税、滞在税等の税も含む。その他の旅費についてはこの限りではない」
「なるほど…仕入れるお金や、税の支払いは、この金貨100枚の中でしなさいって事ね。食費やその他は自分のお金を出しても良い訳ね。これは資産の少ない、貴方には有利ね」
「確かにね。でもそれだけ実力の出やすい勝負でもあるって事でもあるけどね。後は…お金に変わる取引事由も認めない…つまり、後でお金を払うから、金貨100枚で、200枚分売ってくれと言う様な取引も認めないと言う訳か…品物に関しては、本当に金貨100枚でなんとかしないとダメなんだね」
俺の言葉に、頷くルチア。
「次に、フィンラルディア王国内での、不正行為は一切禁止。厳正に審査する」
「つまり…賄賂や税金を払わないのは、ダメって事ですかご主人様?」
「そうだね。それを含めて、厳重に監視するって事だろうね」
マルガの頭を優しく撫でながら言うと、嬉しそうにパタパタ尻尾を振っている。
「しかし、バイエルント国内に入れば…どうなるかわかりませんわね葵さん」
「うん。ま…俺が想像するに、そこは商人の適性を見ているのかも、知れないだけかもだけどね」
「適性って…どういう事なの?葵兄ちゃん」
マルコの問に、フフっと笑うリーゼロッテは
「恐らくですが…どれだけの不正をするか…を、見たいのかも知れませんわね。勝負には直接関係ありませんが、あえてバイエルントを外す事により、その商人の本質は見えますからね。どちらが勝つにせよ、それを見極める様にしておけば、対応はしやすい。言うなれば…餌でしょうね」
それを聞いたマルガにマルコは、なるほどと頷く。
「でも注意は必要ね。相手はあの天才的商才のあると言われるヒュアキントス。油断は出来ないわ。きっと何か仕掛けてくる。…注意してね葵」
「うん…解ってる」
ルチアの言葉に頷く俺。
「まだ続きがありますわ皆さん。バイエルントへの移動手段は、用意した魔法船を使うものとする。それ以外の移動手段は禁止。バイエルント国内は各自の荷馬車を使うものとする」
「バイエルント迄は、魔法船で移動して、バイエルント国内は荷馬車でと、言う事ですかご主人様?」
「だね。フィンラルディア王国内は、魔法船に荷馬車を積み込みするだけだね。これもある意味公平かな?」
俺の言葉にウンウンと頷くマルガとマルコ。
「最後は…推薦者は、いかなる理由があろうと、勝負に加担してはいけない。これが最後ですわね」
リーゼロッテの説明にルチアの顔が歪む。
「どうしたのルチア姉ちゃん?何か不味い事でもあるの?」
「大有りね。一見平等の様に見えるけど、葵とヒュアキントスじゃ差があるわ。人脈、権力、財力どれをとっても、全てヒュアキントスの方が上。つまり、本人の持っている力だけで、勝負しないといけない」
「ですが…優遇をして貰う事も出来ませんわ。それをしたら、契約上で平等では無くなってしまいますから」
「そうねエルフちゃん。…厄介だわ」
リーゼロッテの言葉に、腕組みしながら、渋々頷くルチア。
「仕方ないよ。本来なら、力を持った商人が、対決の場にいなければいけなかったのだから。それにいつも対等な相手と、取引出来る訳じゃない。むしろ不公平があって当然だよ。今の俺からしたらね」
俺の言葉に、渋々納得しているルチア。
「さて…詳しい内容も解った事だし…とりあえず情報を集めるか。ルチア聞きたいんだけどさ…アルバラードとヒュアキントスが、通じている可能性は…あるよな?」
俺のその言葉に、思い当たる節のあるルチアは
「…あるわ。アルバラードはお母様の信用のおける専属商人だけど、今回、私の側には回ってくれなかった。理由は解らないけど…」
「なるほど…ですから、ヒュアキントスの提案を、支持したのでしょうね。…今回、勝負という形にしてくれたのは…ルチアさんの尽力のお陰かもですわね。形上、公平にする為に勝負にした。こうすれば、ルチアさんを無下にした訳では無くなりますからね」
リーゼロッテの言葉に、そうねと、小さい声で言うルチア。
やっぱりか…アノ話の流れは、おかしかったからな。ま…確かに一理あるし、商人としては正解だが。
アルバラードには、隙を見せれないな。注意しないと。
でも…アウロラ女王は、何故アルバラードに全権を任せたんだ?そして、何故アルバラードは、ルチアの敵に回ったか…
アウロラ女王は俺に、ルチアを頼むと言っていた。しかし、そのアウロラ女王が信用する、アルバラードは、向こうに回っている。どういう事なんだ?…ダメだ…情報が少なすぎる。
アウロラ女王に直接聞いても、教えてくれないだろうし…とりあえずこの件は後回しか。
「次はバイエルントの情報を知りたいな。俺は行った事もないし、噂も知らない。特産品や利益が上がる物を、詳しく知っておかないといけないし」
「バイエルントは、高速魔法船で6日程よ。バイエルントの大まかな事は、この羊皮紙を見て。一応、役に立ちそうな物を、書き留めておいたから」
そう言ったルチアの羊皮紙を、リーゼロッテが受け取り、目を通している。
「一番重要な所だけど…あのヒュアキントスって、どんな奴なの?大手の商組合、ド・ヴィルバン商組合の、統括理事かなんかの息子みたいだけど…そんなに凄い奴なの?」
「そうね。実力だけなら、私も認めているわ。彼のお陰で、幾つもの商会の支店や、商組合の支店が、息を吹き返した位だからね。しかも、その遣り方も、全く無駄は無いわね。商才は天才的ね。でも…欲しい物は、何が何でも手に入れる様な所もあるらしいわ。今回のキツネちゃんやエルフちゃんの様にね」
確かにアノしつこさは異常だ。まあ~商人らしいと言えばそうだけど。
「解った。出発は明日だからきちんと準備するよ。俺達はちょっと出かけるから、皆用意して」
俺の言葉に準備を始める一同。
「葵…私は取り決め上、これ以上の力は貸せないわ…」
「…解ってるよルチア。俺も出来るかぎりの事はやるつもりだしさ。むざむざ、マルガとリーゼロッテを渡す様な事はしないよ。当然ルチアの事もね」
ルチアの肩に手を置くと、それをギュッと握り返してくるルチア。
俺達は準備をして、部屋を出て行くのであった。
準備をして部屋から出て来た俺達は、王都ラーゼンシュルトの街並みを見ながら、大きな通りを歩いている。
「ご主人様~。これから何処に行かれるのですか?」
マルガは俺に腕組みをしながら聞いてくる。
「今向かっているのは、リスボン商会の王都ラーゼンシュルト支店だよ。港町パージロレンツォで仕入れた、塩と香辛料の取引ついでに、情報を得ようと思ってね。それに、このリスボン商会の王都ラーゼンシュルト支店には、今、ギルゴマさんとリューディアさんが居るからね。2人から情報を得られればありがたいしさ」
「なるほどです!リューディアさんに会うのは久しぶりなので、嬉しいのです!ギルゴマさんは…苦手ですけど…」
「だね!リューディアさん優しいもんね!オイラも嬉しいよ!ギルゴマさんは葵兄ちゃんの師匠さんだから、オイラ会うの楽しみだよ!」
「嬉しそうですわねマルガさんとマルコさんも。確か葵さんから聞いた話ですと、葵さんの師匠さんと姉弟子さんらしいですね。私も楽しみですわ」
マルガとマルコに、微笑みかけるリーゼロッテ。
港町パージロレンツォの売り子公証人であったリューディアは、ギルゴマの計らいで、王都ラーゼンシュルト支店に移動になったのだ。この王都ラーゼンシュルトには魔法船で先に到着している。
俺は2人から得られる情報を、活用しようと思っていた。
暫く歩いて行くと、少し大きなレンガ作りの建物が見えてくる。割りと新しい作りのその建物は、リスボン商会の象徴、象のシンボルが入った旗を高らかに掲げ、沢山の荷馬車や商人達が、忙しそうに商会に出入りしている。その数の多さから、繁盛しているのが容易に想像できる。
そのリスボン商会の王都ラーゼンシュルト支店の入り口に行くと、一人の男が近寄ってきた。
「どうも。本日はどう言った御用でしょうか?」
「えっと、取引の予約に来ました。リューディアさんかギルゴマさんは居らっしゃいますか?いつも他の町で、担当して貰っていましたので」
その言葉を聞いた受付の男は、少し眉を動かす。
「ギルゴマ支店長と…リューディア副支店長にですか?…貴方のお名前は…?」
「あ!僕は、葵 空と言います。名前を言って貰えれば解ると思いますので」
俺の言葉を聞いた受付の男は、少し疑いの目で俺を見ながら、建物の中に入っていく。
暫く待っていると、受付の男が帰って来た。そして、俺を見てニコっと微笑み、
「お待たせしました!ギルゴマ支店長とリューディア支店長が、今からお会いになるとの事です。ご案内しますので、こちらにどうぞ!」
対応の良くなった受付の男に苦笑いしながら付いて行くと、割りと作りの良い扉の前で止まる。
「ギルゴマ支店長。葵様をお連れしました」
「はい。入って貰って下さい」
その懐かしい声に、部屋の中に入って行くと、沢山の書類の置かれた、作りの良い大きな机に、見覚えのある顔を見つける。その横には、ニコっと微笑むリューディアの姿があった。
「そろそろ私の所にやって来る頃だと、思ってましたよ葵さん。お久しぶりですね」
その涼やかで、全てを見抜いてしまいそうな瞳を、嬉しそうに緩ませるギルゴマ
「お久しぶりですギルゴマさん。それにリューディアさんも。お元気そうで何よりです」
「ああ!お前もな葵!そして、マルガもマルコも元気そうだな!」
笑顔で挨拶をするリューディアとギルゴマを見て、マルガとマルコはリューディアに飛びつく。
「リューディアさんお久しぶりです~。逢いたかったです~」
「オイラもだよリューディアさん!逢いたかったよ!」
「そうかそうか!お前達は可愛いね~。ホレホレ!」
リューディアはマルガとマルコを抱きしめながら、2人の頭をワシャワシャと撫でている。キャキャと嬉しそうに喜んでいるマルガとマルコ。
「マルガさんお久しぶりですね。私には…挨拶をしてくれないのですか?」
ギルゴマがニヤッと微笑むと、ぎこちない表情をするマルガは
「あ…あう…ギ…ギルゴマさんも、お久しぶりなのです~。元気そうで良かったです~」
少しリューディアの後ろに隠れながら、ぎこちなく言ったマルガを見て、面白そうな顔をしているギルゴマ。マルガの尻尾は、奇妙な動きでカクカクしていた。
「ギルゴマ師匠!オ…オイラは、葵兄ちゃんの弟子をさせて貰ってますマルコです!よろしくです!」
緊張しながらも、元気良く言ったマルコを見て、フフと嬉しそうに笑うギルゴマは
「貴方の事は、リューディアさんから聞いています。葵さんの弟子になったそうですね。葵さんを見て、きっとどこかにあるだろう、砂粒程の良い所を探しだして、自分の身に付けるのですよ?」
ニコっと微笑むギルゴマに、照れながら微笑むマルコ。
何となく酷い事を言われたギルゴマに、苦笑いしている俺を見て、リーゼロッテが前に出る。
「初めましてギルゴマさんに、リューディアさん。私は新しく葵さんの一級奴隷になったリーゼロッテでございます。ご覧の通り、エルフの血筋の者です。よろしくお願いします」
そう言って微笑み、気品のあるお辞儀をする知的なリーゼロッテを見て、ほう…と言った顔をするギルゴマ。
「葵…お前…また…新しい一級奴隷だと?…ギルゴマ師匠の弟子で…お前の姉弟子で…リスボン商会の王都ラーゼンシュルト支店の副支店長を務める私でさえ…まだ持ってないのに…本当に…良い度胸だよな葵ちゃん…今回も説明は…あるんだろうね?」
リューディアは俺に近寄ると、俺の頬を両手で引っ張って、ミョイ~ンと人間の限界を試す様に、引っ張る。それを見て、可笑しそうに笑っている、マルガにマルコ。
そんな、俺とリューディアを見て、ニヤッと笑うギルゴマは、
「まあまあリューディアさん許してあげましょう。なにせ葵さんは、ルチア王女様の専任商人の選定戦を、安っぽい挑発に乗って、受けてしまう位、力をつけたのですから。そんな安っぽい葵さんは、さぞや儲かっているのでしょうからね」
ニヤニヤと微笑むギルゴマの瞳は冷たく、笑ってはいなかった。俺がその言葉を聞いて狼狽えていると
「何を狼狽えているんですか葵さん?私は曲がりなりにも、このリスボン商会の王都ラーゼンシュルト支店の長ですよ?私の情報網を、甘く見ないで欲しいですね」
ギルゴマの一瞬ギラッと光り輝く瞳に、ゾクッとしたものを感じながら、
「はい…怒りに我を忘れて…安っぽい挑発に、乗ってしまいました…」
俺のその言葉を聞いたギルゴマは、盛大に溜め息を吐くと、右手で顔を押さえる。
「貴方は何をしているんですか…。その一級奴隷である、マルガさんやエルフのリーゼロッテさんは、貴方にとって、大切な者なのでしょう?全く…貴方という人は…」
呆れ顔のギルゴマを見て、心配そうに俺を見るリューディアは
「でもどうするんだい葵?このマルガやリーゼロッテの事を…。もし負けたら、この2人は、あのヒュアキントスの物になってしまうんだろ?何故そんな事になってしまったんだよ。いつものお前らしくない…」
リューディアは寂しそうに俺に言う。俺はキュッと唇を噛みながら、
「…俺は昔…両親を一瞬で亡くしています。その時の気持ちを引きずっていて、大切なモノを失う事や…汚される事に、過剰に反応してしまう様になっていたみたいなんです。自分でも気が付かなかった事なんですがね…」
「なるほど…そこを上手く突かれたのですね葵さん。…色々思い当たる節はありますが、これからどうするのですか?そして…またそこを突かれたらどうするつもりなのですか?相手はあの天才ヒュアキントス。私も彼の噂は良く聞きます。そんな人を相手にすれば…必ず同じ弱点を突いてきますよ?」
静かに語るギルゴマに、俺は静かに暫き目を閉じる。そして、見開きギルゴマに語りかける。
「俺は今迄、我を忘れて、その身を焦がして来ました。今も…その気持は消えていません。マルガやリーゼロッテを汚そうとした奴は、許す事は無いでしょう。…でも…もう我を忘れたりはしません。その気持を…前に進む力に使います。マルガやリーゼロッテを守る…手放さいない為に」
俺の言葉に、嬉しそうに抱きつくマルガとリーゼロッテの頭を優しく撫でる。その愛おしい微笑みに思わず微笑んでしまう。
それを見たギルゴマはフフっと笑い
「なるほど…きちんと自分の気持ちを理解し、利用出来る様になった訳ですか…。貴方も少しは成長したのですかね」
その言葉に、俺が苦笑いをしていると、少し目を細めるギルゴマは
「少しだけですので。それと成長したと言っても、ほんの微々たるもの。本当の自分を知るなんて事は、とっくの昔にしておかなければいけなかった事。浮かれない様に。…それに、また顔に出てますよ葵さん。本当に何度言えば…」
そう言って軽く溜め息を吐くギルゴマ。再度苦笑いする俺。
「とりあえず、選定戦の事を知っているなら話が早いよ。バイエルントの詳しい情報が欲しいんだ」
俺のその言葉を聞いた、ギルゴマはフフッと鼻で笑うと、
「貴方は私を誰だと思っているのですか?最初に言いましたでしょう?そろそろ、貴方が来る頃だと。…リューディア、例のモノを葵さんに」
「はい!ギルゴマ師匠!」
ギルゴマの言葉を聞いたリューディアは、俺の手に複数の羊皮紙を手渡す。
「それは、ここ最近の、このリスボン商会の王都ラーゼンシュルト支店で、バイエルントからの品物を取引した商談表を書き写した物だ。取引した商人の名前は書いていない。だが、それを見たら、バイエルントからの商品がどれ位で取引されているのかが、かなり解る様になっている。それとこれは、バイエルントと、その周辺の地図だ。きっと役に立つ」
それを俺の手から受け取ったリーゼロッテの瞳が、キラリと光る。
「これは凄いですね…バイエルントからの品物が数量ごとに…これを見たら、何が高値で取引されているか、一目瞭然ですわね」
金色の透き通る様な綺麗な瞳を、輝かせているリーゼロッテを見て、フフっと笑うギルゴマは
「それは良かったです。貴方の様な利口そうなエルフさんに見て貰えて。それと…その資料は、読み終わったら、全て焼却して下さい。絶対に、他者に渡る事が無い様にお願いします」
そりゃそうだ。これを見たらリスボン商会の王都ラーゼンシュルト支店にいくらで売れるか一目瞭然だ。こんな内部資料を渡したとなれば、大変な事になる。
リーゼロッテはその羊皮紙の束を、自分のアイテムバッグにしまうと、
「これは私が責任をもって処分しますわ。ご安心下さい」
ニコっと微笑むリーゼロッテを見て、フフッと笑うギルゴマは、
「貴方に任せていれば、安心そうですね。葵さんじゃ少し心配ですからね」
ニヤッと笑いながら、俺を見るギルゴマに苦笑いする。
「私が出来る事はここまでです。後は貴方が自分の力で何とかしなさい。そして、専任商人をもぎ取って、再び私とリューディアの前に来るのです。解りましたか?」
優しく微笑みながらも、キツイ目をするギルゴマの瞳を、正面から見返し、
「うん解ってる。必ず、もぎ取ってくる。そして、また皆でここに来るよ」
「…商人の約束は絶対ですからね?」
「うん…解ってる…ありがとうギルゴマさん…」
お互いに微笑み合う俺とギルゴマ。それを嬉しそうに見ているリューディアと、一同。
「それから、荷馬車の塩と香辛料を売りたいんだけど良い?」
それを聞いたリューディアは、顎に手を当てしばし考え
「葵。塩と香辛料は、バイエルント国内で売る方が良い。バイエルントは内陸で、岩塩の取れない国なんだ。だから、塩が高値で売れるし、香辛料も人気がある。それに、何かの役に…立つかもしれないだろ?」
ニヤッと笑うリューディアに頷く俺。
「じゃ~葵さんも準備をしなさい。私も暇ではありませんからね。もう行きなさい」
ギルゴマの言葉に頷き、挨拶をして、俺達は部屋を出ていく。
俺達の出て行った扉を見つめ、ハア~と溜め息を吐くギルゴマ
「ギルゴマ師匠どうしたのですか?」
「いえ…まさか、あの時に感じていた懸念が、当たってしまうとは、思ってなかったもので」
そう言って、寂しそうな顔をするギルゴマ
「あの時…と言われますと?」
「ええ…。ラングースの町で、葵さんが初めて…マルガさんを連れてきた時の事なんですけどね。その時、私は葵さんを見て、何か少し違和感を感じたのですよ。今までとは違う…何か…瞳が曇っているかの様な感じがしましてね。そこで少し葵さんに苦言を呈していたのですが…懸念通りになってしまった。ま…それは克服したみたいですけどね」
ギルゴマの話を聞いていた、リューディアは
「ギルゴマ師匠!私達に出来る事はまだあるはずです!葵の為に…出来る事が!」
切なそうにギルゴマを見るリューディア。そのリューディアの頭を優しく撫でるギルゴマは、
「…確かに、他に出来る事はありますが…貴女も解っているでしょうリューディア?…私達はまだ…ド・ヴィルバン商組合と事を構える事は出来ません。今はまだ…です」
そのギルゴマの言葉に、キュッと唇を噛むリューディア。
「それにこれは…葵さん自身が乗り越えなければいけない壁なのです。大手の商会や、大手の商組合を相手にすると言う事が、どういう事なのかをね。これは、葵さんが商人として、これからやっていく為には、避けて通れない事…」
「ですが…それでは…」
ギルゴマの言葉に、言葉を濁すリューディア。
「…石を積むのです」
「石…ですか?ギルゴマ師匠…」
ギルゴマの言葉に、キョトンとしているリューディア。
「そうです。石を積み上げるのですよリューディア。崩されても、蹴られても、汚されても、恥かしくても、不細工でも…石を積み続ける。何度も何度も積み上げ続ける…。そうやって、崩されながらも、石を高く積み上げた者のみが、先に進む事が出来るのです。例え今…石を崩されたとしても…今の葵さんなら…石を積み上げて行くでしょう。それを、見守ってあげるのです。解りましたかリューディア?」
ギルゴマの言葉に、静かに頷くリューディア。
「まあ…この私と約束しましたので、もぎ取って来なければ許しませんけどね」
ニヤッと笑うギルゴマを見て、フフフと笑うリューディア。そんなリューディアを見て、軽く溜め息を吐くギルゴマは
「それから…私の事は、支店長と呼ぶ様にと、いつも言っているでしょう?全く…」
「だって…葵達や、2人だけで居る時は、良いじゃありませんかギルゴマ師匠」
少し拗ねる様に言うリューディアの額に、優しくキスをするギルゴマ。嬉しそうに頬を赤らめているリューディア。
「葵さん…あの時の様に…必ずもぎ取って来るのですよ…」
「きっと何とかしますよねギルゴマ師匠!なんたって、私達の弟子なんですから!」
「…そうですね。そうでないと困りますね」
フッ笑うギルゴマ。それを見て微笑むリューディア。
「そう言えば…キリクがあの商会にいましたね…リューディア、今すぐに手紙を書きますので、今日出航する高速魔法船のビルリウスに渡して貰えますか?キリクに渡して欲しいと言えば解りますから」
その書かれた手紙を持って、部屋を出ていくリューディア。
ギルゴマは少し溜め息を吐いて、いつもの業務に戻っていくのであった。
ここは、とある高級な宿屋。
その中でも、一番高級な部屋で、複数の影が交じり合っていた。
「ほら!どうした!もっと腰を振らないかミーア!この役立たずのワーキャットが!」
「す…すいません!ヒュアキントス様!すぐに…ご奉仕します!」
そう言って、お尻をヒュアキントスの股間に擦りつけている、ワーキャットのミーアと呼ばれた少女。
あどけなさの残る可愛い童顔の顔を歪めている。肩に掛からないショートの紫色の綺麗な髪を振り乱し、茶色の大きな瞳を苦痛で潤ませている。そんなミーアの腰を持ち、強引に腰を可愛いお尻に叩きつけるヒュアキントス。部屋の中に、パンパンと乾いた悲愴な音が、鳴り響いていた。
「ええい!つまらぬ!役立たずが!」
吐き捨てる様に言うヒュアキントスは、ミーアを床に投げ捨てる。ドッと床に倒れこむミーア。
「シノン!役立たずのミーアの代わりに、お前が奉仕しろ!私を喜ばせろワーラビット!」
「はい!ヒュアキントス様!」
慌てながら、ミーアと同じ様に、お尻をヒュアキントスの股間に擦りつけて、腰をふるワーラビットのシノンと呼ばれた少女。
ヒュアキントスに腰を掴まれ、肩より少し伸びた強く紫色掛かった黒髪を振り乱し、可愛さの残る綺麗な顔を歪ませ、日本人に近い肌色の肌から、玉の様に汗を流す。その髪の毛と同じ紫の瞳には、かすかに涙を浮かべていた。
「まだまだだぞ!もっと激しく腰をふらぬか!このグズが!」
そう言って、手に鞭を取り、シノンの尻に打ち込む。
「ハンンン!!」
「ほらほらどうした!もっと喜びの声をあげぬか!」
そう言いながら、鞭を打ち込んでいくヒュアキントス。シノンは苦痛に耐えながら、必死にヒュアキントスの股間に腰を振っている。
「グズが!一向に役に立たぬ!」
そう言ってシノンも床に投げ捨てるヒュアキントス。ミーアと同じ様に床に打ち捨てられて、ミーアと抱き合いながら、かすかに震えているシノン。
「最後の仕上げはお前だステラ!最後まで奉仕せよ!ワーウルフのお前が頑張れねば、また罰を与えるぞ?」
「はい!ヒュアキントス様!すぐにご奉仕致します!」
少し震えた声で言うステラと呼ばれたワーウルフの少女は、他の少女達と同じ様に、ヒュアキントスに可愛いお尻を擦り付ける。少し大人びた大人しめの美しい顔を引き攣らせて、必死に腰を振り、少し銀色掛かった黒髪を振り乱し、銀色掛かった紫の瞳に涙を浮かべるステラ。
「ほらもっとだ!もっと腰を振れ!クククいいぞ!こうすればもっと良くなるか?」
「グッツウウウッツ」
ヒュアキントスは卑しい微笑みを称えると、ステラの細い首を両手で締め上げる。その苦しさに、顔を歪めながらも、必死に腰を振るステラ。
「イクぞ!激しく奉仕せよ!」
それに頷くステラは必死に奉仕する。首を締められて、意識を朦朧とステラがさせる中、ヒュアキントスが絶頂を迎える。
そして、精を出し終えたヒュアキントスは、ステラを床に投げ捨てる。ステラの秘所から、ヒュアキントスの精が滴っていた。
ゴホゴホと咳き込みながら、蹲っているステラに、ミーアとシノンが近寄る。
その床に蹲り、震えながら自分を見ている美少女の姿に、喜びを感じているヒュアキントス。
「ほら!何を休んでいる!さっさと、俺の高貴なモノを、綺麗にせぬか!」
その声を聞いた、ミーア、シノン、ステラの3人は、ヒュアキントスのモノを口で綺麗にしていく。
「全く…お前達は仕事はそこそこ出来るが、夜の奉仕は3人で1人前なので困るな。まあ…あの葵とか言う行商人の少年の一級奴隷…ワーフォックスの少女と、エルフの女が手に入れば、お前達になど夜の奉仕はさせぬがな。あの2人にさせる。あの美しい生意気な2人を、一からきっちり調教しなおしてやる…楽しみだ…」
そう言って、ベッドから立ち上がったヒュアキントスを見て、平伏するミーア、シノン、ステラの3人。
「「「今日もご奉仕させて頂き、ありがとうございましたヒュアキントス様!!」」」
3人が声を揃えて、床に頭を擦りつけていた。それを見て、フっと軽く笑うヒュアキントスは、
「ウム。あの2人が手に入っても、お前達は一級奴隷のままにしてやっても良い。良き仕事をするのだぞ?」
「「「はい!ありがとうございます!ヒュアキントス様!!!」」」
声を揃え、平伏しながら返事をする3人
「ウム。子卸の薬は、皆きちんと飲んでおけ。お前達ごときに、私の高貴な種はやらぬ。もし、俺の子を宿そうものなら、力を使ってすぐに処分してしまうからな。きっちり飲んでおけよ」
「「「はい!承知しております」」」
「ウム。では私は寝室に戻る。後片付けをしておけ!」
「「「はい!かしこまりましたヒュアキントス様!おやすみなさいませ!良き夢を!!」」」
その声を聞いて、3人の美少女の一級奴隷たちの部屋を出るヒュアキントスは、自分の寝室に戻る。
部屋の中に入り、バスローブの様な物を羽織りながら、豪華なソファーに腰を下ろし、グラスにワインを注ぐ。
暫く豪華なソファーに座りながら、美酒に酔いしれていたヒュアキントスの寝室の扉が開く。
すると部屋の中に一人の男性が入って来た。その男性は、豪華なソファーでくつろいでいるヒュアキントスの傍まで近寄る。
太陽の様に燃える様な赤み掛かった金髪に、その燃える様に赤い瞳、男と思えぬ白い肌、気品を漂わせる美しい顔立ち。身長はヒュアキントスより少し低い位か。そのヒュアキントスに勝るとも劣らない美男子の顔を見て、嬉しそうな微笑みを向けるヒュアキントス。
「お帰りアポローン。待っていたよ」
優しく語りかけるヒュアキントスに、ニコっと微笑むアポローンは
「ただいまヒュアキントス。君の言う通り、全て手はず通りになったよ。全て予定通りだよ」
「いつもすまないねアポローン。助かってるよ」
「僕は君の使者だからね。君の命令とあらば、なんだってするよ?」
ニコっと微笑むアポローンを見て、豪華なソファーから立ち上がったヒュアキントスは、アポローンに抱きつく。そして、アポローンの唇に、吸い付くようなキスをするヒュアキントス。
「そんな言い方はやめてくれアポローン。僕は君の為に全てを実行してるのだから」
「そうだったね。…でも、君は女の方が良いのではないのかい?さっき迄…あの亜種の一級奴隷達に奉仕させていた様だけど?」
その言葉を聞いて、再度アポローンの唇にキスをするヒュアキントス。
「僕が愛してるのは君だけだよアポローン。僕にとって女達は…綺麗な使い捨ての洋服と同じさ。それだけの価値しか無い。只僕を引き立たせる物でしかないよ」
「意地悪を言ったねヒュアキントス。ごめんよ」
ニコっと微笑むアポローンに優しく微笑むヒュアキントス
「これで、もうすぐ…あのルチア王女の専任商人になって近づける様になる。そして、他の女達の様に、僕の魅力で、第三位王位継承権のあるルチア王女の心を奪い、僕に跪かせてみせるよ。そうなれば僕も王族。その先で他の兄弟達を蹴落として、ルチア王女を王位につかせる。その後ルチア王女を人知れず…始末すれば…僕がこの国の全てを握る事になる。そうなれば…君を何時も隣において、天高く光る太陽の様に、光り輝かせて上げるからねアポローン。それまで…暫く我慢しておくれ…」
「…僕は君と一緒に居れるだけで…良いけどね。でも、君が望むなら…僕はなんでもするよ…」
「可愛い事を言ってくれるじゃないかアポローン。今日も寝かせないよ…」
ヒュアキントスはアポローンを抱き寄せると、そのままベッドに雪崩れ込む。
「フフフ…楽しみだよ…全てが美しい僕と君の物になる日が…」
こうして選定戦前の最後の夜は、更けていくのであった。
今日は、選定戦の開始日だ。
準備の出来た俺達は、それぞれの荷馬車に乗り、取り決めの魔法船が停泊している、、ロープノール大湖の桟橋まで来ていた。
俺達が乗り込むのは、アルバラードが用意した高速魔法船。それでバイエルントに向かう事になった。
高速魔法船に近づいた時、文官と兵士達がやってきて、俺達のネームプレートを確認する。
「確かに葵殿一行であると確認しました。荷馬車を高速魔法船に搬入して下さい」
その言葉に、高速魔法船に荷馬車を乗せようとした時だった。俺達の右側から、2匹のストーンカに引かれた鋼鉄馬車と、作りの頑丈そうな、2台の大きな荷馬車がやってきた。
それを見て、目を丸くしているマルコ
「すごいね葵兄ちゃん!鋼鉄馬車1台に、大きな丈夫そうな荷馬車が2台。しかもそれぞれが、2頭のストーンカで引っ張ってるよ」
「本当です~。あんな大きな荷馬車なら、沢山の商品が積めますし、2匹のストーンカさんなら、もの凄い重量を引っ張れそうなのです~」
マルガの言葉に、ウンウンと頷いているマルコ。その一行を、目を細めて見ているリーゼロッテ。
すると、荷馬車を操っていた、亜種の一級奴隷が、係りの者と話をしている。
ひと目でそれが、ヒュアキントス一行である事を、皆が理解していた。
高速魔法船に荷馬車を積み込み暫くすると、高速魔法船はゆっくりと桟橋を離れ、みるみる速度を上げ、一路、バイエルントに向かって進み出す。
高速魔法船で一段落した俺達は、甲板に出てきていた。
結構な速度で進む、高速魔法船の心地良い風を感じながら、その移りゆく景色を皆で眺めていると、背後に複数の気配を感じた。それに、振り返ると、そこにはヒュアキントスと3人の亜種の美少女達が立っていた。
「これはこれは、葵殿。良く逃げ出さずに、この高速魔法船に乗り込めましたね。僕はてっきり、もう既に何処かに消えてしまったと思っていましたよ。まあ…逃げ出しても、君のその2人の一級奴隷は、契約放棄とみなして、僕の物にするつもりでしたけどね」
ニヤっと微笑むヒュアキントス。その言葉を聞いて、若干一名が噛み付こうとしたが、それを予期していた俺は、その一名を優しく止める。
「ご…ご主人様…」
俺に優しく止められたマルガの頭を優しく撫でると、落ち着いてきたのか、気まずそうにしながらも、嬉しそうに尻尾をフワフワさせていた。
「そんなくだらない事を言いに来たの?意外と天才様も暇なのかな?…大商組合の御曹司も大した事はないね」
ニコっと微笑みながらの俺の言葉に、きつい表情をするヒュアキントス。少し顔に傷のある亜種の3人の美少女の一級奴隷達は、その言葉に恐れを感じて居る様であった。
「…言ってくれるじゃないか。だがしかし、僕と君とでは全てが違う。そう…全てがね。今から楽しみだよ。低能だが、その見た目だけは素晴らしい、君の亜種の一級奴隷とエルフの一級奴隷を調教出来るのがね。くだらない考えなど二度と起こさない様に…君の事など、一瞬で忘れさせる位、調教してあげるよ。低能で愚かで…浅はかな君の奴隷にね!!」
ニヤ~ッといやらしく笑うヒュアキントスに、激しい毒の炎が、俺の体を激しく包み込む。
俺はツカツカとヒュアキントスの傍まで歩み寄ると、顔に傷のある亜種の一級奴隷の頬に触る。
「酷い事を…ま…俺も人の事は言えないが…」
「何がおかしい?粗相をした奴隷を、主人が躾けただけだろう?それに、君が気にする事では無いはずだが?」
ヒュアキントスの言葉を軽く流し、その亜種の一級奴隷の美少女の頬を優しく撫でながら、
「もうちょっとだけ我慢しな。すぐにこの暴君から、君達を開放してあげる。だから…もうちょっとだけ…待っててね…」
そう言って優しく微笑むと、その亜種の一級奴隷の美少女は、顔を少し赤らめて俺を見ていた。
その、一級奴隷の美少女を見たヒュアキントスが、激昂する。
「ミーア!貴様何を顔を赤らめている!僕はそんな命令を出してはいないぞ!」
そう言い放って、懐から鞭を取り出して、ミーアと呼ばれたワーキャットの美少女に向かって、鞭を振り下ろす。
それを見たミーアは体を竦めて、その罰に恐れていたが、ソレが実行される事は無かった。
何故なら、俺がヒュアキントスの腕を掴み、ソレを阻止したからだ。
「君…何をしているんだ?」
「何って…当たり前の事をしてるんだけど?」
「あ…当たり前の事だと!?」
「そう当たり前の事。その3人の亜種の一級奴隷達は、俺のマルガやリーゼロッテと同様、掛けの対象にされている物…つまり商品だ。契約している以上、お前は商品を安全に、その品質を落とさない様に管理しなければならない義務がある。…専任商人選定戦中は、この3人の亜種の美少女達には、危害を加えないで貰おうか。俺の一級奴隷になる、この3人に、これ以上傷を付けるな。その品質を落とすのなら、契約不履行で、報告させて貰う。それがどう言う事を意味するのか、天才様なら解るよな?」
俺の嘲笑う言葉を聞いたヒュアキントスの顔が歪む。グッと、声を出して、ゆっくりと鞭を持った手を
静かに下ろす。
「解って貰えて何よりです天才様。じゃ…僕は暇じゃありませんので、この辺で失礼しさせて貰いますね」
そう言って客室に帰っていく俺の後ろ姿を、激しく睨みつけるヒュアキントス。
「そうそう…。後、鋼鉄馬車も大切に扱ってね。それも俺の物になるのだから…汚さないでくれよ?こっちはマルガとリーゼロッテを大切に扱って、管理するから。では…」
俺の軽い言葉に、キツイ目で見つめるだけのヒュアキントスを甲板に残し、俺達は客室に戻って行く。
甲板に取り残されたヒュアキントスは、顎に手を添える。
「…もう挑発には乗ってこないか…流石に気がつくか。…まあいい。もう既に…事は成っている。後はただ待つだけなのだからな。もうすぐ…その全てが…」
流れ行く景色を見ながら、口元を上げ、微笑んでいるヒュアキントスであった。
「やっとバイエルントに到着しましたねご主人様!」
マルガが俺に腕組みをしながら、嬉しそうに尻尾をフワフワさせていた。
高速魔法船で6日、俺達はバイエルント国に上陸していた。
ここはバイエルント国の割りと小さな町、アッシジ。人口3万人位の町だ。
この町の周辺には、小さな村が存在するのみで、他のこれ位の規模の町には、荷馬車で10日位掛るらしい。選定戦の期日は20日、高速魔法船で往復12日掛かるので、バイエルント国内に滞在出来るのは8日。実質この町で商品を仕入れる事になるだろう。
リーゼロッテは既に頭の中に記憶させている、この町の周辺や、特産物、利益の高い物の事を考えながら、
「とりあえず、すぐ傍にある商会から、足を運んでみましょうか葵さん」
「だね。リーゼロッテ、利益率の高い品物は、前に聞いた物でいいのかな?」
「はい。このアッシジの町で、一番利益が上がるのは、黒鉄と果実酒、それに毛皮ですね。次いで、山で取れる果物系、山菜、干し肉、ですね。鉱石系は黒鉄の他に、金や銀も採れますが、金や銀は関税が高すぎるので、論外でしょう。黒鉄、果実酒、毛皮をメインに、交渉しましょう」
リーゼロッテの言葉に頷く俺達は、一番近い商会に向かっていた。
少し小さい、ラングースの町の様な街並みに、懐かしさを感じながら進んで行くと、一件の商会に到着した。
俺は荷馬車を降りて、受付の男に向かう。こちらに気がついた受付の男は、俺達を見て、少し眉を動かす。
「すいません。商品を仕入れたいのですが、良いですか?」
「ええ!結構ですよ!ささ!どうぞどうぞ!」
俺達は案内されるまま、商談室に入る。
「今日はどんな物を、お望みですか?」
「黒鉄、果実酒、毛皮が欲しいんだ。予算は金貨100枚。お願いできますか?」
その言葉を聞いた男は、あ~っと言いながら、残念そうに顔に手を当てる。
「今、黒鉄、果実酒、毛皮は10日程前から品切れ中なんだ!結構人気のある品物だからね。でも、果実や山菜、干し肉なら沢山あるよ!儲けも出しやすいから、金貨100枚分も買ってくれるなら、価格も相談に乗るけどね。どうだろう?」
ニコニコしながら言う男。
俺とリーゼロッテは顔を見合わせる。リーゼロッテが首を微かに横に振る。俺もリーゼロッテと同じ気持ちであった。
「悪いけど出直すよ。また来るかも知れないから。その時はよろしく」
俺達は男に挨拶をして、荷馬車に乗り込み、商会を後にする。
「やっぱり、人気商品は品薄なのかな?」
「そうですね葵さん。とりあえず、次の商会に行ってみましょう」
リーゼロッテの言葉に頷き、別の商会に足を運ぶ俺達。
そして商会の男と話すが、黒鉄、果実酒、毛皮は品切れであった。再度荷馬車に乗り込み、別の商会に向かう俺達。
「やっぱり人気なのですねご主人様~。ここも品切れでしたし~」
「だね。ま…儲けの出る物は人気があるからね。他の商会もまだ沢山あるし、他を当たってみよう」
「そうですねご主人様!」
嬉しそうにしているマルガの頭を撫でると、ニコっと微笑んで金色の毛並みの良い尻尾をブンブン振っていた。
そして、3件目の商会にやって来た。そこで受付の男と話すが、ここでも黒鉄、果実酒、毛皮は品切れだった。それを残念そうにしている俺達。その中でリーゼロッテだけが、目を細めて、何かを考えていた。
「ここでも品切れですねご主人様~」
「仕方無い。他の商会を回ろう」
俺の言葉に一同が頷き、4件目の商会に入った時だった。受付の男が、俺達をまじまじと見つめている。そして、その受付の男と一緒に商談室に入る。
「今回は、どの様な物を仕入れたいのでしょうか?」
「えっと…黒鉄、果実酒、毛皮なんですが…ありますか?」
その言葉を聞いた男は、軽く溜め息を吐くと、
「申し訳無いですが…黒鉄、果実酒、毛皮は品切れですね」
その言葉に、マルガとマルコは残念そうな顔をしている。そして、俺達をマジマジと見る受付の男は
「貴方は…ひょっとして葵さんですか?」
俺はまだ自己紹介もしていないのに、名前を呼ばれた事に戸惑っていると、
「私の名前は、キリクと言います。リスボン商会、王都ラーゼンシュルト支店長、ギルゴマさんとは、ちょっとした知り合いで、昔大変お世話になった恩人なんですよ」
「え!?そうなんですか!?」
「はい。それでギルゴマさんから手紙を頂きまして…貴方達の事は知っていたのですよ」
苦笑いしながら言うキリク。そして、その表情を引き締めて、小声で話しだす。
「この話は、ここだけにして欲しいのですが…貴方達が欲している、黒鉄、果実酒、毛皮は、手に入らないでしょう。10日前に、この町の全ての黒鉄、果実酒、毛皮が予約済み…売却予定だからです」
「え…それはどういう事なのですか!?」
思わず声を上げてしまった。キリクは俺に静かにする様に言うと、話を続ける。
「全てお話する事は出来ません。ですが、先ほどの品物が全て、この町に無いのは事実です。…詳しい取引相手などは言えませんが、その、大口の取引をしてくれた人達から1日前より、いい遣っている事があるのです」
「…それは、どんな事なのですか?」
リーゼロッテが目を細めながら聞き返す。
「それは…黒髪に、黒い瞳をして、亜種の美少女とエルフの美少女を一級奴隷にして、もう一人子供を共にしている、行商人の少年が来たら、果物、山菜、干し肉を薦めて売ってくれと、言われています。理由は知りませんが、大口のお客の言う事なので、その一行が来たら、私も言うつもりでした。…ですが、ギルゴマさんから手紙を頂きまして、もし、貴方達が来たら、言える範囲で良いので、協力してやって欲しいとお願いされました。なので…こうやって、内密に話をさせて貰ってます」
キリクの話を聞いた俺達は顔を見合わせ、困惑する。
「とりあえず、貴方達に売れるのは、果実、山菜、干し肉…。他の商品もありますが、黒鉄、果実酒、毛皮は諦めて下さい」
キリクの言葉に戸惑ったが、今は少し考えたい。
「とりあえず、出直します。貴重な情報、ありがとうございます」
「いえ…良いのです。ギルゴマさんの頼みなのですから。…この事は…絶対に内密にお願いします」
そう俺達に釘をさしたキリクと、挨拶をして別れる。
俺達は町の広場の隅に荷馬車を止め、集まっていた。
「どうしよう葵兄ちゃん!この街中の、黒鉄、果実酒、毛皮が売り切れで手に入らないなんて!」
「そうなのです!全て買われてしまってます!私達には少しも手に入らないかもなのです!」
マルガとマルコは、顔を見合わせながら、困惑していた。
その中で、ハア~ッと大きく溜め息を吐くリーゼロッテ。リーゼロッテは俺に向き直り、金色の透き通る様な美しい瞳に、何かの核心を秘めた光を放ちながら、
「やられましたね葵さん。私達は…どうやら…出来レースの上を進まされて居るだけの様ですわ」
「できれーす?リーゼロッテさん、それはどんな食べ物なのですか?」
マルガは可愛い小首を傾げながら、う~んと唸っていた。
俺は地球の勉強をしていたリーゼロッテの、その余りにも解りやすい言葉に、全てを理解するのにさして時間は掛からなかった。
「そうか…そう言う…事…だったのか…」
力なくそう呟いて、石段に座り込む。それを心配そうに見つめる、マルガにマルコ。
「どういう事なのですかご主人様?」
「…全て仕組まれていたんだよマルガ。専任商人選定戦も…何もかもね…」
俺はマルガに説明を始める。
今思い返してみれば、おかしい所だらけであった。
商人としては、一応筋が通っているとは言え、ヒュアキントスの言葉を、すぐに容認したアルバラード。
全ての決定権を持つアルバラードは、最初から選定戦など、どうでも良かったのだ。
この選定戦をしたのは、ルチアへの配慮のみ。無下に扱っていないと言う事を証明するだけの茶番だったのだ。
俺が出された条件を飲まなければ、力不足と勝手に決めつけ、排除する。
如何に立ち回ろうとも、決定権を持つのはアルバラード。彼の気分次第でどうとでもなる。
彼にはそれだけの権限が、女王から与えられているのだ。彼の失敗は委任した女王の失敗になる。彼の言葉を簡単に流せないのも、これが理由だ。
たまたまヒュアキントスが、マルガとリーゼロッテを欲しただけで、それ以外は全て予定通り。
あそこで、奴隷を商談に持ちだしたヒュアキントスも、普通にドライに考えれば、利益を上げる交渉をしただけの事。何も可笑しくはない。奴隷は資産。はなから商品なのだ。むしろ商品に感情を持っている、俺こそが『普通』ではないのだから。別に法律的にも、慣習的にも可笑しくない。
そして、条件を飲んで選定戦に出たとしても、一番利益の上がる物は手に入らない。
一番利益の上がる物は、当然ヒュアキントスが全て抑えている。しかも10日前から。
選定戦の契約前なら、何をしていても問題は無い。契約期間外だからだ。
そしてそれを知らない俺達は、四苦八苦した挙句、2番めに利益の上がる品物を取引して、アルバラードの前に出し、僅かながら負ける。あくまでも接戦したかの様に見せて…
そう…全てはルチアを諦めさせる為の茶番。仕組まれた出来レース…
俺達の出番は、はなから予定されていたものだったのだ。
俺の話を聞いて、絶望的な顔をする、マルガとマルコ
「じゃあ…何をしても…オイラ達は負ける事が決まっていたの…?葵兄ちゃん」
「そんな酷い…対等の勝負どころか…全て決められていたなんて…」
「そう…全ては決まっていたんだ。俺達が王都ラーゼンシュルトに就く前からね」
その言葉に顔を蒼白にさせるマルガとマルコ。
「そうしたらさ、何故全ての品物を、ヒュアキントスは押さえなかったのかな?」
「それが彼の凄い所なんだよマルコ。俺の居た世界には…窮鼠猫を噛むって言葉があってね…」
俺はマルコに話を続ける。
人間というものは、追い詰めると、何をしでかすか解らない生き物なのだ。
例えるならば、悪徳金貸しが解りやすいだろうか。
素人や三下、知性の低い奴らは、その対象、つまり、金を貸している人間を、とことん追い込み、簡単に自殺や、弁護士団体に駆け込ませてしまう。
そうなると、もう利益は上げれない。それと、自分の身に危険も回ってくる。
しかし、一流の者や、頭の良い物は、そのギリギリのラインで、一瞬力を抜く。
つまり、対象者に、思いきりさせないのだ。
もう少し我慢すれば…逆らうと怖い…ギリギリ生きていられる…
そういった恐怖を維持し続けさせ、一線を越えないように管理をする。
それが、差なのだ。細く長く、とれる時に取り、危ない時は一瞬希望を与える。
長く長く安全に絞りとる…そのバランスが取れる…それが一流であり、賢い者の選択なのだ。
「もし、金貨100枚分で、金貨10万枚分の商品を提示したら、あの頭の回転の早いルチアが黙っていると思う?今も、ルチアは疑っているのに、そんなもの出したら、すぐに解っちゃうよ。この選定戦自体が、全て仕組まれた事だってね。そんな阿呆な事を、天才的商才のあるヒュアキントスは絶対にしない。この選定戦は、あくまでもルチアの為の物。そんな阿呆な奴を、誰も推薦しないって事さ。絶妙なバランスをとれる…ヒュアキントスだから選ばれて居るんだよ」
俺の言葉に静かに頷くマルガにマルコ。
「そういう事ですわ。頭の回転が早いルチア様が、文句の言えない様な、絶妙なバランスで、勝ちをもぎ取って行くでしょう。あくまで取り決めの中で勝負したかの様に見え、文句が言えない…又は、言い難い、絶妙なバランスを…それが出来るのでしょうね…ヒュアキントスと言う人は。まさに天才ですね」
リーゼロッテの言葉に静かに頷く俺。
「恐らく、この町以外は、買い占められていないだろう。実質、この町にいられるのは8日。小さな村で取引したら、金貨100枚分、余程高額で、取引されている金や銀以外は、すぐに品が無くなる。そうなれば、あちこちの村を移動する事になる。そんな事してたら、すぐに期限が迫って、終了さ。それもきっと織り込み済みだと思う。ヒュアキントスと言う男ならね」
俺の言葉に頷くリーゼロッテ
「実際俺達も、あのキリクの言葉が無かったら、気がつけなかっただろう。少し怪しむが、無いなら他の商品で何とか対応等、そっちに気が行っていただろうしさ。この町は大きくない。商品が無くなる事も、多々有る事だしね」
マルガとマルコはなるほどと頷く。
「そして、彼の取引の品は恐らく黒鉄。大きく丈夫な荷馬車に、かなりの重量を引ける、ストーンカを2頭ずつ。あれは、かなりの重量を引くという事…」
リーゼロッテはそう言うと、静かに目を閉じる。
「とりあえず、期限は8日しか無い。二手に分かれて、この町すべての商会を回ろう!新しく商品が入ってきている可能性もある。まずは…この町を調べ尽くそう!」
俺の言葉に、皆が頷く。
こうして俺達は、アッシジの町を駆けまわるのであった。
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これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
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──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
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三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
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転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
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