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白い光と、もう一匹の「いつもの」
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玄関の向こうに立っていたのは、やはり新方直だった。
派手なジャケットに、艶のある靴。住宅街の昼に似合わないサングラス。背後には例のドイツ車が、まるで「自分も用件の一部です」と言わんばかりに鎮座している。
私は扉を半分だけ開け、体を斜めにして家の中を見せないようにした。
「用件は」
「早っ。相変わらず医者って、問診みたいな入り方するよな」
直は笑い、サングラスを指で押し上げ――その腕の動きと同時に、足元から“もふもふ”が前へ出た。
柴犬。
そして、首輪についた名札の丸いプレートが、玄関の光を受けて揺れた。
「……またか」
私の口から出た声が、自分でも驚くほど低かった。
「なにその顔。いいじゃん。こいつ、お前んち好きなんだよ」
直の足元で尻尾を振っている柴犬――こまちちゃん。
直が衝動的に買った柴犬だ。
それが分かったのは、買った翌日、直がいきなり連れてきて「見て見て、俺の相棒!」と玄関で叫んだからだ。相棒も何も、世話の大半はうちがしている。
直はよく、こまちちゃんをうちに預けて遊びに行く。
“預ける”と言っても、連絡はほとんど当日。ひどいときは玄関先で「お願い!」と手を振って、そのまま車で消える。あまりにも頻繁で、こちらが断ると――直は平気で、こまちちゃんのリードを玄関の取っ手に引っ掛けていくことすらあった。
あのときのことを思い出すと、胃の奥が今でも苦くなる。
雨上がりの夕方。買い出しから帰った父が、玄関先で「……ん?」と首を傾げた。
聞こえたのは、か細い声だった。
ドアの外。取っ手に巻きつけられたリード。その先で、こまちちゃんが小さく震えていた。
父が慌てて家に入れると、こまちちゃんは、よほど寂しかったのか、父の膝から降りようとしなかった。尻尾を控えめに振りながら、顔だけを父の腹に押しつけて、ひたすら体温を確かめるように。
その光景が、私の中でずっと引っかかっている。
直は軽い。人の生活に対しても、命に対しても。
今日だってそうだ。家族が久しぶりに揃って、ラーメンに行こうと話がまとまった、そのタイミングで。最悪のタイミングで。
玄関の奥から、月子の足音が来た。コハクの気配もついてくる。
次いで、父と母の気配。家の空気が、ひとつに固まって玄関へ寄ってくるのが分かる。
「……やっぱり直?」
月子が顔を出すなり、こまちちゃんを見て、眉間にしわを寄せた。
「うわ、また連れてきたの? 今日うち、これから外出るんだけど」
直は肩をすくめる。
「だからだよ。俺も出る。つーか、今日めっちゃ予定あんの。で、こいつ置いとく先が必要」
「“必要”じゃない。勝手に作ってるだけ」
月子の声は冷たい。だが正しい。
直は笑いのまま、こまちちゃんの背中をぽんと叩いた。
「こまち、ほら。行ってこい。今日はここでお留守番な」
こまちちゃんは状況が分からないまま、尻尾を振って玄関の敷居を越えようとする。
その瞬間、コハクが低く唸った。小さな体の奥から、普段は出さない種類の音。
父が間に入るようにしゃがみ込み、コハクの背を撫でて落ち着かせる。母は一歩下がった位置で、空間の動線を確認する目をしていた。設計士の癖だ。人と犬が重なる場所、衝突が起きる場所、逃げ道のない場所――そういう危険を、母は無意識に避けようとする。
「直くん」
父が、穏やかな声で言った。
「今日は、家族で外に出る予定なんだ。こまちちゃんを預かるのは難しい」
「えー。じゃあ、家族で連れてけば?」
「ラーメン屋さんに?」
月子が即座に返す。直は平然としている。
「いいじゃん。犬OKのとこ探せば」
「……なんで私たちが、あなたの犬のために店を探すの」
母が静かに言った。声は低く、刺さる。
直は一瞬だけ目を細めたが、すぐ笑いに戻る。
「やだな、ジェイミーさん。そんな怖い顔しないで」
「怖いのは、あなたの無責任よ」
母は笑わない。
直は舌打ちを飲み込み、代わりに大げさなため息を吐いた。
「じゃあさ、ちょっとだけ。俺、すぐ戻るから。ほんとにすぐ。二時間とか」
「“二時間とか”が、いつも半日になるの、こっちは知ってる」
月子が言い切る。父も頷く。私は、拳を握るのをこらえていた。
こまちちゃんは、そんな大人の会話など理解できるはずもなく、ただ「ここに入っていい?」という目で父を見る。
父の表情が、わずかに揺れる。父は犬に弱い。というより、父は“寂しい”という感情に弱い。
私はその揺れが嫌だった。父が悪いのではない。直が、そこを平気で利用するのが嫌だ。
直は、その揺れを見逃さない。
「ほら、次郎さんだって困ってないし。こいつ、次郎さん好きだろ?」
直がリードをゆるめた瞬間、こまちちゃんが父の膝に前足をかけた。
そして――あのときと同じように、降りようとしない。
父は困ったように笑いながらも、その背を撫でてしまう。
こまちちゃんは安心したように目を細め、父の膝に顎を乗せた。
私は、その光景で何かが切れた。
直は、これを狙っている。
こちらの情を利用して、押し切る。いつも通りに。
「……直」
私の声に、直が顔を上げる。
「なに?」
「今日は、やめてください」
「だからちょっとだけ――」
「やめてください!」
声が大きくなった。自分でも分かる。
医師として、声を荒げるのは悪手だ。相手は反発する。場は崩れる。
それでも止められなかった。
あの雨の日の、か細い鳴き声。取っ手に引っ掛けられたリード。震える体。
父の膝から降りない小さな命。
そういうものを、平気で繰り返す人間が、玄関の外で笑っている。
「――いい加減にしてください! あなたの犬でしょう! あなたが責任を持ってください!」
私が怒鳴った、その瞬間だった。
空気が変わった。
カッ、と視界の端が白く燃えた。
光――ではない。光みたいな“何か”が、家の中から湧き上がってくる。
「え……?」
月子の声が掠れる。母が息を呑む。父の肩が跳ねた。
コハクが悲鳴のような鳴き声を上げ、こまちちゃんも短く吠えた。
足元にあるはずのフローリングの感触が消えた。
いきなり襲う浮遊感。
体が浮いている。
いや、浮いているというより、床が“落ちた”。足が空を踏む。内臓が一瞬遅れてついてくる。
「なに、これ……!」
月子が叫ぶ。
私は反射で、視界の端にいるコハクを探した。コハクは父に抱かれている。父は身を守るように体を丸め、腕の中でコハクを抱きしめている。コハクは父の胸に顔を押しつけたまま、震えている。
父に向かって手を伸ばすのは月子。
月子の指先が、父の腕に触れた。
私に手を伸ばしているのは、必死の形相の母だ。
「悠一郎!」
母の声が、光に掻き消されそうになる。
私は咄嗟に母の手を掴んだ。指が冷たかった。握り返す力が強い。母の体が引き寄せられ、私の腕が軋む。
そして、母と月子が伸ばした手が繋がった瞬間――
白が、世界を飲み込んだ。
ブラックアウト。
一瞬、意識も飛んだみたいだった。
音がない。匂いがない。時間が切り取られたような無音の闇。脳が、現実を処理するのを拒否した。
次の瞬間――
お尻に衝撃が走った。
「……っ!」
鈍い痛みが腰から背中へ抜ける。
私達は絡まるようにして倒れこんだ。誰かの肘が私の脇腹に当たり、誰かの髪が顔にかかる。犬の体温と毛が、頬に触れる。コハクの匂いがする。父の息遣いが近い。月子の「痛っ」という声。母の「大丈夫!?」という声。
床はフローリングではなかった。
硬い。冷たい。石だ。
私は痛む腰を押さえながら顔を上げた。
視界に入ったのは、見知らぬ天井――いや、天井ではない。高すぎる。梁が太い。装飾がある。光源が、電灯ではない。揺れる炎が、壁の燭台で瞬いている。
そして、数メートル先。
倒れた私達とは別の場所に、人影がいくつも転がっていた。
派手な色の布。煌びやかなアクセサリー。甲高い声。
「ちょっと! これ、どこよ!? 私の車は!? 誰が私をこんなところに――」
直の母親らしき女性が、床に座ったまま怒鳴っている。
その隣で、若い少年と少女が呆然としていた。
直もいた。さっきまで玄関先で笑っていた直が、今は口を開けたまま、言葉を失っている。
彼の足元で、こまちちゃんが小さく震え、耳を伏せていた。
家族が、確かに繋がっている。
父の腕の中にコハクがいる。月子は父の肩に手を置き、母は私の手をまだ握っている。
だけど――場所が違う。世界が違う。
私の頭の中で、医師としての冷静さが無理やり形を取ろうとする。状況把握、外傷確認、周囲の危険、呼吸、意識、出血。
けれど、その理屈の上に、どうしようもない現実が乗ってくる。
ここは、どこだ。
その答えを口にする前に、月子が震える声で言った。
「……悠一郎、ここ……どこ……?」
私は息を吸い、痛む腰に耐えながら、家族の顔を見た。
そして――直を見た。
直は、こちらを見ていた。
あの自分勝手な男が、初めて「分からない」という顔をして。
私達は、絡まるようにして倒れこんだまま、見知らぬ世界の冷たい石の床に転がっていた。
派手なジャケットに、艶のある靴。住宅街の昼に似合わないサングラス。背後には例のドイツ車が、まるで「自分も用件の一部です」と言わんばかりに鎮座している。
私は扉を半分だけ開け、体を斜めにして家の中を見せないようにした。
「用件は」
「早っ。相変わらず医者って、問診みたいな入り方するよな」
直は笑い、サングラスを指で押し上げ――その腕の動きと同時に、足元から“もふもふ”が前へ出た。
柴犬。
そして、首輪についた名札の丸いプレートが、玄関の光を受けて揺れた。
「……またか」
私の口から出た声が、自分でも驚くほど低かった。
「なにその顔。いいじゃん。こいつ、お前んち好きなんだよ」
直の足元で尻尾を振っている柴犬――こまちちゃん。
直が衝動的に買った柴犬だ。
それが分かったのは、買った翌日、直がいきなり連れてきて「見て見て、俺の相棒!」と玄関で叫んだからだ。相棒も何も、世話の大半はうちがしている。
直はよく、こまちちゃんをうちに預けて遊びに行く。
“預ける”と言っても、連絡はほとんど当日。ひどいときは玄関先で「お願い!」と手を振って、そのまま車で消える。あまりにも頻繁で、こちらが断ると――直は平気で、こまちちゃんのリードを玄関の取っ手に引っ掛けていくことすらあった。
あのときのことを思い出すと、胃の奥が今でも苦くなる。
雨上がりの夕方。買い出しから帰った父が、玄関先で「……ん?」と首を傾げた。
聞こえたのは、か細い声だった。
ドアの外。取っ手に巻きつけられたリード。その先で、こまちちゃんが小さく震えていた。
父が慌てて家に入れると、こまちちゃんは、よほど寂しかったのか、父の膝から降りようとしなかった。尻尾を控えめに振りながら、顔だけを父の腹に押しつけて、ひたすら体温を確かめるように。
その光景が、私の中でずっと引っかかっている。
直は軽い。人の生活に対しても、命に対しても。
今日だってそうだ。家族が久しぶりに揃って、ラーメンに行こうと話がまとまった、そのタイミングで。最悪のタイミングで。
玄関の奥から、月子の足音が来た。コハクの気配もついてくる。
次いで、父と母の気配。家の空気が、ひとつに固まって玄関へ寄ってくるのが分かる。
「……やっぱり直?」
月子が顔を出すなり、こまちちゃんを見て、眉間にしわを寄せた。
「うわ、また連れてきたの? 今日うち、これから外出るんだけど」
直は肩をすくめる。
「だからだよ。俺も出る。つーか、今日めっちゃ予定あんの。で、こいつ置いとく先が必要」
「“必要”じゃない。勝手に作ってるだけ」
月子の声は冷たい。だが正しい。
直は笑いのまま、こまちちゃんの背中をぽんと叩いた。
「こまち、ほら。行ってこい。今日はここでお留守番な」
こまちちゃんは状況が分からないまま、尻尾を振って玄関の敷居を越えようとする。
その瞬間、コハクが低く唸った。小さな体の奥から、普段は出さない種類の音。
父が間に入るようにしゃがみ込み、コハクの背を撫でて落ち着かせる。母は一歩下がった位置で、空間の動線を確認する目をしていた。設計士の癖だ。人と犬が重なる場所、衝突が起きる場所、逃げ道のない場所――そういう危険を、母は無意識に避けようとする。
「直くん」
父が、穏やかな声で言った。
「今日は、家族で外に出る予定なんだ。こまちちゃんを預かるのは難しい」
「えー。じゃあ、家族で連れてけば?」
「ラーメン屋さんに?」
月子が即座に返す。直は平然としている。
「いいじゃん。犬OKのとこ探せば」
「……なんで私たちが、あなたの犬のために店を探すの」
母が静かに言った。声は低く、刺さる。
直は一瞬だけ目を細めたが、すぐ笑いに戻る。
「やだな、ジェイミーさん。そんな怖い顔しないで」
「怖いのは、あなたの無責任よ」
母は笑わない。
直は舌打ちを飲み込み、代わりに大げさなため息を吐いた。
「じゃあさ、ちょっとだけ。俺、すぐ戻るから。ほんとにすぐ。二時間とか」
「“二時間とか”が、いつも半日になるの、こっちは知ってる」
月子が言い切る。父も頷く。私は、拳を握るのをこらえていた。
こまちちゃんは、そんな大人の会話など理解できるはずもなく、ただ「ここに入っていい?」という目で父を見る。
父の表情が、わずかに揺れる。父は犬に弱い。というより、父は“寂しい”という感情に弱い。
私はその揺れが嫌だった。父が悪いのではない。直が、そこを平気で利用するのが嫌だ。
直は、その揺れを見逃さない。
「ほら、次郎さんだって困ってないし。こいつ、次郎さん好きだろ?」
直がリードをゆるめた瞬間、こまちちゃんが父の膝に前足をかけた。
そして――あのときと同じように、降りようとしない。
父は困ったように笑いながらも、その背を撫でてしまう。
こまちちゃんは安心したように目を細め、父の膝に顎を乗せた。
私は、その光景で何かが切れた。
直は、これを狙っている。
こちらの情を利用して、押し切る。いつも通りに。
「……直」
私の声に、直が顔を上げる。
「なに?」
「今日は、やめてください」
「だからちょっとだけ――」
「やめてください!」
声が大きくなった。自分でも分かる。
医師として、声を荒げるのは悪手だ。相手は反発する。場は崩れる。
それでも止められなかった。
あの雨の日の、か細い鳴き声。取っ手に引っ掛けられたリード。震える体。
父の膝から降りない小さな命。
そういうものを、平気で繰り返す人間が、玄関の外で笑っている。
「――いい加減にしてください! あなたの犬でしょう! あなたが責任を持ってください!」
私が怒鳴った、その瞬間だった。
空気が変わった。
カッ、と視界の端が白く燃えた。
光――ではない。光みたいな“何か”が、家の中から湧き上がってくる。
「え……?」
月子の声が掠れる。母が息を呑む。父の肩が跳ねた。
コハクが悲鳴のような鳴き声を上げ、こまちちゃんも短く吠えた。
足元にあるはずのフローリングの感触が消えた。
いきなり襲う浮遊感。
体が浮いている。
いや、浮いているというより、床が“落ちた”。足が空を踏む。内臓が一瞬遅れてついてくる。
「なに、これ……!」
月子が叫ぶ。
私は反射で、視界の端にいるコハクを探した。コハクは父に抱かれている。父は身を守るように体を丸め、腕の中でコハクを抱きしめている。コハクは父の胸に顔を押しつけたまま、震えている。
父に向かって手を伸ばすのは月子。
月子の指先が、父の腕に触れた。
私に手を伸ばしているのは、必死の形相の母だ。
「悠一郎!」
母の声が、光に掻き消されそうになる。
私は咄嗟に母の手を掴んだ。指が冷たかった。握り返す力が強い。母の体が引き寄せられ、私の腕が軋む。
そして、母と月子が伸ばした手が繋がった瞬間――
白が、世界を飲み込んだ。
ブラックアウト。
一瞬、意識も飛んだみたいだった。
音がない。匂いがない。時間が切り取られたような無音の闇。脳が、現実を処理するのを拒否した。
次の瞬間――
お尻に衝撃が走った。
「……っ!」
鈍い痛みが腰から背中へ抜ける。
私達は絡まるようにして倒れこんだ。誰かの肘が私の脇腹に当たり、誰かの髪が顔にかかる。犬の体温と毛が、頬に触れる。コハクの匂いがする。父の息遣いが近い。月子の「痛っ」という声。母の「大丈夫!?」という声。
床はフローリングではなかった。
硬い。冷たい。石だ。
私は痛む腰を押さえながら顔を上げた。
視界に入ったのは、見知らぬ天井――いや、天井ではない。高すぎる。梁が太い。装飾がある。光源が、電灯ではない。揺れる炎が、壁の燭台で瞬いている。
そして、数メートル先。
倒れた私達とは別の場所に、人影がいくつも転がっていた。
派手な色の布。煌びやかなアクセサリー。甲高い声。
「ちょっと! これ、どこよ!? 私の車は!? 誰が私をこんなところに――」
直の母親らしき女性が、床に座ったまま怒鳴っている。
その隣で、若い少年と少女が呆然としていた。
直もいた。さっきまで玄関先で笑っていた直が、今は口を開けたまま、言葉を失っている。
彼の足元で、こまちちゃんが小さく震え、耳を伏せていた。
家族が、確かに繋がっている。
父の腕の中にコハクがいる。月子は父の肩に手を置き、母は私の手をまだ握っている。
だけど――場所が違う。世界が違う。
私の頭の中で、医師としての冷静さが無理やり形を取ろうとする。状況把握、外傷確認、周囲の危険、呼吸、意識、出血。
けれど、その理屈の上に、どうしようもない現実が乗ってくる。
ここは、どこだ。
その答えを口にする前に、月子が震える声で言った。
「……悠一郎、ここ……どこ……?」
私は息を吸い、痛む腰に耐えながら、家族の顔を見た。
そして――直を見た。
直は、こちらを見ていた。
あの自分勝手な男が、初めて「分からない」という顔をして。
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HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
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