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オカマゾンビと狂った村
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それはオカマのゾンビだった。略してオカマゾンビだ。旅人はそのゾンビを一目見るなり逃げ出していった。
かなり大きな悲鳴を上げながら。
オカマゾンビ──ブレンダが逃げ出していく旅人の後ろ姿を眺めながら嘆いてみせる。
「ああ、やっぱりオカマには住みにくい世の中だわ……」
「それでもいつかは胸を張れる時代が来るだろうさ、ブレンダ」
スライムのエリックがブレンダを慰める。
「ありがとう、エリック、貴方ってば優しいのね」
金髪の巻毛を揺らし、その厳つい掌でブレンダがエリックを撫でる。
ちなみに旅人が悲鳴を上げて逃げたのはブレンダがオカマだからではなく、ゾンビだったからだ。
そう、旅人もまたゲイだったのである。ただ、彼は生身の人間でブレンダはアンデッドだった。
「二人共、もうすぐ村に着くよ」
と、二人に声をかけるセイジロウ。
今日は三人で社会見学がてらに人里に降りてきたのである。
「村についたら食事がしたいわね」
「俺は水が欲しい。スライムだからな」
その頃、ラルブ村の集会場では、集まった村人達が、とある貴族の屋敷の襲撃を企てていた。
何故、村人達は貴族の屋敷を襲おうとしているのだろうか。
圧政や重税に苦しんでいるからか。
それともその貴族が青髭男爵のように夜な夜な村の子供達を拷問しては、
悪魔の生贄に捧げているのだろうか。
残念ながらどれも違う。この領地を収める貴族のウッドハウスは、むしろ善政を敷いていた。
救貧院や病院、それに学校だって建てた。村人達の為になるならばと。
年貢だって他の領地と比べれば低く抑えていたし、それでも収めるのが難しいという村人には分割にしたり、
待ってやったりもした。
困っている人々に救いの手を差し伸べ、公正をモットーに領内を収めてきた。
それがウッドハウスという貴族だった。
だが、そんな彼は自領の村人達から命を狙われていた。
それはウッドハウスが混血だと露見したからである。それもオーガのだ。
オーガとの混血児に村を収められるなんて人としての沽券に関わるという理由から、
村人達はウッドハウス抹殺の計画を立てたのだった。
もっとも、この企てには扇動者もいた。
村人達が抱いていた漠然とした不安感を煽りたて、その敵意を明確化させた張本人だ。
この地方に住まう村人達はオーガという種族を嫌っていた。
オーガは開拓者の敵だからだ。土地の開拓には元から住んでいる者たちは邪魔でしかない。
農民が耕すのに必要な土地田畑や家を建てるための材木の類だって、先住者がいれば得られない。
そしてオーガはいつもその邪魔をしてくる。
ゴブリンやオークといった亜人達を率いて、オーガは開拓者達に対し、攻撃を仕掛けてくるのだ。
この土地は我々が住んでいる場所だと怒号を上げながら。
又、亜人たちは人間とは違う神を崇める邪教徒でもある。
そんな邪教徒の血を引く輩に領内をまかせておくべきではない。
庄屋の一人息子であるガスは、村人達相手に身振りかぶりでそう演説した。
ガスは実に見事に村人達の不安や憎悪を掻き立てることに成功した。
そして村人達はガスのその言葉に賛同し、計画を練り始めた。
ガスは大衆を煽るのが実にうまい男だ。
だが、タネを明かせば何という事はない。ガスは前世の記憶を持った転生者だ。
それもセイジロウと同じ時間軸の地球から来た。
そしてガスはかつての共産主義者やナチスの使っていた煽動の手口を知っていた。
『ユダヤ人は腸チフス』だとか『ブルジョワジーは国の寄生虫』だとか、
当時の共産主義者やナチスが掲げていたスローガンによる誘導を使い、ガスはうまく立ち回ってみせた。
それはこんな具合だ。
『全ての土地は神聖なる神が人間に与えたもうたもの。汚らしい亜人共は追い出せ、あいつらは神聖な土地を汚し、
神に唾吐く害虫である』
とにかく、群衆に亜人達への悪印象を植え付けること。
亜人がゴキブリやダニ程度に感じられれば、人々は率先してゴブリンやオークを駆逐していくだろう。
例え相手が無抵抗であってもだ。
そう、神の名の元に全ては許されるのである。それには区別することだ。
自らと他者、人間と亜人との区別だ。
また、人々の中には亜人と仲の良い者もいる。ガスはそういう人間には裏切り者のレッテルを貼った。
するとレッテルを貼られた者を率先して攻撃する村人達が現れた。
彼らの共通する点は現状に不満を持っているということだ。
そんな不満を癒すには、他者を攻撃するのが手っ取り早かったのである。
一行が着いた村は閑散としていた。まず、エリックは村にある井戸で喉を潤した。
ブレンダとセイジロウは村にある茶屋で一休みしようとしたが、生憎と売り子の姿は見えない。
「誰もいないな、一体どういうことだ?」
水分を取り戻した水色の身体をプルプルと震わせながら、エリックが村を見やる。
「きっと刈り入れ時で村人総出で仕事をしてるんじゃないかしら」
「それだったら僕らも手伝わないか」とセイジロウ。
「力仕事だったら任せてちょうだい」
ブレンダが隆々とした上腕二頭筋を見せつけながら、輝くばかりの白い歯を剥いて二カッと笑う。
それから三人は村のはずれにある畑へと向かっていった。
ブレンダ ゾンビ レベル17
体力60
物理攻撃力61
物理防御力70
魔法攻撃力38
魔法防御力42
精神力68
素早さ53
運77
ブレンダはゾンビになる以前は戦士だった。そして同性愛者でもあった。
彼は子どもを助ける為にその身を呈し、弩に射られて命を失った。
そしてアンデッドとして蘇ったのだが、死んだからといって異性愛者になることはなかった。
かなり大きな悲鳴を上げながら。
オカマゾンビ──ブレンダが逃げ出していく旅人の後ろ姿を眺めながら嘆いてみせる。
「ああ、やっぱりオカマには住みにくい世の中だわ……」
「それでもいつかは胸を張れる時代が来るだろうさ、ブレンダ」
スライムのエリックがブレンダを慰める。
「ありがとう、エリック、貴方ってば優しいのね」
金髪の巻毛を揺らし、その厳つい掌でブレンダがエリックを撫でる。
ちなみに旅人が悲鳴を上げて逃げたのはブレンダがオカマだからではなく、ゾンビだったからだ。
そう、旅人もまたゲイだったのである。ただ、彼は生身の人間でブレンダはアンデッドだった。
「二人共、もうすぐ村に着くよ」
と、二人に声をかけるセイジロウ。
今日は三人で社会見学がてらに人里に降りてきたのである。
「村についたら食事がしたいわね」
「俺は水が欲しい。スライムだからな」
その頃、ラルブ村の集会場では、集まった村人達が、とある貴族の屋敷の襲撃を企てていた。
何故、村人達は貴族の屋敷を襲おうとしているのだろうか。
圧政や重税に苦しんでいるからか。
それともその貴族が青髭男爵のように夜な夜な村の子供達を拷問しては、
悪魔の生贄に捧げているのだろうか。
残念ながらどれも違う。この領地を収める貴族のウッドハウスは、むしろ善政を敷いていた。
救貧院や病院、それに学校だって建てた。村人達の為になるならばと。
年貢だって他の領地と比べれば低く抑えていたし、それでも収めるのが難しいという村人には分割にしたり、
待ってやったりもした。
困っている人々に救いの手を差し伸べ、公正をモットーに領内を収めてきた。
それがウッドハウスという貴族だった。
だが、そんな彼は自領の村人達から命を狙われていた。
それはウッドハウスが混血だと露見したからである。それもオーガのだ。
オーガとの混血児に村を収められるなんて人としての沽券に関わるという理由から、
村人達はウッドハウス抹殺の計画を立てたのだった。
もっとも、この企てには扇動者もいた。
村人達が抱いていた漠然とした不安感を煽りたて、その敵意を明確化させた張本人だ。
この地方に住まう村人達はオーガという種族を嫌っていた。
オーガは開拓者の敵だからだ。土地の開拓には元から住んでいる者たちは邪魔でしかない。
農民が耕すのに必要な土地田畑や家を建てるための材木の類だって、先住者がいれば得られない。
そしてオーガはいつもその邪魔をしてくる。
ゴブリンやオークといった亜人達を率いて、オーガは開拓者達に対し、攻撃を仕掛けてくるのだ。
この土地は我々が住んでいる場所だと怒号を上げながら。
又、亜人たちは人間とは違う神を崇める邪教徒でもある。
そんな邪教徒の血を引く輩に領内をまかせておくべきではない。
庄屋の一人息子であるガスは、村人達相手に身振りかぶりでそう演説した。
ガスは実に見事に村人達の不安や憎悪を掻き立てることに成功した。
そして村人達はガスのその言葉に賛同し、計画を練り始めた。
ガスは大衆を煽るのが実にうまい男だ。
だが、タネを明かせば何という事はない。ガスは前世の記憶を持った転生者だ。
それもセイジロウと同じ時間軸の地球から来た。
そしてガスはかつての共産主義者やナチスの使っていた煽動の手口を知っていた。
『ユダヤ人は腸チフス』だとか『ブルジョワジーは国の寄生虫』だとか、
当時の共産主義者やナチスが掲げていたスローガンによる誘導を使い、ガスはうまく立ち回ってみせた。
それはこんな具合だ。
『全ての土地は神聖なる神が人間に与えたもうたもの。汚らしい亜人共は追い出せ、あいつらは神聖な土地を汚し、
神に唾吐く害虫である』
とにかく、群衆に亜人達への悪印象を植え付けること。
亜人がゴキブリやダニ程度に感じられれば、人々は率先してゴブリンやオークを駆逐していくだろう。
例え相手が無抵抗であってもだ。
そう、神の名の元に全ては許されるのである。それには区別することだ。
自らと他者、人間と亜人との区別だ。
また、人々の中には亜人と仲の良い者もいる。ガスはそういう人間には裏切り者のレッテルを貼った。
するとレッテルを貼られた者を率先して攻撃する村人達が現れた。
彼らの共通する点は現状に不満を持っているということだ。
そんな不満を癒すには、他者を攻撃するのが手っ取り早かったのである。
一行が着いた村は閑散としていた。まず、エリックは村にある井戸で喉を潤した。
ブレンダとセイジロウは村にある茶屋で一休みしようとしたが、生憎と売り子の姿は見えない。
「誰もいないな、一体どういうことだ?」
水分を取り戻した水色の身体をプルプルと震わせながら、エリックが村を見やる。
「きっと刈り入れ時で村人総出で仕事をしてるんじゃないかしら」
「それだったら僕らも手伝わないか」とセイジロウ。
「力仕事だったら任せてちょうだい」
ブレンダが隆々とした上腕二頭筋を見せつけながら、輝くばかりの白い歯を剥いて二カッと笑う。
それから三人は村のはずれにある畑へと向かっていった。
ブレンダ ゾンビ レベル17
体力60
物理攻撃力61
物理防御力70
魔法攻撃力38
魔法防御力42
精神力68
素早さ53
運77
ブレンダはゾンビになる以前は戦士だった。そして同性愛者でもあった。
彼は子どもを助ける為にその身を呈し、弩に射られて命を失った。
そしてアンデッドとして蘇ったのだが、死んだからといって異性愛者になることはなかった。
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