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嫉妬
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悩ましい毎日を送っていたビオレッタの道具屋に、ある日オリバがやって来た。
「最近、勇者様目当ての客がたまに来るようになってね」
「ラウレル様目当てのお客さん……宿屋にですか?」
ビオレッタは、道具屋のカウンターで店番がてら薬草の選別をしていた。傷みのないきれいな薬草だけを販売するのが、ビオレッタなりのこだわりだ。量は減るが、質は良くなる。
「さっきも来たのよ。『ラウレルはどこにいる?』って随分と親しげな女が」
『ラウレル』と呼び捨て。
『親しげ』な女性。
思わず、選別の手が止まる。
「呼び捨て……ですか」
「そうよ、しかもすっごくきれいな人なの。ああいうのを妖艶……っていうのかしら」
妖艶な美女――田舎くさい自分とは真逆の女性だ。
そんな人がはるばるグリシナ村まで来ている。勇者ラウレルと会うために。
オリバから話を聞くにつれ、浮かれていた心が急速に冷えていくのが分かった。力の抜けたビオレッタの手から、薬草がハラリと落ちる。
「あら、ビオレッタちゃん、葉っぱ落ちたわよ……そうだ、思い出した。私、薬草買いに来たんだったわ」
オリバは話に夢中だったが、どうやら薬草を買いに来ていたらしい。
彼女が買い物を終えて店を出るのと入れ替わりに、ラウレルが帰ってきた。噂をすればだ。
「あ、ラウレル様……おかえりなさい」
「ただいま。今、オリバさんが居たようですけど」
「ええ、お買い物をして下さって。今オリバさんから聞いたんですけど、宿屋にラウレル様を探しているお客様がいらっしゃったそうですよ」
「俺を?」
ラウレルは、その客に心当たりが無いようだった。
オリバによると、宿屋に来たのは親しげな女性らしい。そこまで伝えれば思い当たる事があるだろうか。
「誰だろう……全く心当たりがないんですけど」
「オリバさんは、ラウレル様と親しげな女性だった、と言っていましたが」
そこまで伝えても、彼はまだ首をひねったままだ。親しい女性など限られると思うのだが、誰か思い当たらないほど親しい女性が沢山いるのだろうか。
「俺はこの村にいることを誰にも伝えていないはずなのですが……」
まあいいや、と興味無さそうにラウレルは裏の畑へと向かった。おそらく、畑に水やりをしてくれるのだろう。ビオレッタはそれ以上なにも聞かず、彼の背中を見送った。
(私ったら……ひどいわ)
『親しげな女性』に対し興味無さげなラウレルを見て、安心してしまった自分がいた。彼とその妖艶な女性が会えなければいいのにとさえ思っている。
いつから、自分はこんなにも意地汚い考え方をするようになってしまったのだろう。
醜い嫉妬だ。
いつの間に、こんなにも――
彼が裏口へと消えた途端、店の入り口からガタリと音が聞こえた。
「うそ……一緒に住んでるの……?」
ビオレッタが振り向くと、そこには妖艶過ぎる赤髪美女が立っていた。
「最近、勇者様目当ての客がたまに来るようになってね」
「ラウレル様目当てのお客さん……宿屋にですか?」
ビオレッタは、道具屋のカウンターで店番がてら薬草の選別をしていた。傷みのないきれいな薬草だけを販売するのが、ビオレッタなりのこだわりだ。量は減るが、質は良くなる。
「さっきも来たのよ。『ラウレルはどこにいる?』って随分と親しげな女が」
『ラウレル』と呼び捨て。
『親しげ』な女性。
思わず、選別の手が止まる。
「呼び捨て……ですか」
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そんな人がはるばるグリシナ村まで来ている。勇者ラウレルと会うために。
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「あら、ビオレッタちゃん、葉っぱ落ちたわよ……そうだ、思い出した。私、薬草買いに来たんだったわ」
オリバは話に夢中だったが、どうやら薬草を買いに来ていたらしい。
彼女が買い物を終えて店を出るのと入れ替わりに、ラウレルが帰ってきた。噂をすればだ。
「あ、ラウレル様……おかえりなさい」
「ただいま。今、オリバさんが居たようですけど」
「ええ、お買い物をして下さって。今オリバさんから聞いたんですけど、宿屋にラウレル様を探しているお客様がいらっしゃったそうですよ」
「俺を?」
ラウレルは、その客に心当たりが無いようだった。
オリバによると、宿屋に来たのは親しげな女性らしい。そこまで伝えれば思い当たる事があるだろうか。
「誰だろう……全く心当たりがないんですけど」
「オリバさんは、ラウレル様と親しげな女性だった、と言っていましたが」
そこまで伝えても、彼はまだ首をひねったままだ。親しい女性など限られると思うのだが、誰か思い当たらないほど親しい女性が沢山いるのだろうか。
「俺はこの村にいることを誰にも伝えていないはずなのですが……」
まあいいや、と興味無さそうにラウレルは裏の畑へと向かった。おそらく、畑に水やりをしてくれるのだろう。ビオレッタはそれ以上なにも聞かず、彼の背中を見送った。
(私ったら……ひどいわ)
『親しげな女性』に対し興味無さげなラウレルを見て、安心してしまった自分がいた。彼とその妖艶な女性が会えなければいいのにとさえ思っている。
いつから、自分はこんなにも意地汚い考え方をするようになってしまったのだろう。
醜い嫉妬だ。
いつの間に、こんなにも――
彼が裏口へと消えた途端、店の入り口からガタリと音が聞こえた。
「うそ……一緒に住んでるの……?」
ビオレッタが振り向くと、そこには妖艶過ぎる赤髪美女が立っていた。
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