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第壱章 屋上に
脱出と入院
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学園の周りは住宅街で、近くに高いビルが無い。そのため、毎日夕方になると美しい夕焼け雲が空をゆっくりと流れる。しかし、5人が屋上に来てからは夕焼け雲は姿を見せず、どんよりとした空気に包まれている。
(あれ、さっきまでどんよりしてて暗かったのに、夕焼けのオレンジが見える…)
東貴は屋上の扉の前で壁を背にして座り込んでいた。なぜかとても疲弊しており、体は動かせない。しかし、かろうじて薄目は開けられる。
(体が重い、なんだこれ、自分の体じゃないみたいだ…)
なんとか首を動かし、薄目であたりを見回す。
夕日が差し込み、屋上はオレンジ色に染まっている。夕日が反射して誰が誰だか見えないが、4人がすぐ近くに倒れているのがわかる。
(何が起こったんだ…。)
落ちそうになっている女子高生を掴む直前までは思い出せる。しかし、そこから先は思い出せない。
(やばい、体が冷たくなっていく…。俺、死ぬのか…。訳も分からないまま…。)
空いていた薄目も徐々に閉まっていき、やがて閉じてしまった。もう目も空かない。体も動かせない。声も出せない。体がどんどん冷たくなっていくのがわかる。自分の精神もどんどんなくなっていく感覚がある。自分の体に何が起こっているかもわからずこのまま死んでしまうのだろうか。
(死にたくない…)
そう思ったがもう何もできない。
しかし、意識が無くなる直前、どこか懐かしい声が聞こえた気がした。
「助けてやるから待ってろ、東貴」
---------------------
東貴は目をゆっくりと開ける。見覚えのない天井が見える。ここはどこだろうか。東貴は辺りを見回そうとゆっくりと首を曲げる。どうやら病室のようだ。自分が使っているベッド以外は見当たらない。1人部屋のようだ。
体はとてもだるく、上手く動かせない。しかし、屋上にいた時よりかはマシになっていた。
(俺、死ななかったんだ…。)
そう思いボーっとしていると、病室のドアが開いた。明日香と真木とレナだった。目を開けている東貴を見て、驚いた後、半べそになりながら明日香が近づいてくる。
「東貴…、良かったああああああ」
明日香は目を覚ました東貴を見て、大泣きした。レナは明日香を抱きしめながら頭をなでる。しかしレナも涙ぐんでいる。真木もとてもホッとした顔をしている。東貴も自分が生きていると実感がわいたのか、途端に涙がこみあげてくる。そして、それと同時に空腹感が押し寄せてきた。
「は、はらへった…」
(目を覚まして最初の言葉がまさかハラヘッタだとは…。)
東貴は途端に恥ずかしくなったが、3人はその言葉を聞き、安心したのか、声を出して笑ってくれた。
東貴が目を覚ました事を医者に報告し、検査してもらうことになった。車いすに乗り、明日香に押してもらう。
(なんか恥ずかしいな…)
2人は同時に同じことを思う。
検査の結果を見て医者は驚いていた。
点滴を充分に受けていたにも関わらず、栄養失調と出た。外傷があるわけでもないのに何らかの理由で体が栄養を必要以上に使っているらしい。原因は不明とのことだった。とにかく食べる事。食べなきゃまた倒れてしまうから気をつけてと念を押された。しかし、いきなり量を食べると体がびっくりしてしまうので、少しずつ食べる量を増やしていこうとなった。
東貴と明日香が病室に戻ると、豪も加わり、3人が待っていた。
「東貴、無事で本当に良かった…」
豪も泣きそうになっていたが、大丈夫だよと伝えると笑顔になった。当日何が起こったかについては、東貴の体調を考えて、病院内で話すのはやめておくことにした。とにかくお腹が空くため、食べれるときにひたすら食べる。とにかく食べる。食べ終わった後は満たされるが、寝て起きるとすぐにお腹が空いてしまう。こんなことは今までなかったため、不安になる。
(妊婦も、食べてもお腹の赤ちゃんにばっか行ってお腹が空くって言うけど、俺まさか妊娠してないよな…?)
食べてもお腹が空く現象は変わらず起こるが、目を覚ましてから3日後には退院出来る事になった。土曜日の為、東貴の退院の時間前にメンバーが集まる。そこには東貴の母親もいた。
「みんな、心配してくれてありがとね。手続してくるから、みんなここで待っててね。」
そう言って東貴の母親は病室を出た。待ちに待ったかのように、東貴は小さな声で皆に言う。
「みんな、迷惑かけてごめんな。やっと退院出来るから、あのことについて、場所を変えて整理しよう。」
他4人は頷く。
「手続きには30分くらいかかるって言ってたよ。」
真木は先程たまたま東貴の母親に聞いたらしく、腕時計を見ながら他4人に言った。
それまでは雑談でもしようかと5人は椅子やベッドの上に座る。5人全員が座った瞬間部屋の中がどんよりとした空気に変わっていく。
「え、これって…」
明日香は思わず声を出してしまう。そう、この空気は紛れもなくあの時屋上で感じた空気だった。全員が緊張する。そして豪以外の4人が豪の後ろを見て固まる。その中でレナがゆっくりと豪の後ろを指さす。豪は固まる。
「後ろ向きたくないんだけど。このまま向かなくてもいいよね。」
一同は頷く。しかし、そのままの方が怖いと思ってしまった豪は、結局振り向いてしまう。そしてそのまま気絶した。
そこには、屋上から突き落とされそうになっていた女子高生がいた。
「ありがとう…、ごめんね。」
そう言い残しその女子高生は消え、空気も元に戻った。
「な、何でここにあの女子高生が…?」
東貴は1つの仮説を思い浮かべ、冷や汗をかいていた。
沈黙している中、突然扉が開き、東貴の母親が部屋に入ってきた。
「思ったより手続き早く終わったよ!さあ、帰ろう!」
真木は咄嗟に腕時計を見た。
東貴の母親が出てからまだ2~3分しか経っていないはずなのに、時計は15分進んでいた。
真木は豪を蹴り起こし、5人は部屋を出た。
あの女子高生は、一体誰なのか。
なぜありがとうとごめんねを言ってきたのか。
明日香が見つけてきたあのメモはいったい何なのか。
多くの謎を残したまま、次の怪異へと巻き込まれていく…。
第壱章 屋上に 終わり
第弐章へ続く
(あれ、さっきまでどんよりしてて暗かったのに、夕焼けのオレンジが見える…)
東貴は屋上の扉の前で壁を背にして座り込んでいた。なぜかとても疲弊しており、体は動かせない。しかし、かろうじて薄目は開けられる。
(体が重い、なんだこれ、自分の体じゃないみたいだ…)
なんとか首を動かし、薄目であたりを見回す。
夕日が差し込み、屋上はオレンジ色に染まっている。夕日が反射して誰が誰だか見えないが、4人がすぐ近くに倒れているのがわかる。
(何が起こったんだ…。)
落ちそうになっている女子高生を掴む直前までは思い出せる。しかし、そこから先は思い出せない。
(やばい、体が冷たくなっていく…。俺、死ぬのか…。訳も分からないまま…。)
空いていた薄目も徐々に閉まっていき、やがて閉じてしまった。もう目も空かない。体も動かせない。声も出せない。体がどんどん冷たくなっていくのがわかる。自分の精神もどんどんなくなっていく感覚がある。自分の体に何が起こっているかもわからずこのまま死んでしまうのだろうか。
(死にたくない…)
そう思ったがもう何もできない。
しかし、意識が無くなる直前、どこか懐かしい声が聞こえた気がした。
「助けてやるから待ってろ、東貴」
---------------------
東貴は目をゆっくりと開ける。見覚えのない天井が見える。ここはどこだろうか。東貴は辺りを見回そうとゆっくりと首を曲げる。どうやら病室のようだ。自分が使っているベッド以外は見当たらない。1人部屋のようだ。
体はとてもだるく、上手く動かせない。しかし、屋上にいた時よりかはマシになっていた。
(俺、死ななかったんだ…。)
そう思いボーっとしていると、病室のドアが開いた。明日香と真木とレナだった。目を開けている東貴を見て、驚いた後、半べそになりながら明日香が近づいてくる。
「東貴…、良かったああああああ」
明日香は目を覚ました東貴を見て、大泣きした。レナは明日香を抱きしめながら頭をなでる。しかしレナも涙ぐんでいる。真木もとてもホッとした顔をしている。東貴も自分が生きていると実感がわいたのか、途端に涙がこみあげてくる。そして、それと同時に空腹感が押し寄せてきた。
「は、はらへった…」
(目を覚まして最初の言葉がまさかハラヘッタだとは…。)
東貴は途端に恥ずかしくなったが、3人はその言葉を聞き、安心したのか、声を出して笑ってくれた。
東貴が目を覚ました事を医者に報告し、検査してもらうことになった。車いすに乗り、明日香に押してもらう。
(なんか恥ずかしいな…)
2人は同時に同じことを思う。
検査の結果を見て医者は驚いていた。
点滴を充分に受けていたにも関わらず、栄養失調と出た。外傷があるわけでもないのに何らかの理由で体が栄養を必要以上に使っているらしい。原因は不明とのことだった。とにかく食べる事。食べなきゃまた倒れてしまうから気をつけてと念を押された。しかし、いきなり量を食べると体がびっくりしてしまうので、少しずつ食べる量を増やしていこうとなった。
東貴と明日香が病室に戻ると、豪も加わり、3人が待っていた。
「東貴、無事で本当に良かった…」
豪も泣きそうになっていたが、大丈夫だよと伝えると笑顔になった。当日何が起こったかについては、東貴の体調を考えて、病院内で話すのはやめておくことにした。とにかくお腹が空くため、食べれるときにひたすら食べる。とにかく食べる。食べ終わった後は満たされるが、寝て起きるとすぐにお腹が空いてしまう。こんなことは今までなかったため、不安になる。
(妊婦も、食べてもお腹の赤ちゃんにばっか行ってお腹が空くって言うけど、俺まさか妊娠してないよな…?)
食べてもお腹が空く現象は変わらず起こるが、目を覚ましてから3日後には退院出来る事になった。土曜日の為、東貴の退院の時間前にメンバーが集まる。そこには東貴の母親もいた。
「みんな、心配してくれてありがとね。手続してくるから、みんなここで待っててね。」
そう言って東貴の母親は病室を出た。待ちに待ったかのように、東貴は小さな声で皆に言う。
「みんな、迷惑かけてごめんな。やっと退院出来るから、あのことについて、場所を変えて整理しよう。」
他4人は頷く。
「手続きには30分くらいかかるって言ってたよ。」
真木は先程たまたま東貴の母親に聞いたらしく、腕時計を見ながら他4人に言った。
それまでは雑談でもしようかと5人は椅子やベッドの上に座る。5人全員が座った瞬間部屋の中がどんよりとした空気に変わっていく。
「え、これって…」
明日香は思わず声を出してしまう。そう、この空気は紛れもなくあの時屋上で感じた空気だった。全員が緊張する。そして豪以外の4人が豪の後ろを見て固まる。その中でレナがゆっくりと豪の後ろを指さす。豪は固まる。
「後ろ向きたくないんだけど。このまま向かなくてもいいよね。」
一同は頷く。しかし、そのままの方が怖いと思ってしまった豪は、結局振り向いてしまう。そしてそのまま気絶した。
そこには、屋上から突き落とされそうになっていた女子高生がいた。
「ありがとう…、ごめんね。」
そう言い残しその女子高生は消え、空気も元に戻った。
「な、何でここにあの女子高生が…?」
東貴は1つの仮説を思い浮かべ、冷や汗をかいていた。
沈黙している中、突然扉が開き、東貴の母親が部屋に入ってきた。
「思ったより手続き早く終わったよ!さあ、帰ろう!」
真木は咄嗟に腕時計を見た。
東貴の母親が出てからまだ2~3分しか経っていないはずなのに、時計は15分進んでいた。
真木は豪を蹴り起こし、5人は部屋を出た。
あの女子高生は、一体誰なのか。
なぜありがとうとごめんねを言ってきたのか。
明日香が見つけてきたあのメモはいったい何なのか。
多くの謎を残したまま、次の怪異へと巻き込まれていく…。
第壱章 屋上に 終わり
第弐章へ続く
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