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1章
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しおりを挟むお互いの懺悔を言い合った所で、
ふと、私は思い出した。
何故カリナはベッドで医者に診てもらっていたのだろう。
小説でカリナが病に伏せる場面は無かった気がする。
『ねえ、アン。私はどこか悪いの?』
と聞いた。
「覚えていらっしゃらないのですか?
....お嬢様は学園の踊り場から落ちて気を失われたのですよ。」
同じだ。
元の世界の私と同じ事が起こっている。
『そうだったの。そういえば所々記憶が曖昧な感じがするわ。いくつか質問してもいい?』
そう言い、私が知らないカリナの記憶との擦り合わせをしようと思った。
「本当に大丈夫ですか?私に分かることであればお答え出来ますが....」
『ええ、ありがとう。まず、今は何年の何月何日?』
「××5年6月21日でございます。」
『そう、じゃあ私はもう少しで16歳なのね』
元の世界の私と同い年の場面だ。
この世界の年齢や学年はほとんど私の居た世界と同じだ。違うことは18歳で成人という所だけ。
学園の高等部に入って1年目で踊り場から落ちる事故なんてなかったはずなのに、、。
そして小説では高等部に上がると同時に、カリナとこの国の皇子の婚約が決まっている。
婚約した皇子とは、カリナの1つ年上でこの国の第二皇子だ。
カリナが6歳の社交界デビューの時に一目惚れした相手。
その時までカリナは自分の部屋に閉じ込められていたと言っても過言ではない環境で、唯一読める絵本の中の王子様に夢見ていたのだ。
その王子様そっくりだったのがこの第二皇子。
好きにならないわけが無い。
この人とならカリナは幸せになれると信じて疑わなかったのだ。
カリナ本人はやっと見つけた愛する人との婚約はとても喜ばしい事だけど、相手にとってはそうじゃなかった。
皇子はカリナの事は少しも好きでは無かった。むしろ疎ましい存在だと思っていたのだ。
それを知らずに愛を受けられると思っていたカリナは与えられない愛への憎しみと、
その皇子が親しくしている他の女生徒への嫉妬で癇癪を起こして余計に周りから人が居なくなっていく。
そして最終的に婚約者である皇子とも破談になり、両親からも本格的に見捨てられてしまう所で、小説でのカリナの出番は終わってしまう。
それが今からあと1年と少し経った17歳の冬の頃の話だ。
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