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アルド・カガリ
不知の仇討ち(1/3)
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(聖王が死んだ……か。魔王への対応はボクに一任されたようなものだね)
カガリはロンダバオを出た後、ストルブリンを最短距離で横断していた。
大陸内でも比較的、露出した岩肌ばかりが目立つ土地を駆け抜ける。
ふと、聖法を修得して訓練に明け暮れていた頃を思い出した。
(ボクは一度、ここで死んでるんだよね……)
これから自分が実行する計画を前にして、カガリは自身の慢心を消すために人生最悪の死闘の記憶を思い起こす。
「ダメダメ!法力の調節が全然なってないっ!」
「はい!」
ストルブリン……洗礼を受けた聖法使いが力の使い方を学ぶ修行の地。
リース師匠の洗礼を経て、ボクは訓練漬けの日々を送っていた。
「速身の聖法は聖法の基礎中の基礎よ!」
師匠が落ちていた木の枝を拾う。
「動きが速くなるのと同時に身体も強くなるし、力を調節すればこんなことだってできるんだから!」
そう言って、地面から顔を出している岩に木の枝を振り下ろす。
ズズズ……と岩はゆっくりと斜めに滑り落ち、二つに割れてしまった。
「カガリが同じことをしても岩が割れずに木の枝が折れるのは、力を上手く扱えていないから。持っているものを自分の一部だと考えるの」
教えられた通りに想像してみる。
力の流れが自分の手を通って木の枝に入り込んでいく……。
「たぁっ!」
振り下ろされた枝は折れなかったものの、岩を叩いただけで割ることはできなかった。
「ん~、それは力を込め過ぎね。そのせいで岩も身体と同じように強化されちゃってるのよ」
「……むずかしい」
聖法の才能があると言われても、まだまだ師匠が教えてくれることすらできてない。
カンカーン カンカーン カンカーン
「あら、もうお昼の鐘?それじゃ、ご飯にしようか」
そう言って石を拾うと……。
「おりゃっ!」
振りかぶって投げられた石は風切り音を鳴らしながら飛んでいき、パァンと何かを破裂させた。
「ちょっと処理してくるから火起こしお願いね!」
火打ち石をボクに渡して、師匠は石を投げた方向へと走っていった。
「んんっ!やっぱり巻牙豚は捕まえてすぐがいちばん美味しいわね!」
短剣で肉を切り、鞄から取り出した鉄串に刺して火の上で焼く。
ボクが知る限りで師匠が一番の笑顔を見せるのはこの瞬間だ。
「ほら、カガリも食べて食べて!」
先に焼けていた鉄串を受け取ってかぶりつく。
「……おいひいですっ!」
焼く前に振った塩が脂の甘みを引き立てていてとても美味しい。
「うんうん。どんどん食べて大きくなりなさいね!」
更に追加で焼かれていく串たちを見て少し手が止まったが、目標の為にも強くなりたいボクは、焼けていく肉を限界まで食べ続けた。
それから十日が経ったある日のこと。
「今日から森の中での生存訓練を始めるわ。一週間の生存か、身体のどこかに紫色の布が巻かれている獣五頭の狩猟で訓練終了だから、死なないように頑張ってね!」
師匠から短剣だけを渡されて、ボクは指定された目印の場所まで鼻歌混じりにのんびりと歩く。
この時のボクは、今日自分が死んでしまうなんてこれっぽっちも考えていなかった。
カガリはロンダバオを出た後、ストルブリンを最短距離で横断していた。
大陸内でも比較的、露出した岩肌ばかりが目立つ土地を駆け抜ける。
ふと、聖法を修得して訓練に明け暮れていた頃を思い出した。
(ボクは一度、ここで死んでるんだよね……)
これから自分が実行する計画を前にして、カガリは自身の慢心を消すために人生最悪の死闘の記憶を思い起こす。
「ダメダメ!法力の調節が全然なってないっ!」
「はい!」
ストルブリン……洗礼を受けた聖法使いが力の使い方を学ぶ修行の地。
リース師匠の洗礼を経て、ボクは訓練漬けの日々を送っていた。
「速身の聖法は聖法の基礎中の基礎よ!」
師匠が落ちていた木の枝を拾う。
「動きが速くなるのと同時に身体も強くなるし、力を調節すればこんなことだってできるんだから!」
そう言って、地面から顔を出している岩に木の枝を振り下ろす。
ズズズ……と岩はゆっくりと斜めに滑り落ち、二つに割れてしまった。
「カガリが同じことをしても岩が割れずに木の枝が折れるのは、力を上手く扱えていないから。持っているものを自分の一部だと考えるの」
教えられた通りに想像してみる。
力の流れが自分の手を通って木の枝に入り込んでいく……。
「たぁっ!」
振り下ろされた枝は折れなかったものの、岩を叩いただけで割ることはできなかった。
「ん~、それは力を込め過ぎね。そのせいで岩も身体と同じように強化されちゃってるのよ」
「……むずかしい」
聖法の才能があると言われても、まだまだ師匠が教えてくれることすらできてない。
カンカーン カンカーン カンカーン
「あら、もうお昼の鐘?それじゃ、ご飯にしようか」
そう言って石を拾うと……。
「おりゃっ!」
振りかぶって投げられた石は風切り音を鳴らしながら飛んでいき、パァンと何かを破裂させた。
「ちょっと処理してくるから火起こしお願いね!」
火打ち石をボクに渡して、師匠は石を投げた方向へと走っていった。
「んんっ!やっぱり巻牙豚は捕まえてすぐがいちばん美味しいわね!」
短剣で肉を切り、鞄から取り出した鉄串に刺して火の上で焼く。
ボクが知る限りで師匠が一番の笑顔を見せるのはこの瞬間だ。
「ほら、カガリも食べて食べて!」
先に焼けていた鉄串を受け取ってかぶりつく。
「……おいひいですっ!」
焼く前に振った塩が脂の甘みを引き立てていてとても美味しい。
「うんうん。どんどん食べて大きくなりなさいね!」
更に追加で焼かれていく串たちを見て少し手が止まったが、目標の為にも強くなりたいボクは、焼けていく肉を限界まで食べ続けた。
それから十日が経ったある日のこと。
「今日から森の中での生存訓練を始めるわ。一週間の生存か、身体のどこかに紫色の布が巻かれている獣五頭の狩猟で訓練終了だから、死なないように頑張ってね!」
師匠から短剣だけを渡されて、ボクは指定された目印の場所まで鼻歌混じりにのんびりと歩く。
この時のボクは、今日自分が死んでしまうなんてこれっぽっちも考えていなかった。
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