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アルド・カガリ
解放されし加護の力
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『作戦としては……』
トウカさんはそう言って、勝つための戦略を語ってくれました。
『名付けて、"電気ビリビリ大作戦"でござる!』
理屈はよくわかりませんでしたけど雷電魔法には、より流れやすい所を選んで流れる性質があるらしく、灯花さんがエルの動きを止め、ユウ様がその性質を利用して仕留める……という話でした。
(それにしても、あの"商会"からの貢物を欲しがってたのにそんな理由があったなんて……もしかしてトウカさんには未来が見えているのかしら?)
「二人はどこへ?」
既に馬から下りていたエルさんは大剣を僕たちに向けたまま尋ねる。
「先に逃げてもらいました。エルさん……どうしても戦わないといけないんですか?」
距離を保ったまま、今度はこっちから尋ねた。
「大人しく投降するなら危害は加えませんわ。武器を捨てて拘束されてくださいませ」
大剣は鞘から抜かれていた。
「それは……できません。僕たちは早く帰りたいんです」
「いつ解放されるか分からない上に、ユウ氏の安全が保証されない提案には乗れないでござるよ」
灯花も剣を構えた。
"速身"はもう唱えてある。
「魔族を討伐した時の実力で当て込んでいるのなら……残念としか言いようがありませんわ」
エルさんの空気が変わったように感じた。
「ユウ氏、手筈通りに……!」
「ああ」
僕は頭の中で手順を再確認する。
(足止めには姉妹の方が来ると思っていましたが……)
エルは対峙する二人をよく観察する。
ユウさん……もとい、魔王は丸腰のままで武器を持っているのはトウカさんのみ。
そして何故かトウカさんは全身砂まみれ。
(意図が読めませんわ……)
「二人はどこへ?」
「先に逃げてもらいました。エルさん……どうしても戦わないといけないんですか?」
人界にて覚醒した新たなる魔王。
可能であれば捕縛……それができなければ生死は問わないという指令を受けている。
「大人しく投降するなら危害は加えませんわ。武器を捨てて拘束されてくださいませ」
「それは……できません」
向こう側に並び立つ二人が意思を表明する。
(残念です……)
「魔族を討伐した時の実力で当て込んでいるのなら……残念としか言いようがありませんわ」
(周囲を巻き込まないように力を抑えなくてよい以上、いくら聖法使いでも加護を持つ私には敵いませんのに……)
自身の中を流れる力を意識する。
龍王樹の紋章を中心に、全身へと力が漲っていく。
そして、魔族と戦った時の数倍もの速さで、武器を持つ灯花へと斬り掛かった。
作戦はこうだ。
まず、砂まみれの灯花がエルさんを抑える。
そこに僕が弱位水流魔法を唱えて二人もろとも当てる。
水を受けたエルさんに、灯花が隠し持っているバスソルトを投げつけて一旦離脱。
"清浄の聖法"で灯花の身体についている汚れを全て落とし、灯花とエルさんが再び斬り結ぶ瞬間を狙って上位雷電魔法を撃ち、電気ショックで失神させる……。
無力化を最優先に、灯花と考えた作戦だ。
(エルさんも本当は戦いたくないはずなんだ……)
魔王だなんだなんて話はよく分からない。
けど、僕がこの世界に呼ばれてしまったせいでトラブルが続いているのは事実だ。
「だったらエルさんも無闇に傷つけたりしちゃ————」
瞬間、何かがものすごい速さですぐ横を飛んでいった。
「戦いの最中に考え事ですの?」
声がした方を見ることもできず、僕は横殴りに思いっきり吹き飛ばされた。
「がはっ……!」
背中を木に強く打ちつけられたせいで息が止まる。
痛みでチカチカする視界の端っこに、剣を杖代わりに立ち上がる灯花が見えた。
「無駄な抵抗はおやめくださいませ。加護の力を解放した私に勝つなんて、あなたたちには不可能ですの」
エルさんが僕の方へと歩み寄る。
「ユウに近付くなっ!」
灯花が剣を捨ててエルさんに飛び掛かる……が。
「おやめなさい!」
振り下ろしの手刀をくらって灯花は叩き落とされた。
「…………っ!!」
手に力を込めてどうにか身体を起こそうとする僕の首に、冷たい感触のなにかが当たる。
「……動けばその首を落とします。可能であれば魔王の一味は捕縛せよ、とはドラグ・コトラとロンダバオ、聖王国の連名の指令です。あなたやあの二人と違い、トウカさんの命に関してはなにも指示を受けていません」
言外に灯花の命を奪うぞと脅しを突きつけられ、体より自由の利く頭へと血が上る。
「灯花を……殺したら…………許さ……ない……!」
絞り出せた精一杯の言葉と共に、全身が燃えたぎるように熱くなっていく。
僕の身体に浮き上がっていくソレを見たエルさんは、静かに溜め息をついた。
「……ごめんなさい。やっぱりあなたは生かしたままだと人界にとって危険過ぎますわ」
そう言って、エルさんは大剣を上段に構える。
「ですので……ここで死んでくださいまし」
大剣が僕の脳天へと振り下ろされる。
当たれば痛みを感じる間もなく死ぬだろう……。
「っ……」
動けない身体では避けることもできず、僕は目を閉じた。
————が。
僕の頭に大剣が当たることは無かった。
エルさんは剣を振る途中で……。
灯花に殴り飛ばされていた。
「ユウを殺す……?冗談でも……」
灯花はすぐそばの木を手で掴み……。
「冗談でもっ! 言っていいことと悪いことがあるっっ!!!」
地面から引っこ抜いて投げつけた。
「なっ!?」
突然の反撃に面食らいながらも、エルさんは飛んできた木をギリギリで回避する。
「誰もっ!! 誰も傷つけたくないユウの優しさを! 踏みにじるなんてっ!!」
灯花は体勢を崩したエルさんとの距離を一瞬で詰め、胸甲を右の拳で砕き割った。
「っ……!」
口から空気の塊を吐き出すエルさん。
騎士としての意地なのか、それでもなお自身の武器である大剣は手放さない。
しかし、灯花への反撃が来ることは無かった。
「罪の無い人の命を奪う正義なんて! 私はっ! 絶対に認めないっ!!」
灯花は両足でエルさんの腕を抑え、首を両腕で締め上げる。
どうにかもがいて抜け出そうとするも叶わず、動きは段々と弱くなっていき……。
「…………っ」
遂に大剣が手から地面へと落ちた。
トウカさんはそう言って、勝つための戦略を語ってくれました。
『名付けて、"電気ビリビリ大作戦"でござる!』
理屈はよくわかりませんでしたけど雷電魔法には、より流れやすい所を選んで流れる性質があるらしく、灯花さんがエルの動きを止め、ユウ様がその性質を利用して仕留める……という話でした。
(それにしても、あの"商会"からの貢物を欲しがってたのにそんな理由があったなんて……もしかしてトウカさんには未来が見えているのかしら?)
「二人はどこへ?」
既に馬から下りていたエルさんは大剣を僕たちに向けたまま尋ねる。
「先に逃げてもらいました。エルさん……どうしても戦わないといけないんですか?」
距離を保ったまま、今度はこっちから尋ねた。
「大人しく投降するなら危害は加えませんわ。武器を捨てて拘束されてくださいませ」
大剣は鞘から抜かれていた。
「それは……できません。僕たちは早く帰りたいんです」
「いつ解放されるか分からない上に、ユウ氏の安全が保証されない提案には乗れないでござるよ」
灯花も剣を構えた。
"速身"はもう唱えてある。
「魔族を討伐した時の実力で当て込んでいるのなら……残念としか言いようがありませんわ」
エルさんの空気が変わったように感じた。
「ユウ氏、手筈通りに……!」
「ああ」
僕は頭の中で手順を再確認する。
(足止めには姉妹の方が来ると思っていましたが……)
エルは対峙する二人をよく観察する。
ユウさん……もとい、魔王は丸腰のままで武器を持っているのはトウカさんのみ。
そして何故かトウカさんは全身砂まみれ。
(意図が読めませんわ……)
「二人はどこへ?」
「先に逃げてもらいました。エルさん……どうしても戦わないといけないんですか?」
人界にて覚醒した新たなる魔王。
可能であれば捕縛……それができなければ生死は問わないという指令を受けている。
「大人しく投降するなら危害は加えませんわ。武器を捨てて拘束されてくださいませ」
「それは……できません」
向こう側に並び立つ二人が意思を表明する。
(残念です……)
「魔族を討伐した時の実力で当て込んでいるのなら……残念としか言いようがありませんわ」
(周囲を巻き込まないように力を抑えなくてよい以上、いくら聖法使いでも加護を持つ私には敵いませんのに……)
自身の中を流れる力を意識する。
龍王樹の紋章を中心に、全身へと力が漲っていく。
そして、魔族と戦った時の数倍もの速さで、武器を持つ灯花へと斬り掛かった。
作戦はこうだ。
まず、砂まみれの灯花がエルさんを抑える。
そこに僕が弱位水流魔法を唱えて二人もろとも当てる。
水を受けたエルさんに、灯花が隠し持っているバスソルトを投げつけて一旦離脱。
"清浄の聖法"で灯花の身体についている汚れを全て落とし、灯花とエルさんが再び斬り結ぶ瞬間を狙って上位雷電魔法を撃ち、電気ショックで失神させる……。
無力化を最優先に、灯花と考えた作戦だ。
(エルさんも本当は戦いたくないはずなんだ……)
魔王だなんだなんて話はよく分からない。
けど、僕がこの世界に呼ばれてしまったせいでトラブルが続いているのは事実だ。
「だったらエルさんも無闇に傷つけたりしちゃ————」
瞬間、何かがものすごい速さですぐ横を飛んでいった。
「戦いの最中に考え事ですの?」
声がした方を見ることもできず、僕は横殴りに思いっきり吹き飛ばされた。
「がはっ……!」
背中を木に強く打ちつけられたせいで息が止まる。
痛みでチカチカする視界の端っこに、剣を杖代わりに立ち上がる灯花が見えた。
「無駄な抵抗はおやめくださいませ。加護の力を解放した私に勝つなんて、あなたたちには不可能ですの」
エルさんが僕の方へと歩み寄る。
「ユウに近付くなっ!」
灯花が剣を捨ててエルさんに飛び掛かる……が。
「おやめなさい!」
振り下ろしの手刀をくらって灯花は叩き落とされた。
「…………っ!!」
手に力を込めてどうにか身体を起こそうとする僕の首に、冷たい感触のなにかが当たる。
「……動けばその首を落とします。可能であれば魔王の一味は捕縛せよ、とはドラグ・コトラとロンダバオ、聖王国の連名の指令です。あなたやあの二人と違い、トウカさんの命に関してはなにも指示を受けていません」
言外に灯花の命を奪うぞと脅しを突きつけられ、体より自由の利く頭へと血が上る。
「灯花を……殺したら…………許さ……ない……!」
絞り出せた精一杯の言葉と共に、全身が燃えたぎるように熱くなっていく。
僕の身体に浮き上がっていくソレを見たエルさんは、静かに溜め息をついた。
「……ごめんなさい。やっぱりあなたは生かしたままだと人界にとって危険過ぎますわ」
そう言って、エルさんは大剣を上段に構える。
「ですので……ここで死んでくださいまし」
大剣が僕の脳天へと振り下ろされる。
当たれば痛みを感じる間もなく死ぬだろう……。
「っ……」
動けない身体では避けることもできず、僕は目を閉じた。
————が。
僕の頭に大剣が当たることは無かった。
エルさんは剣を振る途中で……。
灯花に殴り飛ばされていた。
「ユウを殺す……?冗談でも……」
灯花はすぐそばの木を手で掴み……。
「冗談でもっ! 言っていいことと悪いことがあるっっ!!!」
地面から引っこ抜いて投げつけた。
「なっ!?」
突然の反撃に面食らいながらも、エルさんは飛んできた木をギリギリで回避する。
「誰もっ!! 誰も傷つけたくないユウの優しさを! 踏みにじるなんてっ!!」
灯花は体勢を崩したエルさんとの距離を一瞬で詰め、胸甲を右の拳で砕き割った。
「っ……!」
口から空気の塊を吐き出すエルさん。
騎士としての意地なのか、それでもなお自身の武器である大剣は手放さない。
しかし、灯花への反撃が来ることは無かった。
「罪の無い人の命を奪う正義なんて! 私はっ! 絶対に認めないっ!!」
灯花は両足でエルさんの腕を抑え、首を両腕で締め上げる。
どうにかもがいて抜け出そうとするも叶わず、動きは段々と弱くなっていき……。
「…………っ」
遂に大剣が手から地面へと落ちた。
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