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物言わぬ花
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コルデホーザの城下町から国境にかけては、なだらかな傾斜地になっている。カトレアが荷台で目を覚ますと、国境沿いの山脈が陽の光を浴び、くっきり浮かび上がっていた。頬を撫でる風は大地の匂いを纏い、裾野に広がる畑や牧草地は金色に染まっている。
どうやら、随分と寝入ってしまったようだ。荷馬車に揺さぶられ痛む身体を起こし、ぼんやりと周囲の風景を眺める。
国境まで続く街道沿いには、二つの村が存在する。城下町に程近いアイリス村と、シスル村だ。戦が起こる前は人通りも多く、宿場町としても栄えていたが、現在は国境が封鎖されているためさびれているという。
陽が西の稜線に沈む頃、荷馬車はアイリス村に着いた。カトレアは農夫に礼を述べ、村の入口で別れた。農夫は宿の心配をしてくれたが、これ以上甘えると正体がばれてしまうと判断し、そさくさと離れることにした。
村は街道沿いに石造りの建物が並び、左右に民家が見受けられる。周辺にはゆるやかな丘があり、薬花栽培の名残か現在も花卉栽培が行われているようだ。気候が温暖になり、花が一斉に咲く頃には、国中で行われる百花祭のために花々が出荷されるだろう。
道沿いの建物は宿場、酒場、雑貨屋などの看板を下げ、店じまいをする店主の姿もあれば、仕事を終えた農夫たちを軒先で呼び込む前掛けをした娘の姿もある。外壁の中に建物がひしめく城下町の風景とは異なり、牧歌的な空気が漂っていた。戦時中も主に交戦したのはここより北東の地域だったので、この村に被害の痕跡は見受けられなかった。
春とはいえ、夕暮れ時の冷え込みは体温を奪っていく。外套をしっかり巻き付け、カトレアはひとまず目立たぬよう、民家の路地に入った。
最低限の所持品しか持ち合わせていないため、宿に泊まるにしても支払う代金がない。そもそも、自ら外泊したことなどないのだ。
もう、柔らかな寝床で安心して眠りにつく日などないのかもしれない。雨雲は北に流れ、今日は雨の降る気配はないが、今夜も湿っぽい草露に紛れて身を丸くするのかと思うと気が滅入りそうだった。
せめて、屋根のついた所で横になりたい。どこか空き家でもないものかと歩いていると、ふいに子供の争う声が耳に入ってきた。カトレアは喧騒のする方へ足を向けた。
路地を曲がると、民家の脇で数人の少年が何かを取り囲んでいた。棒切れでつついたり、足蹴にして、何とか言えよとせっついている。野良犬でもいじめているのだろうかと遠目に観察すると、カトレアは目を見開いた。
輪の中心にうずくまっているのは、彼らより小さな子供だった。小麦色の短髪をした子供は、蕾のように身を固くしている。一方的な攻撃に反抗する様子を見せない。
一際身体の大きな少年が、しびれを切らし中心の子供を勢いよく蹴りつけた。
「お前、目ざわりなんだよ! 死にぞこないの物乞いが!」
脇腹を蹴られた子供は詰まった声を上げ、横倒れになった。伸び放題の髪の隙間から覗いた顔を目にして、カトレアは息を呑んだ。
まだ娘と呼ぶにも幼い、女の子ではないか。カトレアはなりふり構わず飛び出した。
「おまえたち! 無抵抗の女の子をよってたかっていたぶるなんて、どうしてそんな真似をするの!」
「わっ! 何だよ、お前!」
少年たちは輪を乱し、棒切れを構え警戒心を露わにする。カトレアも道端に落ちていた小枝を拾い上げると、野犬を追い払うように振り回した。
「お前も物乞いかよ! 生意気だ、やっちまえ!」
いきり立った少年たちが襲いかかるが、カトレアは彼らをするりとかわし、小枝をしならせ足や尻を次々に叩く。少年たちは容赦ない痛みに悲鳴を上げ、カトレアは横たわる少女の前に立ちはだかると、息を切らし声を張り上げた。
「この恥知らず! これ以上この子を痛めつけるようなら、わたしが許さないわよ!」
カトレアの剣幕に気圧され、少年たちは捨て台詞を吐きながら散っていった。王宮で剣術の手ほどきも受けていたのが役に立った。
稽古をつけてくれたレイの残像が浮かび、腕をだらりと垂らす。振り切るように屈み込み、少女を抱き起こした。
「おまえ、怪我はない? かわいそうに、まだこんなに小さいのに……」
見たところ、十歳に満たない。やせ細った手足に、すり切れた木綿のワンピースを身に着けた少女は、力なく目を閉じている。
土や泥を払ってやると、少女は腕の中で目を覚ました。カトレアもほっと息をつく。
「良かった……。おまえ、家はどこなの?」
少女は意識が朦朧としていが、焦点が定まると唐茶色の目を見開き、カトレアを跳ね除け起き上がった。まるで魔女にでも出くわしたような、驚愕と拒絶が入り混じった視線が突き刺さる。
少女は後ずさりすると、一目散に路地を駆け出した。呼び止めたが、彼女は裸足のまま突き当たりの民家を曲がり、姿を消してしまった。
「何よ……」
ぽつりととぶやいて、思い出したように脱げていた頭巾を直す。
死んだ身でありながら、うかつに姿を見せてしまった。少年たちには顔を見られていなかったが、もしあの少女が誰かに話をしたとしたら、特徴で勘付く者がいるかもしれない。脳裏に、少年の声が蘇る。
死にぞこないの、物乞いが――
カトレアは少女の去った方向を見つめ、人目につかぬよう歩き出した。
夕闇がこぢんまりとした村を覆う。民家には明かりが灯り、野菜や芋を煮込んだ匂いが漂っている。夕食の前に盃を交わしてきたのか、赤ら顔の父親と息子らしき青年が肩を組んで家路を歩く姿を陰で眺めた。
下々の民ですら、ささやかな家に帰り、家族と食卓を囲むというのに、自分は帰る場所も温かな食事も奪われ路頭に迷っている。成程、同類扱いされても不思議ではない。自嘲気味な笑みが口の端に滲んだ。
あてもなく歩いていくと、シスル村へと続く村の外れまでやって来た。街道の両端に、村を見守るように広葉樹がそびえ、右手に小さな林が広がっている。その中に、陰鬱な雰囲気を纏った屋敷がぽつんとたたずんでいた。林に溶け込むような、緑青色の屋根の立派な構えだ。
「あの家、誰か住んでいるのかしら……」
「あんた、こんな場所で何やってんだ?」
幹の陰から様子をうかがっていると、背後から声をかけられカトレアは飛び上がった。街道の端に建つ駅馬車用の施設から出てきたのだろう、御者らしき壮年の男だった。特にこちらを怪しむ様子はなく、退屈そうに煙草をふかしている。カトレアはしどろもどろになりながらも答えた。
「あの、林の中にある家を見ていただけよ。人が住んでいるのかしらって」
「ああ、あそこはシードリング一家の旧宅だ。セルレア妃がご存命の頃は、薬花師として名高い一家でな。夫婦で後進の育成のために、あそこで学校を開いていたのさ」
耳の毛が逆立った。御者は今日の仕事を終えたようで、誰に問われるでもなく説明を続ける。
「それが、愛妻を失ったマーカス王の狂気のとばっちりで、あそこの家は薬花師の資格を剥奪されてな。当然閉校、花卉栽培で何とか生計を立てていたが、その裏で密かに薬花の栽培を続けていたらしい」
「……それで、どうなったの」
御者は煙草の吸殻を投げ捨て、靴でねじり消すと、憮然として返答した。
「王宮から来た調査官にばれちまったんだよ。あそこの家には病弱な子供がいてな。その子のために薬花の栽培をしていたらしい。んで、マーカス王の政策の方がおかしいって楯突いた挙句罪人になって、生き恥を晒すくらいならって、一家心中したのさ」
頭を横殴りにされたような痺れが、カトレアを襲った。
狂気の沙汰ともとれる政策に反抗した結果、命を絶った薬花師の一家。父の激情は戦だけに留まらず、王命に背いてでも薬花を守り続けた一家の平穏をも、むしり取ったのだ。
言葉も出ないカトレアに、御者は肩をすくめ、気味悪そうに林を見やった。
「つっても、夫婦だけがおっ死んで、子供は一人生き残ってんだ。だいぶ前から退去勧告が出てるんだけどよ、未だにあの家に残って、うろちょろしてるみたいなんだ」
瞬時にあの少女が浮かぶ。カトレアはいても立ってもいられず、御者に背を向けた。
「ありがとう、わたしのことはお構いなく」
口早に告げ、空腹も忘れて林へ駆けていく。引き留める声はなかった。
あの子は、父の政策の最たる犠牲者だ。両親と死別したあの子に、今の自分が何をしてやれるのかは分からない。だが、何もせずにはいられなかった。
どうやら、随分と寝入ってしまったようだ。荷馬車に揺さぶられ痛む身体を起こし、ぼんやりと周囲の風景を眺める。
国境まで続く街道沿いには、二つの村が存在する。城下町に程近いアイリス村と、シスル村だ。戦が起こる前は人通りも多く、宿場町としても栄えていたが、現在は国境が封鎖されているためさびれているという。
陽が西の稜線に沈む頃、荷馬車はアイリス村に着いた。カトレアは農夫に礼を述べ、村の入口で別れた。農夫は宿の心配をしてくれたが、これ以上甘えると正体がばれてしまうと判断し、そさくさと離れることにした。
村は街道沿いに石造りの建物が並び、左右に民家が見受けられる。周辺にはゆるやかな丘があり、薬花栽培の名残か現在も花卉栽培が行われているようだ。気候が温暖になり、花が一斉に咲く頃には、国中で行われる百花祭のために花々が出荷されるだろう。
道沿いの建物は宿場、酒場、雑貨屋などの看板を下げ、店じまいをする店主の姿もあれば、仕事を終えた農夫たちを軒先で呼び込む前掛けをした娘の姿もある。外壁の中に建物がひしめく城下町の風景とは異なり、牧歌的な空気が漂っていた。戦時中も主に交戦したのはここより北東の地域だったので、この村に被害の痕跡は見受けられなかった。
春とはいえ、夕暮れ時の冷え込みは体温を奪っていく。外套をしっかり巻き付け、カトレアはひとまず目立たぬよう、民家の路地に入った。
最低限の所持品しか持ち合わせていないため、宿に泊まるにしても支払う代金がない。そもそも、自ら外泊したことなどないのだ。
もう、柔らかな寝床で安心して眠りにつく日などないのかもしれない。雨雲は北に流れ、今日は雨の降る気配はないが、今夜も湿っぽい草露に紛れて身を丸くするのかと思うと気が滅入りそうだった。
せめて、屋根のついた所で横になりたい。どこか空き家でもないものかと歩いていると、ふいに子供の争う声が耳に入ってきた。カトレアは喧騒のする方へ足を向けた。
路地を曲がると、民家の脇で数人の少年が何かを取り囲んでいた。棒切れでつついたり、足蹴にして、何とか言えよとせっついている。野良犬でもいじめているのだろうかと遠目に観察すると、カトレアは目を見開いた。
輪の中心にうずくまっているのは、彼らより小さな子供だった。小麦色の短髪をした子供は、蕾のように身を固くしている。一方的な攻撃に反抗する様子を見せない。
一際身体の大きな少年が、しびれを切らし中心の子供を勢いよく蹴りつけた。
「お前、目ざわりなんだよ! 死にぞこないの物乞いが!」
脇腹を蹴られた子供は詰まった声を上げ、横倒れになった。伸び放題の髪の隙間から覗いた顔を目にして、カトレアは息を呑んだ。
まだ娘と呼ぶにも幼い、女の子ではないか。カトレアはなりふり構わず飛び出した。
「おまえたち! 無抵抗の女の子をよってたかっていたぶるなんて、どうしてそんな真似をするの!」
「わっ! 何だよ、お前!」
少年たちは輪を乱し、棒切れを構え警戒心を露わにする。カトレアも道端に落ちていた小枝を拾い上げると、野犬を追い払うように振り回した。
「お前も物乞いかよ! 生意気だ、やっちまえ!」
いきり立った少年たちが襲いかかるが、カトレアは彼らをするりとかわし、小枝をしならせ足や尻を次々に叩く。少年たちは容赦ない痛みに悲鳴を上げ、カトレアは横たわる少女の前に立ちはだかると、息を切らし声を張り上げた。
「この恥知らず! これ以上この子を痛めつけるようなら、わたしが許さないわよ!」
カトレアの剣幕に気圧され、少年たちは捨て台詞を吐きながら散っていった。王宮で剣術の手ほどきも受けていたのが役に立った。
稽古をつけてくれたレイの残像が浮かび、腕をだらりと垂らす。振り切るように屈み込み、少女を抱き起こした。
「おまえ、怪我はない? かわいそうに、まだこんなに小さいのに……」
見たところ、十歳に満たない。やせ細った手足に、すり切れた木綿のワンピースを身に着けた少女は、力なく目を閉じている。
土や泥を払ってやると、少女は腕の中で目を覚ました。カトレアもほっと息をつく。
「良かった……。おまえ、家はどこなの?」
少女は意識が朦朧としていが、焦点が定まると唐茶色の目を見開き、カトレアを跳ね除け起き上がった。まるで魔女にでも出くわしたような、驚愕と拒絶が入り混じった視線が突き刺さる。
少女は後ずさりすると、一目散に路地を駆け出した。呼び止めたが、彼女は裸足のまま突き当たりの民家を曲がり、姿を消してしまった。
「何よ……」
ぽつりととぶやいて、思い出したように脱げていた頭巾を直す。
死んだ身でありながら、うかつに姿を見せてしまった。少年たちには顔を見られていなかったが、もしあの少女が誰かに話をしたとしたら、特徴で勘付く者がいるかもしれない。脳裏に、少年の声が蘇る。
死にぞこないの、物乞いが――
カトレアは少女の去った方向を見つめ、人目につかぬよう歩き出した。
夕闇がこぢんまりとした村を覆う。民家には明かりが灯り、野菜や芋を煮込んだ匂いが漂っている。夕食の前に盃を交わしてきたのか、赤ら顔の父親と息子らしき青年が肩を組んで家路を歩く姿を陰で眺めた。
下々の民ですら、ささやかな家に帰り、家族と食卓を囲むというのに、自分は帰る場所も温かな食事も奪われ路頭に迷っている。成程、同類扱いされても不思議ではない。自嘲気味な笑みが口の端に滲んだ。
あてもなく歩いていくと、シスル村へと続く村の外れまでやって来た。街道の両端に、村を見守るように広葉樹がそびえ、右手に小さな林が広がっている。その中に、陰鬱な雰囲気を纏った屋敷がぽつんとたたずんでいた。林に溶け込むような、緑青色の屋根の立派な構えだ。
「あの家、誰か住んでいるのかしら……」
「あんた、こんな場所で何やってんだ?」
幹の陰から様子をうかがっていると、背後から声をかけられカトレアは飛び上がった。街道の端に建つ駅馬車用の施設から出てきたのだろう、御者らしき壮年の男だった。特にこちらを怪しむ様子はなく、退屈そうに煙草をふかしている。カトレアはしどろもどろになりながらも答えた。
「あの、林の中にある家を見ていただけよ。人が住んでいるのかしらって」
「ああ、あそこはシードリング一家の旧宅だ。セルレア妃がご存命の頃は、薬花師として名高い一家でな。夫婦で後進の育成のために、あそこで学校を開いていたのさ」
耳の毛が逆立った。御者は今日の仕事を終えたようで、誰に問われるでもなく説明を続ける。
「それが、愛妻を失ったマーカス王の狂気のとばっちりで、あそこの家は薬花師の資格を剥奪されてな。当然閉校、花卉栽培で何とか生計を立てていたが、その裏で密かに薬花の栽培を続けていたらしい」
「……それで、どうなったの」
御者は煙草の吸殻を投げ捨て、靴でねじり消すと、憮然として返答した。
「王宮から来た調査官にばれちまったんだよ。あそこの家には病弱な子供がいてな。その子のために薬花の栽培をしていたらしい。んで、マーカス王の政策の方がおかしいって楯突いた挙句罪人になって、生き恥を晒すくらいならって、一家心中したのさ」
頭を横殴りにされたような痺れが、カトレアを襲った。
狂気の沙汰ともとれる政策に反抗した結果、命を絶った薬花師の一家。父の激情は戦だけに留まらず、王命に背いてでも薬花を守り続けた一家の平穏をも、むしり取ったのだ。
言葉も出ないカトレアに、御者は肩をすくめ、気味悪そうに林を見やった。
「つっても、夫婦だけがおっ死んで、子供は一人生き残ってんだ。だいぶ前から退去勧告が出てるんだけどよ、未だにあの家に残って、うろちょろしてるみたいなんだ」
瞬時にあの少女が浮かぶ。カトレアはいても立ってもいられず、御者に背を向けた。
「ありがとう、わたしのことはお構いなく」
口早に告げ、空腹も忘れて林へ駆けていく。引き留める声はなかった。
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