七瀬と秋臣

青江 いるか

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冬の炎

打ち明け話

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 神崎家の秋臣が泊まる部屋はいつも決まっている。七瀬の部屋と襖一枚を隔てた隣の部屋だ。そしていつも、寝巻として秋臣用の浴衣が用意してある。
 七瀬たちの部屋と律の泊まる客用の寝室は少し離れた位置にある。律が部屋へ入ったのを見届けて、秋臣の自分にあてがわれている部屋に入った。
 七瀬の部屋とを隔てる襖は開いていて、向こう側に七瀬が布団の上に座っていた。
 「なんだかいろいろあった一日だったな」
 秋臣も布団を敷いてそこに胡坐をかいて座り、七瀬と向き合った。七瀬は微笑む。
 「本当に。でも、こうして思いがけず、秋臣が久しぶりに泊まりに来てくれて、おれは嬉しいよ」
 「おまけつきだけどな」
 と、秋臣は律の部屋のほうを見やった。
 「律くんね……どう思う」
 「どうって」
 「おれが気になっているのは、ここ数日間で複数の幽霊に追いかけられるようになったことだよ」
 ああ、そういうことか、と秋臣は会得して頷いた。
 「何かきっかけがあったんだろうな……幽霊のことには詳しくないが、普通に考えればそうなるよな」
 「でも、律くん自身は覚えがないみたいだったね」
 秋臣も七瀬も幽霊関連にはとんと疎いので、やはり、詳しい人を探すしかないだろう。
 「あいつは突然変異なんだろうな……特に何かの能力を受け継ぐ一族の末裔というわけではないようだしな。最近、突然目覚めたということか」
 能力の出現時期は、その人によってさまざまだ。例えば、七瀬は生まれた時からすでに(と、蛇神が言っている)妖が視えていた。対して秋臣は、千里眼の能力も、もう一つの能力も、物心ついた後に突然発出したものだ。浅沼律の場合も、後者なのだろう。これにはきっかけなどはないことが多い。しかし、律が思春期真っただ中ということは関係あるかもしれない。思春期は心も身体も揺らぎやすく、それゆえ、他世界との親和性の程度が大きく変動するからだ。
 「そうだね……」
 そこで、律と彼の抱えている問題について話し合い推測できることは途切れたので、しばしの沈黙が二人の間に落ちた。
 口を開いたのは七瀬のほうだった。
 「……妖と人除けの結界、張ってあるから」
 秋臣は顔を上げた。
 「結界の中にさらに結界を張れるようになったのか」
 「神社内は蛇神に筒抜けだからね。プライバシーは、秋臣も欲しいでしょう」
 秋臣は、ぽかんとしてそれから赤くなった。
 「今まではあの蛇神に筒抜けだったていうことか」
 「まあ、神様は一個人の行動に興味もないと思うけれど」
 だから、と七瀬は言った。
 「今回張った結界は、律くんに話を聞かれないためだよ」
 秋臣は、はっとした。七瀬はちらりと微笑む。
 「気が変わったのでなければ、秋臣の話、聞かせてよ」
 秋臣は頬を掻いて、言葉を選びつつ言った。
 「気は変わってない。むしろ、結界まで張ってもらって助かった。上手く言えるかわからねえし、聞いていて楽しい話じゃねえが……」
 「それでも、おれは秋臣のことを知りたいよ」
 七瀬のその真っ直ぐな視線、言葉に秋臣は何度も心を乱され、そして救われたことか。
 秋臣はすうっと息を吸い、話し始めた。

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