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社長に芸能界引退の話を流されてしまった隼人は、新しいマネージャーの仙崎と共に事務所を後にした。
隼人は運転免許を持っていないので、仙崎が運転する車の助手席に乗って道案内役を務める。こんなとき免許を持ってたら自分が乗せていけるのだが、隼人は仕事が忙しくて運転免許を取得していなかった。今まで免許証がなくても困ったことが無かったので取得しようと思わなかった。でもこんな時は少しカッコ悪さを覚えてしまう。
「はじめて行く場所なのになんかすみません。俺が運転できればよかったんですけど」
「大丈夫ですよ。ナビと藤村さんの案内で辿り着けます。藤村さんの案内はとても上手でわかりやすいですから」
「ありがとうございます」
仙崎の誉めの言葉を隼人は少し照れながら受け取って、窓の外の流れていく明かりへ視線を移す。
視界に夜の街並みが映るが、隼人の脳内ではまだほんの少しの時間しか共に過ごしていない仙崎のことでいっぱいだった。
仙崎はなんというか全ての動きがスマートなのだ。扉をサッと開けて隼人を先に通してくれたことにはじまり、事務所前で出待ちをしていたファンへの対応など、この短い時間で見た彼の行動はどれも丁寧で少しも慌てることのない落ち着いた動きだった。今運転している車は事務所の社用車なので、今日はじめて運転するだろうに緊張感なく丁寧な運転をしている。
マネージャーは初めてだと社長が言っていたが、その立ち振舞いから有能さがうかがえる。
きっとどんな仕事を任せても結果を残せるような凄い人なのではないか。
そんな人が芸能界を引退しようとしていた俺のマネージャーでいいのだろうか。
これから活躍していく将来有望な若手か、一線で活躍している大御所についたほうがいいのでは。
隼人がもんもんと考えていると赤信号で止まった仙崎が気遣うように隼人を見る。
「緊張感していますか? これからお世話になりますし、遠慮せずに藤村さんの過ごしやすいように私に指示をしてくれていいのですよ」
ほんとによく気配りのできる人だ。俺もこんなふうに振る舞える大人になりたい。
「そうですか? ええっと――」
仙崎の申し出に隼人はこれからのことを考える。確かにこれから24時間一緒にいるわけだし、もうちょっと肩の力を抜いて過ごしたい。
「じゃあ、もっと砕けた口調でいいですか? 仙崎さんももっと軽い感じで、俺のことは下の名前で呼んでくれていいので」
同じ屋根の下で暮らすのだから、友達とまでもいかなくても固いのは無しでフランクにいきたい。
「わかりました。では隼人さん、今日からよろしくお願いします」
仙崎が親しみのある笑顔と共に軽く会釈した。
隼人はそんな優しい仙崎の微笑みも、大人の色気が滲んでカッコイイなんて思ってしまう。
「俺の方が年下だし敬語もいいんだけど。まあ、いいか。よろしく仙崎さん」
もっと馴れ馴れしくてもいいのだが、まだ会って数時間だ。一応お互いに仕事相手になるのだからこのくらいがちょうど良い距離感なのだろう。
「あっ、仙崎さん。この先いつも渋滞するから右折するといいよ」
「はい。では曲がりますね」
隼人は道を案内しつつ、たわいのない会話を挟みながら家路についた。
隼人がマンションにつくころにはすでに夜の十一時を回っていた。
「部屋はここ。お客さん用の布団があるからそれ使って」
隼人は仙崎のために簡単に間取りの説明をする。別に難しいことではないのだが、隼人は誰かを家に招く事自体が初めてで平素を装いつつ内心はドキドキしていた。
「トイレと浴室はそっち。俺いつもシャワーですませてるけど、風呂に浸かるなら好きに使っていいから」
「あまり湯船につからないのですか?」
「しないなー。いつも体洗って終わり。リビングはこっち」
隼人の住んでいる部屋は2LDKでそれぞれの部屋が広く、一人同居する人間が増えても窮屈感は感じない。それにこのマンションは隼人一人で住むには広すぎて空間をまったく使いこなせずにいた。もともとあまり整理整頓が得意でないのもあって、様々なところで荷物の山ができている。
リビングの入り口には通販の段ボールが積まれ、テーブルと椅子は郵便物や書類などの置き場になっている。大きな壁かけのテレビとソファーが置いてあるがソファーは洗濯物置き場になっている。
こんな汚い部屋を仙崎に見せることになって本当に恥ずかしい。普段から人が来ても大丈夫な程度には綺麗にしておけばよかった。隼人は恥ずかしさで顔が赤くなるのを自覚しながら仙崎に謝った。
「汚くてごめん。後で片付ける」
「大丈夫ですよ。多忙な人の一人暮らしはこんなもんですよ」
「そうなんだ。みんなそんなもんなのか」
隼人は中学生の頃には芸能の世界にいて、友達と呼べるような親しい人もいないのでいまいち世間の常識というものに疎い。だから仙崎に一般的だと言われると自分は普通なんだと少し安心する。それにどうやら仙崎は俳優の隼人のことをあまり知らないのかもしれない。
世間で評価される『藤村隼人』は誰にでも優しい紳士的なキャラだ。ファンの中には王子様みたいと言ってくれる人もいるが、実際の隼人はどこにでもいる青年と変わらない。
汚い部屋を見せて仙崎にイメージと違うと幻滅させてしまう不安があったが、彼から返ってくる言葉は優しいものばかりなのでほっとした。
(喜ぶべきか悲しむべきか。まあ『藤村隼人』で生活しなくていいんだから楽だけど)
芸能界でそれなりに活躍していると思っていたがまだまだらしい。
「ここがキッチン。ここも好きに使っていいから。俺あんまり料理しないし」
「これは……カップ麺……が多いですね」
「うん。俺カップラーメンとか好きでいつもストックしてる」
仙崎の指摘通りにキッチンは箱買いされたカップ麺の山によって通路が狭くなっている。
「それにしては少々数が多いような気がしますが……」
「いやー、俺一度で二、三個食べるから一週間しないで一箱終わらせちゃうんだよね」
仙崎さんには食い意地が張っているように見えてしまうかもしれない、と思いながら隼人は一回の食事で複数食べていることを照れながら笑って話す。
「もしかして毎食カップ麺を食べているのですか?」
仙崎は驚愕した顔で隼人を見る。
隼人は彼のその顔で、自分の回答は正解ではなかったことを瞬時に把握した。
ヤバい、カップ麺とかダメな人か?
仙崎は今まで汚い部屋を見ても咎めるようなことを言ってこなかったので隼人はおもいっきり油断していた。
「あー、まあね。野菜も食べるときあるけどね」
隼人は慌てて野菜も食べているよアピールをして取り繕ってみた。実際に食べていないわけではない。ちょっと回数が少ないだけでちゃんと野菜を食べることもあるのだ。
「そうですか。野菜を食べるのは良いことですね」
仙崎は元の人当たりのいい笑顔で隼人の回答を褒めてくれたので、隼人は気づかれないように胸を撫で下ろした。インスタント系は絶対NGというような人ではないらしい。これから一緒に生活していくのにギスギスした関係は勘弁だ。
「どれでも好きに食べていいから。オススメは東日本と西日本で味が違うやつの食べ比べ!」
「それは興味深いですね。ところで、嫌いな食べ物や食べられない物はありますか?」
いきなり話しの流れが変わったので隼人は目が点になる。
「え? いや、とくにないけど。まあ強いて言うならセロリかな。匂いがちょっと好きじゃない」
「なるほど、隼人さんは今日の夕食はもうとりましたか?」
「食べてないけど俺はご飯いいや。もう風呂に入って寝るよ」
仙崎が驚いたように目を大きくすると、隼人を心配するようにじっと見つめる。
「……お腹は空いてないのですか?」
「うーん、空いてはいるけど食欲はないし今日は疲れたからもう寝たい。仙崎さんが腹減ってるならここのカップラーメンとか食べていいよ。」
「ありがとうございます。そういうことでしたら早めに休んだほうがいいですね」
仙崎が隼人の不摂生な生活を案じているのがわかるが、今日は感情が乱高下して疲れたので早めに休みたいのだ。
「あとなんか聞きたいことある?」
「それでは明日以降の予定についてなのですが、明日、明後日は一日お休みだと伺っています。間違いはないでしょうか?」
「合ってるよ。仕事は三日後から。俺、明日明後日はゆっくりだらだら過ごすつもり。休み明けにある仕事は午前中が雑誌のインタビューで――」
今日は一日中頭の中は引退に向けた予定しか考えてなかったのに。
なんだか不思議なことになったものだ。
隼人は仙崎が手帳に書き込む様子を見ながら数日先の予定について認識を合わせる。
「直近の詳細なスケジュールは私が組んでみますので、明日時間があるときに確認をお願いしてもいいですか? それとオファーの連絡があった場合、私の判断だけでは不備があるかもしれないので一旦返事は保留にして社長にも指示を仰ごうと思います。いかがでしょう?」
「わかった。それでいいと思う。じゃあ俺風呂はいるね」
「はい。お疲れさまです。どうぞゆっくりなさってください」
「うん、お疲れ。仙崎さんもゆっくり休んでね」
隼人はリビングを離れて自室に戻ると、荷物を部屋の隅に転がして入浴の準備を始める。
手を動かしながら社長の言っていた仙崎が隼人への対策だということを思い出す。確かに彼の体格なら万が一女性に手を出しそうなときは、隼人のことを力ずくで止められるだろう。
とはいえ映画の撮影は終了している。今後の仕事は映画の番宣を兼ねたバラエティーの出演とモデルばかり。
隼人が発情してしまうのは演技が終わったタイミングなので他の仕事では起こらない。だから仙崎に無理矢理止められるなんてことにもならない。
(引退するつもりだったのに、なんでこんなことになったんだが……)
いろいろと思うことはあるが今日はもう疲れた。
いきなり社長に言い渡された共同生活もまあなんとかなるだろう。
着替えを持った隼人は、ふああっとあくびをしてお風呂に向かうのだった。
隼人は運転免許を持っていないので、仙崎が運転する車の助手席に乗って道案内役を務める。こんなとき免許を持ってたら自分が乗せていけるのだが、隼人は仕事が忙しくて運転免許を取得していなかった。今まで免許証がなくても困ったことが無かったので取得しようと思わなかった。でもこんな時は少しカッコ悪さを覚えてしまう。
「はじめて行く場所なのになんかすみません。俺が運転できればよかったんですけど」
「大丈夫ですよ。ナビと藤村さんの案内で辿り着けます。藤村さんの案内はとても上手でわかりやすいですから」
「ありがとうございます」
仙崎の誉めの言葉を隼人は少し照れながら受け取って、窓の外の流れていく明かりへ視線を移す。
視界に夜の街並みが映るが、隼人の脳内ではまだほんの少しの時間しか共に過ごしていない仙崎のことでいっぱいだった。
仙崎はなんというか全ての動きがスマートなのだ。扉をサッと開けて隼人を先に通してくれたことにはじまり、事務所前で出待ちをしていたファンへの対応など、この短い時間で見た彼の行動はどれも丁寧で少しも慌てることのない落ち着いた動きだった。今運転している車は事務所の社用車なので、今日はじめて運転するだろうに緊張感なく丁寧な運転をしている。
マネージャーは初めてだと社長が言っていたが、その立ち振舞いから有能さがうかがえる。
きっとどんな仕事を任せても結果を残せるような凄い人なのではないか。
そんな人が芸能界を引退しようとしていた俺のマネージャーでいいのだろうか。
これから活躍していく将来有望な若手か、一線で活躍している大御所についたほうがいいのでは。
隼人がもんもんと考えていると赤信号で止まった仙崎が気遣うように隼人を見る。
「緊張感していますか? これからお世話になりますし、遠慮せずに藤村さんの過ごしやすいように私に指示をしてくれていいのですよ」
ほんとによく気配りのできる人だ。俺もこんなふうに振る舞える大人になりたい。
「そうですか? ええっと――」
仙崎の申し出に隼人はこれからのことを考える。確かにこれから24時間一緒にいるわけだし、もうちょっと肩の力を抜いて過ごしたい。
「じゃあ、もっと砕けた口調でいいですか? 仙崎さんももっと軽い感じで、俺のことは下の名前で呼んでくれていいので」
同じ屋根の下で暮らすのだから、友達とまでもいかなくても固いのは無しでフランクにいきたい。
「わかりました。では隼人さん、今日からよろしくお願いします」
仙崎が親しみのある笑顔と共に軽く会釈した。
隼人はそんな優しい仙崎の微笑みも、大人の色気が滲んでカッコイイなんて思ってしまう。
「俺の方が年下だし敬語もいいんだけど。まあ、いいか。よろしく仙崎さん」
もっと馴れ馴れしくてもいいのだが、まだ会って数時間だ。一応お互いに仕事相手になるのだからこのくらいがちょうど良い距離感なのだろう。
「あっ、仙崎さん。この先いつも渋滞するから右折するといいよ」
「はい。では曲がりますね」
隼人は道を案内しつつ、たわいのない会話を挟みながら家路についた。
隼人がマンションにつくころにはすでに夜の十一時を回っていた。
「部屋はここ。お客さん用の布団があるからそれ使って」
隼人は仙崎のために簡単に間取りの説明をする。別に難しいことではないのだが、隼人は誰かを家に招く事自体が初めてで平素を装いつつ内心はドキドキしていた。
「トイレと浴室はそっち。俺いつもシャワーですませてるけど、風呂に浸かるなら好きに使っていいから」
「あまり湯船につからないのですか?」
「しないなー。いつも体洗って終わり。リビングはこっち」
隼人の住んでいる部屋は2LDKでそれぞれの部屋が広く、一人同居する人間が増えても窮屈感は感じない。それにこのマンションは隼人一人で住むには広すぎて空間をまったく使いこなせずにいた。もともとあまり整理整頓が得意でないのもあって、様々なところで荷物の山ができている。
リビングの入り口には通販の段ボールが積まれ、テーブルと椅子は郵便物や書類などの置き場になっている。大きな壁かけのテレビとソファーが置いてあるがソファーは洗濯物置き場になっている。
こんな汚い部屋を仙崎に見せることになって本当に恥ずかしい。普段から人が来ても大丈夫な程度には綺麗にしておけばよかった。隼人は恥ずかしさで顔が赤くなるのを自覚しながら仙崎に謝った。
「汚くてごめん。後で片付ける」
「大丈夫ですよ。多忙な人の一人暮らしはこんなもんですよ」
「そうなんだ。みんなそんなもんなのか」
隼人は中学生の頃には芸能の世界にいて、友達と呼べるような親しい人もいないのでいまいち世間の常識というものに疎い。だから仙崎に一般的だと言われると自分は普通なんだと少し安心する。それにどうやら仙崎は俳優の隼人のことをあまり知らないのかもしれない。
世間で評価される『藤村隼人』は誰にでも優しい紳士的なキャラだ。ファンの中には王子様みたいと言ってくれる人もいるが、実際の隼人はどこにでもいる青年と変わらない。
汚い部屋を見せて仙崎にイメージと違うと幻滅させてしまう不安があったが、彼から返ってくる言葉は優しいものばかりなのでほっとした。
(喜ぶべきか悲しむべきか。まあ『藤村隼人』で生活しなくていいんだから楽だけど)
芸能界でそれなりに活躍していると思っていたがまだまだらしい。
「ここがキッチン。ここも好きに使っていいから。俺あんまり料理しないし」
「これは……カップ麺……が多いですね」
「うん。俺カップラーメンとか好きでいつもストックしてる」
仙崎の指摘通りにキッチンは箱買いされたカップ麺の山によって通路が狭くなっている。
「それにしては少々数が多いような気がしますが……」
「いやー、俺一度で二、三個食べるから一週間しないで一箱終わらせちゃうんだよね」
仙崎さんには食い意地が張っているように見えてしまうかもしれない、と思いながら隼人は一回の食事で複数食べていることを照れながら笑って話す。
「もしかして毎食カップ麺を食べているのですか?」
仙崎は驚愕した顔で隼人を見る。
隼人は彼のその顔で、自分の回答は正解ではなかったことを瞬時に把握した。
ヤバい、カップ麺とかダメな人か?
仙崎は今まで汚い部屋を見ても咎めるようなことを言ってこなかったので隼人はおもいっきり油断していた。
「あー、まあね。野菜も食べるときあるけどね」
隼人は慌てて野菜も食べているよアピールをして取り繕ってみた。実際に食べていないわけではない。ちょっと回数が少ないだけでちゃんと野菜を食べることもあるのだ。
「そうですか。野菜を食べるのは良いことですね」
仙崎は元の人当たりのいい笑顔で隼人の回答を褒めてくれたので、隼人は気づかれないように胸を撫で下ろした。インスタント系は絶対NGというような人ではないらしい。これから一緒に生活していくのにギスギスした関係は勘弁だ。
「どれでも好きに食べていいから。オススメは東日本と西日本で味が違うやつの食べ比べ!」
「それは興味深いですね。ところで、嫌いな食べ物や食べられない物はありますか?」
いきなり話しの流れが変わったので隼人は目が点になる。
「え? いや、とくにないけど。まあ強いて言うならセロリかな。匂いがちょっと好きじゃない」
「なるほど、隼人さんは今日の夕食はもうとりましたか?」
「食べてないけど俺はご飯いいや。もう風呂に入って寝るよ」
仙崎が驚いたように目を大きくすると、隼人を心配するようにじっと見つめる。
「……お腹は空いてないのですか?」
「うーん、空いてはいるけど食欲はないし今日は疲れたからもう寝たい。仙崎さんが腹減ってるならここのカップラーメンとか食べていいよ。」
「ありがとうございます。そういうことでしたら早めに休んだほうがいいですね」
仙崎が隼人の不摂生な生活を案じているのがわかるが、今日は感情が乱高下して疲れたので早めに休みたいのだ。
「あとなんか聞きたいことある?」
「それでは明日以降の予定についてなのですが、明日、明後日は一日お休みだと伺っています。間違いはないでしょうか?」
「合ってるよ。仕事は三日後から。俺、明日明後日はゆっくりだらだら過ごすつもり。休み明けにある仕事は午前中が雑誌のインタビューで――」
今日は一日中頭の中は引退に向けた予定しか考えてなかったのに。
なんだか不思議なことになったものだ。
隼人は仙崎が手帳に書き込む様子を見ながら数日先の予定について認識を合わせる。
「直近の詳細なスケジュールは私が組んでみますので、明日時間があるときに確認をお願いしてもいいですか? それとオファーの連絡があった場合、私の判断だけでは不備があるかもしれないので一旦返事は保留にして社長にも指示を仰ごうと思います。いかがでしょう?」
「わかった。それでいいと思う。じゃあ俺風呂はいるね」
「はい。お疲れさまです。どうぞゆっくりなさってください」
「うん、お疲れ。仙崎さんもゆっくり休んでね」
隼人はリビングを離れて自室に戻ると、荷物を部屋の隅に転がして入浴の準備を始める。
手を動かしながら社長の言っていた仙崎が隼人への対策だということを思い出す。確かに彼の体格なら万が一女性に手を出しそうなときは、隼人のことを力ずくで止められるだろう。
とはいえ映画の撮影は終了している。今後の仕事は映画の番宣を兼ねたバラエティーの出演とモデルばかり。
隼人が発情してしまうのは演技が終わったタイミングなので他の仕事では起こらない。だから仙崎に無理矢理止められるなんてことにもならない。
(引退するつもりだったのに、なんでこんなことになったんだが……)
いろいろと思うことはあるが今日はもう疲れた。
いきなり社長に言い渡された共同生活もまあなんとかなるだろう。
着替えを持った隼人は、ふああっとあくびをしてお風呂に向かうのだった。
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