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31話
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「――――今回の撮影で、難しかったところや大変だと思われたことは何がありましたか?」
「あえて言えばやはり天候に左右されたことですね。波打ち際で撮るシーンがあったのですが――」
隼人は事務所の一室で、写真を撮られながらインタビューを受ける。
取材内容は以前撮影した映画について。
複数の媒体からの取材の時間をずらしてまとめて答えていた。
内容が被らないように記者の質問に答え、滞りなく取材を終わらせていく。
「これは今回の取材とは関係ないのですが、来シーズンのスペシャルドラマに内定していると小耳に挟んだのですが本当ですか?」
「えっ!? えーと、僕からはなんとも言えないというか――」
さすが記者だ。話が速すぎる。
おそらくは別の事務所や企画の関係者から漏れたのだろうが、まだ何処までどんな情報を出していいか分からない話だ。
正式に出演するとなれば守秘義務が出てくる。
何を聞かれたとしても隼人からは何も答えられない。
隼人がしどろもどろに返すと、相手の記者も心得たように深く追求するのを止めてくれた。
「もちろん私達もわかっていますから、これ以上の質問はしませんよ。ただその時にはまたインタビューをお願いすると思いますので、よろしくお願いします」
「ええ、よろしくお願いします」
その時、というのは撮影が終わって告知をする段階での取材のこと。
目の前の記者がそのドラマの取材担当としてまた来るという挨拶だったのだろう。
隼人も顔見知りのほうが話しやすい。
(これだけ熱心にくるということは、あのドラマはそれなりにデカい案件なんだな)
役者もスタッフも癖の強い人間が集まりそうな予感がする。
「本日はありがとうございました」
「いえ、こちらこそありがとうございます」
隼人は爽やかな笑顔を作って、最後まで印象の良さを貫き通した。
にこやかに記者とカメラマンを見送ると、素に戻ってスマートフォンを確認する。
仙崎から遅くなるとメッセージが入っていた。
「俺はもう帰れるけど、修二さんの方はまだ終わらなさそうか」
仙崎の方でこれだけ時間がかかっているということは、問題がかなり拗れているのだろう。
(無事に解決出来てればいいけど……)
「どうしよ。迎えに来てもらわないで一人で帰ってもいいんだけど。う~ん」
仙崎も問題の対応で疲れているだろう。隼人はこのままタクシー使って帰ってもいい。そうすれば彼も事務所に寄らずに家に直接帰れる。
そう考えて隼人は仙崎にメッセージを送るためスマートフォンをいじる。
『こっちは終わったから俺はタクシー使って先に帰るよ。家で待ってるね♡』
ハートマークは流石にあざと過ぎるだろうか。
隼人は恥じらいながら少し迷って、でも文面を変えずに送信した。
これを見て彼はどう思うだろう。
そんなことを考えていると、返事が返ってきた。
『申し訳ありません。帰ったら隼人のお願いを何でも聞きますね』
隼人はメッセージを見て笑顔になると、鼻歌交じりに荷物をまとめた。
「よーし、さっさと帰ろ。何をお願いしようかな~」
何か食べたい料理をリクエストか。
それともエッチなことをお願いにしようか。
隼人が仙崎に願うことは大体そのあたりだ。
(それだといつも通りだから、こうちょっと変わったのがいいな)
隼人の方が先に着くから、お願い事とは別に出迎えのサプライズしてもいいかも知れない。
(メイド衣装をこっそり買って『お帰りなさいませ。ご主人様!』とかしちゃう!? でもそれを買ってるところ記者に撮られるとマズい……。出来るとしたら彼シャツでお出迎えかな)
結局エロい方向に思考が進んでいることに隼人は気が付かない。
あれこれ妄想しながらすれ違う人に挨拶をして、機嫌良く事務所を出る。
そこへ慌てた様子の社員が隼人を引き止めた。
よく知る管理部門の部長だ。
「藤村君! ちょっと!」
「はい、何ですか?」
「あ~、実はお母様がいらっしゃっている」
「っ!!」
隼人はその言葉に身体が硬直した。
「空いている部屋に通したけど、どうする? 誰が助っ人つけようか?」
喉が締め付けられて、脳が理解することを拒む。
それでも平静を装って声を出す。
「……いえ、一人でなんとかします」
「そうか、わかった」
社員の後ろを歩きながら、仙崎にあれこれ聞かなくてよかったと心から思った。
(俺も修二さんに知られたくないことがあった)
母親との話し合いを早く終わらせて、彼が帰るよりも先に家に着きたい。
その一心で、案内された部屋の前に立つ。
震える手に力を込めてドアノブを開くと、予想通りの声が飛んできた。
「遅い!! いつまで待たせんのよ!」
「……ごめん」
隼人は胃が締め付けられる感じながら、その怒声を外に漏らさないように素早く部屋に入って扉を閉めた。
「私に言わないで勝手に引っ越して電話番号を変えるなんて、どういうつもりよ! わざわざここまで来ることになったでしょ!! あとお金!」
「……住所と電話番号が漏れたんだよ。生活費は振り込んでる。これ以上は渡せないよ。また雑誌に撮られるかも知れないし」
濃い厚化粧に、ブランド物の洋服とバック。そして大粒の宝石がついたアクセサリーを身に着けて、顔を般若のようにしているこの人物。
これが隼人の母親。隼人の稼いだ金を湯水のように使う人間。
隼人は以前、母親に大金を渡しているところをパパラッチに撮られていた。
人気俳優の母親が、息子の稼いだ金で豪遊しているなんていいゴシップのネタだ。事務所の力で揉み消されたので表には出なかったが、引っ越しをする羽目になって電話番号も変えていた。なので実は隼人が今住んでいるところは、入居して一年も経っていない。
遊ぶ金を渡さなくなったが、仕送りの生活費は振り込んでいた。それで折れてくれるかと思ったら、まさか事務所にまで金を無心しに来るとは。
「あれだけで足りるわけないでしょ! 私はもっと欲しいの! 稼いでるんだから親孝行ぐらいしなさいよ! ほんと役立たずなんだから――」
「……」
母は昔から隼人を見下して嘲笑していた。
言い返そうものなら何倍にもなって返ってくる。
この人はそういう人だ。
他人から見れば、隼人はいい歳して母親の言う通りにお金を渡す愚か者に見えるだろう。
次々に繰り出されるヒステリックな声に、隼人の意識は身体から切り離され俯瞰して状況を見る。
隼人とて、縁を切れるのなら切りたいのだ。でもその度にこの調子で隼人の人生を翻弄してきた。
イメージが大切なこの仕事で、こんな母親がいると知られたら面白おかしく記事にされるのは明白だ。
(こんなのが母親だって修二さんに知られたら嫌われるかな……)
目の前のうるさいものから現実逃避していると、テーブルを思いっ切り叩かれる。
「ちょっと! 聞いてんの!?」
「……聞いてる。あんな大金、何に使ってるの?」
「私のお気に入りの子がNo.1から落ちたのよ。そんなの私のブライドが許さない。あの子は一番じゃないといけないの」
分かっていたが、やっぱりホストか。
この人は昔からそうだった。
なんなら隼人の父親もホストらしい。
会ったこともないし、顔も知らないが。
「とにかくお金ちょうだい」
「……もう無理だって。今までだって――」
「はぁ? あんた何様のつもり! 産んでやった恩を忘れたわけ!? あんたなんて堕ろしたってよかったのにわざわざ産んでやったのよ! 私の時間とお金を消費して育ててやったんだから、あんたが私に尽くすのは義務なの! ちょっと売れてるからって――」
隼人の意見は最後まで言うことは出来ないし、許されない。
これはいつものこと。
言葉の暴力が怒涛のように押し寄せて、隼人を切り裂いて突き刺してくる。
これもいつものこと。
「……」
いつものこと。
慣れている。
でもどうしても涙が滲んでしまう。
「あんたが出来たせいで私は✕✕✕✕✕✕、✕✕✕✕✕✕✕✕!! ✕✕✕✕✕✕―――」
どうしよう。
お金さえ渡せばこの人は静かになる。
でも――――。
「✕✕✕✕! ✕✕✕✕、✕✕✕✕✕✕!! ✕✕✕✕✕✕――――」
あといくら渡せば終わる?
あと何年?
この先一生これが続くのだろうか?
「✕✕✕✕✕、✕✕✕✕✕✕✕――――」
警察に頼る?
無理だ。
まだ未成年の時だってまともに動いてくれなかった。お母さんとよく話し合って――、なんて言ってそれで終わり。
「✕✕✕✕✕! ✕✕✕✕✕✕――――」
弁護士? 裁判所?
どちらにしろゴシップ記事の一面を飾ることになるだろう。
そうなれば仕事はなくなる。
胃が締め付けられて吐きそうになる。
ただ俯くことしか出来ない隼人の視界に、手元に置いていたのスマートフォンが映る。
そして仙崎から届いたメッセージを思い出す。
(……ああ、帰らないと。修二さんが遅いから、今日は俺が夕飯作らないといけないんだ)
ただそれだけのことが、隼人の凍えた心に火をつける。
隼人は母親の怒鳴り声を遮るように椅子から立ち上がった。
「何よ急に! まだ終わってない――――」
「うるさい、もう帰る」
「はあ!? その口のきき方、どういうつもり! ちょっと――――」
隼人は母親の発言を無視し、スマートフォンとカバンを手に取って振り返ることなく扉に向かう。
この人に使う時間はもうない。
隼人はドアノブに手をかけると、今まで言いたくても言えなかった言葉を放つ。
「母さんももう帰って。帰らないなら警備員呼ぶから。お金は渡さないし、二度とここに来ないで」
「待ちなさ――」
隼人は勢い良く部屋を出ると、すべてを断ち切るように強く扉を閉めた。
「あえて言えばやはり天候に左右されたことですね。波打ち際で撮るシーンがあったのですが――」
隼人は事務所の一室で、写真を撮られながらインタビューを受ける。
取材内容は以前撮影した映画について。
複数の媒体からの取材の時間をずらしてまとめて答えていた。
内容が被らないように記者の質問に答え、滞りなく取材を終わらせていく。
「これは今回の取材とは関係ないのですが、来シーズンのスペシャルドラマに内定していると小耳に挟んだのですが本当ですか?」
「えっ!? えーと、僕からはなんとも言えないというか――」
さすが記者だ。話が速すぎる。
おそらくは別の事務所や企画の関係者から漏れたのだろうが、まだ何処までどんな情報を出していいか分からない話だ。
正式に出演するとなれば守秘義務が出てくる。
何を聞かれたとしても隼人からは何も答えられない。
隼人がしどろもどろに返すと、相手の記者も心得たように深く追求するのを止めてくれた。
「もちろん私達もわかっていますから、これ以上の質問はしませんよ。ただその時にはまたインタビューをお願いすると思いますので、よろしくお願いします」
「ええ、よろしくお願いします」
その時、というのは撮影が終わって告知をする段階での取材のこと。
目の前の記者がそのドラマの取材担当としてまた来るという挨拶だったのだろう。
隼人も顔見知りのほうが話しやすい。
(これだけ熱心にくるということは、あのドラマはそれなりにデカい案件なんだな)
役者もスタッフも癖の強い人間が集まりそうな予感がする。
「本日はありがとうございました」
「いえ、こちらこそありがとうございます」
隼人は爽やかな笑顔を作って、最後まで印象の良さを貫き通した。
にこやかに記者とカメラマンを見送ると、素に戻ってスマートフォンを確認する。
仙崎から遅くなるとメッセージが入っていた。
「俺はもう帰れるけど、修二さんの方はまだ終わらなさそうか」
仙崎の方でこれだけ時間がかかっているということは、問題がかなり拗れているのだろう。
(無事に解決出来てればいいけど……)
「どうしよ。迎えに来てもらわないで一人で帰ってもいいんだけど。う~ん」
仙崎も問題の対応で疲れているだろう。隼人はこのままタクシー使って帰ってもいい。そうすれば彼も事務所に寄らずに家に直接帰れる。
そう考えて隼人は仙崎にメッセージを送るためスマートフォンをいじる。
『こっちは終わったから俺はタクシー使って先に帰るよ。家で待ってるね♡』
ハートマークは流石にあざと過ぎるだろうか。
隼人は恥じらいながら少し迷って、でも文面を変えずに送信した。
これを見て彼はどう思うだろう。
そんなことを考えていると、返事が返ってきた。
『申し訳ありません。帰ったら隼人のお願いを何でも聞きますね』
隼人はメッセージを見て笑顔になると、鼻歌交じりに荷物をまとめた。
「よーし、さっさと帰ろ。何をお願いしようかな~」
何か食べたい料理をリクエストか。
それともエッチなことをお願いにしようか。
隼人が仙崎に願うことは大体そのあたりだ。
(それだといつも通りだから、こうちょっと変わったのがいいな)
隼人の方が先に着くから、お願い事とは別に出迎えのサプライズしてもいいかも知れない。
(メイド衣装をこっそり買って『お帰りなさいませ。ご主人様!』とかしちゃう!? でもそれを買ってるところ記者に撮られるとマズい……。出来るとしたら彼シャツでお出迎えかな)
結局エロい方向に思考が進んでいることに隼人は気が付かない。
あれこれ妄想しながらすれ違う人に挨拶をして、機嫌良く事務所を出る。
そこへ慌てた様子の社員が隼人を引き止めた。
よく知る管理部門の部長だ。
「藤村君! ちょっと!」
「はい、何ですか?」
「あ~、実はお母様がいらっしゃっている」
「っ!!」
隼人はその言葉に身体が硬直した。
「空いている部屋に通したけど、どうする? 誰が助っ人つけようか?」
喉が締め付けられて、脳が理解することを拒む。
それでも平静を装って声を出す。
「……いえ、一人でなんとかします」
「そうか、わかった」
社員の後ろを歩きながら、仙崎にあれこれ聞かなくてよかったと心から思った。
(俺も修二さんに知られたくないことがあった)
母親との話し合いを早く終わらせて、彼が帰るよりも先に家に着きたい。
その一心で、案内された部屋の前に立つ。
震える手に力を込めてドアノブを開くと、予想通りの声が飛んできた。
「遅い!! いつまで待たせんのよ!」
「……ごめん」
隼人は胃が締め付けられる感じながら、その怒声を外に漏らさないように素早く部屋に入って扉を閉めた。
「私に言わないで勝手に引っ越して電話番号を変えるなんて、どういうつもりよ! わざわざここまで来ることになったでしょ!! あとお金!」
「……住所と電話番号が漏れたんだよ。生活費は振り込んでる。これ以上は渡せないよ。また雑誌に撮られるかも知れないし」
濃い厚化粧に、ブランド物の洋服とバック。そして大粒の宝石がついたアクセサリーを身に着けて、顔を般若のようにしているこの人物。
これが隼人の母親。隼人の稼いだ金を湯水のように使う人間。
隼人は以前、母親に大金を渡しているところをパパラッチに撮られていた。
人気俳優の母親が、息子の稼いだ金で豪遊しているなんていいゴシップのネタだ。事務所の力で揉み消されたので表には出なかったが、引っ越しをする羽目になって電話番号も変えていた。なので実は隼人が今住んでいるところは、入居して一年も経っていない。
遊ぶ金を渡さなくなったが、仕送りの生活費は振り込んでいた。それで折れてくれるかと思ったら、まさか事務所にまで金を無心しに来るとは。
「あれだけで足りるわけないでしょ! 私はもっと欲しいの! 稼いでるんだから親孝行ぐらいしなさいよ! ほんと役立たずなんだから――」
「……」
母は昔から隼人を見下して嘲笑していた。
言い返そうものなら何倍にもなって返ってくる。
この人はそういう人だ。
他人から見れば、隼人はいい歳して母親の言う通りにお金を渡す愚か者に見えるだろう。
次々に繰り出されるヒステリックな声に、隼人の意識は身体から切り離され俯瞰して状況を見る。
隼人とて、縁を切れるのなら切りたいのだ。でもその度にこの調子で隼人の人生を翻弄してきた。
イメージが大切なこの仕事で、こんな母親がいると知られたら面白おかしく記事にされるのは明白だ。
(こんなのが母親だって修二さんに知られたら嫌われるかな……)
目の前のうるさいものから現実逃避していると、テーブルを思いっ切り叩かれる。
「ちょっと! 聞いてんの!?」
「……聞いてる。あんな大金、何に使ってるの?」
「私のお気に入りの子がNo.1から落ちたのよ。そんなの私のブライドが許さない。あの子は一番じゃないといけないの」
分かっていたが、やっぱりホストか。
この人は昔からそうだった。
なんなら隼人の父親もホストらしい。
会ったこともないし、顔も知らないが。
「とにかくお金ちょうだい」
「……もう無理だって。今までだって――」
「はぁ? あんた何様のつもり! 産んでやった恩を忘れたわけ!? あんたなんて堕ろしたってよかったのにわざわざ産んでやったのよ! 私の時間とお金を消費して育ててやったんだから、あんたが私に尽くすのは義務なの! ちょっと売れてるからって――」
隼人の意見は最後まで言うことは出来ないし、許されない。
これはいつものこと。
言葉の暴力が怒涛のように押し寄せて、隼人を切り裂いて突き刺してくる。
これもいつものこと。
「……」
いつものこと。
慣れている。
でもどうしても涙が滲んでしまう。
「あんたが出来たせいで私は✕✕✕✕✕✕、✕✕✕✕✕✕✕✕!! ✕✕✕✕✕✕―――」
どうしよう。
お金さえ渡せばこの人は静かになる。
でも――――。
「✕✕✕✕! ✕✕✕✕、✕✕✕✕✕✕!! ✕✕✕✕✕✕――――」
あといくら渡せば終わる?
あと何年?
この先一生これが続くのだろうか?
「✕✕✕✕✕、✕✕✕✕✕✕✕――――」
警察に頼る?
無理だ。
まだ未成年の時だってまともに動いてくれなかった。お母さんとよく話し合って――、なんて言ってそれで終わり。
「✕✕✕✕✕! ✕✕✕✕✕✕――――」
弁護士? 裁判所?
どちらにしろゴシップ記事の一面を飾ることになるだろう。
そうなれば仕事はなくなる。
胃が締め付けられて吐きそうになる。
ただ俯くことしか出来ない隼人の視界に、手元に置いていたのスマートフォンが映る。
そして仙崎から届いたメッセージを思い出す。
(……ああ、帰らないと。修二さんが遅いから、今日は俺が夕飯作らないといけないんだ)
ただそれだけのことが、隼人の凍えた心に火をつける。
隼人は母親の怒鳴り声を遮るように椅子から立ち上がった。
「何よ急に! まだ終わってない――――」
「うるさい、もう帰る」
「はあ!? その口のきき方、どういうつもり! ちょっと――――」
隼人は母親の発言を無視し、スマートフォンとカバンを手に取って振り返ることなく扉に向かう。
この人に使う時間はもうない。
隼人はドアノブに手をかけると、今まで言いたくても言えなかった言葉を放つ。
「母さんももう帰って。帰らないなら警備員呼ぶから。お金は渡さないし、二度とここに来ないで」
「待ちなさ――」
隼人は勢い良く部屋を出ると、すべてを断ち切るように強く扉を閉めた。
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