今日も楽しくいきまshow!?

犬野きらり

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14 領地に向けてこんな風に出発しました

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イズリー領に到着したのは、学校帰りから馬車に乗って三日後…

私としてはワクワクしたのは内緒の話。
イズリー家の使用人じゃなくて、読者の皆さんに、私の学校からイズリー領までの道行を綴ります。


だって最初から始まるのですもの…

学校の終業日。

「ミランダちゃん、終わったら私を待たずに馬車に乗って走らせてね」

学校に向かう馬車の中で、お義兄様に言われた。

「え!?
お義兄様はどうされるのですか?」

「ああ、私は少しあのお子様王子に付き合ってあげて、色々と必要な情報を抜いてくるね、その日の予定の宿場町に行くよ。夜遅くなるが、心配しなくても大丈夫」

いつも通り、余裕ある態度に言葉。王子を舐めているような…発言、は、いつも通り聞かなかった事にしましょう。

そんな会話後、私は言われた通りに、リリエットにお互い良い休暇を~なんて挨拶してから、すぐに馬車留まりに向かった。
残念ながら、一人の人気者さんがいた。
帰り際の人達の視線の的。
それを意識しているかのようなポージング。スリムな身体と姿勢の良さ、そして遠目からでもわかる可愛い青年を見ながら、

『何故サイファ様が待ち伏せを?』

と疑問と頭の中をフル稼働しながら、少し歩く速さを落とし、作った微笑みを浮かべた。
私も令嬢ですから、仮面は被れます。
まぁどうせスーパー眼鏡で、表情はわからないけど、一応頬を上げているのです。

「こんにちは、サイファ様。お帰りですか、早いですね」

と言えば、相手も軽やかに笑い、

「こんにちは、ミランダ嬢。いや~、ディライドが、こちらに直行すると思って、少し待たせてもらいました。昨日は、大変迷惑をかけました。ダイアナ嬢とマリアーノ嬢には、注意をしましたが、ご機嫌はいかがですか?」

何でもないように言う。
気づいていたなら、あの場で止めさせて欲しいわ。
でも、
令嬢同士の争いは、力量を見せる独壇場とか昨日お義母様に言われてしまったし…つまり逃げられた時点で、私は馬鹿にされているというわけです。

「昨日の事はお気になさらず。義兄でしたら、アンドル王子様の所に寄るから、先に帰って良いと言われました。朝に!」

と伝えると一息ついてから、

「そうですか、あなたはこのまま帰られますか?」

「ええ、その予定ですが、何故私の予定までお聞きになるのですか?」

と、わからないというポーズを取ってみる。私も出来るのですよ。
会話も伸ばしたくない、だから私は馬鹿になれる!続けて、
『必殺あざといポーズ』を取りに行った。
困っちゃうというリアクションポーズなのだけど…恥ずかしい。
しかし、強行突破をするしかないので…

昔、先生から聞かされた元来男性は、あざといのが好きで、騙されているとわかっても許す性分だと教えられた。
今こそ実践!

 …

 シーン

と静かになった、その場の空気。
帰り道振り返る学生、二度見なんて、あらおかしい!?笑い声…

先生~
可愛い女性がやって初めて成立するのではないでしょうか…あざといポーズって…
先生が見せてくれたままをやりましたよ、私は!
まさか国が違うとポーズも違うとか!?

あー、穴があったら入りたいです。

こちらはもう頬なんて上げてられません。ただ、ただ無…

「サイファ様、失礼します。帰ります」

淡々と告げ、馬車に乗り走る。
勿論、彼からの言葉なんてない。
周りの声も拾わない。無視です!聞こえた笑い声、何それ、です。
私も振り向いていないので、サイファ様が、どんな顔をしていたかは知らない。

否、知りたくない!

ハァーーー

「どうしましたか?お嬢様」

「ラナ達、乗っていたのね、見た?さっきの。ハァー、あなた達の存在がわからなかったわ、プロね、ハァーーー」

なんて事があり、翌朝、宿屋のダイニングで長い足を組み、飲み物を片手に本を読んでいた義兄を見つけた。

相変わらず、注目の的です。

「やぁ、おはようミランダちゃん。母上は王妃殿下に捕まり、お茶会の話振りで逆に興味を持たれたみたいで、必死に作戦を考慮中。レオンも屋敷に足止め。かなり怒っているみたいだよ。とりあえず逃げ出せたのは、私達のみだけど、まぁ父上がどうにかするだろう。切ってないカードは沢山あるだろうし…」

レオンに同情を見せつつも、楽しげに話していくお義兄様。

「始めから私達だけだったのでは?お義兄様の頭の中では。ラナ達侍女三人は、私のお世話ばかりの人達ですし…それよりもお義兄様の馬車はありますの?」

「あぁ、商人の馬車を借り受けてある。各店にて馬を交換出来るし、速く領地に着くかな、どうかな?」

説明を受けた通り、町娘のワンピースに、ドレスチェンジしたり、平民服に着替え、時には荷馬車になったり、次の町には豪華な馬車だったりと各お店で用意してくれて楽しかった。

わかったことは、お義兄様に知り合いが物凄くいるということ。本人曰く、友達はいないらしいけど。

「お義兄様、楽しかったですね。なんだか変装みたいで!」

「そうか、良かったよ。旅行が楽しくなる催しを演出出来たなら、大成功だ。ミランダちゃん、イズリー領では髪色を変えるマジックアイテムを使おう。何色にする?気分で変えるのもいいね」

「お義兄様?イズリー領では、水色髪の方達も見かけましたけど…」


「アンドル王子が夜会に、マリングレー王国の王女を招待した。つまり回復していたみたいだよ。港は、うちの領を利用する。夜会に向けて、前もって入るだろうし、イズリー領を調査する可能性もある。用心をしよう、嫌な気持ちになりたくないからね」

義兄の優しさが沁みる。ご迷惑をおかけします。
だけど、聞いた途端に、この重くて絡みつくものは何だろう。

「…はい」


そして、イズリー領に入りました!
白をベースにした家が立ち並んでいます。可愛いです。
屋根が青で、また海を連想させるし、木々は背丈が低い木が多い。豊かです。

海鳥の鳴き声が遠くから聞こえる。

海の匂いを感じます。これはずっと嗅いでいた香り。
海岸までは町一つ以上離れていても、独特の匂いが風にのる。

とっても楽しみなのに、元気なのに、どこか感情がザワザワして落ちつかなくなる。
それは、マリングレー王国の王女が、この領地に入ると聞いたからなのかな?
あぁ、私、怖いんだ。これは重くて絡みつく感情、今まで体験、経験した怖さが現す危機感。
漠然としたその塊。
怖がっているような不安を見せたら、みんなに心配されてしまう。
みんな笑っているのに。
楽しんでイズリー領に来たのを、邪魔してしまう。
ここには、お義兄様もイズリー家の侍女も、ラナもいる。
大丈夫。

私という人間は、ここにいて良いのよね?
不安になるのは、私からみんなが離れたらと考えるからでしょうか?ずっと一人だったのに?また一人ぼっちになるかもという恐怖?

海風は、重く苦く私の肌に絡みついた。
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