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35 ディライド・イズリー 3

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夜会終了後 ディライドside

グレゴリー、サイファ、と私で王宮の客間にいた。

「最悪だ。護衛騎士失格だ。アンドルに心労をかけて熱を出させた」

そんな大きな身体で、落ち込まないでくれよ。可愛くないし、そもそも男を慰めたくない。

「みんな出て行けと言われたのだろう、初めからこちらの話なんて聞いてない王女じゃないか、グレゴリーだけが悪いわけではない。アンドルだってわかっているよ」

「ディライドは、ティア王女様にかなり懐かれてたな。アンドル様より常に君を探していたね」

サイファに言われた通り、執着とまではいかないが、ずっとニコニコ笑顔を作っては、側に近づかれた。あれは、私を探っていた気がする。

「まぁ、付かず離れずを意識していたけど、気づいた事は、アンドルには興味は無い、随分と余裕、いや歳上に感じるな。比べたのが、マユリカ王女だから比較にはならないか。ティア王女は、マユリカ王女を見下していたし、言動、立ち振る舞いを見ていても、初々しさや照れがない。感情で崩れても持ち直せる冷静さと客観視が出来る。こちらを丸め込もうとする傾向がみえる」


外交に交渉にと、人を見る目は育ててきたが、それにしても、双子の妹として自覚があるのに『忌み子』の憎悪は異常だ。

「サイファ、前にダイアナ嬢が、王女は偽物とか言っていたよな。そのあたりを煽て聞いてくれ。もし可能なら年相応に見えない言動をすると、加えて」

「何?そんなに年齢が引っかかるの?大人っぽいというだけじゃないの?私は、厚塗りの肌が気になるな」

サイファの言葉にも頷くが、迷信へのこだわり、忌み子と蔑み、いなくなれば追いかける執着は何だろうか?

「…今から話すことは、予測の話だ。王女の方は、ダイアナ嬢は取り憑かれていると言ったが、王女も同じく取り憑かれているのではないかと。夢見の乙女とは、何かに取り憑かれた者じゃないのか?」

と言えば、グレゴリーが、

「マユリカ王女も悪霊に取り憑かれているんじゃないか?あんな自己勝手な人間いるか?」

と言いだした。

「グレゴリー、あれはただの我儘な傲慢な王女だ。甘やかされて教養も作法もない馬鹿なんだろう。本能で言動しているあたり、まだ子供だ。年相応より低レベル。まだ扱いやすい」

と言えば、また深い溜息を吐いた。
気にするな、と言ったところで落ち込ませておこう。

「ディライド、確かにダイアナ嬢は何かに取り憑かれていると思う。相手から言われた事でダイアナ嬢なら簡単に全部話すだろうな」

サイファが悪い顔をした。

「私は、すぐにウランダル王国に行かないといけないし、働きすぎだと思わないか?全然屋敷に帰れない…」

ミランダちゃんに会えない。今日の夜会では会えないのは、わかっていても、探してしまったよ、会いたいな。

「ああ、そう言えば、庭園でマユリカ王女が、ミランダ嬢に絡んでいたな…」

グレゴリー、今、何と言った?

「どうしてミランダ嬢が庭園?そう言えば、夜会会場で私も見かけなかった」

サイファ、お前はミランダちゃんを見る必要はない。探すな。

「あの時、マユリカ王女が、ミランダ嬢に喚いていて、怖がっていたのかもしれない。騎士のアーサー先輩が居たから、振り返りはしなかったが、立ちくらみと言って、少しベンチで休んでから会場に戻ると言われた。あの王女の奇声で体調が悪くなり、帰ったのかもしれないな」

いや、帰るのは決定事項だったからいい。
ウランダル!マユリカ王女!

「喚いたって何?」

サイファうるさい。

「…怖いぞ、顔が」

「グレゴリー、お前がマユリカ王女を野放しにしたから!お前のせいだ!続きを言え!」

「…確か私に指図するなとか、このウランダル王国の姫の私がとか、本当にイライラするわ、あの陰鬱とかだったかな?何かアーサー先輩と二人で怒りを納めようとしていたみたいだけど…」

絶対許さない!仕事を増やしただけじゃなく、陰鬱?女神が降臨した美貌を持っているミランダちゃんへの罵倒!

マリングレーだけじゃなく、ウランダルもイズリー家の敵だ。

「それは気の毒に、大層怖かっただろうな…そのまま帰ってしまったのか、一言気を紛わせる言葉をかけられたら良かったが…ディライド、ミランダ嬢の好きな花は何だ。お見舞いの品を贈るよ」

は!?
何言っている?サイファ。

「サイファ、君の役割は、ダイアナ嬢担当だろう。我が家の義妹に馴れ馴れしく近づこうとするな、ダイアナ嬢が気狂いと言ったのは、サイファ自身だよな。そんな令嬢が、ミランダに嫉妬したらどうする?」

怒りの気が言葉に乗ってしまう。
二人は驚いた顔をしたが、関係ないとばかりに、私は部屋を出た。

「早く帰りたい」



「ディライド様、おはようございます。お出かけですか?」

前から現れた王女に舌打ちしたくなる。満面の笑みを作って、

「ティア王女様、おはようございます。王女の御出立を見送りしたかったのですが、すぐに外に出る事になりました。この場で申し訳ありませんが、お気をつけてお帰りください」

「まぁ、お忙しいのですね、もしかしてウランダル王国ですか?確かに夜会でのマユリカ王女様は、酷い態度でしたし、話の相違誤解がある感じでしたね」

とてもニコニコ笑っているがわざとらしい。

「いやいや、野暮用ですよ」

これ以上、話したところで、彼女は何もないだろう。

「ディライド様、妹様がいらっしゃっるとか。夜会には、参加しましたか?」

どこまで調べているのか…

「参加しておりましたよ。父上にも会いましたし、夜会では、同じ伯爵家の友人と話していたそうです」

「あら、残念。ご挨拶したかったわ。イズリー伯爵の周りは沢山人がいましたものね。アンドル様や側近の方達が、学校で人気者だと、お話した方々が言っていたのよ、私も年頃の令嬢ともっと盛り上がりたかったわ。私の身分を知ると警戒されてしまって」

と笑っていた。

「おや、どちらかの御令嬢とお話になったのですか?」

「そうですね、数人に声をかけさせてもらいましたけど、名前を伺わなかったの、私の身分を言わない方が仲良く話せるかと思って…印象に残った方は残念ながらいないのです。だってみなさんアンドル様のことばかりなんですもの。話を聞く限り平和な国ですね。では、ディライド様もお気をつけて」

と言われて、もしかしてミランダちゃんに?

「忌み子探しですか?」

「ええ、私の夢見に当てはまる者は、今回の夜会には来ていなかったけど、夢に出てくるあの笑い声、雰囲気…悪しき存在をこの国から感じるのです。次はもっと…」

「私も協力しますが、どのようにすれば?」

「…最近の入国者や必ず噂を呼ぶはずです。それを入手したら教えて下さい。良い物も悪い物も…」

声や雰囲気、噂?で判断している?自分の夢見を疑ってなさすぎる…

軽く手を振って別れた。

判断基準の曖昧さもだが、あまりにもティア王女がミランダを知らなさすぎる。
完全に引き離した結果というわけか…
流石父上、抜かりなく準備して参加もして、あの会場にいたとなれば…これ以上ミランダが調べられなければいいな。
…いや、マリングレー王国にいた時から知らない!?


朝から疲れた。

父上と確認し合ったこと。
ミランダとティア王女の確執。王女は、ミランダの姿も顔がわからない。夢見はマジックアイテムで防げる。
やはり別塔はマジックアイテムの建造物、多分スーパー眼鏡の製作者と同じ。
王族の瞳の色を失った理由。
国からの脱出の日、ティア王女の足止めか気を逸らしたのが、アクア王子だったのではないか?
その時、何かがあって半年の療養になった。

ウランダルよりマリングレー王国にもう一度調べに行きたいよ。

ミランダの先生は、王妃様なのではないか?

一番教えてあげたい情報だけど、全てが予想…ごめんね、ミランダちゃん。

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