今日も楽しくいきまshow!?

犬野きらり

文字の大きさ
82 / 120

82 あなたに今日会えて良かったです

しおりを挟む
ムズムズする。
頬が上がるような喜び、嬉しさみたいな期待が、どんどん膨らんでくる。
それなのに、矛盾のようにドキドキして上手く口が開かない。あんなに話したい事があったのに!

どうしちゃったんだろう?
この高揚感は何だろう?
久しぶりの友達に会えて嬉しいという気持ちってこんな感じなの?

手から伝わる熱が、全身を駆け巡って余計に意識して、私の口を邪魔する。う~、アレコレ頭の中が疑問だらけ。


「…ハンカチ、ありがとう。とても嬉しかった。御礼の手紙や…いや、何も出来なくて申し訳なかった」

また手が震えている…
私の高揚感が落ち着いてくる。
そんな重要なことじゃないのに、何故そんなに緊張しているの?

「あの、大丈夫ですよ。私は宛名書きしたわけではありません。ハンカチは置いた物でして…拾ってくれたのですね。風に飛ばされてもいいと思っていて、この前のお菓子の御礼をしたくて…あ、何を言ってるのかしら。あの…良かったです。きちんと届いて。
見ました?月下美人さん!とても絶対君主感がありましたでしょう?」

その横顔に笑いかけた。
話し始めたら、止まれない。
どんどん溢れてくる。
こちらを見たわ。良かった。少し驚き顔だけど。

「絶対君主…って言うけど、あれはただ威張っているみたいじゃなかったか?」

あら、震えが止まってる…
流石月下美人さんだわ!

「いえ、階段の上に君臨するお姿ですわ」

「えっ!?あれ階段だったのか?私はてっきり椅子だと思っていたが」

「何故月下美人さんが椅子に座るんですか!それこそ変でしょう?擬人化ですよ」

「確かに。でもあの葉を少しカーブさせているのは、ちょっと萎ってないか。私の月下美人の葉はピンと伸びているよ」

あらあら、普通に…今までみたいに話が出来る。良かった。嬉しい。楽しい。

「あれは、あえてです。あの方が葉という植物を表現出来て可愛いじゃないですか」

「いやいや、可愛いと表現した時点で擬人化だな。やはり真実を描写した方が、次の文化祭の刺繍コンテストに選出されると思うよ。今回の猫も顔から手が出るなんてありえないだろう?」

まぁ、購入者様がまさかのクレーム!?
それにオリジナルデザインをあんなに喜んでくれていたではありませんか!

「あれは、首を描いたら首チョッキンでそちらの方が、怖いじゃないですか!手を書いたのは、みんな仲良くです。可愛いです!オリジナルなのですから、現実ではなくて、誇張作品ですわ」

「わかるけど…いや、しかしグレゴリー達は、呪いのとか魔除けとか言っていたし…」

「なんて失礼な!…もう、あの可愛さがわからないなんて、剣を振る人は粗暴なんですわ!前にお義兄様が言っていた通りです。感性が合わないのです!」

言い合いをしながら、薬草の温室に入る。後ろに護衛騎士がいるのに…チラッと見たら、肩が揺れている。

「それは言いすぎだよ。剣を振るうからといって芸術を好む者は多くいる」

「まぁ、アンドル王子様は、あちら側の味方なんですの、まさか、魔除けの為にあのハンカチを喜んで戦利品だと言ってくださったのですか?嬉しいとかってまさかハンカチとしての実用じゃなくて、私な事馬鹿にしていたとか?友達に嘘を吐くなんて、信じられないわ」

顔を背けた。
別に本気で怒っているわけではなくて。何となく私よりもグレゴリー様の方が、友達として意見を聞いているのかと…私

少し面白くない…
私は、かなりあなたを思っていたのですけど。本当に、心配していたのよ。

「えっ、怒ったの?誤解だし、違う、よ。そんな不貞腐れないでくれよ。…ミランダ嬢の作品は、個性的だから、私はあの独特の感性が好きだ。思い返すと、確かにグレゴリー達は、お菓子の美しさや植物の色合い、そう、情緒がない奴らだし、確かに感性が合わないな。うん、あれは大変可愛いかったな。見つけた時の喜びは今も忘れられないよ…宝物だ。笑顔になる。ミランダ嬢、本当だよ。可愛いよ」

可愛い!?連呼!

私じゃない、ハンカチのことよ!
わかるでしょう!
なのに…
ドキドキが止まらない!
収まっていた熱がまた戻ってくるじゃないですか…
どうしましょう…大丈夫、スーパー眼鏡はつけている。
今更王子様を見ることができない。顔に熱が集中しているわ!

と思っていると、いきなり私の顔を覗き込んできた。

「キャッ」

思わず出た言葉に、王子様は笑いだす。

「プッフフフ、頬が真っ赤だな、ミランダ嬢。もう、怒らないでくれよ。反省している。言葉がすぎた…私は友達の味方だ」

そんな風に言わないでよ。この熱も胸の鼓動も収まっていないの…

「…もう、グレゴリー様達もお友達だから、少し味方したのでしょう?ふふふ、仕事ばっかりの関係ではないのですね。良かったわ。色々話せる方達ではありませんか!側近と友達という境界線は難しいかもしれませんが、ずっと仲良くして素晴らしいです。友達は大事だから!私も今回凄くアンドル王子様を考えたり、思っていたのですから!」

「えっ!?」

「そんな驚くことですか?考えてみて下さい。私から『お友達になりましょう』と言ったのですよ。やっぱり友達に会えないって寂しいじゃないですか!だから、その寂しさを紛らすために、ハンカチに刺繍をしたんです」

堂々と月下美人さんを刺繍した意味を話し、胸を張る。
特に聞かれてもいないことなのに、今日はとても饒舌になってしまう。
後から考えれば、とても恥ずかしいことを言っているのに、久しぶりに会えた事で気分が上昇してしまっていた。
会えた事で嬉しくて、私は馬鹿になっていたのかも…

「寂しさを紛らしてくれたの?」

「えっ!?」

今度は私が驚いた。
その言葉だけを切り抜くと、まるで…

「私を思って刺繍を刺してくれたの?」

そんな風に言われてしまうと、それは答えに詰まる言い方で…

「違うの?月下美人のハンカチは、先程言ったようにただ置いた、置き忘れのような物だったの?良かった、届いてというのは嘘なの?」

責められている?いきなりグワッと壁に追い詰められたみたいだ。

「それは…
その…急にお友達と会えないと思ったら…あれもまだ話してない、この話の続きがあったとか振り返ると楽しくて、そう考えると寂しくなって…
考えて見ると学校でも、アンドル王子様が現れてくれた時しか話す機会がないことに気づいて…
何かしていないとモヤモヤしてしまったんです…あのハンカチは、もし風に飛ばされても、それで良いとあの時は思って、今、こうやって話が出来るのは、もしかして、ハンカチを受け取ってもらえたから…時間を作ってくれたのですか?お義父様に頼んで?」

いつのまにか、私達は、歩くのを止めていた。そういえば、私達は薬草を見ていない…
お互いしか見えてない…

「うん、どうしても御礼が言いたかった…どうしても話がしたかった。また、私の我儘にみんな付き合わされた形だよね。丁度シュワルツがレオンとギクシャクしていると聞いて利用させて貰った…」

「えっ?レオン達がメインじゃないのですか?」

「あぁ、こうなるように…二人で話をさせてもらえるように頼みました。イズリー伯爵には申し訳ないなとは思ったけど、どうしても、もう一度きちんと話がしたかった。聞いていると思うが…今度婚約者を決める名目で夜会を開く。招待状は侯爵家以上の未婚女性を予定している…
婚約者を決めるつもりは、ないのだけど。違う目的があって会を開かないとならないんだ。目的があって招待状を送るのに、今誰か令嬢と二人で会うのは、誠意がないから…だけど目撃されても、自分の言葉で御礼を言いたくて、だからまだ発表していない今ならとお願いした」

無理してくれたのね。

「忙しい中、今日という時間を作って下さりありがとうございます。…義兄と落ち込んだり喧嘩したりしていないようなので安心しました。私も話せて良かったです」


気づくと無音の世界に入っていた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生令嬢は腹黒夫から逃げだしたい!

野草こたつ/ロクヨミノ
恋愛
華奢で幼さの残る容姿をした公爵令嬢エルトリーゼは ある日この国の王子アヴェルスの妻になることになる。 しかし彼女は転生者、しかも前世は事故死。 前世の恋人と花火大会に行こうと約束した日に死んだ彼女は なんとかして前世の約束を果たしたい ついでに腹黒で性悪な夫から逃げだしたい その一心で……? ◇ 感想への返信などは行いません。すみません。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

<完結>溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。 本編完結済み。 続きのお話を、掲載中です。 続きのお話も、完結しました。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

本の通りに悪役をこなしてみようと思います

Blue
恋愛
ある朝。目覚めるとサイドテーブルの上に見知らぬ本が置かれていた。 本の通りに自分自身を演じなければ死ぬ、ですって? こんな怪しげな本、全く信用ならないけれど、やってやろうじゃないの。 悪役上等。 なのに、何だか様子がおかしいような?

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……! 前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。 正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。 そして、気づけば違う世界に転生! けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ! 私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……? 前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー! ※第15回恋愛大賞にエントリーしてます! 開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです! よろしくお願いします!!

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

処理中です...