今日も楽しくいきまshow!?

犬野きらり

文字の大きさ
89 / 120

89 ディライド・イズリー 6

しおりを挟む
ディライドside  

「全く、私はまだまだだ。解答欄外にやられるとは!」

学年テストの失敗を引きずっていたが、まぁ、自分のミスと角まで注意を払うことは情報戦でも基本だ。
最近、アンドルに心を乱され、自分の嫌な所が目についた。
同時にアンドルが、眩しく、羨ましくも思えた。何より前までと違って、生き生きしている!
王子のくせに、相手にあんなに直に好意を伝える言動をするとは思わなかった…
狡いだろう、最初に素直になった方が相手からの見え方、印象が良いに決まってる。
もう一つは、あいつは、彼女の素顔を知らないのに…ということ。
眼鏡の気配遮断が壊れたわけではない。馬車の中で確認した。どんな表情をしたかもあやふやだった。近くで見てもわからなかった。それに彼女の美しい青紫の瞳は見れないはず…

私は彼女を…手中に収めたいのか…

考えてもわからなかった。

イライラする。
私が出来ない事をするアンドルにイライラする。

こんな内側を見せるのは、自分でも嫌だ。かっこ悪い。彼女が心配する。子供ぽいことはわかっている。僻みや妬みだから…

私が、もし彼女の素顔を知らなかったら…あの眼鏡姿の彼女と会話しただろうか…気にしただろうか…

心に突きつけられた、その問いにいつも思うのは、『否』だ。
それが嫌になる。私という人間を知っているから。興味の有る無しもあるが、表情が見えない人間を、アンドルを、学校に入る前から関係を切ろうとした人間だから…
どうしても、私なら、きっと挨拶などもしない。名前を知ってもそれだけだったのではないか…
アンドルの方が、彼女の本質を見て、大事にするのでないか。

真っ直ぐ人柄が見れない自分に…
出会って一目見て、美しい人と知って喜んでしまった自分に…

「ディライド様聞いてますか?サタンクロス商店に着きましたよ」

「ああ、悪い。少し考え事をしていた」

商店に着き、応接室に通される。ケトルが立ち上がり挨拶をしてきた。

「ディライド様、お呼びしまして申し訳ありません。王都やイズリー領で、ミランダ様の事を探っている商人や神官を見かける事が多くなりました。教会から工房に火薬作りの発注もあり、王宮に商人を呼んでは、クリネット国に行くと仰り、情報収集をしているそうです。そして大層悲劇的な噂を流しております。忌み子はクリネット国にいる、そのせいでウランダル王国のマユリカ王女が国王の側室になる。聖女自ら友好国に行き、悪風を祓い守ると宣言したそうです。その為再び、忌み子の噂話がチラホラと出始めました」

「ふん、また意味がわからないことを言っているな」

また始まったか、忌み子に全て負の感情を押し付けるやり方が。

「例の神官が暴れた店としてマリングレー国の支店の者が数人、教会から取り調べをされたそうですが、すでにミランダ様が被害者とは知られているようです。それとは別に、随分と豪華なドレスの発注があったみたいですよ。商人同士噂になってます。ティア王女の嫁ぎ先はクリネット王国ではないかと」

「そうか、ではパーティーには参加だな。リウム王子、アクア王子の噂は聞いたか?」

「アクア王子は、療養中の別塔から動きはないみたいです。ただ最近、第一騎士団が街の治安維持、特に教会の脱税や不当な献金を検挙しています。リウム王子は、外政に勤め、内政に国王陛下、次期国王は、リウム王子と言われてます。そして、こちらはイズリー伯爵にと預かりました」

ウランダル王国との交渉にリウム王子が主導でやったか。騎士団が王女の支援先の教会に厳しくして大丈夫なのか?国王が動いている?
どうなっている?

真っ白な封筒…

「ありがとう、ケトル。父上宛で差出人は書かれてないぞ」

貴族の封蝋もない。

「はい、私もわかりませんが、騎士団よりお預かりしたと聞きました…」

「父上に話す」

急いで屋敷に帰り、父との時間を作ってもらう。

「ティア王女は、ミランダを知った可能性は高いですね。ただ忌み子かどうかは分からず情報を集めているみたいです。そして騎士団は独立したのでしょうか?ティア王女と対立しようとしているのでしょうか?」

と言えば、父上が、

「さぁ、どうだろうな。リウム王子は確かにクリネット国にも手紙が届いている。今回のマユリカ王女の件の詫び状だと聞いた。アクア王子が回復したのではないか、確か騎士団に所属していたはずだ。ティア王女とアクア王子の対立は続いているのか?
ミランダの件は、我が家に被害状況の報告はないが、ネズミが彷徨かれるのは気分が悪いな。何とかしよう。
王宮より連絡があり、婚約者決めの夜会から大規模な前建国祭の夜会に変更になった」

と父が、私を窺うように笑って言った。
グッと再び苛つきの塊が胃から飛び出るかと思いながら、抑えた。

アンドルの奴め!

「すでにティア王女はパーティーに参加は間違いないです。大層豪華なドレスを発注し、商人からもクリネット国の情報を集めています。教会が、火薬を用意させていると聞きました。騎士団に対抗してとは考えられませんよね?ケトルから預かりました手紙です。差出人は書かれてません」

渡した手紙を父上は一目見て、片眉を動かし、私に見せずに引き出しに入れた。

「まぁ、領地に来たウランダルの職人はどうしている?火力で動く車の完成はどの程度だろうか?」

「残念ながら、強度が足らないようで、ある程度走ると、どこからか壊れると報告が上がってます。ネジが鉄板を支えきれないことが欠点です」

「ディライド、年明けに領地に戻るか…車に興味があるのだろう?」

確かに興味はあるが…

「父上、今は職人に任せたいです。まずはマリングレー王国の目的を知ることが、先かと思います。ティア王女が王宮に入りましたら、また近づいてみようと思います」

「向こうも今回の件で警戒しているだろう。アンドル王子様達もダイアナ嬢を再び当てるそうだ、聞いているか?」


「いえ、聞いてません…では今から王宮に商人の報告に行ってきます…」

苛立ちは湧き上がったまま燻り続ける。マリングレー国の事を考えたい、先程の手紙も気になるのに、何故かアンドルに対しての感情が抑えられない。
早歩きで自部屋に戻ろうとする廊下で、

「お義兄様!」

軽やかな声で呼び止められた。あぁ、顔を見られたくない、会いたくないと思ってしまった。

「ああ、ミランダちゃん。ごめんね、今から王宮に行きたいんだ…」

「そうですか、お呼びがけしてすみません」

ごめんね、こんな私を君に見せたくない
この吐き出せないか思いは何だろう?

「またね」

搾り出した言葉。
今、私はどんな顔をしているのだろう…



王宮、アンドルの執務室

「アンドル、どういう事だ?ダイアナ嬢に大規模な夜会って?」

「あぁ、そのままの意味だ。夢見の乙女をぶつけるし、ウランダル王国のマユリカ王女も国内の高位貴族の令嬢も招待する」

と執務の手を止めず、淡々と話された。

「わざわざそんな揉め事が起きるような」

と言えば、

「あぁ、地獄絵図になるかもしれないが、彼方此方で燻られ面倒をかけら続けているからな。膿は全て出した方がいい。それからディライド、ミランダ嬢は欠席で良いから」

無表情で話すアンドルに、確かな覚悟を感じた。

「何か知ったのか、アンドル?」

自分でもこんな低い声が出るとは思わなかった。

「ハァーーー
ディライド、私が陛下に謁見した際に、覚悟を問われたよ。例え友好国を失っても私の気持ちは変わらないよ。それに失わない為に今動いているから…
ディライド、私に従えないなら側近は辞めていい。領地運営に尽力してくれ、第一王子として失格だと言われたら、素直にシュワルツに譲る。我儘だと言われようとも、『どうしても』があるんだ。絵本のように甘い世界に憧れているだけと言われても…
全力で迎え打とうと思っている」

アンドルの強い意志が私に刺さった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ

桜庭かなめ
恋愛
 高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。  あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。  3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。  出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2026.1.21)  ※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~

魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。 ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!  そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!? 「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」 初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。 でもなんだか様子がおかしくて……? 不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。 ※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます ※他サイトでも公開しています。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

処理中です...