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96 劇団マーメイド大盛況です

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私の地毛の水色、青紫の瞳のまま、精一杯を尽くし、漁港の街での初日公演を終える。

「「「ブラボー、女神様~」」」
「「プリンセス~」」
「「「精霊様~」」」

拍手喝采…
野外の為か熱気が風に乗る歓声と喜色の雰囲気…

「私みたいな素人がこんなに…」

「やったわね、ミランダ!この会場をあなたの色に染めたわ、これはマリングレー王国で人気になるわよ~」

監督が扇子で口元を隠しながら、喜びを私に伝えてくれる。

「義姉様の今の御姿を鏡で見て下さい。あまりにも美しい。ただでさえ美しいのに、光り輝く汗とともに神々しさが増してます。見る者を夢中にさせてしまう、その魅力を遺憾無く発揮されて感動しました。圧倒的な美しさの魅力に落ちない人間はいないです…」

子供なのに、饒舌に語る義弟…

「レオン、あなたの微笑みの王子も素敵だったから、私ばかり褒められるのは違うわ」

「大丈夫です、お嬢様!聞いて下さい、最初はお嬢様の女神のごとき美しさの賞賛ですが、しっかり劇団の賞賛もありますから!」

ラナも興奮して話す。

「「「劇団マーメイド、ブラボー!」」」

あぁ、良かった。劇団員みんな笑顔で、お義母様もずっと高笑いしている。

「王族の色を纏った海の精霊の愛し子はプリンセスだぞ」

そんな声が聞こえてきた。
…これは、もしかしてギャフン計画を実行出来た!?

「今日の公演が噂を呼ぶわ」

とお義母様の言う通りになった。

そして翌日も大盛況で、しっかりチケット代を取る公演に切り替わってた。サタンクロス商店の出店まで…
この精霊の愛し子の公演を観た民達が、私が歌っていた歌をまるで流行歌のごとく、歩きながら歌えば、伝染するようにどんどん広がっていく…

「凄いわ。人々の噂話の広がり方…囚われた海の精霊の愛し子は、我が国のプリンセスじゃないかと噂話が回ってきました」

と言えば、お義母様が、

「口伝えが思った以上に早いわね。それだけこの精霊の愛し子に感化されているのよ」

公演終了後、すぐに舞台を隣街に運び、準備していると劇団マーメイドの公演を口上しなくても、勝手に人々が口伝えで広まった。

この街でも、流行歌のように伝染していく。海の精霊の愛し子話が、口から口へ伝わっていく。

三回目の公演から、幽閉されていた『醜い子』という言葉から、『忌み子』に変え、幽閉していた『権力者』を、神官ぽい衣装を着た『女性』白髪のカツラをつけた実は『魔女』という設定に変えた。

これは明らかに教会に喧嘩を売っているはずなのに、苦情が来ない…

「お嬢様、どうかしましたか?」

「ケトルさん、あんな話が出回り始めたというのに教会から苦情が来てないなと思いまして」

「ああ、神官の半分以上は、聖女様の指示でクリネット国に情報収集に行っていますから、現在教会は人手不足で、一劇団に反応出来ない程大変みたいですよ」

と笑っていた。
なんてタイミングが良いのと思ったが、イズリー家のみなさんが情報を集めてこの機会を作ってくれたのね。

「ケトルさん、私に出来る事はありますか」

「ええ、もちろん馬車に乗り民に向かって手を振ってください。これだけで売れ行きや噂話が加速しますから!」

ええ~、めちゃくちゃ恥ずかしい行動じゃないですか!調子乗っていると思われそうな…

でも、やると決めた以上最大の結果を導くようには進むわ。

「わかりました。馬車から手を振ります」



公演開始一週間が経ち、4ヶ所目の街に入る。
流行歌も噂話も加速し、豪商や貴族の人が面会申し込みをされ、追っかけの人達も現れる結果になり、私が王族の庶子という噂まで出回り始めた。

護衛の数は増やしても、出歩くことが困難になってしまい、お義母様から

「これは予想外ね。サタンクロス商店と公演場所について相談するわ。イズリー家の名前を出して貴族を追い払いたくはないのよね…」

窓から人々の声が一層激しくなったと思うと、ケトルさんが来て、お義母様に耳打ちする。

「会いましょう!都合が良いわ。旦那様から聞いていた人物よ」

と言われたので

「では、私達は、席を外しましょうか?」

私とレオンが椅子から立ち上がると、一緒に挨拶をしましょうと言われた。

通された人物は、漁港で見た騎士の制服の人だった。何故か目隠しをして…

「初めまして、私、マリングレー王国で騎士団警備隊第一団にいます、アクアロームと申します。劇団マーメイドの活躍は凄い勢いですね。しかし怪しい連中に目をつけられ始めました。警備隊としては放置出来ない内容でしたので、これからの公演場所と回数を教えて頂きたいのです。我々も国民に何かあるのは困るので、警護に同行したいのですが、いかがでしょうか?」

優しい物言いと短い水色の髪、どこか懐かしく感じた。

失礼ながら、私は不躾にずっと見つめてしまう。

「目隠しなんて気になりますよね、詳細は伝えられませんが、あなたを守る為に必要な事なのです…気味が悪いと思いますが、一時我慢をして下さい」

なんて言われてしまう。お義母様が、

「王子殿下…」

と言えば、

「申し訳ございません、私は騎士団警備隊…アクアロームとお呼び下さい、イズリー伯爵夫人」

と言い、みんな無言で頷いた。

「ご事情がお有りなのですね、その事に言及はしません、ミランダもいいわね?」

と聞かれ聞きたい事は数多くあったけど飲み込んだ。後は護衛や警備の話し合いになり、

「わかりました。最終場所は王都の広場ですね。そちらは我々が場所を確保します…第一団員が複数警護にこれから着くと思うので安心して移動してください」

さらっと言った『安心して移動して』と言う言葉、同じ口調で声色で聞いたことがある気がする。
みんなが御礼の挨拶をしていた。
…どこかそんな記憶を探したまま、

「ありがとうございます、アクアローム様」

と言えば、優しい雰囲気と笑顔を作ってくれたのだとわかる。



回る回る噂話に尾鰭がついて…流行歌のように彼方此方で話題になる。騎士団が護衛についた事で、ますます王族の庶子という噂話が拍車かかる。

ラナが、興奮気味に

「今の流行りは、お嬢様ですから!もう各地で、絵姿まで書かれるほど人気で名前をどうにか知ろうとして、必死みたいですよ。劇団マーメイドしか公表しなかったので一安心ですけど、もし名前を知られたら、海を渡って婚姻の申し込みが殺到しそうですね」

と話される。それは嫌だな、この国の人と婚姻を結ぶ…考えるとかなり複雑な気持ちになる。

王都到着は、入国して二週間経過していた。
劇団マーメイドはどこに行っても盛況で温かく迎え入れてくれる。

マリングレー王国の王都はとても綺麗な街並みだった。白を基本とした家が並び、背の低い植物が綺麗に整備されていた。


「良かったですね、お義姉様。無事何事もなく辿り着きました。第一団員の方達は民衆から慕われているんですね。みんな声をかけただけで、言う通り行動してくれる。それでも、必ず、私の側にはいてくださいよ、お義姉様!信用してふらふら出歩かないで下さいよ」

とレオンに言われ、ラナにも、

「お嬢様、絵姿を初日から売り始めて今や有名人…人攫いもですが、最近神官達が彷徨いてますから!」

そう、ついに教会にも話が聞こえ始めてしまった。
昨日移動中に神官に、

「劇団マーメイドは、聖女様批判だ。その王族の色は本物か?ティア王女様の真似をしているなら許さないぞ!確認させろ!」

と叫ばれ抗議された。すぐに警護についていた騎士様に取り押さえられていたけど…

その場にいたマリングレー王国の民達は、

「聖女様批判、何言ってんだ教会は。これは物語だろう」

「聖女様より美しい精霊の愛し子様に対しての妬みかい」

「やっぱり精霊の愛し子様は、本物の王族でティア王女様が幽閉した首謀者なのか、だから教会が意地悪しているのか」

「確かに精霊の愛し子様は、王妃様にそっくりだし」

「では聖女様がよく話す忌み子は、王妃様そっくりの精霊の愛し子を貶める為に説法で伝聞しているのか…
まさか姉妹を?」

国民の声が、噂話からどんどん核心をつく話になってきた。
そして私はあれから、アクアローム様にも会っていない。同じ髪色なので面倒くさい事になっていなければ良いのだけど…



そして二日後、
最後の王都公演が始まる。


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